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2023-09-29T19:56:24+09:00
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2013-07-24T00:00:00+09:00
第89回(最終回):淫行処罰条例について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=199#block111-199
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<div style="border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; border-bottom: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-top: 0mm; padding-left: 0mm; border-left: black 1pt solid; padding-right: 0mm">
<div style="border-top: medium none; border-right: medium none; vertical-align: baseline; border-bottom: medium none; padding-bottom: 0mm; padding-top: 0mm; padding-left: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; border-left: medium none; padding-right: 0mm; text-indent: 12pt; punctuation-wrap: simple">先日,淫行処罰条例の制定に長野県弁護士会が反対の声明を出したというニュースがありました。子どもたちを性被害から守るために,こういう条例は必要だと思うのですが,なぜ反対するのか理解できません。説明して下さい。(40代,女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:今日は,最近長野県内でもニュースに出てくる「淫行処罰条例」についてです。特に最近,学校の教員などが児童生徒に対してわいせつ行為をして逮捕されるなどという報道が多いですが,板谷さん,まず淫行処罰条例とうもの自体がよく分からないのですが,一般的にはどういうものなんですか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:一般的には,青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為を広く処罰する規定を盛り込んだ条例を指して,淫行処罰条例と呼ばれていますね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:たとえばどんなものがあるんでしょう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:最高裁の大法廷判決で有名になったのは,福岡県青少年保護育成条例で,この条例には,「何人も,青少年に対し,淫行またはわいせつの行為をしてはならない」という規定がありまして,これに反すると,<span>2年以下の懲役または10万円以下の罰金を科するということになっています。長野県内の市区町村のレベルでいうと,東御市には平成19年に青少年健全育成条例ができまして,そこでは,「何人も青少年に対してみだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」とされています。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:「青少年保護育成」の条例ということは,要するに,子どもたちを性被害から守るというために作られた条例ということですよね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:はい。そうですね。こういう条例の中には,有害図書の規制なども含まれることが多いですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:長野県には,こういう条例がなかったということなんですか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:そうなんです。長野県は,<span>47都道府県で唯一,こうした淫行処罰条例がなかったんです。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:子どもを持つ親の気持ちからすると,子どもたちが性被害の対象にされてしまうことを防ぎたいというのは当然で,是非長野県にも作って欲しいというのはよく分かるのですが,何か問題があるんでしょうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:もちろん,そういう親御さんのお気持ちはよく分かります。ただ,弁護士の立場から申し上げると,このような条例を作ることには,大きく分けて,2つ問題があると考えているんですね。まず1つ目は,条例の文言,つまり言葉遣いが曖昧だということです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:先ほどの条例ですと,「何人も,青少年に対し,淫行またはわいせつの行為をしてはならない」とか,「何人も青少年に対してみだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」という言葉遣いでしたが,まず,「青少年に対し」,これはどういう意味でしょう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:通常は,条例の中に,小学生から<span>18歳未満までを青少年と呼ぶという定義規定が入っていますね。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:そうすると,これは年齢ではっきり分けられますから,明確ですよね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:次に,「淫行またはわいせつの行為をしてはならない」とか,「みだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」これはどういう意味でしょう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:ここが問題なんです。「淫行」とか,「みだらな性行為」「わいせつな行為」というのが,どこからどこまでを規制するのかが曖昧なんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:まあ,こういうたぐいのものは,ある程度曖昧にならざるを得ないと思うんですけど…。曖昧だと,何が問題なんですか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:逮捕したり処罰したりする範囲について,捜査機関のフリーハンドになってしまうんです。たとえば,その青少年が真剣に恋愛したり交際したりしているというような場合でも,捜査機関は場合によっては逮捕できてしまうんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:なるほど。青少年が性交渉をすることが良いのかどうかは置いておくとして,女性であれば16歳になれば結婚もできるわけですもんね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:そうなんです。最高裁は,福岡の条例に関して,「『淫行』とは…」と言って非常に難しい定義づけをしているんですが,これではほとんど限定になっていないという強力な反対意見もあるんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:なるほど。さて,問題点の2番目というのは何でしょう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:青少年の性交渉などに関して,刑罰でこのように規制するというやり方自体がどうなのかということです。刑罰で何でも処罰するという方向は,決して問題の解決にはならないんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:といいますと,どういうことでしょう。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:これだけ性に関する情報があふれた現代ですから,むしろ,子どもが自己決定権に基づいて意思決定をして,自分の判断で危険性から身を守ることができるように,性教育をしたり,インターネットの利用方法や危険性等に関する情報教育をしたりすることの方が重要だということなんです。日本の法律では,刑法の強制わいせつ罪,準強制わいせつ罪,強姦罪,準強姦罪,児童福祉法の児童淫行罪,いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法,出会い系サイト規制法,迷惑防止条例などがあって,青少年が被害を受けることを防ぐためにはこのような既存の刑罰で十分だと思うんですよね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">阿藤:なるほど。さて,今日で板谷さんの法律相談のコーナーは最終回ということですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt; text-indent: -36pt">板谷:はい。今日までで,約7年間,合計89回このコーナーを担当させていただきました。いろんなご相談を取り上げさせていただいて,とても勉強になりました。どうもありがとうございました。</div>
<span style="font-size: 12pt">阿藤:どうもありがとうございました。</span>
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2013-06-26T00:00:00+09:00
第88回:復讐心だけで,証拠が無く訴えを起こすことは?
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=198#block111-198
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">数年前に私を傷つけた人のことが,どうしても許せません。証拠はないのですが,復讐をするために裁判を起こしたいと思います。でも,ちょっと心配なのが,訴えたこと自体で,逆に相手方から訴えられてしまうのではないかということです。そのようなことはありますか?(40代,女性)</div>
</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今日は,復讐心から裁判を起こしたいけど,証拠が手元にない,というご相談ですね。う〜ん,まあ,「復讐心」っていうと聞こえが悪いですが,実際こういう理由で裁判を起こしたいという方は多いようにも思いますね。まず,裁判を起こすのに,証拠は必ず無いとだめなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:基本的には,証拠がないとだめですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:やっぱり,そうなんですか…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。裁判というのは,公平中立な第三者である裁判官に証拠を提出して判断してもらうという手続なんです。裁判官は神様ではありませんから,人の心を見抜いて,相手が嘘をついているかどうかなどを判断するわけにはいきません。判断をするためには,客観的な証拠や証言による裏付けが必要です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですね。でも,さきほど,「基本的には」と言われたのが気になったんですが,証拠を提出しなくてもよい場合というのがあるんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,民事裁判のルールでも「自白」という言葉を使うんですが,</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:自白ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,自白です。相手が認めている事項については,裁判所はそのまま認定すればよいということになっています。ですから,相手が認めている事項については「争いのない事実」ということで,いちいち証拠を出さなくても大丈夫です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。でも,通常,損害賠償などの裁判を起こして,相手がすべて認めるということはないですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:全くないわけではないですが,通常はないですね。もっとも,相手が裁判を起こされているのに,反論の答弁書も出さずに欠席すると,すべてを認めたものとして扱われてしまいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,裁判を起こされると,何もしないと全て認めたことになってしまうので,被告になった人は,どんなに事実無根の裁判を起こされても無視できず,間違っているところは間違っていると反論しなければならなくなるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。しかも,裁判ですから,弁護士を付けないとなかなか難しいので,訴えられた被告というのは,いろいろな負担がかかることになりますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなると,復讐心から,嫌がらせのために裁判を起こして,あわよくば相手が何も反論しないでそのまま裁判で勝ってしまおうと考えるような人も出てくると思いますが,証拠がないのに裁判を起こすことは違法にならないんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷: 憲法には「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」とありますので,紛争解決のために訴えを提起することは,原則として正当な行為とみなされます。ただ,訴えを提起された側にとっては,弁護士を依頼して応訴したりするなどの経済的・精神的負担を余儀なくされますので,相手に不当な負担を強いるような訴えの提起は適切とはいえないですね。そこで,この点で最高裁の判例が出ていまして,最高裁は,「提訴者の主張した権利又は法律関係が根拠を欠くものであることを知りながら,あるいは容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」には,訴えること自体が不法行為になるとしています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ええと,ちょっと言葉遣いが難しいんですが,もうすこしかみ砕いていうとどうなるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:要するに,証拠が無くて,事実無根だということを知りながら,単に嫌がらせのためだけに裁判を起こすということは,裁判制度の趣旨にそぐわないので,訴えたこと自体が違法な行為となることがあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,訴えたこと自体で,相手から訴えられてしまうということもありうるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。ご相談者の方も,数年前に何があったのか分かりませんが,証拠もないのに復讐をするためだけに裁判をするというのは,不法行為になって,逆に損害賠償を払わなくてはならなくなる可能性もありますし,何より精神衛生上よくありませんので,やめた方が良いと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:う〜ん,そうはいっても,なかなか許せないという方もおられると思いますが,どうすればいいんでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いろいろな考え方はあると思いますが,一つの方法として,「こんな人を相手に争うのは自分がもったいない,相手には自分が怒るに値するだけの価値はない」と考えてみるのはどうでしょうかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:相手と同じレベルで争うのでは無くて,もう少し上からの目線になって,自分の貴重な時間と体力を,こんな相手のために使うのはもったいない,だったらとっとと記憶から消し去った方がいい,と考えるということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。若干悔しいかもしれませんが,そんな相手のことは忘れて,前を向いた方がいいと思うんですよね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:なるほど。わかりました。</span>
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2013-05-29T00:00:00+09:00
第87回:盗まれた物がリサイクルショップにあった!
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=197#block111-197
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">半年前に,高級腕時計を盗まれてしまい,被害届を出しました。最近,近所のリサイクルショップで,その腕時計とそっくりな時計が売っており,よく見ると傷の付き方が全く同じで,シリアルナンバーを見せてもらったら,私が盗まれた時計でした。お店から,無償で返してもらえますか。(30代,男性)</div>
</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今日は,盗まれた時計がリサイクルショップに売っていたら,無償で返してもらえるかというご相談です。結論からお聞きしますけど,この場合は返してもらえますかね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。盗まれた時計だということが証明できるのであれば,盗まれてから<span>1年の間は無償で返してもらえます。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:よかったです。それでは,その理由を詳しく説明していただけますか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:まず,民法の原則からご説明しますね。民法には,物を占有している人は適法な占有と推定されるという規定があります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:適法な占有と推定されるって,難しい表現ですけど,どういう趣旨でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:たとえば,柳田さんが今着ている服について,誰かが近づいてきて,「それ,私の服です!返して下さい」といわれたら,困りますよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:確かに困りますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:もしそうなったら,自分の物です,ということはどうやって証明しますかね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ええと…,たとえば買ったときのレシートを出すとか,名前を書いておくとか…う〜ん,どうやって証明するんでしょうかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんです。自分の所有だということを証明するのは「悪魔の証明」などといわれるんですが,すごく難しいことなんです。レシートを全部とっておくとか,自分の所有物すべてに名前を書いておくなどということは非現実的ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:確かに,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そこで,民法では,その物を占有しているというだけで所有者として推定されるとしたんです。推定,というのは法律用語なんですが,とりあえずそういう物として扱っておいて,それに反論する人は推定をくつがえすために証拠を出さなければならないということなんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,私は今服を着て占有しているので,「それはあなたの服じゃありません,私のです」と主張する側が証拠を提出して推定をくつがえさないといけないということなんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:さて,今日のご相談のように,お店が占有している商品について,製造番号などから,自分の盗まれた物だと証明できる場合はどうなんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:民法には「善意取得」とか「即時取得」と呼ばれる制度があり,盗品と知らずに取引で購入した人に過失つまり落ち度がなかった場合には,購入した人は即時にその物の所有権を取得できるとされているんです。これは,そのような制度がないと安心して取引ができなくなり,社会が混乱してしまうからです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,盗品を取得したときに盗品と知らなかった場合で,しかも落ち度がないという場合には,善意取得するということになりますね。善意取得をする結果,どうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これも民法に規定がありまして,盗難の被害者は,盗難から2年間は取得者に対して返還を求めることができますが,取得者が公の市場(お店など)で買ったという場合には,返還を求める際に取得者が支払った金額を払わなければならないことになっています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,お店がその盗品を入手した際に善意取得したということになれば,お店には下取り代金を払わないと返してもらえないことになりそうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:民法の原則から言うとそうなりますね。でも,この民法の原則は「質屋営業法」や「古物営業法」という法律で修正されています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:質屋営業法や古物営業法ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。質屋やリサイクルショップなどの古物営業を営む人は,都道府県公安委員会の許可が必要になります。そして,質屋営業法や古物営業法という法律に従って事業を営む必要があります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,誰でもリサイクルショップを開けるというわけではなくて,許可が必要なんですね。それで,その法律ではどのように規定されているんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:それらの法律では,盗難又は遺失から1年以内であれば被害者に無償で返還しなければならないことになっています。盗品等の売買を防止し,速やかな発見等を図るために,そのような特別の義務を課しているんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど,そうやって,お店の側でも取得する際にきちんと盗品かどうかを確かめなければならないようにしているんですね。そういえば,リサイクルショップに持って行くときは必ず免許証の提示などを求められますものね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,中古店からは,被害から1年内は無償で返してもらえるということですから,ご相談者の場合,盗難から半年間しか経っていないので,シリアルナンバーなどで盗品と証明して,お店から返してもらえるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:どうもありがとうございました。</span>
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2013-05-22T00:00:00+09:00
第86回:憲法改正
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=196#block111-196
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">安倍さんが総理大臣になってから,憲法改正ということがよくニュースでとり上げられるようになりました。特に,憲法96条の改正ということがよく出てきますが,どういうことなのか,教えて下さい(60代,男性)</div>
</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今日は,最近ニュースによく出てくる「憲法改正」についてです。憲法というと,社会科などで勉強して「前文を暗記した」などという人も多いと思いますが,最近改正が問題になっているのですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。安倍政権が発足した当時から,安倍首相は憲法が誕生して60年経って現実にそぐわないものになっているから改正しようと主張していますね。そのため,この問題は最近新聞などでもよく取り上げられるようになりましたね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そもそも憲法,というものは何なのか,説明してもらえますか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:わかりました。まず,国とか国家とはどういうものかというところからご説明しますかね。地図には国の境界線が引かれていますが,実際の地上にはそんな境界線がないですよね。つまり,国家というのは,ここからここまでがうちの国です,というふうに人為的に作られたもので,自然に存在しているものではないんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そして,国家の要素としては「領土」と「国民」と「統治権」の3つがあるといわれています。この3つが揃って初めて国家が成り立つというわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:「領土」と「国民」と「統治権」ですね。領土は分かりますが,国民と統治権ということは,国家を治める権力者の側と,治められる側の国民が必要ということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。そうですね。呼び方は国によって異なりますが,国家には必ず権力者と国民がいます。そして,まず法律というのは何かというと,権力者の側が作って,国民に守らせるものですね。たとえば交通法規を作って,日本では自動車は左側通行をしなければならないと定めますよね。そうすると,右側通行をした人は交通違反になりますね。交通違反になると,権力者は違反者を処罰することができるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,権力者は法律で何でもできてしまうということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そういうことになってしまいますよね。一番分かりやすいのが税金で,権力者は法律で「今後の税金はこのくらい」と定めて,好き勝手に取り立てることができてしまいます。こういうことが17世紀から18世紀にかけて,イギリスやフランス,アメリカなどで問題になって市民革命が起きました。その市民革命の結果,権力者側に好き勝手にさせないように,権力者側を縛る目的で憲法を作ったんです。これを難しい言葉で「立憲主義」といいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:立つという字に憲法の憲という字で立憲主義なんですね。憲法によって権力を縛るということなんですね。そうすると,憲法と法律というのは全く違うものなんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんです。憲法というのは,国民の権利を保障して国家権力を制限するため国の最高法規なんです。最高法規ですから,権力はこれに反する法律を作ることができません。仮に作っても,裁判所で違憲,無効とされてしまうわけです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:でも,法律も時代にそぐわなくなって改正する必要が出てくるのと同じで,憲法も改正する必要が出てくる場合もありますよね。憲法を改正するためにはどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:憲法は最高規範ですから,法律と同じように簡単に変更できてしまうと意味がありません。そこで,どの国でも普通の法律よりも改正の要件を厳しくしています。日本国憲法の<span>96条は,「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議する」して,「国民投票において、その過半数の賛成を必要とする」こととしています。これはかなり厳しい要件です。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:いろいろな政党があるわけですから,国会で,総議員の<span>3分の2以上の賛成を得るというのも大変ですし,国民投票で過半数の賛成を得るというのも大変ですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。このように,ちょっとやそっとでは改正できない憲法のことを,硬い憲法という意味で硬性憲法といいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:さて,憲法改正ということは以前から言われていたことですが,改正を唱える人たちは,どういう理由で改正を主張しているんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いろいろな主義主張がありますので一概には言えませんが,<span>9条問題といって,今の憲法9条を前提にすると,国は陸海空軍を持つことはできないんですね。そこを改正したいという人がいます。あるいは,そもそも戦後に大日本帝国憲法から今の日本国憲法を作る際に,マッカーサー草案というものをもとに作ったので,日本国民が自主的に作ったものではない,押しつけ憲法だと言って,憲法を作り直そうという人もいますね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか。さて,最近問題になっている<span>96条の改正というのはどういうことなんですか。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:安倍さんは,憲法改正を早急に進めたいということで,さきほどの改正手続の中の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議する」という部分が厳しすぎるので,もっと緩和しようと主張しています。でも,これには反対も強くて,改正したいのであれば,今の憲法の改正手続に則ってやればいいのであって,まず改正のルールを変えてしまうというのは,本来権力を縛るはずの憲法を権力が自分で変更してしまうことになっておかしい,という意見が強いですね。長野県弁護士会も,そのような意見書を出しています。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:ありがとうございました。</span>
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2013-04-24T00:00:00+09:00
第85回:村八分にされてしまった
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=195#block111-195
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私たちの家族は,些細なことをきっかけに,ご近所から村八分にされています。最近はゴミ収集所も使わせてもらえず,回覧板も回してもらえなくなりました。慰謝料を請求できますか?(60代,女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:さて,今回は,いわゆる村八分という問題についてです。板谷さん,村八分なんていう問題は<span>21世紀の現代社会でもあるんですか。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:う〜ん,まあそれほど多い問題とはいえないですが,こういうご相談がないとはいえないですね。特に,農村や集落,団地などでは,共同体を構成している人数が少ないためか,時折このような問題が生じることがあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか。裁判にまでなるケースもあるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。裁判例で公表されている事例もいくつかありますね。代表的な事例は,共同絶交宣言をされ,度々いじめや仲間はずれ,嫌がらせにあい,連絡文書が届かなくなったなどの行為があったというものです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:共同絶交宣言ですか。ご近所からこんなことをされたら,たまったものではないですよね。今回のご相談も,ごみ収集所を使わせてもらえないとか,回覧板を回してもらえないなどというご相談ですが,こういう場合,慰謝料請求はできるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:できる場合もありますね。村八分行為については,「人格権を侵害する共同不法行為」があったとして慰謝料請求が認められることがあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:人格権を侵害する共同不法行為ですか。つまり,村八分行為というものは,相手の人格権を傷つける行為ということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。人格権というのは,個人の尊厳にかかわる極めて重要な権利です。プライバシー権とか,名誉なども含まれていますね。そういう人格権を,ご近所で共同して侵害しているということで,人格権を侵害する共同不法行為といわれているんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですね。慰謝料は,大体どのくらい請求できるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:場合によりますね。裁判所で認められたケースの多くは,20万円から30万円程度の事例です。おそらく一般に予想されるよりは低額だと思われますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:<span>20万円から30万円って,ちょっと予想より低いですね。数百万円くらいいくのかと思っていました。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:もちろん場合によりますので,そのくらいいくケースもあるとは思います。裁判例でも,請求した額は<span>300万円とか400万円といったケースが多いですが,裁判所が認めたのは数十万円ですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか。さて,村八分行為について裁判で慰謝料を請求するために,気をつけるべきことなどはあるでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:裁判で慰謝料を請求したいのであれば,その前提として,村八分にされている証拠を集める必要があります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:証拠ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。たとえば,「何となく仲間はずれにされている気がする」「最近周囲の態度がおかしい」という程度では,請求は無理でしょうね。また,このような事案では「あなたが地域社会の規範に反した行動を取ったために起きたものだ」などと反論されることもありますから,紛争に至る過程について詳細に記録をつけておくとよいと思います。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。そうすると,写真とか録音とか録画とかメモとか,そういうものを残しておくべきということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。そうですね。ひどいケースになると,悪口を書いた立て看板を立てるなどというケースもありますから,こういう場合はきちんと証拠をとっておくと良いですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:立て看板ですか。それはひどいですよね。名誉毀損ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。そこまでいくと,単なる慰謝料だけでなく,刑事罰にもなり得る問題になりますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:はい。さて,ご相談者のケースはそこまでいかないケースのようですが,板谷さん,村八分といっても,隣近所の問題について,慰謝料を裁判で請求するというのはちょっと抵抗がありますよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんですよね。こうした隣近所とは今後もつきあいが続くわけですから,いきなり慰謝料を請求するかどうかは十分に検討すべきだと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:裁判よりも,もう少し穏便な解決をするためにはどうすればよいでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:まずは弁護士を通じて「村八分の行為はやめるように」という申し入れをするということが考えられますね。ご近所も何か誤解をしている場合もありますから,話し合えば誤解が解けるということもあるかもしれないですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:あとは,法務局に人権相談をすることも検討した方がいいですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:人権相談ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。法務局には「人権擁護委員」がおり,人権相談を受け付けています。とくに,こういう隣近所の問題などといった相談は,必ずしも法的な問題というより,感情的な問題がほとんどであるということがありますから,法律家が関与するより,もう一段階マイルドなやり方の方がいい場合があるんです。ですから,そうした相談窓口を利用してみるのも一つの方法かもしれませんね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2013-03-27T00:00:00+09:00
第84回:民法改正
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=194#block111-194
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">2月末のニュースで,民法改正について法制審議会の中間試案が決まったということが大きく報道されていました。民法や民法改正について教えてください。(<span>20代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:さて,今日は少し珍しく,民法改正についてということなんですが,そういえばこういうニュースありましたね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。けっこうニュースで大きく報道されていましたね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:板谷さん,そもそも,法学部にでも行っていない限り,民法なんていわれても普通はピンとこないですよね。もちろんこのコーナーで何回か民法という言葉は出てきますので,そういう名前の法律があるということくらいは分かっている人が多いと思うんですが,内容とまで言われると,普通は知らないと思うんです。民法というのは一体どういう法律なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:まず,法律というのは,大きく分類すると「公法」と「私法」に分けられます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:公法と私法ですか。どう違うんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:おおざっぱにいうと,公法というのは,国と一般民間人との関係,つまり縦の関係について規定しているもので,私法というのは一般民間人同士の横の関係について規定しているものなんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど,縦の関係と横の関係で違うんですね。たとえばどんな法律が縦や横の関係になるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:たとえば刑法なんていうのは,こういうことをすると国が処罰しますよということを規定していますので,縦の関係の法律になります。今回の民法は,一般民間人同士の所有権とか契約とか損害賠償とかを規定しているものですので,横の関係の法律になりますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。さて,ここまで民法改正が大きく騒がれるのは一体なぜなんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:民法というのは,横の関係の法律つまり私法の中で一番基本的な法律なんです。一般法なんていう言い方をするんですが,対等な一般人同士の関係を規定した,一番基本的な法律なんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:基本的な法律ということは,応用編の法律もあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうなんです。たとえば,当事者が対当ではなくて一方が消費者という弱い立場で一方が会社という強い立場というような場合には,消費者契約法という法律で修正したり,一方が大家さんで一方が借り手というような場合には借地借家法という法律で修正したりしているんです。全部民法を基礎にしていますので,それだけ重要な法律なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。そうすると,民法を改正するということは,ほかの法律にも影響を及ぼす大きなことなんですね。さて,新聞などでは<span>120年ぶりに大改正だなどと報道されていますが,そんなに古い法律だったんですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。もともとは明治維新のあと,ボアソナードというフランスの学者を招いて民法を作ったんですが,国内で議論が起こって,こんな民法を守っていては国が滅びてしまうなどといわれて,結局その民法は施行されなかったんです。その後,日本人の学者たちが集まってドイツの法典とかフランスのナポレオン法典とかを作り直したのが今の民法なんですね。伊藤博文が内閣総理大臣のころですから,本当に昔ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:伊藤博文って,昔のお札に入っていましたけど,いや〜そんな時代の法律だとすれば,確かにずいぶん昔の法律ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。最近やっと現代語に置き換えられたんですが,内容自体は古いままだったんですね。よく読んでいくと,「穴蔵又はし尿だめを掘るには境界線から<span>1メートル以上の距離を保たなければならない」というような,古き良き明治時代の田園地帯にしか当てはまらないような規定もあって,とても現代の社会には当てはまらないというようなものもあったんです。あるいは,法学者の間からも批判があるような規定とか,外国の取引のルールと違っていて国際取引のときに困る規定などもあるといわれていますね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。それで,現代の国際化社会でも使いやすくするように,民法を改正するわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:具体的に,私たちの身近で変わるのはどんなところなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:個人保証を廃止するということと,約款について明確な規定が入るということ,時効の期間が短縮されることなどですかね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:個人保証の廃止といいますと。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:よく,保証人の判子は安易に押してはいけないなどといわれますよね。保証人になってしまうと,債務者の全責任を負わされてしまうので,親戚の保証人になってしまったために破産したなどというケースが多いんです。そのため,個人の保証は廃止することも検討されているようですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:約款の問題といいますと。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:契約書というのは,本人が内容を読んで署名押印をするわけですね。でも,社会には約款というのがあふれています。有名なのは自動車保険に入ったときに,小さな字でごちゃごちゃ書かれた約款を渡されるような場合ですね。この約款は,電車やバスはもちろん,クリーニング屋とか,社会のあらゆる場面で用いられています。この約款で不当な損害賠償を請求されたりしないように,約款についての規定も入れることが検討されていますね。ただ,これには異論もあって,まだ議論の最中です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。いずれにしても,私たちにも関係のある法律なので,しっかり議論していいものを作っていただきたいものですね。本日はありがとうございました。</div>
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2013-02-27T00:00:00+09:00
第83回:騒音で迷惑な隣人
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=193#block111-193
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">最近アパートを借りて住み始めたのですが,隣の部屋の騒音がひどく,参っています。夜中に大きな音でステレオを鳴らしたり,大勢の人たちで集まって麻雀をやっていたりして,隣の声で起きてしまうときもあります。どうすればよいでしょうか?(<span>20代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今日は,アパートの隣の部屋の騒音という問題です。アパートやマンションに住んでいると,こういうご相談者の気持ち,よく分かります。板谷さん,とてもやっかいな問題ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね,隣近所の問題の中でも,隣室の騒音というのは非常に厄介な問題ですね。人によって感じ方も異なる上,一度気になりだすと,気になって仕方ないという事態に陥ることがあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですよね。人によって感じ方が異なるということですので,生活音が全部違法な騒音になるわけではないんですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。法律用語で「受忍限度」といいますが,集合住宅である以上,生活音が一定程度伝わるのはやむを得ないため,ある程度の騒音は辛抱する必要がありますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:受忍限度ですか。そうすると,ささいな足音とか,通常のドアの開け閉めとか,通常のテレビの音とか,そういう生活音程度は我慢しなければならないということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:でも,夜中に大きな音でステレオを鳴らしたり,大勢の人たちで集まって麻雀をやっていたりというのは,生活音とはいえないですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。これらの場合には,受忍限度を超えたものとなることもあるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そういう場合にはどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:まず,大家さん,つまり家主に対して善処を求めることができますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:まず大家さんなのですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。大家は,家賃を請求する代わりに,その部屋を本来の目的に沿って使用できるようにする義務があります。ですから大家は,隣室の騒音がひどい場合には,その騒音をやめさせるように対処する義務があるんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:大家さんは,借りている人同士で解決して,といって放置していてはいけないんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんです。直ちに騒音に対処しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:もし放置して何も対処してくれないという場合にはどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:場合によっては,大家さんに対して損害賠償請求をできる場合もあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなると,大家さんも当事者になって解決に努力をしなければならないんですね。ただ,大家さんに請求するというのはちょっと遠回りな気がするのですが…。直接隣人に請求をしてはいけないんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:もちろん可能です。騒音を出している隣人に対して損害賠償請求をしたり,裁判所から「騒音を出してはならない」という仮処分を出してもらったりするということも可能です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:もし裁判を考えているとすると,証拠が必要ですよね。その場合,どんな証拠があればよいでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これで十分ですよという証拠を挙げるのは難しいですが,騒音が出ている場面を録音・録画しておいたり,騒音計やサウンドレベルメーターで音量を測ったりして証拠を確保しておく必要があるでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:サウンドレベルメーターですか。一般に手に入るのですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,最近は通販でも<span>5000円程度で売っていることもありますね。ただ,いきなり裁判というよりは,まず話し合いをした方がいいと思いますね。隣人は,騒音を出していることすら気づいていない場合もありますから,大家さんを交えて話し合ってみることが必要でしょうね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。ところで,こういう場合,仲介してくれた不動産会社には何か言えないんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:不動産業者に法律上の責任があるといえるかは難しいですね。アパート賃貸の仲介等を行う不動産会社は、「宅地建物取引業法」という法律によって、借りる人にとって重要な事項を説明することが義務付けられています。でも,隣の人が騒音をどの程度たてるのかといったことについては、その受け止め方が人によって異なりますから、必ずしも不動産会社に説明が義務付けられる事項とはいえないでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,たとえば,その部屋は前からそういうトラブルが続いていて,入る人がみんなこのトラブルで出て行ってしまうというようないわく付きの物件だったような場合には,不動産業者の説明義務違反になる場合もあるんですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。不動産会社が隣にうるさい住人がいることをことさら隠していたようなときには、不動産会社の法的責任が認められることもあるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:不動産会社に引越し費用まで請求できますかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:う〜ん,引越し費用が、不動産会社の説明義務違反と因果関係のある損害かどうかに関係しますね。因果関係というのは、「通常生ずべき損害」であるか否かという観点から判断されます。不動産会社の説明が不十分であったときに、必ず引越しが必要かというと、そうはいえないことが多いでしょう。ですから,不動産業者に請求するのはなかなか難しいと思いますね。</div>
<span style="font-size: 12pt"><font size="2">柳田:ありがとうございました。</font></span>
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text/html
2013-01-30T00:00:00+09:00
第82回:反社会的勢力への会社の対応
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=192#block111-192
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は食品会社を経営していますが,本日会社に暴力団風の人が数人入ってきて,「お宅の会社の商品を食べたら腹をこわした。どうしてくれるのか。誠意を見せろ。筋を通せ」などと言ってきました。こういう場合,どうすればよいのでしょうか。(<span>50代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:今日は,危機管理といいますか,反社会的勢力への対応の仕方というようなご相談ですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。長野県にも一昨年の平成<span>23年に,暴力団排除条例という条例ができまして,だいぶ対策は進んできていますが,九州の事件のように,民間人が暴力団の被害に遭うケースは報道されていますね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:怖いですね。さて,会社にこういう方たちが入ってきたという場合,まず受付の人はどうしたらよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:受付の対応としては,まずどういう人たちなのか,相手の氏名をチェックすることが大事ですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:たとえば,名刺をもらうなどでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。名刺をもらったり,面会簿に記入してもらったりして,氏名や連絡先を確認します。そのあと,落ち着いて用件を確認します。自分は被害者の代理人だなどと言ってくる場合もありますので,代理人を名乗っているなら,委任状を示してもらいます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:その後は,何を話せばよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:できれば,応接室へ通すとよいですね。玄関や受付でそのまま話すのではなくて,精神的に優位に立てる自分の会社の応接室等に通します。できれば,防犯カメラや録音機能が付いた応接室が望ましいですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:応接室で,お茶は出したほうがよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いえ,お客様として接待する必要はありませんので,お茶は出さなくて大丈夫です。お茶を出してしまうと長居されることがありますし,投げつけられるなどの危険もあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:さらに受付で気をつけることはありますか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:受付と社内で情報を共有し,警察に通報できるようにしておくとよいですね。窓口対応のぶれが生じないよう,情報を共有して窓口を一本化するとよいですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:何かあったらすぐに警察に通報して事故を未然に防止できるよう,準備をしておくわけですね。その後,応接室での対応はどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:応接室では,対応係が応対しますが,ここで注意すべきなのは,会社のトップは対応しないようにするということです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。こういう場合,会社のトップが責任を持って対応した方外いように思いますが…。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いえ,決裁権があるトップが対応すると,即答を迫られるので,必ず対応の責任者を決めておくべきといわれています。そうすれば,決断を迫られた際にも「それでは,社内で検討させていただきます」「私の一存では決めかねますので」と対応できるんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:こういう人たちは,「なぜ重要な客に対して,会社のトップが出てこないんだ」と文句を言いそうですが,そういうときはどうするんですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:その場合は,「当社の決まりです」「当社の方針です」と答えればよいとおもいます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:それ以外に,対応係で気をつけることはありますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:相手より多くの人数で応対するとよいですね。相手に圧倒されないよう,こちらの人数を増やすといいと思います。また,あらかじめ時間を区切って,ずるずると長引かないようにするとよいです。「恐れ入りますが,何時から会議がありますので,それまでならお話を伺います」と言っておくとよいですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:「誠意を示せ」「筋を通せ」などといわれたら,どうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:何を要求しているのか明確にするように尋ねるべきです。必ず何らかの経済的利益の要求が背後にありますが,金銭と露骨に言うと恐喝になってしまうので,あえて言わないことがおおいです。そこで,「誠意とは具体的にどういうことでしょうか」と聞くとよいですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:要求している内容が理不尽なものであったらどうすればよいですか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:要求が法的に理由のないものであれば,はっきりと拒絶するべきですね。揚げ足を取られないように,はっきりと拒絶します。いろいろ文句を言ってくるかもしれませんが,どんな反応があっても一貫して拒絶することですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:<span> 一筆を書けとか,念書を作れとか言われたりしたらどうすればよいのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:書類の作成,署名押印は絶対にしてはいけません。何に使われるかわかりません。「当社の決まりで,こういう際には文書を作成できない」と言っておけばよい。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。ほかに気をつけることはありますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:応対内容を記録化することですね。その場でメモを取ったり,<span>ICレコーダー等で録音をしておく。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:録音の許可をとる必要はありますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いいえ,不要です。そもそも相手はプライバシーを期待できる行動を取っていませんので,許可無く録音して大丈夫です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:わかりました。こういうことで不安な場合にはどこに相談すればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:もちろん警察に通報しても大丈夫ですが,長野県には,「暴力追放県民センター」略して暴追センターというものが県庁の<span>1階にありますので,そこに相談もできます。電話は026−235−2140です。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:ありがとうございました。</div>
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2013-01-23T00:00:00+09:00
第81回:市道の崖崩れと自然災害
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=191#block111-191
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私の自宅の近所にある市道(市の道路)が記録的な豪雨で崖崩れを起こし,私の自動車を傷つけてしまいました。市に損害賠償を請求したいと思っていますが,可能ですか?(<span>40代 女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今日は市の道路が崩れて自動車が傷ついたというご相談ですが,板谷さん,そもそも,こういう場合に市に損害賠償を請求できるんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:一般的にいえば,可能な場合もあります。国家賠償法という法律がありまして,そこには,「道路,河川その他の公の営造物の設置または管理に瑕疵(かし)があったために他人に損害を生じたときは,国又は公共団体は,これを賠償する責任がある」とされています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ええと,ちょっと難しいんですが,道路とか河川などを「公の営造物」と言うんですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。道路とか河川だけでなく,踏切とか水道とか,官公庁や学校などの公の施設を全て指しますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:瑕疵というのは,たまに出てきますけれども,ちょっと普段使わない漢字で書くんですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。法律用語で瑕疵というのは,欠陥というような意味ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,「営造物の設置または管理の瑕疵」というのはどういう意味なのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:判例では,「その営造物が通常有すべき安全性を欠いている場合」がそれにあたるとされています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:通常有すべき安全性を欠いている場合,というのは,たとえばどういうことでしょうかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:たとえば市の道路の真ん中が大きく陥没しているにもかかわらず,市がそれを放置していたために,そこに自動車が落ちて事故になったなどという場合には,道路が通常有すべき安全性を欠いているため,道路管理に瑕疵があるとされる場合があります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:真ん中が陥没しているのであれば,市もそのような事故を予見することが可能ですものね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。実際は,このような明らかな陥没という問題より,端っこの方に陥没があって,運転手が少し気をつければ避けられたような事案がよく裁判例では公表されています。そういう場合には,道路にも通常有すべき安全性を欠いた面もあるけれど,運転者にも落ち度があるということで,損害の何割かを市に負担させるというような「割合的認定」という手法を用いることが多いです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:交通事故の「過失割合」と似ていますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね,考え方としては同じですね。相手が一般市民か公共団体かという違いですね。いずれにも落ち度があるというような場合に使われる方法ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:それでは,普段は問題がない道路であったにもかかわらず,今回のご相談のように,自然災害のために道路が崩れたような場合には,瑕疵があるといえるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これは難しい問題なんです。市は,雨や風くらいで道路が崩れることがないようにすべきであることは間違いないですが,通常は予想できない災害が起こったときまで道路が崩れないようにする義務があるかといわれると,難しいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:確かに,市に責任を負わせることになると,最終的には納税者がそれを負担することになりますしね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんですね。それで,最近の裁判例では,自然災害が関係している場合にも,先ほどの「割合的認定」という手法を用いて,損害の何割かを公共団体に負担させるというものが多くなっています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回のご相談者のケースは,記録的豪雨の場合ですが,このような場合でもそうなのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:記録的豪雨のように通常予測されない程度の自然災害の場合には,難しい場合もありますね。いろいろな要素を検討した結果,公共団体の責任を否定した裁判例もあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですか。そうすると,一概にはいえないけれども,自然災害による場合には請求が困難な場合もあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ありがとうございました。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt"> </div>
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text/html
2012-12-26T00:00:00+09:00
第80回:マンション建設と景観利益
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=190#block111-190
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">長野市が一望できるという景観が売り物のマンションを買ったのですが,最近,目の前にそのマンションの2番館が建ち,長野市を一望できなくなりました。販売会社に損害賠償を請求できますか?<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">(50代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:さて,暮れも押し迫ってきましたが,今回のご相談は,マンションの眺めが悪くなったというご相談です。以前に,日照権というようなご相談がありましたが,少し似ていますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね,いずれにしても,隣近所の問題であることには変わりないのですが,ちょっと違う問題もあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか,それでは順を追って詳しくお聞きしていきますが,まず,良い景色を見ながら生活する権利というのはあるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:実は,最高裁では,良い眺めを見る権利というところまでは認められていないんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:えっ,そうなんですか。どういうことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:もちろん,良い景色を見ながら生活するということは豊かな生活にとって重要です。そこで,有名な平成18年の最高裁判所の判例,これは,東京・国立市のマンション建設が問題になった事案で,ニュースなどでも大きく取り上げられたものなんですが,その判例でも,「良好な景観を享受する利益」これを景観利益と呼んでいて,この景観利益は法律上保護に値すると述べています。とはいえ,景観利益を超えて「景観権」という権利性までは認められないとされています。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:難しいんですけど,要するに権利とまでは言えないとなると,どうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:たとえば,日照権の場合は,以前にもこのコーナーでもお話ししたとおり,住んでいる人の健康などに直結する問題なので,それを保護するために法律で建築を規制したりしているんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうでしたね。日影(にちえい)規制などでしたよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。そのとおりです。でも,景観はというと,良い景観は重要なんですが,健康や生活に直結するというところまではいかないので,それを直接保護する法律はないんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:まあ,狭い日本に沢山の人が住んでいるのですし,時代も変わっていく以上,景色というのは絶えず変わる可能性がありますもんね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうなんですね。今自分たちが住んでいるところだって,隣近所からすれば,以前は田んぼで見晴らしがよかったのになどといわれることもありますよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そういわれてみると,そうですよね。自分の建物だって,他の家の景色を邪魔している可能性もあるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうなんです。家を建てることで景色が変わるというのは,お互い様の面があります。ですから,建物を建築することが景観利益の違法な侵害となるか否かについては,景観利益の性質と内容,地域環境,侵害の態様,程度,経過等を総合的に考慮して,社会的に容認されるものかを判断しなければならないとされているんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:具体的に言うと,どのように判断されるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: たとえば,そのマンションの建っている地区が,もともと他の建物の建築も予定されていた地区なのであれば,同じ業者が2番館を建てること自体の違法性は低いでしょうね。また,「長野市が一望できる」というのは確かに良い景色ですが,一望できないから直ちに悪い景色になるというわけでもありませんので,客観的な価値がある眺望とまでいえるかは難しいところです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。たとえば,商業地域だったり,ビルが他にも建っている場所だったりすれば,<span>2番館が建っても我慢しなさいとなる可能性があるわけですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:業者に対する損害賠償請求ということでいうと,たとえば買うときに,業者が「長野市が一望できますよ」というのを売りにしていたらどうでしょうか。買った方としては,「長野市が一望できるから買ったのに,同じ業者が目の前にマンションの<span>2番館を建てるなんて」となる可能性もありますよね。 </span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:それは,業者が販売したときのセールストークの内容にもよりますね。長野市を一望できる景観を売り物にしていたとはいえ,マンションを販売する際に景観を特に強調したり,眺望が将来もずっと続くことを保証したりしたわけではないということであれば,販売業者の説明義務違反を認めるのは困難でしょうね。恐らく,通常のマンションの販売であれば,買った際の重要事項説明書をよく読むと,その景色が未来永劫続くことを保証するものではないというような一文があるのではないかと思います。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。そうすると,買う際の業者の説明などもよく聞いておいて,文書も確かめる必要があるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:本日の内容をまとめると,どういうことになりますかね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:要するにまとめますと,景色が変わったということで業者に損害賠償を請求することは不可能とはいえませんが,マンションの眺望の価値や新たなマンション建設の態様,景観を売り物にした際の説明の内容等に照らし,業者に違法性があるかどうかを検討しなければならないということです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:わかりました。どうもありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:良いお年を。</div>
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2012-11-28T00:00:00+09:00
第79回:家賃の減額請求と供託
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=189#block111-189
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,今の借家に<span>20年以上住んでいます。住み始めた頃はバブルの真っ最中で周辺の借家やアパートも高かったのですが,近年は地価が下がり,それに伴って周辺の借家やアパートの賃料も下がっています。それなのに,私の借家だけ20年間家賃が変わりません。そこで,家賃が高すぎるということで大家さんと交渉していますが,値下げに応じてくれません。供託という制度があると聞きましたが,このくらいの賃料が相当と思われる額を供託すればよいのでしょうか?</span><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">(50代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回のご相談は,家賃の減額の交渉についてですね。やはり,この景気を反映して,今は家賃の減額ということが問題になるんですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。家賃が上がり続けていた時代には,家賃の値上げ交渉というものが問題になりましたが,今は減額の交渉という問題が多いですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか。さて,まず,供託という聞き慣れない制度がでてきましたが,これはどんな制度なんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:供託というのは,金銭等を法務局にある供託所に提出する制度なんです。例えば,債務者が約束のお金を払おうとしているのに,債権者が「約束の金額と違う」などといって受取を拒否する場合,とても困りますよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですね,払いたくても払えないですものね。そのまま払わなかったら「約束したのに払っていない」などといわれてしまいますもんね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんです。金額に争いがあったりして,そのまま払わずに放置していると「債務不履行」となって利息が付いてしまったり,契約を解除されたりするんですね。そこで供託所に本来払うべきお金,これを「債務の本旨に従った弁済」といいますが,このお金を供託して払ったことにする,という形で用います。これを「弁済供託」といいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。債権者がお金を受け取ってくれないから,供託所が預かってくれるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:要するに,そういうことですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:債権者は,やっぱり気が変わったから受け取りますといって,供託所からお金を貰うことはできるんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。債権者は,資料を揃えて供託所に出せば,供託所に払渡の請求をすることができます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:さて,今回は,賃料を下げてくれという請求ですが,こんな請求はできるんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:請求は出来ます。借地借家法には家賃の増減請求についての規定があります。その規定では,家賃が,税額や不動産価格の変化その他の経済的事情の変動,近傍の家賃と比較して不相当となったときなどに,家賃の増減を請求できるとされています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:税額や不動産価格の変化その他の経済的事情の変動,周辺の家賃と比較して不相当となったときなんですね。結構,いろいろな要素を考慮するんですね</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:でも,相当な額かどうかというのは,一般の人には判断しにくいと思うのですが…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。相当な額の家賃を判断する方法には,不動産の利回りを基準にする方法や,経済変動の指数にスライドさせる方法,近隣の相場を基準にする方法など,いくつもやり方があるのですが,裁判所は,いずれも合理性があるのでケースバイケースで判断するというスタンスですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。こういう値段を算定してくださるのはどういう職業の方なのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:不動産鑑定士という資格をお持ちの方です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:不動産鑑定士さんという資格はよく耳にしますが,こういう値段の鑑定を行ってくれる仕事なんですね。では,借りている方が,周辺の家賃が下がっているなどと言って家賃の減額を請求しているのに,大家さんが話し合いに応じてくれない場合にはどうすればよいのでしょうか。法務局に,減額した家賃を供託すればいいんですかね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:法律では,減額について当事者間に協議が整わないときは,その請求を受けた者つまり大家は,減額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の家賃の支払を請求できるとされています。相当と認める家賃を請求するのは大家からです。ですから,賃借人は,大家が相当と認める額を払う義務があり,一方的に減額した額を持って行っても本旨に従った弁済とはいえず,供託することはできないんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか!それでは,当事者同士の話し合いが無理であれば,どうすればよいんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:簡易裁判所に調停を申し立てる必要があります。家賃の減額を求める調停を行います。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:調停というのは,離婚などでもよく話題に出る,話し合いの手続ですよね。調停で話し合いがまとまらなければ,どうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:調停でも無理であれば裁判を起こすしかありません。最終的には,裁判所でも鑑定人を依頼して賃料を鑑定し,この額が相当だという額で決定することになります。そうやって決まるまでは,減額を求めている借り主は,家主が相当と認める額を払わなければならないんです。家主が従前の家賃を相当と考えているのであれば,従前の家賃を払う必要があるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうなんですか。なかなか,賃料の値下げ交渉というのは大変なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。借り手としては,「こんなに高いんだったら出ていくぞ」というのを武器にして,粘り強く交渉していくしかないですね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:今日はどうも有り難うございました。</span>
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2012-10-31T00:00:00+09:00
第78回:労災と民事損害賠償
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=188#block111-188
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,会社の環境が劣悪だったため,作業中に事故に遭って後遺障害を負いました。労災から保険金が支給されましたが,会社にも損害賠償を請求できますか?<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">(30代,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回のご相談は,労災についてのご相談です。最近,労災という言葉をニュースでもよく見聞きするようになりましたね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。過労死の問題とか,アスベストで中皮腫になったとか,そういうニュースは毎日のように報道されていますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:実は,労災というのもよく分からないのですが,教えて頂けますか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:労働基準法は,労災補償制度を設けて,労働者が業務上負傷し,疾病にかかり,または死亡した場合には,労働者が労災保険によって補償を受けられるようにしています。これが労災ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:労災保険から下りるんですね。自分が保険をかけているかどうか分からないのですが,給与から天引きされている中に,この保険料も入っているんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,労災保険の保険料は,使用者つまり会社が全額負担することになっています。パートタイマー、アルバイトを含めて労働者を一人でも雇っていれば、業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となり、事業主は労災保険に加入して、労働保険料を納付しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。業務上負傷し,疾病にかかり,または死亡した場合には,労災保険からどんなものが下りるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いろいろありますが,たとえば,療養補償給付というものがあって,これは指定病院等での無料の治療や薬代の支給等が含まれます。また,休業補償給付というものもあって,業務上の負傷等のために働けなかった分の賃金が給付されます。もっとも,働けなかった分の全額ではなくて,給付基礎日額の<span>100分の60が支給されます。それ以外に,後遺障害が残った場合の補償,遺族補償年金,葬祭料,介護補償給付などの補償があります。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:いろいろ下りるんですね。では,事故にあったのは会社の劣悪な環境のせいだということで,労災から保険金を受領した労働者が,会社にも損害賠償請求をすることはできるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これは,場合によりますね。労働契約法では,「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」と規定されており,会社には「安全配慮義務」があります。従って,会社は従業員が安全に働けるように配慮する義務があり,会社がそれを怠って劣悪な環境のままで働かせていたということであれば,具体的な事情によっては安全配慮義務違反として賠償責任を追及できる場合があります。また,会社に落ち度(過失)があれば,会社の「不法行為」にもなります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,労災と会社から二重にもらえることになるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,会社に安全配慮義務違反または不法行為が成立する場合,労災保険からの給付金では足りなかった部分の損害を会社に請求することができます。つまり,会社に請求するときには,労災から下りた額を控除して請求することになります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:たとえば,労災保険からの給付金では足りなかったものとしてどんなものが考えられますか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:慰謝料などは労災保険では給付されませんし,休業損害も<span>6割分しか給付されませんので,残りは会社に請求することになりますね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,会社に対しては,慰謝料とか休業損害とかそういうものをいろいろ計算して,その上で労災から下りた額を引いて請求すればよいわけですね。労災から下りた額は全額引かなければならないんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,労災保険からは「特別支給金」という名前で支給される金額があるのですが,これは,最高裁の判決で損害額から引かなくて良いとなっています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ええと,具体的にいうとどういうことでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:たとえば,休業損害については,労災の給付として<span>60%が支給されますが,さらに特別支給金として20%が支給されます。でも,その20%は考慮しないで,残り40%を請求して良いということです。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,休業損害については<span>120%受け取れることもあるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:どうもありがとうございました。</span>
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2012-10-24T00:00:00+09:00
第77回:改正著作権と動画閲覧
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=187#block111-187
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">先日,動画配信サイトで,好きなバンドのプロモーションビデオを見ていました。恐らく,違法にアップロードされたものだと思います。妻が,「著作権法が変わったから,そういうものを見ていると逮捕されるんじゃないの」と言ってきました。動画を見ているだけで,本当に逮捕されるのでしょうか<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">。(40代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回のご相談は,動画配信サイトにかかわるものですね。<span>.ユーチューブをはじめとして,ニコニコ動画とか,いろいろ私の周囲でも見ている人はいますが,まず,著作権法という話が出て来ましたので,著作権について少し教えて頂けますか。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:音楽や映像を作った人を著作者といいますが,著作者には,簡単に言うと著作物を他人に勝手に利用されない権利があります。これを著作権といいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:一度音楽や映像を作って公表しているわけなので,勝手に利用してもいいじゃないかという人もいると思いますが,著作権というのは何のためにあるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:著作者は,自分の作った音楽や映像を売ることができ,その売上で生活したり,新たな著作物を作ったりします。勝手に他人に利用されてしまうと,新しい著作物を作る意欲が失われ,文化水準の発展に悪影響を及ぼします。そこで,著作者を保護するために著作権法という法律があるのです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。それで,著作者の同意を得ないで動画をアップロードしたりすると,違法になるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:たとえば,<span>CDを買ってきて,自分のスマートフォンで聞くためにパソコンに取り入れるなどということも違法なんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,私的使用のための複製という例外がありまして,個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的として,使用する本人が複製する場合には複製が認められます。ですから,自分や家族が聞くためということであれば大丈夫です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。さて,その著作権法が改正されたということですが…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。平成<span>24年の6月に著作権法が一部改正され,私的使用の目的であっても違法ダウンロードを行った場合には「2年以下の懲役,200万円以下の罰金」の両方を科すことができるようになりました。この改正法は平成24年10月1日から施行されています。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:違法ダウンロード,というのは,具体的に言うとどういうことなんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:有償の著作物,つまり,録音とか録画されたもので,無料ではなく有料で提供されているようなものを,違法にアップロードされたと知りながらダウンロードすることです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,たとえば「無料動画」と書いてあっても,もともとはお金を払わなければ見られないプロモーションビデオなどだったとしたら,違法にアップロードされたものということになるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:違法なダウンロードをすると,すぐに捕まるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:この著作権法の規定は,「親告罪」といって,著作権者からの告訴がなければ起訴できないことになっています。そのため,著作権侵害を受けた人や団体が告訴しない限り,警察は通常動きません。ですから,違法なダウンロードをした人がすぐに逮捕されるわけではありません。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:違法にアップロードされたものかどうかは,どうやったら分かりますか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:日本レコード協会は,エルマークというマークを作っていまして,音楽や映像を適法に配信するサイトのトップページや購入ページに表示するようにしているようです。ですから,このエルマークというものが付いていればマズ安心ですね。もっとも,このエルマークは勝手に使われる可能性もありますので,エルマークが付いているものが全て適法というわけでもありませんし,付いていないから全て違法というわけでも無いんです。ですから,参考程度ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。では,著作権者の同意がなくて違法にアップロードされた動画を見ることは,違法なダウンロードに当たるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:当たると考える人もいるのですが,文化庁の見解では,動画を視聴しただけでは著作権侵害には該当しないとされています。実は,動画を見ている際に,パソコンには「キャッシュ」と呼ばれるデータが一時的に保存されていて,知らないうちにデータが複製されています。しかし,この複製は一時的なもので,著作権侵害には該当しないと言われていますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,動画を見ただけでは逮捕される可能性は低いというわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。でも,そもそも違法にアップロードされたものは,著作権を侵害しているわけですから,逮捕されるか否かに関わりなく,そうしたものは見ない方がよいですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですよね。著作権侵害を助長することになりますもんね。さて,先ほど「文化庁の見解」という言葉が出て来ましたが,文化庁から何か資料がでているんですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,文化庁のホームページに,「違法ダウンロードの刑事罰化についての<span>Q&A」というパンフレットがアップロードされています。そこには,よく聞かれる内容がまとめてありますので,よろしければご覧頂ければと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:わかりました。どうもありがとうございました。</div>
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2012-09-26T00:00:00+09:00
第76回:「住居専用」のマンションに託児所,大丈夫?
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=186#block111-186
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私が住んでいる分譲マンションは,管理組合の規約で住居専用と定められています。この度,近隣のパート主婦のために,自宅で託児所を開こうと思っていますが,大丈夫ですか<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">。(50代,主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:今回は,自宅マンションでの託児所開業ということですが,板谷さん,託児所といっても,自分が所有する部屋で託児所をやるわけですから,なにも心配する必要はないように思うのですが,違うのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:う〜ん,そう簡単にはいかないんですね。通常の一戸建てであれば特に問題はない場合でも,マンションだと制限される場合があるんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:どうしてですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:マンションの場合は,管理組合で規約というものを定めることができます。つまり,マンションというのは<span>1棟の建物を多くの人が区分して所有することになるので,区分所有者全員で管理組合を作って,その中で規約を作ってルールを作ることができるんですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:たとえば,共有廊下の使い方とかそういうことなら分かるんですが,部屋の中のような所有者の専有部分の使い方についても,ルールを作ることができるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。作ることができます。最近は,この規約の中で部屋の使用目的を「住居専用」に限定することが多くなっています。たとえば,「マンションの<span>1階部分の商店以外は,その専有部分をもっぱら住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない」などと記載されています。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。この規約に反したことを行うとどうなるのですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:管理組合から,規約に基づいて使用差し止めや使用禁止等の請求を受ける可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:使用差し止めですか!</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。法律では,区分所有者は,建物の管理又は使用に関して,区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないこととされています。この義務に反した人に対しては,他の区分所有者や管理組合は,使用の差し止め・使用禁止・競売(けいばい)の3つを裁判において請求できるとされています。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:使用差し止め,使用禁止,競売ですか。非常に強力な措置も可能なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。よくニュースになるのは,特定の宗教団体や暴力団の事務所として使われているという場合に,使用禁止を求めて裁判所に提訴した,などという事例ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そういえば,そういうニュースもありましたね。では,マンションの管理規約においてマンションの使用方法が住居専用に限定されている場合に,自宅を託児所に変更することは「区分所有者の共同の利益に反する」ことになるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:これは場合によりますね。住居以外に使用する必要性の程度や他の区分所有者の不利益の程度等が総合考慮されます。裁判例では,規約に反して保育所や託児所,カラオケスタジオ,税理士事務所などに変更して使用していたケースについて,共同の利益に反するとして使用禁止等を認めたものがあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。税理士事務所も駄目なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。税理士事務所については,平成<span>23年11月に東京高等裁判所で裁判がありましたが,その事案は,過去,マンションで空き巣の被害があったことがあり,外部の人が不審物とかゴミを捨てていくという被害にも遭っていたようですね。その税理士事務所は事務員が頻繁に交替するため,暗証番号が多数に知られてオートロックの意味が無くなるとか,確定申告の時期には深夜まで執務していて平穏な住環境を破壊しているというような事情もあったようです。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。そういう事情もいろいろ考慮するんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。ですから,たとえば長い間住居ではなく店舗などとして使用していて,管理組合もそれを放置していたような場合には,共同の利益に反しないとした裁判例もありますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうすると,自宅を託児所に変えると,沢山の子どもたちがマンションを訪れたり,部屋中で飛び跳ねたりしてうるさくなったりして,他の区分所有者からすると迷惑と感じられることもあるでしょうから,なかなか難しいかも知れませんね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。ですから,託児所を開いてから「共同の利益に反する,使用禁止だ」などということになってしまっては大変ですから,開く前に管理組合と十分協議しておく方がよいでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:わかりました。どうもありがとうございました。</div>
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2012-08-29T00:00:00+09:00
第75回:不貞した側からの離婚請求(有責配偶者からの離婚請求)
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=185#block111-185
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は数年前から妻と別居しています。私と妻との間には<span>16歳になる子がおり,現在は妻と一緒に暮らしています。実は,別居の原因は私にあり,不貞をしてしまったのです。現在私はその不貞相手と一緒に暮らしており,子どももいます。不貞した私から妻に対して離婚の請求ができますか。(50代男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:今回は不貞と離婚の問題です。女性側から見ると,不貞相手と一緒になりたいから離婚なんて,あまりよろしくない話というか,なんて身勝手な,という話ですが。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:まあ,男性側からみてもそうなんですけどもね。最近はこういう不貞の問題が多くなってきていますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。世の中の風潮がそういう風になってきているんですかね。さて,まず離婚の請求ができるかどうかというご相談ですが,離婚と言っても,必ず裁判をしなければならないというわけではないですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。離婚には幾つかの種類がありますが,協議で離婚が成立しない場合には,家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。調停は話し合いの手続ですので,話し合いがまとまらなければ,裁判で離婚を請求する必要があります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。では,ご相談者の場合には,相手に離婚してくれと伝えて,嫌だと言われたら,まず調停の申立をする必要があるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。調停前置といって,原則として裁判の前には調停をしなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:それでは,調停でも相手が離婚に応じてくれない場合には,裁判をするわけですが,今回のようなケースでは,裁判で離婚が認められるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:裁判で離婚するためには,民法の離婚事由に該当しなければなりません。法律上はいくつかの事由がありますが,多く利用されるのは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚事由です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:「婚姻を継続し難い重大な事由」って,難しい言い回しですが,要するにどういうことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:これは,色々な要素から「婚姻関係の破綻」がある場合に離婚を認めるというものです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:「婚姻関係の破綻」がある場合,というのもちょっと難しいですが,要するにどういう事でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:要するに,今後,円満な夫婦生活をすることが期待できないということですね。婚姻中の態度,婚姻継続の意思の有無,子どもの有無,子どもの状態,夫婦双方の年齢,健康状態,性格,資産等も含めて,これまでの関係全部をひっくるめて判断します。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:でも,離婚と言うからには,片方は「もう別れたい」と主張するわけですよね。裁判官が「いやいや,まだやり直しなさい」ということなんてあるのですか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:最近は,片方が別れたいと言っている以上,よりを戻すのはほぼ不可能なので,なるべく裁判所はやり直しなさいとは言わない方がいいという意見もあるのですが,やはり別居期間が短かったり,一方的に離婚を突きつけたりというような,離婚を認めるには不公平な事情があると,「まだ婚姻関係は破綻していない」といって離婚請求を認めないケースもありますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。では,不貞した側が,既に婚姻関係は破綻しているということで離婚請求をすることは認められるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:これが昔から大問題でして,「有責配偶者からの離婚請求」といわれます。実は,この件に関しては,昭和62年に最高裁判所の判決が出て,今ではほぼそれを踏襲した判断をしています。この昭和62年判決は3つの条件を挙げて,この3つを全部クリアしないと,有責配偶者からの離婚請求は認めないとしました。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:どういう条件でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:まず1つめに,別居期間が相当長期間であること。2つめに,夫婦間に未成熟の子がいないこと。3番目に,相手方が離婚により過酷な状態に置かれるというような社会正義に反する事情のないこと,という3点です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:ではまず1つめの,「別居期間が相当長期間」というのは,具体的にはどの程度なんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:事案にもよりますし,婚姻期間との比較でも判断されますので,このくらいの期間があれば大丈夫というわけにはいきませんが,裁判例では,6年から8年程度で認められたものが多くありますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:5年くらいの別居だと微妙ということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね,微妙ですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では2つめの「夫婦間に未成熟の子がいないこと」というのはどういういみでしょうか。未成年の子がいるとダメということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:一般に未成熟の子というのは未成年を指すことが多いのですが,ここで最高裁判所の言っている未成熟の子というのは,必ずしも「未成年の子」という意味ではないようです。事案によっては,高校生の子がいても離婚を認めた裁判例もあれば,逆に成人していても重度の障害を負っている子がいる場合に離婚を認めなかったものもあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。なかなか,判断が微妙ですね。3番目の「相手方が離婚により過酷な状態に置かれるというような社会正義に反する事情のないこと」というのはどういうことでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:要するに,困っている配偶者を見捨てて離婚するなどということは正義の観点から許さないということですね。双方の生活状況や生活費の支払の有無,離婚の際にどの程度金銭を支払うつもりであるかにもよっても異なりますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。そうすると,さきほどの3つの条件をクリアしないと,有責配偶者からの離婚の請求はできないんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:それが必ずしもそうではないんです。裁判所は,確かに有責配偶者からの請求という面もあるものの,状況からすると婚姻関係を継続するのは難しいというような場合には,和解により離婚することを勧める場合も多くあります。ですから,事情によっては,離婚請求をしてみるのが良い場合もあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか。そうすると<span>.裁判で離婚請求が認められない可能性もありますが,このような状態が続くのが望ましくないのであれば,ともかく離婚請求をしてみるとよいということですね。ありがとうございました。</span></div>
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2012-08-22T00:00:00+09:00
第74回:夫死亡後の夫の親族との関係
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=184#block111-184
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">先日,私の主人が亡くなりました。私はしゅうとめである義母と折り合いが悪くて,いろいろ意地悪をされたため,別居していました。主人には財産があったので,相続放棄はしていません。主人の死後,義理の姉から,今後義母の世話は長男の嫁である私がするよう言われました。主人亡き今,意地悪な義母とはこれ以上接したくありません。私には義母の世話をする義務があるのでしょうか<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">。(50代,主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回は,ご主人亡き後の嫁と姑の問題というような感じですが,板谷さん,まず,ご主人が亡くなったということは置いておいて,義理の母親と自分との関係というのは,どういう関係になるんでしょうか。親戚ということでよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。正式には「親族」ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:嫁と姑は親族なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。親族というと,通常は血のつながった「血族」を想像すると思いますが,結婚すると,配偶者の父母や兄弟などとの間に「姻族」(いんぞく)と呼ばれる関係ができます。「姻族」とは,配偶者の血族のことです。つまり,血のつながりがなくても,婚姻によって法律上の「親族」となるんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:姻族というんですね。姻族という親族になると,どうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:親族間で「扶養義務」を負うことになります。これが親族の大きな効果です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:扶養義務ですか。最近,生活保護の問題などでも耳にする言葉ですね。親族だと扶養義務が負わされるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:親族といってもいろいろと段階がありまして,まず,夫婦,直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養義務を負います。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:夫婦,直系血族,兄弟姉妹ですか。夫婦というのは分かりますが,直系血族というと,たとえば親と子ということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。直系,つまり縦の関係ですので,親と子の縦の関係は直系血族ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。さて,夫婦,直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養義務を負うということですが,それ以外の親族の場合はどうなんでしょう。たとえば,先程の姻族というのは,この中に入っていませんよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。これ以外の親族については,特別の事情がある場合には,家庭裁判所の審判で3親等内の親族にも扶養義務を負わせることができる,という規定になっています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:3親等内の親族,ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。よく「3頭身」とおっしゃる方がおられるのですが,3頭身ではなくて3親等ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:親等というのは,どうやって数えるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:自分から見て,両親は1親等です。祖父母は2親等ですね。叔父,叔母になると,一度2親等の祖父母に行ってそこからおりてきますので,3親等ですね。いとこは更にその下なので4親等になります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。そうすると,3親等内の親族ということは,姻族も含めて,叔父叔母,甥,姪まで含むということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。ただ,3親等内の親族に対しては,特別の事情がある場合に限り,裁判所の判断で扶養義務を負わせることがあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,当然に扶養義務があるというわけでもないんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:仮に扶養義務があるという場合,自分が生活に困っていても親族に生活費を渡さなければならなくなるんですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いいえ,必ずしもそうではありません。扶養義務には2種類あり,自分の生活を削ってでも扶養すべき義務と,自分が相応な生活をして,その中から余ったもので扶養すればよい義務があるんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:あ,そうなんですか。その2つは,どういう風に分けるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:夫婦間や,親が未成年の子に対する扶養の場合は,最初の「自分の生活を削ってでも扶養すべき義務」になります。「一杯のおかゆでも分け合わなければならない」などと表現されることがあります。その他の親族間の場合は,自分の相応な生活の中から余ったもので扶養すればよいということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,ここまでをまとめると,嫁と姑というのは,姻族なので,特別の事情がある場合に家庭裁判所から扶養義務を負わされることがあるということと,その場合でも自分の生活の中から余ったもので扶養すればよいということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:では,そのような扶養義務を負うことがある姻族の関係というのは,ご主人と離婚したりご主人が亡くなったりしても続くのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これが結構知られていないのですが,結婚によって親族となった姻族関係というのは,離婚すると自動的に消滅します。しかし,配偶者が亡くなったときは,自動的には消滅しないんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:離婚と死亡とで違うんですね!では,配偶者が亡くなった後に姻族関係を終了させたい場合にはどうすればよいのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:役所に「姻族関係終了届」を提出すれば大丈夫です。配偶者の血族との親族関係は終了し,扶養義務もなくなります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:姻族関係終了届というのがあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:これは,提出期限などはあるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いいえ,終了届は配偶者の死亡届が受理された後であれば、いつでも提出できます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回のご相談者は,相続放棄をしていないようですが,そのような場合でも姻族関係終了届を出せるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。これは相続とは関係ありませんので,相続放棄の有無にかかわらず姻族関係終了は可能です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:わかりました。そうすると,今回のご相談者の場合は,<span>.親族としての扶養義務を負うことがあるけれども,役所に「姻族関係終了届」を提出すれば,親族の扶養義務はなくなるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:ありがとうございました。</span>
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2012-07-25T00:00:00+09:00
第73回:いじめ問題
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=183#block111-183
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私には中学生の子がいるのですが,どうやら学校でいじめに遭っているようです。先日,学校で教材を買うからといって2万円を持って行ってしまったり,学校から帰ってきたときに制服があちこちよごれており,顔や目が腫れていたりします。私はどうしたらよいのでしょう。(40代,主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:今回は,いじめについての切実な問題です。大津市のいじめの事件は毎日のように報道されているところですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: 本当に,ニュースになっている件は,残念なケースですよね。マスコミで大きく取り上げられたからどんどん真相が明るみになってきているというのが悲しいですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:本当に,いろいろな問題が絡んでいる事件でしたね。さて,いじめがあるのではないかと気づいたときに,法律的な面でいうと,どういうことをすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: いじめに気づいたら,まずは事実関係を確かめることが必要だと思いますね。ただ,お子さんは追いつめられていることも考えられますから,そのことをお子さんに聞いて確かめるときも,慎重に,上手にやらなければなりません。そのことでお子さんのことを叱ったり,感情的になって大騒ぎしたりするのではなく,あくまでも冷静に,子供のことを助けたい,子供の力になりたい,という姿勢で対処することが必要ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:本当に,親としては難しいですよね。報復を恐れて,本当のことをしゃべってくれない子どももいると思います。さて,いろいろと聴き取ったら,どうやら本当にいじめられているということが分かった場合,どうすればよいでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:やはり,まず学校と連携して実態を調査して解決にあたることが重要だと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:その学校自体が,この前の事件のように対応してくれない場合もありますよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。残念ながら教師自身がいじめに気付いていなかったり,気づいていても放置していたりする場合もありますから,連携はたやすいことではありませんが,現場にいる教師にいじめの事実を知らせ,親と連携して解決に導く努力は,まずすべきだと思います。もちろん,必ずしもそれですぐにいじめが止むわけではありませんが,解決のためには必要なことです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: なるほど。それ以外に,法律上はどんな手段が取れるのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: そうですね,法的な手段としては,1つめに刑事上の手続,2つめに民事上の手続,があり,それ以外にも,<span>3番目に弁護士会への人権救済の申し立てなどという手段もあります。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: ではまず,1つめの刑事上の手続とはどんなことですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: たとえばお子さんが,クラスメートからお金を要求されたり,暴力をふるわれて怪我をさせられたりしているという場合であれば,刑法上恐喝罪や暴行罪,傷害罪などが成立する可能性があります。もっとも,刑法上の責任能力は14歳ですから,中学生といっても,たとえば加害者が13歳の場合は責任能力がなく,犯罪とはなりません。その代わり,警察から児童相談所へ通告がなされ,家庭裁判所で審判がされることになります。加害者が14歳になっていれば,犯罪が成立しますが,やはり未成年なので,家庭裁判所に送致され,鑑別所での調査を経て家庭裁判所で少年審判がなされる可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt"> いずれにしても,警察へ通報したり,被害届を出したり,刑事告訴をしたりすることが可能です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:こういう刑事上の手続をとる場合に気をつけることはありますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:警察は,すぐに被害届や告訴状を受理してくれないケースもあります。その場合には,診断書や具体的な証拠などを添えて,強く警察に要求する必要がありますね。また,事実関係をよく調査して,時間の流れで整理したメモを作成しておくとよいと思います。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: では次に,2つめの民事上の手続とはどんなものですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: たとえばお子さんがお金を取られていたり,怪我をしたりしていた場合,加害者に対して損害賠償請求ができる可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:でも,加害者も中学生という場合,損害賠償請求はできるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい。民事上加害者が責任を負うときというのは,民法上の「責任能力」がある場合とされており,12歳から13歳くらいで認められることが多いです。中学生であれば,通常責任能力があるでしょうね。そのように加害者が責任能力ありといえる場合には,実費として,実際にとられたお金や治療費を請求できるほか,慰謝料も請求できます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: でも,中学生くらいですと,アルバイトもしていませんので,お金などありませんよね。代わって親に支払ってもらうことはできますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: 親が代わって支払う義務があるかどうかは,場合によります。たとえば親に監督上の不注意があって,それが原因で子供が犯罪をしたような場合には,親の責任として請求できます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: 学校にも請求できますか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:学校がいじめを放置していたような場合には,公立学校と私立学校で理屈が異なりますが,運営する市とか学校法人などに対して請求できることもあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: なるほど。では最後に,<span>3番目の弁護士会への人権救済の申し立てというのも簡単に教えて下さい。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷: 弁護士会には,「子どもの権利委員会」というものがあって,こういう問題の相談を受け付けていまして,場合によっては弁護士会に人権救済の申し立てというものをすることがあります。事案によっては,弁護士会の会長名で,学校などに,「警告」や「勧告」や「要望」というものを出すことがあります。これはマスコミに報道されたりすると,かなりの効果が出ることもあります。ですから,とりあえず弁護士会(<span>026-232-2104)に相談してみてください。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田: ありがとうございました。本当に,いじめのない社会にしたいですね。</div>
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2012-06-27T00:00:00+09:00
第72回:弁護士費用を相手に請求できるか?
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=182#block111-182
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私は,友人に100万円を貸したのですが,返済日になっても「ちょっと待ってくれ」とか「あれは借りたのではなくてもらったのだ」などと言って返してくれません。100万円を貸したときの借用証もきちんと取ってあります。弁護士を依頼して</span>裁判を起こす場合,私が弁護士に支払った着手金などの費用は相手に請求できますか?<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">(40代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:今回は,弁護士費用の問題ということなんですが,板谷さん,このご相談,私も興味があります。弁護士さんに払う費用って,相手に請求できますよね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:いいえ,残念ながら,ご相談者の場合は請求できませんねえ。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:ええ〜っ!ちょっと意外ですね。では詳しく教えて頂けますか。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:それではまず,弁護士費用一般からご説明しますかね。弁護士費用には,大きく分けて着手金,報酬,実費があります。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:ただの手数料というわけではなくて,いろいろ種類があるんですね。では,着手金とは何でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:着手金というのは,事件に着手する際の費用のことです。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:勝ち負けには関係なく支払うものなんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:はい,そうですね。いわばファイトマネーで,この着手金を頂いてから初めて着手することになります。もちろん,一括払いは難しい場合もありますので,事務所によっては分割払いを可能にしたりするところもありますね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:なるほど〜。とりあえず弁護士さんを依頼するためにはお金が必要ということなんですね。着手金の額というのは,何によって決まるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:いろいろな算定方法があって,事務所によって基準が違うのですが,通常は得られる経済的利益の額によって変わってきますね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:次に報酬というのはなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:報酬とは成功報酬のことで,事件終了時に成功した度合に応じて請求されるものですね。これも,得られた経済的利益によって決めることが多いです。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうすると,裁判をやったけれども相手から回収できなかったという場合には,結果的に経済的利益はなかったので,報酬はゼロということですか。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:まあ,残念ながらそういうことですね。お引き受けした弁護士としても,できる限りそういうことがないよう頑張るということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そりゃ弁護士さんの報酬にも関わるわけですもんね。頑張っていただかないと。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:最後に,実費というのは何でしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:実費というのは,裁判を起こすときの印紙代や切手代や送料,旅費などが含まれます。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:わかりました。さて,ご相談の件ですが,貸したお金を返してくれないということで裁判をする場合,弁護士さんに払った着手金や実費は相手に請求できないんですか?相手がきちんと返してくれれば弁護士に依頼する必要もなかったのですから,相手に請求できないとおかしいですよね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:お気持ちはよく分かるんですが,民法によれば,金銭の支払が遅れた場合には遅延損害金(利息)を請求することができることになっています。その反面,利息以上の損害が生じていることを立証しても,その賠償は請求できないんです。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうなんですか…。でも,負けた方に費用を請求できると聞いたことがあるんですが…。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:はい,裁判で負けた側には,「訴訟費用」を負担する義務があります。判決では,「訴訟費用は被告の負担とする」などといわれる場合がありますね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:それです,それです。訴訟費用ということで相手に弁護士費用を請求できるのではないのですか?</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:実は,この「訴訟費用」というのは弁護士費用のことではなく,裁判所へ支払う印紙代や証人の呼出費用などのことをいうんです。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうなんですか!そうすると,先ほどの「実費」の中の,しかもごく一部についてのみ相手に請求できるということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうすると,ご相談者のケースは貸したお金でしたけど,たとえば交通事故を起こされて慰謝料を請求したいという場合も,相手には弁護士の費用は請求できないんですね?</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:いえ,貸したお金を返せとか,売買代金を払えとかいう請求は,「債務不履行」というケースにあたります。この場合は,弁護士費用は相手に請求できません。でも,債務不履行のケースとは違って,交通事故や慰謝料などは「不法行為による損害賠償」というケースで,この場合には,弁護士費用の請求が認められることがあります。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうなんですか。請求の内容によって違うんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:不法行為による損害賠償の場合には,弁護士費用の全額を請求できるんですか?</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:いえ,通常,判決で認められた額の<span>1割程度が弁護士費用として認められる傾向がありますね。ですから,裁判所も弁護士費用の全部について損害を認めるわけではないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:そうなんですか…。そうすると,債務不履行なのか,不法行為による損害賠償なのかによって違うということですから,法律に詳しくない人は分からないですね。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">板谷:そうですね。ですから,これを相手に請求できるかどうかということを弁護士に相談してみるといいと思いますね。実は,安全配慮義務違反に基づく損害賠償というものがありまして,債務不履行だけれども不法行為による損害賠償に近いものなので,相手に弁護士費用を請求できるとされたものもあります。ですから,相手に請求できるかどうかということは,微妙な場合もあるんです。</div>
<div style="text-indent: -34.95pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.95pt">柳田:分かりました。とりあえず弁護士さんに相談した方がいいということですね。ありがとうございました。</div>
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2012-05-30T00:00:00+09:00
第71回:債権の仮差押
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=181#block111-181
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,ある内容で知人に対して裁判を起こして損害賠償請求をしようと思っています。しかし,その人は無職でギャンブル好きで,裁判の結果が出るまでにお金を使ってしまう可能性があります。近所の銀行に預金口座があることは分かっているのですが,できる限り確実に回収するにはどうすればよいでしょうか。</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:今回は,損害賠償請求を確実に行うための方法,ということですね。板谷さん,裁判をしても,回収できないことというのがあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:もちろん,あります。日本の制度は,お金を持っていない人からは回収できないという制度です。ですから,勝訴判決を得たとしても,その人がお金を全部使ってしまってスッカラカンになっていたり,財産を隠されてしまっていたりすれば,結局回収できないということはよくあります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうなんですか。私たちからすると,裁判までやったのだから大丈夫だろうと思うのですが,正直なところ,裁判と言っても結局あまり効果がないんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:効果がないということはないと思いますが,確かに,国家権力である司法権を使って判決を出してもらったのに,バンザイをされて開き直られてしまうと,効き目はないということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうすると,相手がお金を持っていることが分かっている間に,なんとかしなければならないということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね。ただ,裁判で相手が争うと,結果が出るまでには半年から<span>1年くらいの期間を要します。ですから,その間に相手が財産を隠したり,どこかに行ってしまったりすると,せっかく勝訴判決を得ても空振りになってしまうんですね。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:さて,そういう場合に,今は相手の口座がある程度わかっているので,空振りになる前に何とかしたいというときに,どんなことができるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:「仮差押」(かりさしおさえ)という裁判所の手続を使うことができます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:仮差押ですか。仮の差し押さえなんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。本来,相手方の財産に対して「差し押さえ」などをするためには,裁判での勝訴判決など,これを「債務名義」といいますが,そういった強制力のあるものを取得しなければなりません。でも,そういう時間のかかる裁判の前に相手の財産を保全するために「民事保全」という手続きがあります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:民事保全ですか。裁判よりも,ますます耳にしない言葉ですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですよね。私たちの受けてきた司法試験でも受験科目にありませんでしたので,私たちも司法試験に合格してから,研修所に入って初めて民事保全というものを勉強するんです。弁護士の実務に就くと,結構民事保全を使うことは多くありますね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうなんですか。民事保全の手続きというのはどういうものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:大きく分けて,仮差押と仮処分とがあります。金銭支払いを目的とする債権を保全するのは「仮差押」で,仮処分というのはそれ以外の様々なことを申し立てることができます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうですか。今日のご相談は,貸したお金を返せということですから,ええと,仮差押えの方になるんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:仮差押えというのは,どんなものを差し押さえられるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:動産,不動産のほか,預金や給料,敷金,保証金,自動車等,様々な財産を対象にすることができます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうなんですか。裁判の前にそんなこともできてしまうんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:でも,ちょっと心配なのが費用なんですが…。いくらくらいかかるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:仮差押を弁護士に依頼するためには,弁護士費用が必要となります。特に,仮差押は緊急性があり,他の仕事を棚上げにして取り組まなければなりませんので,弁護士にとっては結構大変なんですね。申立の書類も,裁判の申立に近いものを準備しなければなりませんから,弁護士費用は裁判をする際の<span>3分の2くらいかかると思った方がいいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうすると,やはり数十万かかるということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:まあそうですね。注意しなければいけないのは,その弁護士費用以外に,裁判所へ「担保金」を納付しなければならないということなんです。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:担保金ですか。なぜでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:これは,本来は勝訴判決を得てから執行しなければならないものを,裁判の前に行うため,相手が不当な損害を被ることがあるからです。仮にであっても,差し押さえてしまうわけですので,相手方に対しては決定的な打撃となって,裁判で敗訴したのと同じ立場に追い込むことがあります。あとから,「あれは間違いでした」となったときに,相手の損害額を填補するように,担保金を積んでおくんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうなんですか。担保金ってどのくらい必要なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:担保額は,裁判所にもよりますが,目的となる価額の1割から3割を覚悟しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうすると,たとえば<span>3割だとすると,300万円のものを差し押さえるためには90万くらい担保を積まないといけない場合があるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そういうことですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:その担保は戻ってくるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい担保はその後の本裁判で勝訴判決が確定した得た場合とか,相手の同意を得た場合などの一定の場合には戻ってきます。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:そうすると,相手の財産をおさえるために仮差押えという方法があるけれども,結構費用もかかるということですね。ありがとうございました。</span>
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2012-05-23T00:00:00+09:00
第70回:別居中の子との面会交流(面接交渉)
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=180#block111-180
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私は,半年前から妻と別居しています。理由は分からないのですが,半年前に妻が長男を連れて実家に帰ってしまい,それ以来帰ってこないのです。もちろん,暴力も不貞もありません。特に心配なのが3歳になる長男で,長男に会いたいと連絡しても,一切会わせてもらえません。どうすればよいのでしょうか。また,今のところ養育費は妻の口座に支払っていますが,長男に会わせてくれるまでは支払を止めようと思いますが,大丈夫でしょうか。(30代,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:今回は,別居中のお子さんとの面会に関するご相談です。半年間もご長男と会えないというのは,確かにちょっと心配ですよね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね。ご相談者の場合,まだ離婚をしているわけではありませんが,かといって子どもにとってはたった一人のお父さんなわけですから,長い期間会えないというのはかわいそうですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:子どもは片方の「所有物」ではないですものね。こういう場合,父親としてはどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:家庭裁判所に面会交流を求める調停または審判を申し立てるとよいと思います。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:面会交流を求める調停または審判ですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。親が子どもと会うことを面会交流または面接交渉といいます。子どもの健全な成長のために,両親が子どもと面会交流を行うことが重要です。そこで,別居中に子どもと面会交流をするために,家庭裁判所に申立をすることができます。正式には「子の監護に関する処分(面会交流)を求める申し立て」といいます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:「監護」というのは,私たちがいつも看護師という言葉で使っている看護ではなく,監督の「監」の字に,護るという字の「護」と書いて監護なんですね。「子の監護に関する処分(面会交流)を求める申し立て」なんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。本来,面会交流の方法などについては,父母で話し合って決めるべきですが,別居中は双方のプライドや不信感もあって話合いがまとまらない場合が多くあります。そこで,家庭裁判所に調停や審判の申し立てをして,面会交流の取り決めをすることを求めることができます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:調停の申立というのは,弁護士さんに頼まなくても自分でできるのですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。申立書のひな形が家庭裁判所の窓口にあります。書き方は,ある程度家庭裁判所の書記官さんが窓口で教えてくれます。あとは,印紙<span>1200円とか,切手とか戸籍謄本とかを準備する必要がありますね。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:調停というのは,どんなことをするのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:裁判所の調停委員が<span>2人いて,その調停委員と交互に面接して,調停委員を介して話し合いをすることになります。また,面会交流は,あくまで子どもの健全な成長のために行われますので,調停手続には専門の「家裁調査官」が同席して調査をすることが多くあります。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:調査官というのは,どういうことを調査するのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:子どもの年齢,性別,性格,生育歴や生活環境などを総合的に考えて,試しに裁判所で面会交流を行ったり,子どもの意向を聞き取ったりします。その結果,面会できるかどうかや,頻度などについて調査官が意見書を出したりします。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうやって,裁判所の専門的なアドバイスも受けながら話し合いが進められるわけですね。調停で話合いがまとまらなかった場合はどうなるのですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:調停で合意できなかった場合は,調停不成立となり,自動的に審判手続が開始されます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:審判というのは,野球の「審判」と同じ字を書くわけですけど,どういうものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:審判というのは判決のようなもので,裁判官が家事審判官となって,一切の事情を考慮して判断を下すことになります。たとえば,母親は父親に<span>1か月2回面会させよ,というようなことを命じることになります。</span></div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:さきほど,板谷さんは「面会交流を求める調停または審判を申し立てるとよい」と言っていましたが,調停ではなく,いきなり審判の申し立てもできるということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。できますが,通常は調停に付されて,話し合いの手続から始まります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:ところで,先ほどのご相談の中で,相手が面会をさせてくれないなら養育費も払わない,とありましたが,これはどうなのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:まだ離婚しているわけではありませんので,正確には養育費というより,奥様の生活費も含めた「婚姻費用」の支払といいます。婚姻費用は,配偶者と子どもの生活のために支払うもので,面会交流とはまた別の問題です。交換条件にするようなものではありませんから,面会させてくれないから支払わないということはよくないですね。そういうことをすると,ますます相手が不信感を募らせて,今後の話し合いも難しくなることがありますし,子どもの生活もかかっているわけですから,婚姻費用はきちんと払っておいた方がいいと思います。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:分かりました。男性側からすると,「勝手に出ていったのになんで払わなければならないのか」と思われるのかもしれませんが,家族のことを本当に思っているなら,婚姻費用はきちんと払った方がいいということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。そういうことですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:どうもありがとうございました。</div>
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2012-04-25T00:00:00+09:00
第69回:高齢者への経済的虐待
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=179#block111-179
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,信州にお嫁に来て3<span>0年近くになります。私の実家には,兄夫婦と高齢の母親が住んでいます。最近,母の認知症が進んできたようなのですが,兄は,母の年金や預貯金を勝手に引き出して高級外車などを買っているようです。私が問いただしても「嫁に出たおめーは関係ない」などといわれて,最近は母に会わせてもくれなくなりました。このままだと母の財産がなくなってしまいます。対処の方法はありますか(52歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:今回は,実家のお兄さん夫婦が,高齢で認知症のお母さんの財産を勝手に使っているようだというご相談です。親御さんが亡くなってからも死亡届をしないで,年金をだまし取っていたというニュースが相次いだ時期もありますが,板谷さん,やはり高齢者をめぐる財産の問題は多いんですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね,特に認知症になると,ご親族による介護などの養護が必要になりますが,そうすると,生活のために預金を下ろしたりしなければならないときもあるわけで,どうしても自由に預金を下ろして使ってしまいたいという誘惑があるわけですよね。外部のご親族から見ていると,認知症の老人の財産を勝手に使っているのではないか,という疑いをかけられることもありますね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:なるほど。さて,こういう場合はどうすればいいんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:市町村の地域包括支援センターに相談し,市町村による調査をしてもらったり,成年後見の申立をしてもらったりすることが考えられます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:市町村の地域包括支援センターですね。では,ちょっと具体的にお聞きしていきますが,今回のお兄さん夫婦のように,高齢者のお母さんの預貯金を勝手に使うことは,もちろんいけないことなんですよね?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:もちろん,いけません。このケースは,お母様の世話をしているお兄様ご夫婦による「経済的虐待」にあたる可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:経済的虐待ですか!このような場合も「虐待」っていうんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。虐待と呼ぶと意外に思われるかもしれませんが,高齢者虐待防止法という法律では,「養護者又は高齢者の親族が当該高齢者の財産を不当に処分することその他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること」を高齢者虐待の一つに定義しているんです。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:なるほど。お母様が認知症になって判断能力が不十分になったからといって,身近な親族が財産を勝手に使ってよいはずがないですものね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね。お母様の財産は,介護や生活といったお母様の幸福のために使うべきです。それで,このように財産を持っている人の判断能力が不十分になった場合に,誰かが勝手に財産を処分できないようにするため,家庭裁判所の成年後見制度があります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:成年後見制度ですか。以前にもこのコーナーで扱われましたが,何種類かあるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうですね,ご高齢者の判断能力に応じて,後見,保佐,補助という制度があって,それぞれ少しずつ異なります。後見になると,高齢者は原則として単独で財産を処分できなくなって,不当な財産処分は後見人が後から取り消して取り戻すこともできるようになります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:でも,今回のように,「お嫁に行ったおまえには関係ない」といわれて,ほかの親族が近寄れない状態になることがありますよね</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:そうなんです。経済的虐待が行われるケースでは,養護者が他の親族を寄せ付けないようにしたりすることがあって,一緒に住んでいるわけではない親族が成年後見の申立を行うのは難しい場合がありますね。そこで法律では,市町村に高齢者の虐待への対応を行う役割を与えており,地域包括支援センターを通じて,相談,指導,助言を与えたり,調査を行ったりすることができます。市町村が成年後見の申立を行い,専門家に後見人になってもらうことも可能です。一度相談してみてください。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:市町村も成年後見の申し立てができるんですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:できます。こういう場合は弁護士などが後見人になる場合が多いですね。こういう専門職の人が後見人になって,裁判所の監督下で財産の不当な処分がなされていないかチェックして,もし不当な処分がなされていれば,返還請求をしたりすることができます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:わかりました。ところで,こういう高齢者の問題についての相談窓口はないのですか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:長野県弁護士会には,「ひまわり長野」という高齢者・障がい者関係の相談窓口があります。高齢者なんでも無料電話相談といって,弁護士が,高齢者の方が抱える法律問題について,お電話で法律的な相談をお受けしております。受付・相談時間は,毎週木曜日の午後1時30分から午後4時30分の間となっております。無料電話も受け付けています。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:無料電話相談があるんですね。番号を教えてください。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい,フリーダイヤル0120−65−9674(ろうご くろうなし)です。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:受付・相談時間は,毎週木曜日の午後1時30分から午後4時30分ですね。ありがとうございました。 </span>
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2012-03-28T00:00:00+09:00
第68回:告訴手続
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=178#block111-178
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は先日,犯罪の被害に遭いました。犯人を処罰してもらい,損害賠償を請求したいと思っていますが,どうすればよいでしょうか。</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:今回は,犯罪被害についてのご相談です。まず,犯罪の被害に遭った場合,犯人を処罰してもらいたいと考えたときはどうすればよいのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:告訴状を捜査機関に提出することになりますね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:告訴状って,たまに耳にしますが,被害届というものもありますよね。どこが違うのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:被害届は単なる被害の申告で,犯人の処罰を求める意思表示は含まれないんです。それに対して告訴は,犯罪被害の事実の申告のみならず,犯人処罰を求めるものです。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:告発,という言葉もありますけど,告訴と告発は違うものなんですか?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:両方とも犯人の処罰を求めるものなんですが,告発は犯罪被害者やその親族だけでなく,誰でもできるものであるという点が大きく違います。また,親告罪というんですが,犯罪によっては被害者からの告訴がなければ起訴できないものもあります。その場合,告発だけではだめだという違いがあります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:親告罪というのは,親という字に,告げるという字で親告罪と書くんですね。たとえば,被害者からの告訴がなければ起訴できない犯罪というものにはどんなものがあるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:たくさんありますが,たとえば,強制わいせつ罪とか,ニュースなどでは婦女暴行罪といわれることがありますが,強姦罪,誘拐罪,名誉毀損罪などがありますね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:なるほど。被害者の意向が重要な犯罪ばかりですね。さて,告訴状を捜査機関に提出するということですが,必ず書面でなければならないのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:法律上は口頭でもできますが,通常は告訴状を提出します。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:告訴状には何を書く必要がありますか?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷: 告訴人の住所や氏名のほか,判明していれば犯人の住所や氏名を記載します。また,犯罪の事実や処罰を求める旨の記載をし,証拠があれば証拠も添付します。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:けっこう大変なんですね。そうなると,自分で書くよりも,弁護士さんなどに頼まないと難しいでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:もちろん,ご自分で書くこともできますが,弁護士に依頼した方が犯罪の事実などは書きやすいと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:普段忙しくて警察署にまで行っていられないという場合,告訴状は,郵便で出せばいいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:郵送も不可能ではありませんが,通常は警察署の刑事課などに出頭して提出し,その場で事情聴取も受けます。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:犯人の名前や住所が分からない場合は,告訴出来ないのですか?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:「氏名不詳」とか「住所不明」ということで出すことはできます。もちろん,その場合にも犯罪の事実や,犯人処罰を求める旨はきちんと書く必要があります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:それでは,こうやってきちんと告訴状を書いて出せば,受理してもらえるんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:いえ,残念ながら,告訴状を提出しても,多くの場合はすぐに告訴を受理してもらえないという現実があります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:どういうことでしょう?</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:法律上は告訴の受理を拒むことはできないのですが,証拠が不足している,告訴状の記載が不明瞭であるなどの理由で,警察からは「とりあえず預かります」「参考に写しだけ受け取ります」などと言われることが多くあります。この場合,正式な受理にはなりませんので,証拠を追加したり告訴状の記載を修正したりして再度提出する必要があります。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうすると,何度も警察に通わなければならない場合もあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。警察の職員もお忙しいですから,その中で告訴を受理してもらうには熱意も必要ですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">柳田:そうなんですか。分かりました。でも,弁護士さんって,犯罪を犯した側の被疑者や被告人の弁護だけではなく,こういう告訴などもやってくれるんですね。</div>
<div style="text-indent: -34.2pt; margin: 0mm 0mm 0pt 34.2pt">板谷:はい。弁護士の仕事には,犯罪被害者の支援というものもあります。犯罪の被害に遭ったら,お近くの弁護士にご相談ください。</div>
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2012-02-29T00:00:00+09:00
第67回:位置指定道路と通行禁止
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=177#block111-177
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私の所有地の一部が,近所の土地の「位置指定道路」になっています。最近,近所の人の使い方が悪く,無断で駐停車をしたり,大型トラックが頻繁に出入りしたりして困っています。全面的に通行禁止にすることはできませんか。(60歳,男性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:今回は,「位置指定道路」という聞き慣れない言葉が出てくるご相談です。こんなご相談は結構あるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:住宅地に土地をお持ちの方であれば,結構,位置指定道路というのは関係してきます。宅地を買うときなども,不動産屋さんから位置指定道路の説明を受けることがあります。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:板谷さん,位置指定道路ってなんですか?何の位置を指定した道路なんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:確かに,言葉だけでは何の道路なのか分かりませんよね。「位置指定道路」というのは建築基準法の制度なんです。まず,前提として,建築基準法では,都市計画区域内にある土地に建物を建てる場合,その敷地は幅<span>4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないとされています。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうすると,幅<span>4メートルの道路に2メートル接していない土地を持っていたとしても,建物を建てられないんですね!なぜこのような規定があるのでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:防災や災害時の避難のためといわれています。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:なるほど。確かに,宅地が道路に接していないと,いざ火事があったときにも消防車や救急車が近づけないということになりますもんね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:この,幅<span>4メートルの道路というのは,国とか地方自治体の公道でなければならないんですか。公道でないと自由に通ることはできませんよね。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:本来は,自由に通れる公道の方がよいですよね。ただ,全ての土地が公道に接しているわけではありません。そこで,行政から「道路位置指定」を受けた私道,つまり個人の所有地である「わたくしの道路」に<span>2メートル以上接していれば建物を建てることができることになっています。これが位置指定道路です。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:なるほど。そうすると,建物を建てることができるようにするために,他人の所有地である私道を位置指定道路としてもらうということなのですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:位置指定道路になると,どうなるんですか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:位置指定を受けると,その反射的な効果として,所有者以外の第三者が通行できるようになります。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうすると,公道のような公共の性格を持つようになるんですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:そうですね。そのため,単なる私道と違って全面的に通行禁止にすることはできなくなります。もし全面的に通行禁止にすると,防災や避難のために接道した意味がなくなるからです。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうなんですか。仮に,ブロックを積んだりして全面的に通行禁止にすると,どうなりますか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:近所の方から妨害排除のための裁判や仮処分申請をされるおそれがありますね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうすると,第三者が好き放題に使っていても,何も文句を言えないのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:いえ,位置指定道路はあくまでも私道ですから,所有者は,その道路に対する維持・管理権を有しています。そのため,平穏な生活をするために利用方法を制限することは可能です。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:たとえば,どのようなことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:近隣の人が自由に駐停車するようになると,通行や道路への出入りが難しくなったり,災害時には危険になったりします。ですから,「大型車禁止」のように利用方法を制限したり,駐停車を禁止したりすることは可能でしょう。最近の裁判例では,いろいろな状況を考慮して,自動車通行の禁止を有効としたものがありますね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうすると,位置指定道路となっている場合には,ご相談者のおっしゃるような全面的に通行禁止にするということは困難ですが,あくまでも私有地なので,第三者が好き勝手に使って良いというわけではなく,所有者から利用方法を制限したり,駐停車を禁止したりすることは可能だということですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:ありがとうございました。</div>
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2012-02-22T00:00:00+09:00
第66回:茶のしずく接見被害長野県弁護団について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=176#block111-176
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">茶のしずく石鹸の被害について,長野県にも弁護団ができたとお聞きしました。詳しく教えて下さい。(45歳,女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:今回は,茶のしずく石鹸の被害についての弁護団についてです。茶のしずくの被害についてはニュースでも報道されていますが,そもそもどういう被害が発生しているのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:はい,茶のしずく石鹸というのは,ご存じのとおり有名タレントを使ってテレビ<span>CMしていたこともあって,通信販売で大ヒットした商品です。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:はい,そうですよね。私の友人も使っていました。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:<span>2010年12月まで,この茶のしずく石鹸には「加水分解コムギ」という小麦由来成分が使われていました。箱の裏を見ると,「水解小麦末」と書かれています。その後,この加水分解コムギが原因と思われるアレルギー症状が発生したという報告がなされるようになりました。</span></div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:加水分解コムギというのは,通常の食物の中に入っているのですか?</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:いえ,加水分解コムギというのは小麦に塩酸や酵素を人工的に加えて分解して作ったものですので,天然の小麦を使った通常の生活ではこれに継続的に触れることはありません。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:どのようなアレルギー症状が出るのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:小麦を使った食品,たとえばパスタとかパンとかうどんなどを食べた後に運動をすると,その運動に誘発されて,目のかゆみとか,顔や目の回りのかぶれとか,全身のじんましん,血圧低下などのアレルギー症状が出るというものです。急性アレルギー反応のことをアナフィラキシーといいますが,アナフィラキシーを発症して,呼吸困難や意識不明など,重い症状が出たケースもあります。中には,小麦を使った食品を食べた後,運動をしなくてもこのような症状が出る人もいます。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そうなんですか!この石鹸は,今でも売っているのですか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:この加水分解コムギを含んだ石鹸については,現在は自主回収されています。現在売られている茶のしずく石鹸には,加水分解コムギは入っていません。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:小麦のアレルギー症状というのは,昔からあったんですか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:はい,以前からありました。それまでは何のアレルギー症状もなかった人が,麺類を食べた後に走ったら急性アレルギー反応を起こした,などというケースはありました。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:以前からあった小麦アレルギーと,今回のアレルギーとは症状が違うのですか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:通常の小麦アレルギーというのは,小麦を食べて運動をすると,全身にじんましんが出て血圧が低下するという症状が出ていました。ところが,加水分解コムギが原因と思われるアレルギー症状は,以前の小麦アレルギーでは非典型的と思われていた,目のかゆみ,目の腫れ,顔の腫れ,じんましんという症状が出るのが特徴です。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:どういうメカニズムでこういう症状が発生するんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:毎日のように加水分解コムギを含む石鹸を使うと,少しずつ目の粘膜や鼻の粘膜,顔の皮膚にそれが付着して,身体がアレルギー反応を起こしたという可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:それは大変なことですね。こういう場合,茶のしずく石鹸の製造者には責任を問えないんですか?</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:現在のところ,製造物責任法,通常PL法と呼ばれていますが,この法律による製造物責任を問うことが考えられます。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:製造物責任法というのはどういう法律なのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:製造物の欠陥により人の生命や身体や財産に被害が生じた場合に,製造業者等の損害賠償の責任を定める法律です。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:その「欠陥」とはどういう意味ですか?</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:その製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:つまり,石鹸の中に,アレルギー反応を起こすような成分を入れていたということで,そのためにアレルギー症状が出るようになってしまった,ということで損害賠償請求ができるということなのですね?</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:要するにそういうことですが,ただ,いろいろな問題もありまして,たとえば,アレルギー症状と茶のしずく石鹸の因果関係があるかどうかとか,アレルギー症状は金銭的に評価するとどのような損害になるのかをはじめとして,検討を要する内容がたくさんあります。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:そもそも,茶のしずくが原因で小麦アレルギーになったという診断はできるのですか?</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:現在,アレルギー専門の医師たちは,一定の目安を作っています。それによると,小麦アレルギーを発症する前に茶のしずく石鹸を使っていることという要件のほか,プリックテストという皮膚のアレルギー検査で加水分解コムギに陽性反応を示すことが必要です。ただ,このプリックテストは,専門施設でしか検査ができません。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">柳田:さて,こういう問題があるので,長野でも弁護団をつくったということなのですが,弁護団に相談するにはどうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -33.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt 21.35pt">板谷:弁護団が訴訟を提起するために,まず勝訴の見込を判断する必要があります。 そのため,弁護士が被害者の方々からこれまでの経緯について聴き取りをするとともに,証拠を検討するなどの調査が必要となります。弁護団のホームページは,「茶のしずく 長野」で検索すると出てきますので,詳しくはそこからご覧下さい。また,長野での説明会は終わってしまいましたが,松本での説明会は2月26日(日)10時30分〜中央公民館(Mウィング)で行いますので,お越し下さい。</div>
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2012-01-25T00:00:00+09:00
第65回:職場でのセクハラと使用者責任
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=175#block111-175
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私の職場では,飲み会の<span>2次会を行うことは禁止されています。先日,会社に黙って数人で飲み会の二次会をしたところ,上司にセクハラをされました。会社に対して損害賠償請求ができますか?(25歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今回は,セクハラということです。同じ女性としては,本当に許せないことですが,板谷さん,セクハラって一言で言っても,結構いろんなものが含まれるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。セクハラつまりセクシュアル・ハラスメントは,要するに「性的いやがらせ」ということですが,相手が不快に感じる性的な言動を広く指しています。例えば,性交渉,キス,卑猥な言動をすることはもちろん,肩や背中をたたいたり,手を握ったりという行為もこれにあたる場合があります。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:男性側からは,「職場の円滑な人間関係のためにも多少はそういうことも必要だ」とか,「なかなか線引きが難しい」などという弁解をされることがあると聞いていますが…。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そういう話しもよく聞きますが,それでも,要するに被害者が不快に思うような言動は避けなければならないんですよね。ですから,加害者側がどう思っていたかではなく,被害者がどう思うかをよく考えなければならないんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうですよね。セクハラについては,当然,加害者に損害賠償請求ができるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね,証拠があれば,可能です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:証拠というと例えばどんなものでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:周囲の人々の証言とか,ご本人の詳細な陳述とかは証拠の一つになりますね。相手が認めて謝っている,というのも一つの証拠にはなります。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:日記とか,このセクハラを受けて心療内科に通ったという診断書なども証拠になりますかね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。特に,毎日付けている日記というのは,証拠としての価値は高いですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。でも,請求をしようと思ったら,そのセクハラ上司は会社を辞めてしまっていたということもありますよね。その場合,会社に損害賠償請求ができるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:できる場合もあります。民法では「使用者責任」という規定があり,「<span style="color: black">ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」とされています。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt"><span style="color: black">柳田:つまり,雇い主の会社は,従業員が行った悪さについても損害賠償責任を負うということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt"><span style="color: black">板谷:要するにそういうことですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt"><span style="color: black">柳田:なぜそういう規定があるんでしょうか。いわゆる「監督不行届」ということですかね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt"><span style="color: black">板谷:単なる監督不行届ではないんです。監督不行届つまり監督責任ということであれば,まさに雇い主自身の責任ということになりますが,使用者責任というのは,そうではなく,従業員の責任を雇い主が負担するということです。これは,</span>従業員を使って事業をして利益を得ている以上,従業員が他人に損害を与えた場合には賠償すべきという,「報償責任」というものが根拠になっています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:報償責任って難しい言葉ですけど,「報い」とか「報酬」という字の「報」と,償うという字の「償」ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:それでは,今回のご相談は,会社の外で行われた飲み会,しかも会社が禁止していた二次会でのセクハラ行為ということですが,会社が責任を負うんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:この点は,先ほどの使用者責任の要件のうち,会社の「事業の執行について」なされた行為といえるかどうかという問題で,よく問題になるところです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:つまり,どういうことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:たとえば,工事現場で働いている従業員がミスをして工具を落として,路上を歩いている人にぶつけてしまった,というような場合には,会社の事業を行っている最中に損害を与えたということになって,会社が責任を負うというのは当然と考えられますよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:それはそうですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:でも,飲み会や二次会ということになると,見方によっては会社の事業とは別の個人的なもののようにも思えます。そうすると,会社の事業の執行とは関係ないという反論をされることがあるんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。難しいところですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:ただ,有名な裁判例は,終業後の飲み会の二次会,しかも,会社は飲み会を禁止していた場合のセクハラ行為について,「上司としての地位を利用して行ったものである」と認定し,会社の職務と密接に関連しているとして使用者責任を認めています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど,終業後つまり仕事が終わった時間帯で,会社自体はそういう飲み会を禁止していたとしても,上司と部下との関係は続くわけですから,上司としての地位を利用して行ったという場合には,会社が使用者責任を負うんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい,そうですね。ですから,一概には言えませんが,飲み会の<span>2次会であったとしても,会社に損害賠償請求をすることは不可能ではありません。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2011-12-28T00:00:00+09:00
第64回:不貞の慰謝料
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=174#block111-174
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">最近,主人の行動が怪しく,帰りが遅かったり,携帯電話でメールを頻繁に送っていたりしたので,主人がお風呂に入っているときに携帯のメールをみてしまいました。すると,職場の同僚と不倫していることが分かりました。不倫相手に慰謝料を請求するためには,どんな証拠を集めておけばいいでしょうか。(30歳,女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回は,不貞の慰謝料についてのご相談ですね。こういうご相談は,多そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。昔からあるご相談ではありますが,悲しいことに,最近こういうご相談が増えてきたような印象がありますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:不倫の慰謝料は,当然請求できますよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。証拠によっては,慰謝料を請求できる場合があります。裁判では,配偶者がいることを知りながら,その一方と不貞関係をもった人は,円満な婚姻関係を破壊し,他方の配偶者の権利を侵害した,ということで,慰謝料が命じられることがあります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:配偶者が不貞をした,ということになると,当然精神上の苦痛を感じますから,損害賠償は認められるでしょうね。では,慰謝料請求のためには,どのような証拠が必要でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:最終的には裁判官が判断することですので,こういう証拠を集めれば大丈夫,ということを断定するわけにはいきませんが,どういう証拠を集めた方がいいかは,請求された側の反論から逆算するといいと思うんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。通常,不貞の慰謝料を請求された側は,どんな反論をしてくるものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:通常,1つめに,「不貞行為はしていない」という反論が多いですね。そして2つめに,「配偶者がいるとは知らなかった」そして<span>3つめに,「すでに配偶者とは破綻しているはずだ」,つまり,「破綻後の不貞行為だ」というものです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:それでは,この反論から逆算すると,どんな証拠があるといいんでしょうか。まず,1つめの,不貞行為がなかった,と反論があった場合のことを考えると,どんな証拠があればいいですか。不貞行為の現場を押さえるのって,普通は難しいですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:不貞行為というのは密室の出来事ですから,通常は現場を押さえるなどということはできないですよね。ただ,裁判では,不貞行為があったということを推測できる証拠を提出すれば,不貞そのものの証拠がなくても,不貞行為は認めてくれます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:不貞行為があったということを推測できる証拠というのは,具体的に言うとどんなものでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:たとえば,一緒にホテルに入る姿や,公園などで親密にしている姿などの写真があれば立派な証拠になりますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そういう写真などは,やはり探偵事務所などを頼んだ方がいいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:お金もかかることですのでお勧めするわけではありませんが,やはりプロの探偵事務所に頼んだ方が,良い写真が撮れることは多いですね。裁判では,探偵事務所の撮影した写真や調査報告書が証拠として提出されることは多くあります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:携帯電話のメールの内容も証拠になりますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:もちろん,証拠になります。ただ,あとでそれを裁判の証拠として使えるようにしておく必要がありますので,メールの内容や相手のアドレスなどをデジカメなどで撮影しておくとよいですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:手帳とか,日記も証拠になりますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:なりますね。結構,手帳にはデートをした日などを記載している人が多いですので,一つの証拠にはなります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:次に,「配偶者がいることを知らなかった」という反論はどうでしょう。つまり,「独身だと思っていた」ということですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:これはケースバイケースですね。配偶者がいることについては,職場の同僚であれば普通知っているでしょうし,知らなかったのであれば過失(落ち度)があるといえるでしょうね。それ以外の場所で出会ったというような場合,いちいち相手が独身かどうかを尋ねてから交際するということはないかもしれませんが,ある程度深い付き合いになれば,独身かどうかくらいは分かるはずです。ですから,ずっと別居していて独身のように見えた,という場合以外は,配偶者がいることを知らなかったという主張は通らないのではないかと思います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。次に,3つめの,「すでに配偶者とは破綻しているはずだ」,つまり,「破綻後の不貞行為だ」という反論についてはどうなのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:この点については,最高裁は「夫婦の婚姻関係が既に破綻していたとき」には,相手方は慰謝料の支払義務がないとしています。もはや「円満な婚姻関係を破壊した」とはいえないからです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,既にこちらの夫婦が離婚していなくても,婚姻関係が破綻していれば,不貞行為にはならないということですか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。つまり,紙切れだけの関係になっていたような夫婦の場合に,片方が他の人と関係を持ったとしても,不貞にはならないということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:どんなときに破綻していたといわれるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:たとえば,相当長期間別居が続いていたなどの事情があれば,請求は難しくなってきます。逆に,直前まで円満な夫婦であったような場合には,多少不和があったとしても,破綻していたとまではいわれません。直前まで仲が良かったことを示す写真などがあれば,そのことの証拠になるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。ところで,慰謝料の額というのは,大体どのくらいなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:これも一概にはいえませんが,通常は2<span>00万円から300万円程度は請求するのが一般的だと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,どんなに腹が立っていても,<span>1000万円とか2000万円という額は,通常は請求できないということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。いわゆる相場からすると,ちょっと無理な額だと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2011-11-30T00:00:00+09:00
第63回:自賠責保険と任意保険
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=173#block111-173
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"> この度自動車を買おうと思っているのですが,自賠責保険や任意保険の意味がわかりません。自賠責保険に入れば,任意保険には入らなくてよいのでしょうか?</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今回は,何かのトラブルというよりも,自動車の保険のご相談ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。自動車を持っている人は,一度は保険について学ばなければなりませんので,重要なご相談ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:私も自動車を運転しますので,自賠責保険のこととか,知っているつもりにはなっていますが,どういうものかといわれると,うまく答えられないですね。知っているようで知りませんので,今日はこのことをお聞きしていきます。まず,自賠責保険に入れば,任意保険には入らなくてよいのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:法律上は強制されていませんが,自賠責保険だけでなく,必ず任意保険あるいは共済に加入していただきたいと思います。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうですよね。それでは,まず自賠責保険とはどういうものなんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:自賠責保険というのは,正式名が自動車損害賠償責任保険といいまして,保険だけではなくて共済の場合もあります。これは,法律に基づき,運行する全ての自動車が契約することを義務づけられている保険です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ついうっかり自賠責保険に加入しないで自動車を運転するとどうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑罰を受けます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:無保険は懲役もあるんですか!これは,ついうっかり,なんてことは言っていられませんね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:実際は,自動車の場合には,車検のときに自賠責保険も一緒に更新しますので,うっかり失効しているということはありません。車検を通さないで乗り続けたような場合には,無車検・無保険ということがありますね。これは犯罪となります。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:責任重大なんですね。さて,この自賠責保険というのは,何のために設けられたものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:これは,交通事故の被害者保護のために設けられました。通常は,民法により,損害賠償を請求するためには自動車を運転した人の過失を立証しなければなりませんが,自賠法では,原則と例外をひっくり返しているんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:え〜と,どういうことでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:自賠法では,加害者が?自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと?第三者に故意又は過失があったこと?自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことの<span>3点を立証できなければ加害者が責任を負うこととしているんです。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:つまり,原則として,加害者が責任を負うとされていて,例外的に,注意を怠らなかったことなどを証明できれば責任を免れるということで,民法とは逆になっているということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい,そうですね。そのかわり,その場合の支払額の限度を設け,その範囲で自賠責保険から被害者に支払われるということとなっています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。加害者が責任を負うといっても,実際は自賠責保険から支払われるということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうすると,自賠責保険に入っておけば安心ですよね。任意保険に入る必要があるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:実は,自賠責保険からの支払限度額は,あまり高くないんです。傷害事故の場合には,治療費や休業損害などをあわせて<span>120万円までしか支払われません。後遺障害の場合には,最高で4000万円,死亡事故の場合は3000万円です。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:死亡しても<span>3000万円だけということになると,やはり足りないですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうなんです。これには,慰謝料だけではなくて,逸失利益,つまり,本来は生きていれば仕事をして得られたであろう収入も含まれています。まだ将来のあるお若い方がなくなった場合にも,<span>3000万円しか払われないとなると,少なすぎますね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうですよね!それでは,自賠責保険の支払限度額を超える損害賠償については,もらえないのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:民法の原則に戻って請求できます。つまり,加害者に過失があることを立証して,加害者に請求できます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:でも,もし加害者が無職だったり,財産がなかったりしたら,結局払えないことになりますよね。払えないと,被害者は泣き寝入りをすることになってしまいますよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。そこで,自賠責保険の限度額を超える損害賠償を負担したときのため,任意保険に入るべきなのです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:人は,いつ事故を起こすかわかりませんから,被害者のためにも,必ず任意保険あるいは共済に加入するべきということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。必ず加入して下さい。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:事故にあったときは,自賠責保険はどうやって請求するのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:加害者からも被害者からも請求できます。また,加害者が任意保険に入っている場合には,任意保険には自賠責保険からの支払分もまとめて支払うという一括払い制度というものがありますので,任意保険の会社に請求すれば大丈夫です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:自分から電柱にぶつけてしまったような自損事故の場合にも,自賠責保険が請求できるのですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:いえ,自賠責保険は,自動車によって他人を死傷させた場合の保険ですので,自分が損害を受けたときには支払われません。ですから,自損事故であれば自賠責保険は使えません。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2011-11-23T00:00:00+09:00
第62回:美容室トラブル
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=172#block111-172
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,いつも決まった美容室に行っているのですが,先日,いつもの美容師さんがお休みで,別の美容師さんにカットしてもらいました。ヘアカタログを見せて,これと同じようにやってほしいと言ったのですが,カタログどおりの髪型になりませんでした。損害賠償請求ができますか?(23歳,女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回は美容室のトラブルです。こういうご相談は結構あるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:いえ,比較的珍しいご相談ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうですよね,ちょっとイメージどおりでなかったとしても,美容師さんに対して損害賠償請求まで考えることってあまり多くはないですものね。損害賠償請求自体,できるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:もちろん,不可能ではありません。美容師さんにお金を払って髪の毛を切ってもらったり,パーマをかけてもらったりするというのは,立派な契約です。契約ですから,契約違反つまり債務不履行というものもあります。美容師さんが契約違反をしたのであれば,損害賠償の請求はできます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。それでは,お客さんの要望と違う髪型になったというような場合,美容師さんが契約違反になるんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:お客さんの要望との違いの程度にもよりますし,どの程度具体的に要望していたのか,美容師さんがどの程度説明していたのかによっても異なりますので,一概にはいえません。ただ,一般的には,お客さんの指示した髪型とは結果的に若干異なる髪型になったとしても,直ちに契約違反にはならないと考えられます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:どういうことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:美容師はプロですから,ある程度プロとしての裁量があります。ですから,求められたデザインの髪型にするために合理的なカットの方法を採用したのであれば,契約違反にはなりません。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。ちょうど,お医者さんに治療方法の裁量があるのと同じですかね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そういうことですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そもそも,完璧にカタログと同じ髪型にするのは不可能ですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうなんです。髪質や頭の形などは人によって違いますから,カタログと全く同じにはなりません。ですから,カタログどおりにならなかったとしても,それだけで契約違反ということにはならないんです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:裁判などで,こういうケースが争われたことはあるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:数は少ないですが,いくつか裁判例が公表されていますね。有名なのは平成<span>17年の東京地裁の裁判です。これは,時給2万円,月収200万円も稼ぐという人気のあるキャバクラ嬢で,特に髪型をアピールポイントとしていた方のケースです。このケースでは,美容師の契約違反や,カラーリングで頭皮を傷つけたことに対する慰謝料なども認められました。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:もうちょっと具体的にお聞きしてもよろしいですか?どんなケースだったんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:これは,美容師がお客さんの要望を聞き入れず,「おれに任せろ,おれには何かこのデザインが見えている」と言って切りまくってしまって,髪の毛が少なくなってしまい,巻き髪やアップができなくなってしまった,というケースです。カラーリングも,<span>4回もやり直したということです。このカラーリングのせいというわけではないようですが,このお客さんは円形脱毛症にもなってしまったようですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:うわ〜,それは損害賠償を請求されるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですよね。ここまでいくと,いくらプロの美容師だとしてもお客さんの要望から離れすぎていますし,カラーリングで頭皮も傷つけているので,損害賠償が認められたんでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:ここまで極端なケースの場合には,美容師に対する請求が認められているということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。逆の結論の裁判例もあります。平成<span>22年の神戸地裁の判決では,顧客がヘアカタログのデザインを見せてカットを依頼したところ,結果的にカタログどおりの髪型にならなかったというケースで,美容師に対する損害賠償請求を認めませんでした。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:これは,具体的にどういう事案だったのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:もともと,お客さんが最初に指示したデザインがあって,それに沿うように短くカットした後,お客さんが途中で違うデザインに変更したいと言ったため,カタログどおりにはならなかったという事案のようです。美容師さんも「カタログと全く一緒というのは難しいと思う」と伝えていたようですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。これは,お客さんにも落ち度がありますよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:ちなみに,このケースでは,お客さんが美容院に繰り返し抗議の電話をかけていたことから,逆にお客さんの営業妨害ということで不法行為を認め,お客さんが慰謝料を払うことになりました。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:お客さんとしても度を過ぎると,逆に損害賠償を支払うということもあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。ですから,美容師さんに対して損害賠償が認められるケースが全く無いわけではありませんが,通常は,美容師さんのプロとしての裁量を超えた切り方をして,お客さんの要望からかけ離れてしまったという場合以外には,損害賠償は難しいと思いますね。</div>
<span style="font-size: 12pt"><font size="2">柳田:分かりました。ありがとうございました。</font></span>
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2011-09-28T00:00:00+09:00
第61回:境界ギリギリのところに建造物?
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=171#block111-171
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は住宅街に住んでいます。自宅で仕事をしていて手狭になってきたため,敷地内にプレハブの事務所を増築したいと考えています。お隣との境界線ギリギリのところに作っても大丈夫でしょうか?</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今回は,お隣との境界線ギリギリのところにプレハブの事務所を作っていいかという相談です。プレハブの事務所に限らず,駐輪場とか,立体駐車場とか,いろいろこういう場合は生じそうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。隣近所との境界線ギリギリのところに物を作っていいかという問題は,よくある問題ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:それでは,結論からすると,境界線ギリギリのところにプレハブの事務所をつくっていいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:本来は,作ってはいけないんです。ですから,お隣の不動産所有者に事情を説明して,承諾を得てから作るべきですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。どういうことでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。プレハブの事務所は,土地に定着した工作物で,しかも屋根と壁を有する工作物ですので,立派な「建物」といえます。このような建物を境界線付近に建築することについては,民法に規定がありまして,「境界線から<span>50センチメートル以上の距離を保たなければならない」とされています。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:境界線から<span>50センチですか。そうすると,お互いが50センチ離すわけなので,結局,隣同士の建物と建物の間は1メートル空くということになるんですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そういうことですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:どうしてこういう規定があるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:境界線目一杯に建物を建てると,日照や通風の問題が生じたり,火災の時には延焼の危険が高まったりしてしまうからです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ええと,この「境界線から<span>50センチ離す」というのは,建物のどこのことを指すんでしょうか。屋根のひさしの出っ張ったところのことですか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:建物の外壁やこれと同視すべき出窓から境界線まで<span>50センチメートルという意味です。屋根のひさしから境界までではありません。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:要するに,建物から<span>50センチということなんですね。もし,お隣が50センチ離さずに,境界線ギリギリのところに建物を建てた場合にはどうなるんでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:隣の所有者は建築を中止させ,または変更させることができます。また,建築に着手してから<span>1年経過したり,建物が完成したりしてからは,損害賠償請求をすることができます。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。結構,重要な規定なんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:でも,私の知っている住宅街では,境界線から<span>50センチも離れていたかなと考えると,そんなに離れていなかったように思うんですが,これには例外などがあるんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:この民法の規定の特則として,建築基準法では,防火地域や準防火地域という一定の地域内で外壁が耐火構造の建物については,外壁を境界線に接して建築してもよいとされています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。この耐火構造って,どんなものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:鉄筋コンクリート造やれんが造などの構造が代表的なもので,国土交通大臣の認定を受けたものをいいます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうすると,プレハブの事務所は耐火構造があるとはいえないでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうでしょうね。ただ,民法が適用される場合でも,お隣が承諾したのであれば,<span>50センチの距離を設ける必要はありません。これを,建築協定といいますが,要するにお隣が承諾すれば民法に優先されるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。長野の場合は,日照や通風,火災の問題というよりも,むしろ屋根の雪がどっちに落ちるかという問題の方が大きいですから,その辺りも配慮して,承諾を得るということですかね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。境界ギリギリに建てる必要があるのであれば,お隣によく事情を説明して,屋根の雪もお隣に落ちないように配慮したりして,承諾を得る必要がありますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:分かりました。ちょっと気になるんですが,たとえばこのラジオをお聞きの方が,お隣の家を調べてみたら,お隣は境界から<span>49.5センチしか離していなかった,というような場合には,損害賠償請求ができるということなんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:権利の濫用は認められない,という規定が民法にもありまして,例えば,<span>50センチにわずかに足りないだけで,しかも今まで何の実害もなかった,などという場合には,損害賠償請求は権利の濫用として認められないことが多いのではないかと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そりゃそうですよね。とにかく,法律の前に,人間として常識的なお付き合いをすることが大切ということですかね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。ですから,こういう増築などの場合には,きちんとお隣に断って承諾を得てから行うといいですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2011-08-31T00:00:00+09:00
第60回:野良猫への餌やり
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=170#block111-170
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私の近所の家では,野良猫にエサをやっているため,猫の糞尿があちこちにばらまかれ,異臭がしたり,ハエがたかったりしています。やめさせることはできないでしょうか。また,損害賠償を請求することはできますか。(<span>30歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今回は,野良猫へのエサやりの問題です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。近所の人がエサをやっているために,野良猫の被害があるという,隣近所の問題ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:う〜ん,私も猫を飼っていますが,これは難しい問題ですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。空腹でかわいそうな野良猫にエサをやることがいけないのか,という動物愛護的な意見もありますし,ペットを飼う権利という,エサやりをしている人の権利という問題もあります。一方で,良好な居住環境を奪われてどうしてくれるんだ,という意見も分かりますよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:はい。こういう場合,まず,やめさせるというためにはどういう手続があるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:裁判所を利用する方法としては,差し止め請求というものがあります。こういう異臭や環境の悪化ということをもとに,人格権侵害に基づくエサやりの差し止めということを裁判所に申し立てるという方法がありますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。そうすると,まずは示談交渉などで行うのでしょうけれど,それでも埒があかないときは,裁判所に刺し止め請求をすることもできるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そうです。損害賠償も同じで,まずは交渉で行うことができますが,それでも相手がどうしてもいうことを聞かなければ,裁判で請求することができますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。それにしても,野良猫のエサやりについては,かわいそうな野良猫にエサをやることのどこが悪い,という意見もありますよね。差し止めや損害賠償請求は可能なのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:難しい問題ですが,この点で,昨年,東京地裁立川支部で珍しい判決が出たんです。この判決では,野良猫のエサやりをしている人に対して差し止めと損害賠償請求が認められました。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。そういうことがあったんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。ただ,その判決で認定されたのは次のような事実関係です。まず,相手の人が屋外の<span>4匹の猫に対して,単なるエサやりにとどまらず,段ボール箱などを用意してすみかを提供していたことです。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:つまり,単なる野良ちゃんではなくて,屋外で飼っていたというのに近いということですかね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。裁判所も「飼育の程度に達している」と表現しています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。それ以外の事実関係はどんなものだったのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:エサやりによって集まった猫の糞尿により,ハエがたかり,異臭がし,洗濯物に臭いがつき,ごみ集積所で生ゴミが散乱され,カラスが集まり,エサを置いた新聞紙が風に舞い,駐車している自動車やバイクに傷がつき,猫の抜け毛が広がった,そのことに関する近隣住民との話し合いにも応じなかった,などが書かれていますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。ここまでの事情があると,損害賠償や差し止めも認められるということになるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そういう事例の1つですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:でも,こういう野良ちゃんが増えないように,行政と共同して野良猫の避妊や去勢をしていくという地域活動もありますよね。たとえば,野良ちゃんにエサやりをした人が,野良ちゃんを大事にしながら,避妊や去勢をしていくという活動に協力していた人である場合,そういう人に損害賠償請求をできるとなると,地域活動が萎縮してしまうのではないでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:先ほどの判決では,その点にも触れられています。地域猫活動というものがあり,これは,人間の身勝手により生じた野良猫の問題を猫の一代限りの命を尊重しながら時間をかけてその総数を減らすという活動ですが,その場合,エサを放置しないとか,トイレを設置するという必要があることに加えて,地域の共通理解を得ながら行っていく必要があると指摘しています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。そうすると,そういう活動に参加していたとしても,適切な方法でエサやりなどを行う必要があるということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。特に,猫については,アレルギー体質の人もいますし,猫嫌いの人もいます。ですから,猫がかわいそうじゃないかということでエサやりなどをするのは分かりますが,それであれば,トイレの始末やエサやりの方法などもきちんと行う必要がある,ということですね。この判決では,飼い猫の域に達している猫については,きちんと屋内で飼いなさい,という言い方をしていますが,その趣旨は,そういうところにあると思います。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:野良ちゃんにエサをやってはいけない,というわけではなく,エサをやるなら適切な方法でやりなさい,ということですね。今日はどうもありがとうございました。</div>
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2011-08-24T00:00:00+09:00
第59回:老人ホームの前払金
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=169#block111-169
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,とある有料老人ホームに入所しました。入居申込金と入居一時金というものを支払わされましたが,その老人ホームの対応が悪かったので,入居してから1週間で解約を申し出ました。ところが,契約に基づき申込金は返さない,一時金も<span>50%しか返さない,といわれました。返してもらうことはできませんか。(80歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回は,有料老人ホームとのトラブルに関するご相談です。板谷さん,高齢社会になって,こういう問題は増えているのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,残念ながら,有料老人ホームに関するトラブルは増加しているといわれています。内閣府の発表では,全国の消費生活センターに寄せられた相談件数は増加の一途をたどり,なかでも前払金についてのトラブルが多いということでした。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。ご高齢になってから,こうしたトラブルに巻き込まれるというのでは,本当にお気の毒ですよね。それでは,今回の申込金とか一時金について,返してもらうことはできますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:契約の内容にもよりますが,返してもらうように交渉すべきだと思います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうですか。それではまず,申込金の方ですが,これはどういう趣旨の前払金なのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:これもいろいろな趣旨で徴収する会社がありますが,一般的には,契約事務手数料などが請求されているようです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回のご相談者のケースは,「契約に基づき返しません」と言われているわけですから,おそらく解約の場合には返還しませんという内容の契約になっていると思いますが,こういう場合でも返してもらうように交渉することができるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,消費者契約法という法律があって,その第<span>9条第1号では、消費者契約の解除に伴う違約金を定める条項に関し、事業者に生ずべき平均的な損害額を超えるものについては、当該超える部分について無効としているんです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:ええと,かいつまんで言うとどういうことなんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:つまり,業者は平均的な損害以上の違約金を請求してはいけない,ということなんです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,平均的な損害以上のものを要求する契約書の場合には,その部分は無効になるということですか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:具体的には,今回の申込金の場合には,どうなるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:額にもよりますが,契約事務手数料などの場合,解約したとしても,それほど業者に損害が出るとは考えられません。ですから,「解約したら一切返さない」というのは,明らかに平均的な損害以上のものを要求していますので,無効になると考えられます。ですから,全額とまではいかなくても,ある程度は返還するように交渉することができると思います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。それでは,入居一時金についてはいかがでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:これも,契約書を見ないとなんともいえませんが,一般的には,施設の利用料とか,原状回復費用などの趣旨で支払う金銭のことを指すようですね。将来の利用料相当額の全部又は一部ということで,<span>1000万円など,相当高額な金銭を要求されることもあるようです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回のご相談者のケースの契約では,解約の場合には<span>50%しか返さないとなっていたようですが,1週間で解約したのに,半分しか戻ってこないなんて,ひどいですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。実は,厚生労働省は,平成<span>18年3月に,「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」というものを改正して,90日ルールというものを定めました。そこには,「契約から90日以内の契約解除の場合には,既に受け取った一時金の全額を返還すること。ただし,それまでの利用料や原状回復費用については,適切な範囲で設定して受領することは差し支えない」ということが書かれています。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,本来は,老人ホームは,こういう<span>90日ルールに沿った契約書を作らなければならないということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。ただ,この指針は強制力がないため,全ての施設で導入されているわけではないようです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:それでは,こういう<span>90日ルールに沿った契約書でない場合には,どうすればいいのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:先ほどの申込金と同じく,消費者契約法<span>9条1号を使えます。契約してからそれほど経過していないのに,50%も受け取るというのは,明らかに通常の損害を超えています。それまでの利用料と原状回復費用程度以外は,返還するように交渉することができると思います。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。分かりました。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:実は,日本弁護士連合会および長野県弁護士会は,来る9月15日(木),午前10時から12時まで,「有料老人ホーム・高齢者専用賃貸住宅トラブル110番」を実施することにいたしました。この相談は,全国統一番号(0570−073−165)に電話すると,長野県内からの電話については自動的に長野と松本の2カ所の受付のいずれかに転送され,待機中の弁護士に電話相談をすることが出来るというものです。通話料以外は無料です。是非ご利用下さい。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:9月15日(木),午前10時から12時まで,0570−073−165ですね。ありがとうございました。</div>
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2011-07-27T00:00:00+09:00
第58回:B型肝炎訴訟長野弁護団について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=168#block111-168
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">最近,<span>B型肝炎訴訟の関係で弁護団が長野にできたと報道されていました。詳しく教えて頂きたいのですが…。(50歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:この<span>B型肝炎の問題は,最近報道されていますが,今回はこの件のご相談ですね。板谷さん,詳しく教えて頂けますか。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。<span>6月28日に,全国B型肝炎訴訟で,国と原告団が合意書に調印しました。今回締結された基本合意書は全国の被害患者に適用されますので,長野の患者の救済のために,長野県内の14人の弁護士で弁護団を組みました。私もその中に入っています。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。ではまず,<span>B型肝炎には,どうやって感染するんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:血液とか,血液が混じった体液を通して感染します。また,母子感染と言って,<span>B型肝炎ウイルスに感染したお母さんから産まれた子どもに感染するというケースもあります。まれに,父子感染といってお父さんから子どもに感染するということも発生するようです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:それで,今回の基本合意とか弁護団とかいうのは,どういう話なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。かつては,集団予防接種やツベルクリン反応検査などのときに,注射器を使い回していたんです。やがて,このやり方はしなくなったんですが,この注射器の使い回しのために,乳幼児期に<span>B型肝炎ウイルスに感染してしまったというケースがありました。国がその被害の発生や拡大を防止しなかったということで,国の責任を追及する裁判が行われていました。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:子どもの頃に受けた集団予防接種で<span>B型肝炎ウイルスに感染したということを証明するのは難しい気もしますが…。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,集団予防接種と<span>B型肝炎ウイルスの因果関係がネックなんです。でも,平成18年に,最高裁判所が,集団予防接種以外にB型肝炎ウイルスに感染する原因が見あたらないなどの理由で,請求を認めたケースがありました。しかし,国がその後も被害者に対する救済措置を講じなかったため,10の裁判所で同じ訴訟が行われていました。その結果,早期かつ全体的な解決のために,今回,国と原告団との間で基本合意書というものを交わすことができました。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:それが,菅首相が謝罪とともに交わした基本合意書というものなんですね。私も基本合意書を見させて頂いていますが,かなり大部にわたるものですね。まず,救済の対象となる方々はどういう方々ですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:まず,<span>B型肝炎ウイルスに持続感染しているという検査結果があることが必要です。そして,集団予防接種を受けたことがあることが前提です。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:集団予防接種を受けたというのは,どうやったら分かりますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:腕にハンコ注射の跡が残っていれば,予防接種を受けたことが証明可能です。それ以外にも,母子手帳や市町村の予防接種台帳など,証明する方法はいくつかあります。どうしてもそういう書類がないときは,親族の陳述書などを用意します。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。それ以外の要件はありますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,生年月日が昭和<span>16年7月2日以降で昭和63年1月27日までの方であることが必要です。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:生年月日が昭和<span>16年7月2日以降で昭和63年1月27日までですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。この生年月日の間に限るとされた理由は長くなりますので省略しますが,ともかく今回の国との合意では,生年月日がこの期間に当てはまらない方は対象外になっています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:他にはどういう要件がありますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:産まれたときに母親が<span>B型肝炎ウイルスに持続感染していないこと,ほかに感染原因がないことなどの要件が必要です。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:これらの要件をクリアする方には,お金が支払われるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:要件をクリアする方は,裁判を起こせば,国から一定のお金が支払われることになりました。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:これは,どこかの行政の窓口に請求すればもらえるものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:いえ,これは,一度資料を揃えて裁判所に提訴しなければなりません。その上で,裁判で和解するという枠組みになっています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:あっ,そうなんですか?これは,重要ですね。裁判を起こさなければならないということですね。この裁判で一度和解した後に,病気が進展して,たとえば無症候性キャリアの人が肝炎になったというときは,改めて請求できるのですか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。改めて裁判を起こす必要はありますが,以前に受け取った額と,今回の区分に基づく額の差額を受け取ることができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:逆に,過去に慢性肝炎になったけど,今は薬のおかげで治ったという方でも大丈夫ですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。大丈夫です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:残念ながら患者さんご本人が亡くなっている場合はどうするのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:ご遺族が原告となります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回の基本合意に基づく請求のために,提訴の期限はあるんですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:期限はありません。ただ,カルテなどの資料はなるべく早めに揃えておいた方がよいですし,ご親族による陳述書が必要な場合もあります。今認定を受けておかないと,将来,必要な資料が揃わないこともありますから,早い方がいいと思います。長野では<span>B型肝炎訴訟長野弁護団を結成し,相談を受け付けています。電話番号は026−234−7754です。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:026−234−7754ですね。分かりました。相談会などはありますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。8月7日日曜日,午後1時30から,松本市中央のMウイングで説明会を行うことになっています。どうぞご参加ください。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:8月7日日曜日,午後1時30から,Mウイングですね。わかりました。</span>
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2011-06-29T00:00:00+09:00
第57回:相続させる遺言と相続人の死亡
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=167#block111-167
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">先日,父が亡くなりました。父は,全ての財産を私の兄に相続させる,という内容の遺言を残していました。しかし,兄は<span>3年前に亡くなっており,兄の子どもであり私の甥に当たる子が1人いるだけです。母も既に亡くなっています。この場合,甥っ子と私のどちらが父の財産を相続するのでしょう?(45歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今週は相続についてのご相談ですね。相続のご相談も結構多いのですか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。最近は,遺言を残した方がいいということがかなり知られてきています。また,信託銀行なども相続業務をやるようになって,相続に関心を持たれる方が多くなっていますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。大事な問題ですものね。さて,今日のご相談の方の家族構成をもう<span>1回整理すると,父,母,子ども2人の4人家族で,お母様が先に亡くなられているということですね。そして,お兄さんも3年前に亡くなっているということです。そして,今回,お父様が亡くなったということです。お兄さんには子どもが1人,つまり,ご相談者さまの甥っ子にあたる方が1人おられるということですね。まず,この場合,お父さんが何も遺言を残していないとすると,誰が相続人になるんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:ご相談者と甥っ子さんの<span>2人が相続人になりますね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ええと,ご相談者の方はお子さんなので分かりますが,甥っ子さん,つまりお兄さんのお子さんも相続人になるんですね?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。代襲相続といって,お父さんより先にお子さんが亡くなっている場合には,さらにそのお子さん,つまり亡くなった方のお孫さんが相続できます。ちなみに,再代襲相続といって,そのお孫さんも亡くなっているときは,さらにそのお子さん,つまり亡くなった方のひ孫にあたる方が相続できます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。そうすると,ご相談者の方は通常の相続,ご相談者さんの甥っ子さんは代襲相続をするわけですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:さて,次に,今回のような「全ての財産をご長男であるお兄さんに相続させる」という内容の遺言なのですが,これこれを誰々に相続させる,という書き方は,遺言では普通なんですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。特定の相続人にだけ相続財産を承継させたいというときは,最近は,この「相続させる」書き方が一般的になっていますね。このように「相続させる」という遺言をしたときは,「遺産分割の方法が指定された」という言い方をするのですが,遺言をした方が亡くなった場合,何もしなくても,直ちに相続により財産が承継されるとするのが判例です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうなんですか。さて,そうすると,今回は,全ての財産をご長男に相続させる,という遺言があったわけですが,実際にお父さんが亡くなる前にご長男が亡くなっていますよね。こういう場合,遺言はどうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そこが難しいところなんです。まず,お父さんが相続させたいと思っていたご長男が亡くなっているので,遺言自体が無効になるという考え方もあります。なぜかといえば,遺言は遺言をした方が亡くなったときから効力を生じるので,亡くなったときに既にご長男が生きていらっしゃらなければ,遺言は無意味になるからです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。無効になるということは,結局,遺言がないというわけですから,今回の場合はご相談者と甥っ子さんの<span>2人が相続人になるということですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ということは,他の考え方もあるということですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。「全部の財産をご長男に」という遺言を残す場合,亡くなった方の意思としては,「二男には何も相続させたくない」とか,「家を継いでくれた長男やその家族に全部をあげたい」という意思である場合があるわけですよね。そこで,むしろこういう特定の人に相続させるという遺言をした場合には,その特定の人が亡くなっていたら,遺言は有効なものとしてその代襲相続人である人に相続させるべきだ,という考え方もあるんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:代襲相続人というと,今回は甥っ子さんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。ご長男の息子さんですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:つまり,亡くなった方の意思を重視するか,それとも遺言の効力発生時にご長男がいなかったことを重視するかということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうなんです。実際,こういう事例では,地方裁判所や高等裁判所で両方の見方の裁判例があって,法律の世界では揉めていたんです。ところが,今年の<span>3月に,この点を決着させる最高裁判所の判例が出ました。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:どういうことになったんですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:この「相続させる」という遺言の条項や他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,代襲相続人に遺産を相続させるという意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,遺言は効力を生じないとしました。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ええと?むずかしいんですが,平たく言うとどういうことでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:原則として,ご長男が亡くなっているので,遺言は無効ということです。でも,遺言者のお父さんが,どうしても二男ではなく長男の息子さんに相続させたいと思っていたという特別な事情があれば,遺言は有効なものとして代襲相続人に相続させることができる,ということです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。そうすると,今回のご相談も,そういう特別な事情がない限りは,遺言は効力がないので,ご相談者と甥っ子さんの<span>2人で分けるということになるんですね。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">柳田:今日はありがとうございました。</div>
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2011-05-25T00:00:00+09:00
第56回:養育費と破産
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=166#block111-166
1
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は,以前夫と調停離婚し,養育費を<span>1か月5万円支払ってもらうことに決まりました。しかし,最近の不景気で夫が借金を抱え,自己破産を申し立てました。それでも養育費は請求できますか?(30歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今回は,離婚と養育費に関するご相談です。板谷さん,こういう相談は多いのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:とても多いですね。離婚の時は,養育費をいくらにするかという点でなかなか合意できなかったり,合意しても,離婚後にその通り支払われなかったりという相談が多いです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。それでは,まず,養育費というものがどういうものなのかから説明していただけますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする際には,親権者を決めるだけでなく,子どもの養育費を<span>1か月いくら負担するかを決める必要があります。親である以上,離婚したとしても,子どもに自分と同じ水準の暮らしをさせる義務があるからです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,親権者になっていなくとも,子どもを養う義務があるということなんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:話し合いで額が決まらなければ,どうすればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:養育費の額が話し合いで決まらない場合には,裁判所での調停や裁判で決めることになります。養育費の額は,双方の年収をもとにした算定表が裁判所によって作成されており,それが一般的な基準として用いられています。算定表は裁判所のホームページでもみることができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:算定表だと,大体どのくらいの額なんでしょう。たとえば,夫が年収税込み<span>450万円くらいで,妻が収入無し,10歳の子がいるという場合はどうですか。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:算定表では,<span>4から6万円というところですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。ある程度幅があるものなんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。もちろん,その中で自由に決めて良いというものではなくて,算定表では<span>4万円に近い方なのか,逆に6万円に近い方なのか,というものを参考にして,あとは具体的な事情で調整します。今の450万円という収入ですと,ちょうど中間くらいですので5万円が標準でしょうね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。この表は,どうやって作られたものなんですか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:裁判官たちが集まって研究会を行って,養育費を計算する算定式というものを作成したんです。それをもとに表にしたものがこれですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:<span>1か月5万円程度って,子育てのためにはちょっと少ない気がするんですが…。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。これで十分という額ではなく,最低限これくらいは支払いなさいよ,という額なんです。ですから,養育費はもっと渡してもいいと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:調停や裁判で養育費を決めたのに,離婚後に支払われない場合には,どうすればいいんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:裁判所からの履行勧告や履行命令を出してもらえるほか,将来の養育費も含めて<span>1回の強制執行により預金や給与を差し押さえることもできます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:給与って,全額差し押さえられるわけではなかったですよね?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,通常の差し押さえでは給与の<span>4分の1までしか差し押さえられません。ただ,養育費の場合には,給与については2分の1まで差し押さえることができるように,最近法律が改正されました。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:次に,自己破産手続については以前にも取り上げましたが,簡単に説明していただけますか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。自己破産とは,現在の収入や財産では返しきれない債務を抱えた人が,債務を清算し,財産があれば公平に分配して,残った債務を帳消しにしてもらうために裁判所に申し立てる手続です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:このような制度があると債権者としては困りますよね。なんでこんな制度があるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:どうしても資本主義のもとでは収入よりも債務がふくれあがる状態が生じることが避けられません。また,債務者が経済的に更生して,再び社会で頑張ってくれたほうが社会のためにもなりますので,特別に設けられた制度です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:全部の債権が帳消しになるんですか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:全部ではありません。帳消しにすることを法律用語では「免責」といいますが,免責されない債権もあります。税金などの公益的な債権のほか,養育費も子どもの生活を保護するという目的で免責されない債権となっています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,破産で他の債務が帳消しにされたとしても,養育費については請求することができるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい。そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:でも…実際問題として,このような人から養育費を支払ってもらうことは期待できるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そこが問題ですね。日本では,お金がない人からは取り立てられません。ですから,相手が破産して,仕事も失っている,財産も全く無くなったというような状態では,強制執行しても空振りになり,養育費を支払ってもらうというのは難しくなりますね。残念ながら,それが事実です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,ご相談者の場合は,相手が破産しても請求できますが,残念ながら払われない場合もあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,そうですね。</div>
<span style="font-size: 12pt">柳田:どうもありがとうございました。</span>
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2011-04-27T00:00:00+09:00
第55回:ゴルフ年会費の値上げ
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=165#block111-165
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私はゴルフが好きで,10年ほど前から会員制のゴルフクラブに入っています。先日ゴルフ場から手紙が来て,「今般,会則を変更いたしましたので今年度から年会費を増額させていただきます」と書いてあります。私は増額を承諾していないのですが,増額分の支払義務はありますか?(50歳,会社員,男性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今週はゴルフクラブの会費の相談ですね。板谷さん,以前にもゴルフクラブについてのご相談がありましたね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。<span>1年ほど前のご相談でしたが,預託金の返還請求についてのものでしたね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうでした。預託金の返還期限が来ているのに,返還してくれないというようなご相談でした。返してくれといえるということでしたよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。「預託金の据置期間の延長については,会員の承諾を得ない限り会員には効力が及ばない」として,預託金の返還請求ができる場合があるということでしたね。これは,もともとは昭和<span>61年の最高裁判所判決に基づくもので,会則を変更しても,延長を承諾していない会員は預託金の返還を請求できるとしたものです。今回は,年会費の増額についてのご相談ですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:はい。そうすると,今回も,ゴルフクラブで勝手に会則を変更するということは認められないということですかね?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:確かに,先ほどの昭和<span>61年判決の預託金の件を前提に考えれば,年会費の増額についても会員の個別的な承諾がなければ効力が及ばないとも考えられそうです。実際,このことが問題となった裁判では,1審の裁判所はそのように考えて,増額を承諾していない会員は増額分の支払義務がないと判示したんです。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ということは,<span>2審で結論が変わったんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。その事件の<span>2審で,大阪高等裁判所は,「会則に『会員は会社が別に定めた会費その他の料金を負担する』という定めがある場合,年会費等の料金が会社の判断により変更があり得ることを前提としている」と述べました。そして,「原則として会員は改定された年会費の支払義務を負担し,会員の個別的な承諾を要しない」と判示しました。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:ええ〜,そうすると,預託金の返還請求とは逆の結論ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。ただし,大阪高裁の判決では,年会費改定の目的が正当でないとか,手続が公正でないような場合には,個々の会員の承諾が必要であるとも述べています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そういう例外的な場合には,増額分を支払わなくて良いということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうなりますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:板谷さん,なんでこのような一件矛盾するような判決が出たんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:会則変更の経緯や手続などの個別具体的な事情があると思いますので,一概に高等裁判所の判決が矛盾しているとはいえないのですが,専門家の間でも,預託金返還請求の最高裁判所の判決との整合性などについて議論されています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:<span>1審と2審の判断が割れるということは,それだけ難しい問題だということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。預託金は,「預けたお金を返せ」というもので,当然返してもらえるはずのものを返してくれないのは不当だという判断が前提にありますが,年会費の問題は,利用者であれば景気の変動で会費の値上げは了解しているだろうという,受益者負担の考え方が前提にあるような気がしますね。いずれにしても,年会費の増額については,承諾をしていない会員も支払義務を負うことがあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:わかりました。そうすると,ご相談者も支払義務があるとされてしまうことがあるということですね。どうもありがとうございました。</div>
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2011-03-30T00:00:00+09:00
第54回:保釈制度について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=164#block111-164
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">ニュースを見ていて,「保釈」という制度があるのに疑問を持ちました。なぜ悪いことをした人がお金で釈放されるのでしょうか。(50歳,主婦)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:今週も,先週に引き続き刑事事件に関する疑問です。保釈という制度,確かに同じように感じる方もおられるでしょうね。いかがでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:お気持ちは分かりますが,ご質問には,幾らか誤解もあるようです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:誤解というと,どんなことでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:まず,警察が逮捕しても,その人が「犯罪者」とは限りません。犯罪をしたか判断するのは裁判所であり,裁判で有罪判決を受けるまでは,その人は無罪と扱われます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:推定無罪,というものですね?映画でもそんなタイトルのものがありましたよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:そうですね。スコット・トゥローという小説家が原作者で,映画ではハリソン・フォードが主演をした名作ですよね。日本でも推定無罪という言葉が使われますが,私たちは「疑わしきは被告人の利益に」という言い方をすることもあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:なぜ有罪判決を受けるまでは,無罪と扱われるのでしょう。マスコミでは「容疑者」として報道されて,この人は怪しいな,ということは結構ありますよね。自白している場合もありますし。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:これは,かつて無実の人を有罪にしたことへの反省です。マスコミは,主に警察発表をもとに報道するわけですが,警察発表が正しいとは限りません。それで,裁判官を納得させる証拠が出て来て,有罪と判断されるまでは無罪と扱うということになったんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:なるほど。そうすると,ご質問に「悪いことをした人」とあるのは,必ずしも正しくないということですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:はい。そうですね。そして,保釈という制度を理解するためには,裁判までの手続を理解する必要があります。逮捕から裁判(公判)までの流れを簡単にご説明しますね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:はい。お願いします。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:犯罪の嫌疑で警察に逮捕されると,検察官に送致され,「勾留<span>(こうりゅう)」という手続がとられます。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:逮捕,勾留ですね。報道では「容疑者」として扱われているところですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:そうですね。法律用語では,正確に言うと「被疑者」ですね。ここで,最長20日間の勾留を経て,検察官によって裁判所に公訴が提起されます。これを起訴といいます。起訴とは,検察官が国の代表者として原告となり,捜査段階で集めた証拠をもとに被告人を相手に訴えるということです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:起訴されると,被告になるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:はい。正確には,「被告人」といいます。マスコミは「被告」と標記しますが,被告というのは民事事件のときに使う言葉で,刑事事件では「被告人」というのが正確なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:被告人ですか。なるほど。それで,そのあと裁判になるわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:はい。裁判所において有罪の判決が出ると,懲役などの刑罰を受けるということになります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:ええと,それで,保釈というのは今の流れのどこでなされる手続なんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:保釈というのは,起訴から判決までの間までに行われるものです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:そうすると,判決を受ける前の手続なんですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:そうです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:つまり,無罪と推定されている立場のときに釈放するということですね?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:なぜ保釈という制度があるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷: 被告人は裁判の当事者として,自分に有利な証拠を集めて提出する立場です。対等な立場で防御するためには,国から身体を拘束されているのはおかしく,原則として自由でなければなりません。また,有罪とされるまでは無罪と扱われる被告人が,あたかも刑罰のような勾留をされるのはおかしいことなんです。そこで,保釈を請求するのは被告人の権利となっており,裁判所は,証拠隠滅や逃亡の危険があるような一定の場合を除いては,保釈を許可しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:なるほど。それで,大きな事件でも,保釈されることがあるんですね。よく「保釈金いくら」ということを聞きますが,それはなんですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:はい。保釈して身柄を釈放するといっても,裁判の前に逃げられてしまったら,裁判の意味がありません。それで,身柄を釈放する代わり,被告人からは「保釈保証金」をいわば人質にとって,「逃げたら没取(ぼっしゅ)するぞ」と警告して釈放するんです。没取というのは,没収という刑罰と間違われやすいので,業界では「ぼっとり」と読むことがあります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:ぼっとりですか,なんとなく響きがよろしくありませんけど…。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:よろしくありませんねえ。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:この保釈保証金は,大体どの程度の金額なんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:人によって違います。その人が,これを取られたらきついなあ,と思う額が定められます。最低でも<span>150万円から200万円程度はかかります。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:このお金は戻ってくるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">板谷:はい。保釈保証金は,逃亡や証拠隠滅等をせずに裁判を終えれば返してもらえます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.15pt">柳田:なるほど。分かりました。</div>
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2011-03-23T00:00:00+09:00
第53回:執行猶予について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=163#block111-163
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">刑事裁判についての報道で,「執行猶予付きの懲役刑」という言葉をよく耳にします。でも,どういう意味なのか,今ひとつ分かりにくいのです。教えて下さい。(65歳,男性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:今週は,刑事裁判についてのご質問ですね。確かに,「執行猶予付きの懲役刑」っていう言葉,懲役刑なのに執行猶予ってどういうことなのか,よく分からないですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:確かにちょっと難しいですよね。懲役刑の判決には,大きく分けて「実刑判決」と「執行猶予付きの判決」があるんです。実刑判決というのは,執行猶予が付かないこと,つまり,すぐに刑務所に入るという判決ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:そうすると,執行猶予付きというのは,すぐに刑務所には入らないということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:そうですね。執行猶予付きの判決では,「主文。被告人を懲役<span>2年に処する。ただし,この裁判が確定した日から5年間,その刑の執行を猶予する。」などと宣告されます。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:先に懲役何年というのが来て,ただし,執行猶予するという形なんですね。判決を宣告された瞬間はドキッとするでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:そうなんです。人によっては,懲役何年というのを聴いて目の前が真っ暗になってしまって,執行猶予というのが耳に入らなくて,あとで弁護人から執行猶予されたんですよ,よかったですねといわれて気づくという人もいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:そうでしょうね。さて,執行猶予って,どんな判決でもつけられるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:刑法では,一定の条件に当てはまる人が「<span>3年以下の懲役などの言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その執行を猶予することができる。」とされています。そして,「刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予の期間を経過したときは,刑の言渡しは,効力を失う。」ともあります。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:このあたりから難しくなるんですけど,つまり,懲役刑の言い渡しがあるわけですから,有罪判決であることには間違いないということですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:はい。有罪判決です。ですが,すぐに刑務所に入れられるというわけではありません。一定の期間は懲役刑の執行が猶予され,その間に執行猶予の取消がなく過ごした場合には,刑の言渡しが効力を失うということです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:刑の言い渡しが効力を失うということは,判決が効力を失うわけではないので,無罪になるわけではないということですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:そうですね。懲役刑という刑の言渡しが効力を失うということです。ですから,無罪になるわけではありませんが,刑務所に入らなくても良くなります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:なぜ執行猶予という制度があるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:これは,情状酌量の余地があったり,初犯だったりして,社会で更生が期待できるような場合には,刑務所に入れるよりは様子を見る方がよいからです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:確かに,刑務所に入れると,社会的なレッテルも貼られますし,服役させるのに国のお金も使うわけですしね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:そうですね。刑務所で一人を養うために,<span>1か月20万円以上の費用を要するといわれています。社会で更生が期待できる人を,わざわざ国でお金をかけて服役させる必要はないわけですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:確かにそうですね。執行猶予期間中の制限は特にないんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:特にありません。生活や住居の規制もありません。ただし,海外渡航については,受け入れ先の国によっては入国を制限される場合もあります。また,一定の職業については,執行猶予期間中だと資格が得られない場合がありますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:執行猶予の取消という場合もあるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:はい。執行猶予期間中に再び犯罪をして裁判にかけられ,再度の執行猶予も付かない場合,執行猶予が取り消されて,以前の懲役刑と今回の判決の結果を合わせて受けることになります。そのため,執行猶予期間中のことを,いつも持ち歩き,食べたら無くなってしまうものという意味で「弁当持ち」と呼ぶ人もいますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">柳田:弁当持ちですか。とにかく,こういう言葉を使わなくてもいいように,悪い事はしないようにしたいですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 35.4pt">板谷:そうですね。特に交通事故も犯罪になりますので,日頃の運転から気をつけたいですね。</div>
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2011-02-23T00:00:00+09:00
第52回:相続放棄と生命保険
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=162#block111-162
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">先日夫が亡くなりました。夫には財産がなく,借金が多かったため,相続放棄をしました。その後,夫の生命保険の受取人が私になっていることがわかりました。受け取っても大丈夫でしょうか?(70歳,主婦)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:今週は,相続のご相談です。ご主人の負債が多かったため相続放棄をした,ということですが,ではまず基本的なところからお聞きしていきます。相続すると,亡くなった方の借金も負うことになるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい,自分が相続することを承認すると,相続人は,亡くなった方,この方を「被相続人」といいますが,被相続人のプラスの財産だけでなく,借金などの債務も承継します。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:いわゆる「負の遺産」ということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。被相続人のプラスの財産もマイナスの遺産も全部引き継ぐことになります。これを「単純承認」といいます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:でも,相続人とすれば,亡くなった方に借金があるときに,全部背負わなければならないとすると不合理ですよね。自分で作った借金ではないのですから,相続なんてしない方がいいですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。そこで,相続人は,単純承認をする前であれば,被相続人の債務を承継するかしないかの選択ができます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:承継しないこともできるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。相続開始があったことを知ってから<span>3か月以内に,「相続放棄」をすることができます。相続放棄をすると,初めから相続人とならなかったものとみなされます。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:よかったです。そうすると,債務があることが分かっていれば,亡くなったことが分かってから<span>3か月以内に相続放棄をすればいいんですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:相続放棄をするにはどうすればいいんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:家庭裁判所に「相続放棄の申述」という手続を行う必要があります。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:「申述」って難しい言葉ですけど,申し述べるという字を書くんですね。具体的にはどういう手続でしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:戸籍謄本や住民票などの必要書類と<span>800円の収入印紙を添えて,裁判所に備え付けてある申立用紙に記入するだけです。予め裁判所に行って細かい必要書類を尋ねることもできますし,大体の内容は裁判所のウェブサイトにも掲載されています。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうすると,相続放棄というのはそんなに難しくないということですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:はい。全然難しくありません。もちろん,弁護士などの専門家に依頼することもできますが,<span>3か月以内の相続放棄であれば,ご自分でも十分に手続できますね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。さて,相続放棄というのは,被相続人が亡くなったことを知ってから<span>3か月の間は,自由にできるということなんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:実は,「法定単純承認」といって,<span>3か月以内に一定のことをしてしまうと,相続放棄ができなくなることがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:法定単純承認ですか。たとえばどんなことでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:相続放棄前に相続財産の全部または一部を処分したり,相続放棄後に相続財産の全部または一部を隠匿したり消費したりした場合には,単純承認をしたものとみなされてしまいます。つまり,負の遺産も承継してしまいます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:そうすると,たとえば,相続財産である預金をおろして,自分たちの生活費に回してしまったような場合には,もう相続放棄できなくなるということですね?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そうなんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:怖いですね。そうすると,たとえば,被相続人と一緒に住んでいたわけではない人が相続人となっていて,被相続人が亡くなったことを知らずに相続財産を処分してしまっていたというような場合はどうなのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:相続人が相続の開始を知らずに処分した場合には,単純承認にはあたらないとした判例があります。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:では,亡くなった方のお墓を作るための費用として,亡くなった方の預金口座を解約して使ったというような場合はどうでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:まさに限界の事例ですね。裁判では,<span>1審では処分にあたるとされ,2審の高等裁判所で処分にはあたらないとされたものがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:では,ご相談の場合についてですが,被相続人が契約していた生命保険の受取人が,相続人でもあるご相談者に指定されているというような場合がありますよね。それを受け取ると法定単純承認に該当してしまうのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:いえ,この点,最高裁の判決は,保険金受取人は固有の権利として保険金を取得するとしています。法律用語で「原始的取得」といいます。つまり,相続により承継するのではなく,初めから受取人の財産として取得するのです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:初めから受取人の財産として取得するというと,そもそも相続財産ではないということでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:そういうことです。相続放棄をしたご相談者が保険金を受け取ったとしても,相続財産を受け取ったことにはならず,法定単純承認にはあたりません。安心してください。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:なるほど。これは,受取人が「相続人」と指定されていた場合も同じですか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">板谷:同じです。相続人と指定されていても,相続によって取得するわけではないので,その後も相続放棄はできますし,相続放棄をしたあとで受け取ることもできます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24.5pt">柳田:わかりました。では,保険金は感謝して受け取ってよいということですね。ありがとうございました。</div>
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2011-01-26T00:00:00+09:00
第51回:日照権
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=161#block111-161
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">我が家の東側の土地に,大手の業者が高層マンションを建築しました。そのマンションのせいで家の中が暗くなり,憂鬱な気分です。損害賠償は請求できますか?(60歳,主婦)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今週は,隣近所の建物の問題です。現代ならではの問題ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。日照権についての問題ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:家の東側に高層マンションが建つと,日中は日の光が入らなくなったりするわけですよね。長野だと,雪がなかなか溶けなくなったりして,本当に迷惑なんですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:では,今回のケースは日照権侵害ということで損害賠償請求ができるのですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:周辺の地域性や日照被害の程度などにもよりますが,損害賠償請求ができる場合もありますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。それでは,少し詳しくお聞きしていきます。まず,そもそも,こういう高層マンションの建設には規制がないんですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:あります。建築基準法では,建物の大きさや高さだけでなく,「日影規制(にちえいきせい又はひかげきせい)」,つまり近隣に一定の時間以上の日影を生じさせてはならないという規制を行って近隣住民の日照権を保護しています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:日影規制ですか。そうすると,建物を建てるときに,既に日陰となる部分がはっきりしているわけですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。建物を建てるには,建築確認申請書を提出して建築確認をもらわなければなりませんが,その申請の際,「日影図」という冬至の日影の形状を示した図面を添付しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:その日影図というのは,近所の人たちも見ることができるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:大きなマンションが建つときは,建築前に近隣住民への説明会などがあります。こういうときに,求めれば見せてもらえることが多いです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:さきほど,建築基準法の規制があるということでしたが,この規制に違反したときはどうなるのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:建築基準法の日影規制に違反すれば,そもそも建築確認が下りず,違法建築となります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:仮に,近所にできる予定の高層マンションがこの日影規制に違反していることがわかったときは,近所の人たちはなにかできないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:建築の差し止め請求などをすることができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。では,逆に,建築基準法の日影規制をクリアしていれば,違法建築とならないわけですよね。そうすると,損害賠償請求は難しいような気がするんですが…。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:建築基準法の要件を充たしているとしても,損害賠償の問題が生じないわけではありません。建築基準法は国や地方自治体による取り締まりのための法律であって,民間人同士の損害賠償の問題とは別のものだからです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。どういうときに損害賠償の問題になるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:ここで出てくるのが,以前にも取り上げた「受忍限度」です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:受忍限度というのは,以前,近所に葬儀場ができたときに出てきましたよね。通常の社会生活では我慢しなければならないということでしたね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。「一般通常人ならば社会共同生活を営む上で当然受忍すべき限度を超えた利益または権利の侵害を被ったときにのみ違法性がある」という考え方ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:では,日照権の問題での受忍限度というのは,どのように判断されるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:裁判所は,受忍限度を超えているかどうかを判断する際には,被害の程度や地域性,建物の用途をはじめとするいろいろな要素を総合的に考慮していますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:具体的に,「地域性」というのはどんなことをいうのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:たとえば,周辺が高層マンションばかりの場所と,一軒家ばかりの住宅地とでは地域性が異なりますから,受忍限度にも差が出ます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうすると,そういういろいろな要素により損害賠償の可否も異なるということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:損害賠償を請求できるときというのは,どんな風にして請求するのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:慰謝料ですので基準は特にありませんが,一般的に示談で解決するときは,日照<span>1時間あたり何万円という形で合意することが多いようですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:わかりました。どうもありがとうございました。</div>
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2010-12-29T00:00:00+09:00
第50回:物損の慰謝料
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=160#block111-160
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">長年乗っている愛車が,物損事故で大破してしまいました。私に怪我はありませんでした。この車は,登録から<span>12年経っている国産車なのですが,私には愛着があります。相手の運転者に慰謝料を請求できますか?</span>?(50歳,会社役員 男性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt; vertical-align: baseline; punctuation-wrap: simple"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:今回も,前回に引き続き交通事故のご相談です。前回は人身事故でしたけど,今回は物損事故ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:はい,そうですね。損害の種類は,?怪我・死亡などの人身損害(人損)と,?車が壊れたなどの物的損害(物損)に分けられます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:そうすると,まず,人身事故の場合には,どんなものを請求できるのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:?人身事故の場合,治療費や休業損害などの財産上の損害に加え,それ以外の損害すなわち精神的苦痛に基づく慰謝料を請求できます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:では,?物損事故の場合,被害者はどのような請求ができるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:被害を受けた車両の修理が相当な場合には,適正な修理費相当額を請求できます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:これは,修理をする前であってもいいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:そうですね。修理をする前でも後でも,適正な額であれば請求できます。修理をする前であれば見積書がありますし,修理をした後であれば請求書があれば大丈夫ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:では,見積書や請求書に記載されている金額がそのまま支払われるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:いえ,そういうわけではありません。あくまで修理代金の損害賠償が認められるのは,事故による損害のみです。ですから,事故の修理という名目で,ずっと前に自分でぶつけた部分も直してしまうなどという,事故と因果関係がない部分まで修理をしたりすると,あとから修理代金を争われたりします。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:では,たとえば,修理をすると車両の時価等よりも高くつくような場合とか,修理が不可能なほど壊れてしまった場合などもありますよね。そういう場合にはどうなるんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:修理をすると車両の時価等よりも高くつくような場合とか,修理が不可能なほど壊れてしまった場合には,「全損」という扱いとなり,事故時の時価相当額と事故車の下取価格の差(買替差額)を請求できます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:事故時の時価相当額ではなく,それと事故車の下取価格の差しか請求できないというのはなぜでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:事故前の車の時価の損害賠償を全額受けると,被害者のところに残っている事故車の売却代金あるいはスクラップ代金と時価の<span>2重取りになってしまいます。それで,事故車の下取り価格との差を出すわけです。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:たとえば,修理費用が車両価格を上回ってしまって,すでに修理をしてしまっているという場合も,事故前の時価相当額しか請求できないということでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:そうですね。すでに修理をしていたとしても,時価を上回っていれば時価までしか請求できません。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:それ以上の請求は絶対にできないのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:他に代え難いなどという特別の事情があれば,場合によっては時価を上回る修理費用が認められる場合もなくはありません。ただ,これは,ほとんど市場では手に入らない外車などの特殊な場合ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:今回のご相談のような,<span>12年持ちの古い愛車が大破して全損した場合には,時価はどうやって出すんでしょう。まさかゼロではないですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:こういう場合,事故時の車両の時価は「評価不能」となってしまいます。そのため,せいぜい減価償却の残存率をもとに数万円程度の請求しかできない,という場合も出てきます。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:でも,古くても,被害者にとっては思い出のある自動車で,数万円程度受け取っただけでは満足できない,慰謝料を請求したい,という場合もありますよね。そういう場合には,先ほどの人身事故の場合のように,慰謝料を請求できないんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:物損の場合に慰謝料を請求するということは,全く不可能というわけではありません。しかし,裁判では,物損事故の場合に慰謝料を請求するには「被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情が存することが必要」とされており,通常の交通事故ではこの「特段の事情」はまず認められません。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:そうなんですか。そうすると,事故に遭うと,通常は車の時価くらいしか賠償されないということなんですね。なんか不合理な気もしますが…。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">板谷:おっしゃるとおりで,時価をもらったところで,同じ車は買えないんですよね。そうなんですが,時価以上の賠償を認めると,今度は加害者に損害以外の賠償を認めることになりますので,日本の民法の考え方では難しいんですね。お気持ちはわかりますが,物損事故で済んで良かった,最後に愛車が自分の身を守ってくれたのだと考えて,前向きに気持ちを切り替えるのはいかがでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.85pt">柳田:なるほど。わかりました。</div>
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text/html
2010-12-22T00:00:00+09:00
第49回:低髄液圧症候群と交通事故
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=159#block111-159
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は<span>2年半前に後ろから追突される交通事故に遭いました。その後むち打ち症のような症状が出ており,めまいや吐き気がひどい状態が続いています。最近,お医者さんから「低髄液圧症候群」と診断されました。損害賠償請求は可能ですか</span>?(40歳,会社員 女性)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:今日は,交通事故のご相談です。交通事故って,車に乗っている人は常に隣り合わせのものですが,本当に嫌なものですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:本当ですね。事故の内容によっては,一生の生活が狂ってしまうこともあります。自分では注意をして運転していても,巻き込まれてしまうことがありますから,厄介ですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:さて,今回は「低髄液圧症候群」という耳慣れない病気が出て来ていますが,板谷さん,これはどういう病気なのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:低髄液圧症候群(または,脳脊髄液減少症)とは,髄液の漏れなどの原因で,頭痛やめまい,自律神経の異常等が出るという症状です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:最近出て来た病気なのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:病名自体は古くからありますが,近年,ある医師のグループが「むち打ち症の原因は低髄液圧症候群だ」「こうした症状はブラッドパッチという療法で治せる」という説を発表し,マスコミが大きく取り上げられました。その結果,裁判で「交通事故が原因で低髄液圧症候群になった」として損害賠償請求をするケースも多く見られるようになっています。ブラッドパッチ療法は激しい痛みを伴いますので,このような療法による被害者感情も手伝っているようですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:そうなんですか。そうすると,従来のむち打ち症といわれてきたものも,最近は「低髄液圧症候群」という診断がなされることがあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:では,交通事故で低髄液圧症候群になったということで,損害賠償請求はできるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:不可能ではありませんが,「低髄液圧症候群」という診断を基にした損害賠償請求は極めて困難な状況です。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:というと,どういうことなのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:残念ながら,近年,低髄液圧症候群であることを認定して損害賠償請求を認めた裁判は極めて少数にとどまっており,低髄液圧症候群を否定した上での判断がなされることが一般的となっているんです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:でも,医師は「低髄液圧症候群」と診断しているわけですよね。医療のプロではない裁判所が,それを否定するのはおかしいと思うんですが…。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:確かにおっしゃることはわかるのですが,医師の診断というのは,あくまでも患者を治療するために行われるもので,相手に損害賠償請求をするためのものではないんですよ。損害賠償の問題は,「被害者の救済」というだけでなく,「加害者にそこまで責任を負わせるのが公平かどうか」という,「損害の公平な分担」という観点で考慮されます。そのため,医師の判断と裁判所の判断が異なることは多くあるんです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:そうなんですか…。では,「低髄液圧症候群」が裁判で否定されてしまう原因はどこにあるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:その理由は,「髄液の漏れ」等が画像で診断されることが少なく,症状が自覚症状にすぎないと判断されることが多いからです。これを,難しい言い方ですが,「他覚的所見が乏しい」というふうに言います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:そうすると,髄液の漏れというのがレントゲンなどではっきり見えないと,損害賠償請求は難しいということでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:いえ,必ずしも「低髄液圧症候群」という認定がされなくとも,一定の神経症状があるという点で後遺障害として扱われることもあります。後遺障害等級の<span>14級などという言い方をするんですが,むち打ち症の症状がひどい場合にはそうした後遺障害等級に該当して損害賠償請求ができる場合があります。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:なるほど。そうすると,交通事故の被害者としてはあきらめないで請求するべきだということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:では,最後に,そういう請求をするために普段からしておくべきことなどはありますか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">板谷:日常の症状などについて詳細なメモをとっておくと,いいと思います。日記でもノートでも結構ですので,事故前には無かった症状がこのように出てきているということを,具体的に残しておくと良いですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 25.3pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2010-11-24T00:00:00+09:00
第48回:家の近くの葬儀場
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=158#block111-158
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私の家の近くに葬儀場があり,毎日喪服を着た人や霊柩車が近くを通って非常に嫌な気分です。このストレスのせいか,うつ病になってしまいました。葬儀場から慰謝料をとることは可能ですか??(55歳,主婦)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:今週は,近所に葬儀場がある方からのご相談です。葬儀場が近くにあると嫌な気分がするというのは,お気持ち,よく分かります。この場合,慰謝料は取れるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:お聞きした内容だけでは,もちろん断定的な答えはできませんが,残念ながら通常は慰謝料は困難だと思いますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:そうなんですか。毎日喪服を着た人や霊柩車が近くを通って非常に嫌な気分だということですが,もともと,こういう内容自体が慰謝料の対象にならないということでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:いえ,私たちは誰でも「他人から邪魔されずに平穏な日常生活を送る利益」を有しています。これは人格権とか人格的利益などと呼ばれ,この利益を害したという理由で慰謝料請求をすることがあります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。そうすると,「近くに嫌な施設があると,自分の平穏な日常生活が害される」ということで人格権の侵害になるような気がするんですが…</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,確かにそのようにも思えますね。しかし一方で,人間は「人」の「間」と書くように,一人で生きているのではありません。人里離れた山奥において独りで隠とん生活をしているならともかく,通常の社会生活をするためには,他人との関わりを避けることができないですよね。どこに住んでいても,互いにある程度我慢したり,自分の人格的利益を譲ったりしなければならない部分があります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど,そうすると,単に近くに嫌な施設があるというだけでは,慰謝料の対象にならないことがあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:はい,これを法律の世界では「受忍限度」といい,「一般通常人ならば社会共同生活を営む上で当然受任すべき限度を超えた利益または権利の侵害を被ったときにのみ違法性がある」といわれています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:「受忍限度」というのは,「受ける」という字と,「忍ぶ」という字で「受忍」ですね。つまり,ある程度社会生活では我慢しなければならないということですかね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。これは,たとえばマンションやアパートの騒音などにも当てはまります。近所の音が気になる時ってありますよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:あります,あります!深夜だと,歩いている音とか,シャワーの音などの生活音が気になるんですよね。一度気になり出すと,なんだか気になって気になって仕方なくなります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですよね。でも,マンションやアパートで生活をしている以上,壁を隔てて音が漏れるのはある程度仕方ありません。ですから,深夜のステレオの音が尋常ではないほど大きいとか,夜にドタバタする音があまりにも響いて普通ではないとか,そういう当然我慢すべき限度を超えているような場合にのみ,損害賠償の対象になることがあるんです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:では,近くに葬儀場があることや喪服を着た人や霊柩車が近くを通ることは受忍限度を超えているのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:確かに,毎日そのような風景を見ているとすれば,精神的なストレスを感じて平穏な日常生活を送れないというのも分かります。しかし,今年の<span>6月に出された最高裁判決では,葬儀場と家との間が15メートル近く離れていることや,家から葬儀場が見える場所は2階に限られていること,葬儀場も目隠しフェンスなどをして配慮していることなどの理由で,受忍限度を超えていないとしました。ですから,具体的な事情にもよりますが,ご相談の内容だけでは,慰謝料の請求は難しいと思われます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:なるほど。分かりました。でも,こういう隣近所の問題って,なかなかこじれると厄介ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">板谷:そうですね。ですから,法律問題はさておき,隣近所で普段お世話になっているわけですから,お互いに譲歩する気持ちが大切でしょうね。ですから,葬儀屋の方も,ご近所迷惑にならないように,最大限努力すべきでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 24pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2010-10-27T00:00:00+09:00
第47回:離婚と子どもの苗字
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=157#block111-157
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私と夫の間には<span>5才の子がいます。この度,性格の不一致から離婚することになりました,親権者は私がなることとなりました。</span>私は旧姓に戻しますが,子どもの苗字も私の旧姓に変わりますか?(35歳,主婦)</div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:今週は離婚のご相談です。離婚のご相談は以前にも取り扱っていますが,離婚というのは,全国的に増えているんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:厚生労働省の統計によると,平成<span>21年には,結婚したカップルが71万4000組だったのに対して,離婚したカップルは25万3000組で,2分5秒に1組が離婚していることになるんですね。若干ですが増えてきているようですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:板谷さんの事務所では相談が多いのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:多いですね。うちの事務所は女性弁護士もいるためか,女性からのご相談も多いですね。もちろん,男性からのご相談も多いです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田;そうですか。さて,今回は親権者とか苗字とかの問題ですが,離婚の時にこういうことも決めなければならないんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:はい。離婚の際には,決めるべきことが沢山あります。その中に,?子の親権者の指定,?婚姻で氏(苗字)を変更した配偶者は,氏の継続使用をするかどうかということが含まれます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:親権者を指定するんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:はい。夫婦に未成年の子がいるとき,離婚の際に父母のどちらかを親権者に指定しなければならなりません。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:両方とも親権者になるということはできないんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:できないんです。もっとも,これには批判もあり,日弁連などは共同親権にすべきだと主張しています。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:親権者をどちらにするかで揉めることはないんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:ありますよ。特に長野は農家も多いですから,長男を跡継ぎと考えて,双方が親権を主張するというケースが多くありますね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:話し合いで決まらなかった場合にはどうするんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:調停を申し立てて,それでも決まらなければ,最終的には審判や裁判で裁判所に決めてもらうこととなります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:母親が親権者になることが多いと聞いたことがあるんですが…。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:一般的には「母親が親権者になることが多い」と言われることもありますが,一概にはいえません。審判や裁判では,双方のこれまでの監護状況・収入・生活状況などから,どちらが親権者になる方が子どもの福祉にとって最善かという観点から親権者が決定されます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:親の事情ではなくて,子どもの福祉にとって最善かどうかということなんですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:そうですね。そのために,専門家である家裁の調査官が調査をすることもあります。調査官が子どもと面接したり,子どもと親が一緒に居るところを観察したりして,父親と母親のどちらが親権者としてふさわしいかを判断します。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:なるほど。さて,次に苗字の変更ということですが。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:はい。苗字のことを法律では「氏」と言いますが,婚姻によって氏を変更した配偶者は,離婚により,原則として婚姻前の氏(旧姓)に戻ります。でも,旧姓に戻ると仕事上などいろいろ不都合だという場合もありますので,離婚の日から<span>3か月以内に届け出ることによって,婚姻後の氏を継続使用することもできます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:なるほど。原則として旧姓に戻るけれど,<span>3か月以内に届ければ旧姓に戻さないこともできるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:では,ご相談の場合のように,旧姓に戻した配偶者が親権者となる場合,子どもの氏も変更されるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:いいえ,当然には変更されないんです。親権者となった親が婚姻前の氏に戻っても,子の氏は変更されずに,離婚後も婚姻中の戸籍筆頭者の戸籍に残るんです。そのため,苗字はそのままです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:ええ〜っ!でも,そうすると,親子の苗字が違うということになってしまいますよね!</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:そうですね。もっとも,親権者と子の氏が異なるのは不便ですので,家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」という簡単な申立ができます。この許可を得て役所に入籍届をすると,変更された氏での戸籍が編製されます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:この申立は簡単なんですね?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">板谷:はい。簡単です。定型の書式が裁判所に備え付けてあります。詳しくは家庭裁判所に聞いて下さい。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 27.7pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2010-09-29T00:00:00+09:00
第46回:私有地の駐車違反
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=156#block111-156
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">先日,短時間だからいいやと思って,「無断駐車は<span>3万円申し受けます」と書いた駐車場に1時間ほど停めてしまいました。戻ってくると,駐車場の持ち主がカンカンに怒って「無断駐車は3万円と書いてあるじゃないか。3万円支払え」と言ってきています。払う必要はあるのでしょうか。(25歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:今週は無断駐車の話です。ご相談者には失礼ですけど,こういう駐車って,本当に迷惑ですよね〜。私も似たような経験でいらいらさせられた事があるので,よく分かります。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:そうですよね。駐車場は他人の土地ですから,勝手に停めてはいけませんよね。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:そうすると,当然<span>3万円支払うべきということですね?</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:いえ,<span>3万円までは支払う必要はないですね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:ええ〜っ,そうなんですか。だって,「無断駐車は<span>3万円申し受けます」と書いてあるところに駐車しているわけですよね。当然,3万円を払うということを了承した上で停めたということにならないんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:停めただけで<span>3万円支払うことについての契約が成立したと解釈するのは,ちょっと無理がありますね。ですから,了承した上だからいいというのはちょっと無理なんです。</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:でも,損害賠償として<span>3万円くらいは請求できないんでしょうか。本当に迷惑な駐車などもあるんですけど。</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:もちろん,他人の土地に勝手に駐車したわけですから,他人の権利を故意過失で害していることになります。ですから,損害賠償の支払い義務はありますね。そして,損害賠償として,迷惑をかけてしまった実費を弁済しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:実費,つまり実損害ということですね。この場合,どれくらいが実損害なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:実際に駐車した分の賃料相当額でしょうね。今回のケースは1時間なので,高くてもせいぜい1000円でしょう。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:賃料相当額しか請求できないんですか…。では,たとえば駐車場の管理人などが,無断駐車の車をレッカー移動した場合にはどうですか?</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:つまり,その駐車場を使用するために,やむなく無断駐車の車を移動したような場合ですね。その場合は,レッカー代や保管費用を請求することができます。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:おまわりさんに通報してもだめなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:警察は公道でないので駐車違反として取り締まることはできませんね。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:たとえば,迷惑な車だからといって腹いせにコインで傷つけたりしたらどうなりますか?</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:逆に損害賠償をしなければならなくなりますし,器物損壊罪ということで刑事責任を負う可能性もあります。日本は法治国家で,自力救済,つまり自分の力で制裁を与えるようなことは禁止されています。ですから,報復として傷つけるようなことはしてはいけないんですね。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:そうなんですか。でも,迷惑な駐車は困りますね。</div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">板谷:そうですね。もちろん,無断駐車は迷惑であり,マナー違反です。<span>3万円払わなくて良いというのと,停めてよいというのとは違います。運転者のマナーとして,こういう場所に無断駐車をするのはやめて欲しいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.8pt">柳田:そうですね。ありがとうございました。</div>
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2010-09-22T00:00:00+09:00
第45回:リフォームトラブル
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=155#block111-155
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">中古住宅を購入し,リフォームしてもらいました。ところが,引渡を受けてすぐに,リフォーム箇所から雨漏りが発生し,すぐに直してもらいました。その<span>1年後,同じ箇所から雨漏りがしました。直してもらうことはできますか?(50歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:今週は,リフォームに関するトラブルということですね。せっかくリフォームをしたというのに,残念ですよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:そうですね。住宅の問題は,このように仕上がった後から出てくることがあって,しかも生活に密着した問題なだけに,深刻ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:さて,今回のご相談ですが,引き渡しを受けてからすぐに一度直してもらって,その後<span>1年してから同じ箇所からまた雨漏りがしてきたということですね。この場合,直してもらうことができるんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:はい。直してもらうことができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:そうですか。それでは,その理由を教えて下さい。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:リフォームの依頼は,法律上は「請負契約」となります。住宅の一部をリフォームした場合,引渡又は仕事の終了時から<span>1年間,リフォーム業者に瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)を追及することができます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:瑕疵担保責任って,難しい用語ですけど,どんな意味なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:「瑕疵」とは,「欠陥」というような意味の法律用語です。つまり,リフォームした箇所に不完全な部分があれば,「瑕疵」があるということになり,その部分の修理等を依頼することができます。これを,「瑕疵修補」といいます。また,損害賠償を請求したりすることができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:でも,業者にとっても,いつまでもリフォームをしなおさなければならないというのは酷ですよね。期間制限などはないのですか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:引き渡しから<span>1年と決まっています。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:<span>1年ですか。では,ご相談の場合のように,再びリフォームの箇所に異常が生じたときには引渡から既に1年以上経過しているような場合,業者に責任追及ができるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:はい。少しややこしいですが,瑕疵担保責任による責任追及をするためには,<span>1年の期間内に,担保責任を問う意思を明確に告げれば,引渡から10年の消滅時効期間が経過するまでは,瑕疵修補や損害賠償を請求することができます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:ええと,難しいんですが,消滅時効期間というのが引き渡しから<span>1年ではなく,10年なんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:そうなんです。瑕疵担保責任の期間制限は<span>1年ですが,消滅時効は10年なんです。ですから,引き渡しを受けてから1年以内に修理を請求しておけば,そこでいったん権利が保全されて,あとは引き渡しから10年までは請求が可能なんです。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:ご相談の場合には,引渡を受けてからすぐに,一度修理を請求していますよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:そうですね。ですから,<span>1年の期間内に担保責任を問う意思を明確に告げたことになります。そうすると,引渡を受けてから10年の間は,同種の不具合が出ても修理を依頼することができます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:なるほど。でも,こうなると,最長で<span>10年近く業者の責任を追及することができることになるんですね。その間に業者が倒産してしまう危険性もあるような気がするんですが…。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">板谷:そうですね。そこで,最近はリフォーム瑕疵保険というものもあり,工事の後瑕疵が見つかったような場合,保険が下りることになっています。リフォームを依頼するときには,業者がこのような保険に加入しているかどうかを確認するとよいでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 28.9pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2010-08-25T00:00:00+09:00
第44回:賃金の未払
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=154#block111-154
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; text-indent: 12.25pt; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple">私は市内の会社で働いていましたが,1年分近く賃金を支払ってもらえず,<span>1年弱前にその会社を辞めました。賃金を支払ってもらうためにはどうすればよいのでしょう。</span><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">(35歳女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:今回は未払賃金の問題ということですね。最近は不景気の影響で,このようなご相談も多いのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね,このようなご相談をお受けすることも多くありますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:賃金の支払いというのは,労働者の生活に直接関わるものですよね。きちんと仕事をしているのに,賃金を貰えないのであれば,働く意味がないですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね。そのため,労働基準法では,原則として賃金を?通貨で?直接,?全額を支払わなければならず,?毎月<span>1回以上?一定期日を定めて支払わなければならないとされています。これを賃金支払いの5原則といいます。賃金の未払いには刑事罰も定められています。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:そうすると,賃金支払いに対しては,会社に厳しい扱いがなされるんですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:でも,実際にご相談のようなケースが多いわけですよね。ご相談のケースは,どうすればよいのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:労働基準監督署に相談するということもできますが,時効期間が迫っていますので,支払いを請求する内容証明郵便を送って交渉し,会社が応じなければ,労働審判や裁判の手続によるべきでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:ええと,時効期間というのがあるんですか?貸したお金などの債権については,<span>10年が時効だと聞いたことがあるのですが,違うんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:労働基準法では,退職金以外の賃金,たとえば給料や残業手当の消滅時効期間は<span>2年,退職金の消滅時効期間は5年とされています。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:消滅時効というのは,つまり,賃金の未払いがあるとしても,<span>2年を経過すると,会社は「時効です」と主張して支払わなくてよくなってしまうということですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね。もちろん,会社は時効ですと主張せずに支払うこともできますが,時効ですと主張すれば,支払わなくてよくなるんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:そうすると,ご相談者の場合には,「1年分近く賃金を支払ってもらえず,<span>1年弱前にその会社を辞めた」ということですので,古いものでは2年の期間が迫っているものもあるということですよね。では,2年の時効期間が迫っている場合にはどうすればよいのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:まず,内容証明郵便によって催促するのが効果的です。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:内容証明郵便って,以前のご相談でも取り上げましたが,郵便局で提出するものですよね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね。示談交渉などでよく用いられますが,このように時効を止めるためにも用いられますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:内容証明郵便で請求すると,時効が止まるんですね?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:いえ,よくそのように誤解されているんですが,内容証明郵便での催促だけでは時効は止まらないんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:どういうことですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:時効を止める,というのは,法律上は「時効の中断」と言います。時効が中断すると,時効が止まるというよりも,時効期間はふりだしに戻って,またカウントし直すことになるんです。時効が中断する場合というのはいくつかありますが,その中に,「請求」というものも含まれています。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:つまり,「早く支払ってくださいよ」と請求すれば,時効が中断するということですよね?そうすると,内容証明郵便での請求で,時効は中断するのではないのですか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:実は違うんです。時効が中断する「請求」というのは,裁判所の手続を使って請求した場合,たとえば訴えを提起したというような場合のことを指すんです。内容証明郵便での催促は,法律上は「請求」ではなくて,「催告」という扱いになるんです。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:なんだかよく分からないんですけど,請求と催告ってどこが違うんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:催告してから<span>6か月以内に裁判等の手続をとると,催告をしたときにさかのぼって時効が中断し,時効期間はふりだしに戻るんです。そういう意味で,催告は「暫定的に時効中断をする効力がある」などという言い方をされます。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:なるほど!それで,催告をしたときをはっきりさせるために,内容証明で送るわけですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:この内容証明郵便で相手の会社が応じてくれればよいですが,応じてくれない場合には,どうすればよいのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:時効をきちんと止めるためにも,また,未払賃金を回収するためにも,裁判所の手続を利用する必要があります。いくつかの方法がありますが,「労働審判」か「裁判」をお勧めします。これらの手続には一長一短がありますので,詳しくは弁護士に相談していただきたいのですが,労働審判の方が早期解決ができる可能性がありますね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:それ以外に,未払賃金があるときに,遅れた分の利息みたいなものは請求できないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:未払い賃金があるときは,未払い賃金だけではなく遅延損害金も請求することができます。ご相談者の場合のように既に退職している場合に,退職日までに賃金が支払われていないときは,退職日の翌日から年<span>14.6%の割合での遅延損害金を請求できます。また,裁判では未払い賃金と同額の「付加金」を請求することもできます。労働審判では付加金請求はできません。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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2010-07-28T00:00:00+09:00
第43回:医療過誤
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=153#block111-153
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">2か月前,かかりつけのA内科医で検診をしたら,何も異状がないといわれました。しかし,どうも痛みがあるので,大きなB病院に行って検査してもらったところ,胃がんが進んでおり,2か月前に発見できていればよかったのに,ここまで進んでいると転移の可能性もある,すぐに手術が必要といわれ,手術を済ませました。A内科医の検診は間違いだったことになります。損害賠償を請求できますか? (45歳男性,会社員)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:今回は,いわゆる医療過誤についてのご相談ということですかね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:そうですね,医療に関するトラブルは,自分の体が関わることですし,信じていた先生との間のことなので,精神的にもストレスが溜まる問題ですね。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:今回のケースは,かかりつけの<span>A内科医の検査ミスということで,医療過誤訴訟を起こすということになるんでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:いえ,医療過誤訴訟を起こすというのは,そんなに簡単に決断するべきものではないんです。裁判を起こされるというのは,医師にとっては傷になります。ですから,落ち度がなかった医師を訴えてはいけません。まずは,<span>A内科医さんに検査ミスがあったか否かを十分検討しなければなりません。</span></div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">柳田:そうすると,どんなところから始めるといいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.25pt">板谷:まずは,癌が進んでいると診断した<span>B病院の先生から「</span><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">2か月前に発見できていればよかったのに」といわれているわけですので,そのあたりの事情をもう少し詳しくお聞きする必要があります。B病院に来た当時の画像の所見はこうだとか,2か月前であれば,この程度まで画像の所見があったはずだとか,通常のこういう検査であれば,この癌は発見をすることができるはずだとか,そういう意見を頂けるかどうかが一つのポイントになります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,B病院の先生からそのような意見をもらった場合,どうすればよいのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:A内科医さんの検査記録などを見る必要があります。カルテや看護記録,レントゲンの検査結果などをみることになります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:でも,お医者さんの持っているカルテなんかを見ることができるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:検査結果は自分の個人情報ですから,医者に頼めば,見せてくれることがあります。コピーまで取らせてくれるかどうかはわかりませんが,とにかく見せてもらうことは可能です。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:見せてもらったとしても,A内科医がカルテを改ざんしているなどというおそれはないのでしょうか。「白い巨塔」なんかのドラマを見ていると,お医者さんってそういうこともするのかなと。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:確かに,そういう危険も全くないわけではありません。そういうおそれがあるときは,裁判所に「訴え提起前の証拠保全」という手続をとります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:証拠保全ですか。どういうものですか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:裁判所に申立をして,カメラマンなどを同行して,裁判所の裁判官や書記官といっしょに病院に行き,カルテなどの写しを取るんです。これで,カルテなどは自分の手元に写しを置くことができますから,その後に改ざんされてもすぐに分かります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうやってカルテなどを保全したあとはどうするのでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:カルテにも,手書きのものからパソコンに入力してあるものなどいろいろありますが,ドイツ語などの外国語や略語で標記されているものが多いですから,翻訳が必要になります。そのため,専門の業者に翻訳を依頼することになります。そして,その翻訳の結果を基に検討し,必要であれば協力してくれる医師を捜して意見を求めるなどということもします。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,そうやって翻訳したカルテなどをじっくり検討して,A内科医にミスがあったと分かった場合にはどうするんでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:その場合には,まずはA内科医さんと示談交渉をするのが普通です。内容証明郵便を送って,自分たちの検討した結果はこうだった,損害賠償としていくらを請求しようと思っている,この件でご意見を聞かせて欲しい,というような形ですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:A内科医がそういう示談交渉に応じてくれない場合にはどうすればいいのでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうなると,調停とか裁判しかないですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:調停,というのは,以前にも取り上げましたが,話し合いの手続でしたよね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。ですから,相手方が応じなければ不成立なのですが,裁判よりも柔軟に話し合うことができますので,医療過誤を沢山やっている弁護士にも,調停を主として用いているという人がいます。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:裁判となると,調停よりも大変なのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:大変です。裁判は,話し合いというより,証拠を提示して裁判所を説得する手続ですから,手続が重装備で厳格です。それなりの証拠を集めて,協力医などに応援を求めないといけませんから,時間とお金がかかりますね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.9pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.65pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど。やはり,医療過誤となると,大変なんですね。十分証拠を集めて検討してからでないと,難しいということですね。本日はどうもありがとうございました。</span></div>
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2010-06-30T00:00:00+09:00
第42回:ハウスクリーニング等と敷金
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=152#block111-152
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">大学生になって,4月からアパートを借りたのですが,契約書をよく見ると,「退去時は,借主の負担で,壁紙の張り替え,畳やカーペットの張り替えを行う」という条項が入っています。退去するときに,これらの張り替えを行わないと,敷金から費用が差し引かれてしまうのでしょうか?(18歳女性,大学生)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:今回はアパートの敷金のご相談ということでしょうかね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですね。よく問題となる事例ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:通常,長野でも,入居するときに<span>2か月分くらいの賃料を敷金として請求されますよね。もともと,敷金ってどういうお金なんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:法律的には,「賃貸借契約上の債務を担保する目的で家主に交付する金銭」と言われています。平たく言うと,賃貸借契約を続けていると,たとえば賃料が滞ったり,建物に傷を付けたりなどと,いろいろな面で貸主に払わなければならないことが出てくるんですよね。それをきちんと支払ってもらうために,予め一定の額を預けるというものですね。場所によっては「保証金」という言い方をしますが,同じことですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:そうすると,建物から退去するときに,そのような債務がなければ,敷金は全額戻ってくるということですね?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:でも,私の周りで,敷金が全額戻ってきたという話は聞いたことがないんですけど,どうしてなんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:貸主から,原状回復費用を請求されることが多いからではないかと思います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:原状回復費用というのはどういうものでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:つまりは元通りに直す,修繕費という意味ですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:どういう場合に原状回復費用が請求されるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:借主が故意又は過失によって汚したり壊したりした場合ですね。逆に言うと,通常の経年劣化の場合は,賃料の中にそれらの費用が入っているわけですから,費用は請求されません。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:経年劣化というと,たとえば,壁紙が黄ばんだとか,カビが生えたとかですかね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですね。カビについては,あまりにも借り主の管理が悪いような場合には,過失有りとなってしまうかも知れませんね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:さて,そこで今日のご相談の内容ですが,今日のご相談者の場合,契約書に「<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">退去時は,借主の負担で,壁紙の張り替え,畳やカーペットの張り替えを行う」とありますよね。これは,原状回復費用のことですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:これは,単なる原状回復ではなく,通常の経年劣化も全部借主に負担させるものですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:え,でも,先ほどの話では,こういう経年劣化は全部賃料に含まれているわけですよね。そうすると,こういう条項が入っているということは,故意過失によらないものも全部負担しなければならなくなるということですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:いえ,こういう契約は,消費者契約法10条によって無効となります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:消費者契約法10条とは,どういう規定なのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:契約のなかに,消費者の利益を一方的に害する条項があれば,その条項は無効とされるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,先ほどの「退去時は,借主の負担で,壁紙の張り替え,畳やカーペットの張り替えを行う」という条項は,この消費者契約法10条で無効になる可能性があると言うことですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。通常の使用に伴う自然損耗の場合,それを借主に負担させると,賃料のうち支払っている部分と敷金との2重払いをしなければならなくなってしまいます。これは消費者に一方的に不利な条項なので,無効とされるわけです。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,たとえ畳やカーペットの張り替えをせずに退去したとしても,敷金からそれらの費用を差し引かれることはないというわけですね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。もし差し引かれていれば,返せ,といえますね。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ところで,先ほどの消費者契約法10条は,どの契約にも当てはまるんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:この法律は平成13年(2001年)4月1日から施行されていますので,それ以前の契約には適用がありません。でも,それ以後でも更新していれば,適用があります。</span></div>
<div style="text-indent: -24.4pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12.4pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど。今日はどうもありがとうございました。</span></div>
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2010-06-23T00:00:00+09:00
第41回:身に覚えのない内容証明
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=151#block111-151
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">この間,代理人弁護士の名前で,不貞の損害賠償を請求する内容証明郵便が届きました。私が,職場の女性と不倫しているということで,その女性の御主人が損害賠償請求をすると書いてありました。身に覚えがない架空請求なので放置しようと考えていますが,大丈夫でしょうか? (40歳男性,会社員)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:今回は,身に覚えがない不貞の損害賠償請求をされた,というご相談ですね。板谷さん,このご相談で,「内容証明郵便」という言葉が出て来ますが,これはどういうものでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:「内容証明郵便」というのは,いつ,誰から誰あてに,どのような内容の文書が差し出されたかを郵便事業株式会社(郵便局)が証明するものです。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:それを証明するというのは,どんな意味があるのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:請求が相手に到達した時点が立証できますから,たとえば遅延損害金の請求などをするときなどもに役立ちます。また,消滅時効というものがあって,不法行為は<span>3年で時効にかかってしまうのですが,その時効を中断させる際にも使われることがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:内容証明を送れば,時効というのは中断するんですね?</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:ちょっと難しいんですが,内容証明だけでは時効は中断しません。内容証明は「催告」という扱いとなり,その後<span>6か月以内に訴訟提起をすれば,内容証明が届いたときにさかのぼって中断します。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:なるほど。でも,内容証明郵便って普段は受け取りませんし,とくに弁護士さんの名前で内容証明郵便が届いたら,ちょっとびびってしまいますよね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですよね。損害賠償の請求を内容証明郵便で行うときは,「<span>2週間以内の回答を求めます」などと書き,訴訟をちらつかせて相手方に心理的な圧力をかけることも多く行われます。</span></div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:なるほど。心理的なプレッシャーをかけるという目的もあるんですね。さて,今回のような身に覚えがない請求の場合,架空請求と考えて放置すべきでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:架空請求の場合もないとはいえませんが,実在する弁護士の名前で,しかも職場の知人の関係者から内容証明郵便が来たのであれば,通常は架空請求ではないと思います。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:その弁護士が実在するか否かは,どうやったら分かるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:日弁連のホームページで検索して確認することができます。日弁連のホームページには,「弁護士を探す」というページがあり,名前で検索して,そういう名前の弁護士が居るかどうか,あるいは事務所の連絡先はどうか,等を確認することができます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:なるほど。そうすると,その弁護士さんが実在している場合,たとえ身に覚えがない内容であったとしても,しかるべき回答をしておかないといけないということですね。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですね,内容証明郵を受け取ったまま放置すると,本当に書いてあるとおりに訴訟を提起されることがあります。そのため,放置するのは得策ではないと考えられます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:でも,身に覚えのない要求の場合,なにを回答すればよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:弁護士であれば,通常は何の証拠もないまま内容証明郵便を出すことはありません。ですから,損害賠償を請求してきたということは,何らかの証拠と思えるものがある場合が多いと思われます。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:たとえば,どんなものでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:たとえば,ご相談者とよく似た人物が,職場の同僚の女性と親しくしている写真とか,ホテルに出入りしている写真とかでしょうかね。それ以外にも,最近はメールのやりとりが証拠として提出される場合が多くあります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:なるほど。その場合は,どうすればいいのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:その場合は,たとえ事実無根だと思ったとしても,反論すべきところは反論し,事実関係と異なるところは指摘する必要があります。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:そういう回答って,作るのは大変そうですね…。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">板谷:そうですね。やはり法的な技術や文章力が要りますので,なるべく早めにお近くの弁護士に相談し,回答の仕方等についてアドバイスを受けることをお勧めします。</div>
<div style="text-indent: -24pt; margin: 0mm 0mm 0pt 12pt">柳田:わかりました。本日はありがとうございました。</div>
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2010-05-26T00:00:00+09:00
第40回:ゴルフ場の預託金返還請求
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=150#block111-150
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私は,10年前の4月にゴルフ会員権を譲り受けました。その際,入会金100万円以外に,預託金として200万円をゴルフ場に預託しました。預託金の償還期限は10年なので,今年の4月に戻ってくると思っていたのですが,ゴルフ場から「ゴルフ場が経営難なので,預託金の償還期限を延長する取締役会決議をしました」という通知が来ました。預託金の請求はできないのでしょうか?(70歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">柳田:今回は,ゴルフ会員権の問題ですね。板谷さんはゴルフをなさるのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,私はまだやったことがないんです。ただ,私の父はサラリーマンで,大のゴルフ好きでしたので,なんとなく分かります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ゴルフは楽しいですよ〜!最近は石川遼さんの活躍で,若い人にもゴルフ愛好家が増えてきましたしね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そのようですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ところで,今回は預託金の問題ですが,まず,預託金というのはどういうものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷: 預託金とは,ゴルフ場が会員に対して将来返還することを約束して預かった金銭であり,当然に返還をしなければいけないものです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:つまり,銀行の預金と同じように「預けたお金」ですから,当然に返してもらえるということですよね。でも,今回のご相談のように,「<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">預託金の償還期限を延長する取締役会決議」というものが行われた場合はどうなんでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷: </span>多くの裁判例は,「預託金返還請求権は会員の基本的権利であり,ゴルフ場の一方的な理由による預託金据置期間の延長は,特段の事情のない限り認められない」としています。バブルがはじけて経営が悪化したという理由は「特段の事情」に該当しないとされていますので,通常は,決議を無視して返還を請求することが可能です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:返還請求できるということは,戻ってくる,ということですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:それは,一概には何とも言えないんです。法的に返還請求する権利があるということと,実際にお金が返ってくるということは別問題なんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:どういう意味でしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:たとえば,ご自分で「預託金を返してくれ,自分にはその権利がある」と言って請求しても,ゴルフ場から返事がなかったり,「延長決議があったので,無理です」などといわれたりして,預託金を返してくれないケースが多くありますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そういう場合にはどうすればよいのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:弁護士に依頼して返還請求の交渉をするという方法があります。いわゆる示談交渉というものです。ただ,これで応じてくれるゴルフ場もあるのですが,中には応じてくれないゴルフ場もあります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:弁護士さんに示談交渉を頼んでも応じてくれないのであれば,その後はどうすればよいのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:その場合には,裁判手続によるほかありません。弁護士に依頼して,民事訴訟を提起するということです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,その裁判で勝訴すれば,回収できるわけですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,そうとも限らないんです。こういうゴルフ場は,恐らく経営難になっていることが多いですから,たとえ裁判で勝訴判決をとっても,ゴルフ場が破産や民事再生という倒産手続に入ってしまうと,数<span>%の配当しか見込めませんから,結局回収は困難であることになります。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:倒産する前に,できることはないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:訴訟を提起する前に,民事保全手続といって,たとえばゴルフ場の土地を仮差押するとか,第三者に譲渡することを禁止する「仮処分申請」というような手続はあります。しかし,これには裁判所にある程度の担保金を積まなければなりませんので,お金がかかります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,預託金を請求はできるけれど,実際に返して貰えるかどうかは何とも言えない,ということですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。そういう意味では,消費者金融に対する過払金と同じです。過払金も,当然に返せと請求できるものなんですが,実際に消費者金融が倒産してしまえば,結局戻ってきません。少し前に大きな商工ローンが倒産しましたが,何千万円という過払金があったのに,結局戻ってこなかったという方は沢山おられます。それと同じですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:あら〜,じゃあ,結局何もできないんでしょうか…。何百万も預託したのに,戻ってこないなんてひどいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:先ほど申し上げたように,弁護士が交渉したり訴訟を提起したりすれば,戻ってくる可能性もあります。ですから,とりあえずそのゴルフ場が運営を続けているのであれば,早いうちに弁護士に相談して交渉を始めた方がよいでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:わかりました。預託金の問題で困ったときは,早めに弁護士に相談するとよいということですね。板谷さんは預託金請求の問題も取り扱っているのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね,沢山取り扱っています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですか。それでは,板谷さんにも相談できるわけですね。夜明けの翼法律事務所,無料の電話番号は<span>0800-8000-283ですね。本日はありがとうございました。</span></div>
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2010-04-28T00:00:00+09:00
第39回:養子縁組と離縁
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=149#block111-149
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 10pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">わたくしども夫婦には子どもがいないため,15年ほど前に親戚の子と養子縁組をしました。当時10歳だったその子は,高校に上がってから不良っぽくなり,成人してからはろくに仕事もせずにブラブラし,勝手に私の骨董品を質屋に出したり,車を買いたいからと何百万円も無心したり,クレジットカードで買い物をしまくって私たちに肩代わりさせたりしています。こんな子に私たちの財産を継がせるのはいやなので,離縁するぞと言っているのですが,「離縁するなら慰謝料をよこせ」と言ってすごまれてしまいます。養子縁組をしたときは,こんなはずではありませんでした。どうやったら離縁できるのでしょうか。(65歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="text-indent: -28.25pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.25pt"><span style="line-height: 115%">柳田:今回は,養子との離縁の問題です。かなり困っておられる様子ですね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.25pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.25pt"><span style="line-height: 115%">板谷:そうですね。日本</span>では,簡単に養子縁組ができますので,養子縁組自体の数はかなり多いです。子どもがいないので財産を継がせたい,家系を絶やしたくない,家業を継いでほしいという理由や,連れ子で再婚したという理由など,養子縁組の理由は様々です。今回のご相談者の場合は,子どもが<span>10歳のときに縁組みをしたということですから,実の親との親子関係も続く「普通養子縁組」ですが,それ以外に,実の親との親子関係がなくなるという「特別養子縁組」もありますね。いずれにしても,養子との間には血のつながりがないわけですので,トラブルが生じると深刻になることがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -28.25pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.25pt">柳田:なるほど。それでは,今回のように,養子縁組をしたあと離縁するには,どんな手続きをとればいいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -28.25pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.25pt">板谷:大まかに言って,3つ方法があります。1つは協議離縁といって,当事者が合意する場合に離縁の届出をするという方法です。もう<span>1つは,調停離縁といって,家庭裁判所に離縁の調停を申し立てる方法です。調停の席で離縁の合意ができれば,離縁が成立します。最後は,裁判離縁です。離縁の訴えを家庭裁判所に提起します。裁判離縁をするためには,「調停前置主義」といって,調停を先に行わなければなりません。</span></div>
<div style="text-indent: -28.25pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.25pt">柳田:今回のご相談者のケースでは,<span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">「離縁するなら慰謝料をよこせ」と言ってすごまれてしまっているとのことですから,協議離縁は無理ですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。ですから,調停を申し立てた方がいいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:調停は,どうやって申し立てたらいいのでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:家庭裁判所の受付窓口には「家事審判調停申立書」というものが備え置かれています。この用紙を使って申し立ててもよいですし,A4横書きで自分で申立書を作って提出しても大丈夫です。「申立の実情」という欄がありますので,その欄に,できる限り細かい事情を記載して申し立てた方がよいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:手数料はどのくらいかかるのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:印紙代と切手代だけで済みます。印紙は1200円,切手は800円そこらですので,非常に安いですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ちなみに,この段階で弁護士さんに頼むということもできるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:もちろんできます。調停で揉めそうな場合には,弁護士を頼んでおくと,その後に調停が不成立になって裁判をするときにもスムーズにできますね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:弁護士さんに頼むと,どの程度かかるのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:これは事務所によって様々ですね。最低でも20万円から30万円程度は着手金を請求する事務所が多いのではないでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど…。ところで,今回のケースのように,離縁に伴って慰謝料を請求するということもできるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:できます。今回のケースでは,むしろ養親つまりご相談者の側が慰謝料を請求したいと思うはずですね。離縁と同時に慰謝料の賠償を請求することはできます。ただ,別途印紙を貼らなくてはならなくなります。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:それ以外に,たとえば離婚のときのような「財産分与」の請求などをすることはできるのでしょうか。たとえば,養子がここまで貯金できたのは,今まで小遣いをたくさん与えた結果だから,半分返せ,などと言って財産分与を請求することはできますか?</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:一般的には,離婚と異なって「財産分与」というもの自体は否定されています。ただ,たとえば今まで財産の増加にこれだけ貢献したのだからということで,財産を与えるというような合意が成立することはあり得ます。そういう希望も,一応調停の申立書に記載しておくとよいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど。さて,離縁の調停を行ったけれども合意が成立しなかった,という場合には,裁判を起こすしかないわけですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。裁判を起こすとなると,さすがにご自分では大変ですので,弁護士を依頼した方がよいと思いますね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:裁判で離縁する場合の注意点みたいなものはあるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:離縁の原因が明確に法律で定められているということですね。離婚と似ているのですが,少し違います。離縁の原因は3つあります。1つは「他の一方から悪意で遺棄されたとき」というものです。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:悪意で遺棄されたというのは,どういうものでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:養子縁組をした場合,親子関係になるわけですので,互いに扶養する義務があります。ですから,年老いた養親の世話をしなかったり,財産を勝手に処分したり,年金を勝手に使ったりというような場合には,悪意の遺棄に当たることがありますね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:2つめはどんなものでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:他の一方の生死が3年以上明らかでないとき,というものです。つまり,養子か養親どちらかが行方不明になってしまって3年以上経つというような場合ですね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:3つめはどんなものですか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:「その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき」というものです。殆どの場合にはこの3つめの要件で離縁していると思われます。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:「その他縁組を継続しがたい重大な事由」というのは,どんなものを指すのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:縁組関係が破綻した場合を指しますが,破綻しているかどうかを総合的に判断されます。裁判では,「精神的・経済的生活関係を維持ないし回復することが極めて困難な状態にあること」を指すと言われていますね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,今回のご相談者のケース,つまり,ろくに仕事もせずにブラブラし,勝手に養親の骨董品を質屋に出したり,車を買いたいからと何百万円も無心したり,クレジットカードで買い物をしまくって養親たちに肩代わりさせたりしている」という場合は,この要件に該当するのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:似たようなケースで,養親からの離縁の請求を認めたケースがあります。ですから,離縁が認められる可能性がありますね。</span></div>
<div style="text-indent: -28.8pt; margin: 0mm 0mm 10pt 28.8pt"><span style="line-height: 115%; letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:わかりました。今回のケースでは,まず調停を起こしてみること,そして,調停で合意が成立しなければ,裁判を起こすことが必要であるということですね。ありがとうございました。</span></div>
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2010-03-31T00:00:00+09:00
第38回:クレジットカードの総量規制
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=148#block111-148
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">近々,クレジットカードのキャッシングや消費者金融のローンなどについて,総量規制という制度ができるということを聞きました。そうすると,専業主婦の私などは借りられなくなってしまうのでしょうか?(45歳,専業主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:「総量規制」という言葉,たまに新聞やネットニュースなどで見かけるようになりましたけど,板谷さん,そもそもこれはどういう制度なのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:総量規制とは,個人の借入総額が,原則として年収の<span>3分の1までに制限されるという制度なんです。もしこれ以上を貸すと,貸金業者が行政処分となります。今まではそのような制限がありませんでしたので,年収を遙かに超える借入ができました。そのため,沢山借りて,それを返すためにまた他の会社から借りる,ということが可能となっていました。その結果,多重債務ということになっていたわけです。でも,これからは,そもそも年収の3分の1までしか借りられなくなるわけですから,多重債務も減ると期待されています。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。この制度はいつから始まるんですか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:今年(平成<span>22年)の6月18日までには開始されます。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:でも,借入が年収の<span>3分の1を超えているかどうかなんて,どうやって分かるのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:貸金業者が個人の顧客から新たな貸付けの申し込みを受けた場合,貸金業者は,信用情報機関が保有する個人信用情報を使用して,他の貸金業者からの借入残高があるかどうかを調査することになります。また,年収については,源泉徴収票などを確認しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:クレジットカードにはキャッシング機能以外にショッピング機能も付いていますよね。年収の<span>3分の1というのは,ショッピング機能にもあてはまるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いえ,ショッピングは対象外となっています。消費者金融会社からのキャッシングやクレジットカードによるキャッシング等の個人向け借入れが対象となります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では,たとえば,車のローンとか住宅ローンとかは含まれるんですか?含まれるとすると,ほとんどの人が年収の<span>3分の1を超えちゃいますよね!</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いえ,不動産購入のための住宅ローンや,自動車担保ローン,高額医療費等はこの規制の対象外となっています。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そりゃそうですよね。では,銀行からの借り入れなどは含まれるんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:いえ,総量規制は消費者金融会社・クレジットカード会社・信販業者等の貸金業者からの個人向け借入れが対象となります。それ以外の,銀行・ゆうちょ銀行・農協等の金融機関からの借入れは対象外です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:それでは,たとえばパチンコや競馬,競輪などのギャンブルに結構使っていて,プロ並みの腕前で,毎月勝ち続けて結構な収入となっているというような場合には,年収に含まれるのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:含まれません。収入に含まれるのは,給与,年金,恩給,定期的な不動産賃貸収入です。ギャンブルによる収入は年収には含めません。ですから,給与が少ないけれどギャンブルで相当儲かっているなどという場合でも,年収が低ければ借入ができなくなります。そもそも,ギャンブルで儲かりつづけるなどということはあり得ませんから,そういう方は射幸的な行為に頼るという生活のスタイル自体を見直した方がいいと思います。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:たとえば,もう既に年収の<span>3分の1を超える借入をしてしまっている,などという人はどうなるのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:新たな借入はできなくなると思った方がいいと思います。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:あら!それじゃあ,これから借りられなくなる方が多くなって,大変ですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:まあ,そうですね。借りられなくなる方が多くなるというのはそのとおりなのですが,借りられなくなることが悪いわけではないんです。そもそも,年収の<span>3分の1を超える借入をしているということは,月収の4倍以上の借入があるということになります。単純に言えば,月収25万円でボーナスがないとすると,年収300万円ですよね。年収の3分の1は100万円ですから,月収25万円で100万円以上の借入があるということになります。月収の全てを返済に回すわけではないですから,通常は利息と元本の少しだけを返すのが精一杯で,借金は全然減らない生活となってしまいます。ですから,これ以上借りるべきではないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど〜。さて,そうすると,ご相談のあった専業主婦の方は,借入ができなくなる可能性があるということですかね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。大手の消費者金融は,<span>6月の施行を前倒しして,パートもしていない完全な専業主婦には,原則として貸し付けないという方針で動いているようです。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では,借りようと思っていたら「もう貸してあげません」と言われてしまった場合,どうすればいいのでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:借入に頼る生活を見直すチャンスになったと思って,弁護士に債務整理を依頼して下さい。借金を整理して,残った額は無理のない範囲で分割で返済するという手続をとれば,借金に頼る生活から脱却することは可能です。私の事務所でもそういうご相談をお受けしていますし,フリーダイヤルもありますので,総量規制で借りられなくなって困ったというときには,<span>1人で悩まずに,いつでもご相談下さい。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:分かりました。板谷弁護士の夜明けの翼法律事務所のフリーダイヤルは,<span>0800-8000-283。ゼロの後に,800,8000,ツバサですね。有り難うございました。</span></div>
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2010-03-24T00:00:00+09:00
第37回:交通事故と示談
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=147#block111-147
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">最近,道路上で車対車の事故を起こしてしまいました。相手は酒酔い運転の上で前方不注意をしたようで,「これがばれると会社をクビになってしまうから,示談で済ませてくれ,警察は呼ばないでくれ」と言われました。こういう場合,その場で示談した方がいいのでしょうか?(30歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:交通事故に関するご質問です。板谷さんは,交通事故の相談などを受けることもあるのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:ええ,ありますよ。交通事故は,最終的にはお金で解決するしかないのですが,お互いに嫌な気持ちが残るものですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですよね。私も事故の経験がありますけど,あとあとまで嫌な気持ちが残りますよね。人身事故なんて起こしたら本当に大変ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:さて,今回のご相談ですが,まず,「示談」という言葉についてですが,よく使う割にはよく分からない言葉なんですが,どういう意味なんでしょう。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:通常は「和解」という法律用語と同じ意味で用いられています。つまり,互いに譲歩し合って,一定額の損害賠償の支払いについて合意し,それ以外は一切請求しないという約束をすることですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:示談というのは,一般の人同士でできるものなんでしょうか。つまり,専門の弁護士さんとか保険会社の方とかでなくても,自分たちで示談してしまってよいのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:示談というのは,当事者同士であればもちろんできますよ。示談は一つの契約ですから,当事者であれば契約はできるんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:口頭でも示談できるのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:契約は書面による必要はありませんので,口頭でも示談契約はできるのですが,後々で,言った言わないという争いになってしまいますから,通常は示談書という契約書を作るほうがいいですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:示談書にはどんなことを書けばいいのでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:事故の発生日時,発生場所,加害車両,被害車両,という事故を特定するための情報に加えて,示談の内容,作成日時,当事者の住所,氏名,押印は最低限必要ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:結構書くことがあるんですね。慣れた人ならいいですけど,そうでないと,落っことしそうな項目もありますよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。示談書をご自分で作る場合には,示談書のひな形のようなものを参照するといいですね。ホームページでも比較的簡単に手に入りますし,書店でも示談書のひな形みたいな本は沢山売っています。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:たとえば,こういう示談を代行します,というような人に頼むことはできるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:弁護士でない人が業としてこういう示談代行をすることは法律で禁じられています。ただ,例外として,保険会社が示談代行をすることもできます。「示談代行付保険」という保険は,一般的な任意保険であれば大抵付いています。保険をかけている人の同意を得た上で,事故状況を調査したり,被害者と交渉したりして,示談を代行することができます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。では,今日のご質問にあったように,自分たちだけで事故現場で示談してしまって,警察にも報告しない,ということで大丈夫なのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:いえ,警察に報告しなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですか。私も何となくそうなのではないかと思っていました。その理由はなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:自動車事故を起こした自動車の運転手は,人身事故や物損事故の交通事故について,直ちに警察官に報告する義務を負っています。これは,道路交通法に定められている義務です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:では,今回のように<span>2台の車が衝突したような場合にはどちらが報告義務を負うのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:<span>2台いずれの運転手とも報告義務があります。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:何を報告すればいいんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:事故の日時,場所,死傷者がいるかどうか,壊れたものがあるかどうか,その事故についてどんな措置を講じたか,ということです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:携帯電話で連絡をしたりすると,警察から,「じゃ,すぐ行きますので,そこで待っていて下さい」と言われるようなことがありますよね。そういう場合は待っていなければならないんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:待っていなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,今回のように,たとえ飲酒運転を隠したいと思っていたとしても,事故については正直に報告しなければならないというわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。そうやってきちんと交通事故を報告しておかないと,警察の方で交通事故証明を作れず,任意保険も下りなかったり,あとで後遺症が発生した場合などでも,慰謝料を請求できなかったりする場合があります。ですから,間違ってもその場で示談などということはしないでください。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:ありがとうございました。交通事故が起きてしまうとパニックになってしまって,相手の言うままに署名してしまったりすることにもなりかねませんから,日頃から意識しておいた方がいいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そのとおりです。何よりも,事故を起こさないように,安全運転に心がけて下さい。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですね。今お聞きのリスナーの皆さんも運転中という方がおられると思います。是非安全運転でお出かけ下さい。板谷さん,ありがとうございました。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:ありがとうございました。</div>
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2010-02-24T00:00:00+09:00
第36回:離婚の際の金銭請求
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=146#block111-146
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<div style="text-indent: 12pt; margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私は,53歳の専業主婦です。57歳で会社員の夫がいますが,2年ほど前に夫の浮気が発覚し,離婚を考えるようになりました。夫は後3年で退職ですが,すぐにでも離婚をしたいと思っています。夫の預金は800万円,退職金は1600万円位支給される予定です。年金は,夫は厚生年金に加入しており,月々20万円受給される予定です。自宅は持ち家ですが,夫名義になっています。離婚後の生活を考えると,自宅をもらいたいと思うのですが,自宅をもらう場合ともらわない場合とで,いくら夫から支払いを受けられるのでしょうか?(53歳,主婦,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:今回は離婚に関するご相談です。板谷さん,最近は女性から離婚のご相談を受けることも多いのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。夫の浮気や暴力,借金に悩んで,離婚を考えているといってご相談に来られる方がいらっしゃいます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:女性の場合ですと,主婦やパートであるために,生活の心配をされたりしてなかなか離婚に踏み切れないという女性も多いのではないかと思うのですが。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。離婚後の生活の見込みが立たないために離婚を踏みとどまるという方もいらっしゃいます。やはり,いくら支払いを受けられるかという点に関心を持たれる方が多いですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうですか。あとあとで争いにならないようにするためにも,財産,金銭面の話はきちんとしておいた方がいいですよね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">では,板谷さん,今回のご相談者はいくら支払いを受けられるでしょうか。ご説明頂けますか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。離婚する場合にできる請求として,財産分与請求,慰謝料請求,年金分割があります。財産分与というのは,夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を離婚時において清算するというものです。今回のケースでは,夫の預金,自宅について,妻が財産の形成に貢献したといえる場合は,財産分与を請求することができます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:自宅や預金は夫名義になっているとのことですが,このような財産も分与の対象になるのですか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,財産分与とは,夫婦が協力して築いた財産について,離婚の際に清算するというものです。ですから,名義がどうなっているかに関わらず,財産の形成について貢献したといえるものについては,分与の対象になります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:夫の退職金についてはどうでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:夫の将来の退職金は,基本的には財産分与の対象にはなりませんが,近いうちに確実に支給されるということであれば,財産分与の対象として考慮される場合があります。本件では,退職は3年後ということですが,確実な支給が見込まれるかは,会社の支給規定によっても異なりますので,調べてみるとよいかもしれません。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:財産分与の分け方なんですが,どのような割合で分けるのですか?</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:具体的な事情によって異なります。つまり,妻が財産の形成にどの程度貢献したかによって異なります。あくまで目安ですが,専業主婦の場合,30〜50%位もらうことができます。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:自宅をもらう場合ともらわない場合で変わってくるのでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:はい。自宅をもらう場合であれば,自宅を金銭に換算した額の支払いを受けたのと同じですから,自宅が3000万円であれば,1500万円分については預金や退職金の財産分与,更には慰謝料の意味も含めた支払いということで,現金のかたちではあまりもらうことができないかもしれません。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど。では,自宅をもらわない場合はどうですか?</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:自宅をもらわないとすると,自宅の分の1500万円分は金銭のかたちでもらい,さらに,預金や退職金を半分ずつ分けることになります。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,慰謝料についてはどうでしょう?浮気が原因ということですし,もらえるように思うのですが,だいたいいくら位請求できるのでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:慰謝料については,事情によって異なりますので,一概には言えませんが,2年程度の浮気ですと,200〜300万円位請求するケースが多いと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:最後に年金についてうかがいますが,最近年金も分割することができるようになったんですよね。</span></div>
<div style="text-indent: -36.6pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.6pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:はい。婚姻中に積み立てされた厚生年金は年金分割の対象になります。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 36.7pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">平成19年の年金制度改革で,厚生年金の被用者年金(一番上の部分)の最高50%まで受け取ることができるようになりました。 </span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:自宅や退職金,年金など,財産については広く分与が認められるんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい。ただ,財産分与が請求できるのは,離婚のときから2年以内ですので,注意が必要です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt"><font size="2">柳田:今日は離婚について財産,金銭面のお話を伺いましたが,これ以外にも問題になることはあるんですよね。</font></div>
<span style="font-size: 12pt"><font size="2">板谷:そうですね。今回のケース以外でも,離婚の際には,例えばお子さんがいる場合親権をどうするか,養育費をどうするかなど,様々なことを決めなければなりません。当事者で話がまとまらなかったり,不安に思われる点などありましたら,お気軽に弁護士にご相談ください。</font></span>
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2010-01-27T00:00:00+09:00
第35回:過払金の返還請求記録と信用情報について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=145#block111-145
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">最近の新聞(1月15日の朝刊)で,金融庁が「過払金の返還請求記録について信用情報として取り扱うことを認めない方針を明らかにした」という報道を読みました。どういう意味かわからないので説明して欲しいのですが?(60歳,無職 男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">柳田:板谷さん,最近の報道にまつわるご質問ですが…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,小さな記事でしたが,そのような報道がなされていましたね。この記事の意味を理解するためには,消費者金融に対する「過払い」について理解する必要がありますので,ご説明します。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:はい。お願いします。「過払」って,この<span>1〜2年くらいで,よくテレビCMでも耳にするようになりましたね。以前にもこのコーナーで取り上げましたね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうでしたね。どのような仕組みで「過払い」が発生するのかについて,覚えていらっしゃいますか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:え〜と,細かいことは覚えていないのですが,確か「グレーゾーン金利」とかいいましたよね?ちょっと内容は…</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,グレーゾーン金利ですね。このグレーゾーン金利については,遅くとも今年(平成<span>22年)の6月までには完全に撤廃されることになっています。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:はい,そうでしたよね。簡単で結構ですので,このグレーゾーン金利の仕組みについておさらいしたいのですが…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:分かりました。まず「出資法」という法律があります。この出資法の上限金利は,年率<span>29.2%とされています。もう一つ,「利息制限法」という法律があります。利息制限法の上限金利は,元本額に応じて,年率20%,18%,15%となっています。元本が10万円未満の場合は年20%,元本が10万円以上100万円未満の場合は年18%,元本が100万円以上の場合は年15%です。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,たとえば,<span>100万円を借りた場合には,利息制限法だと上限の金利は15%で,出資法の上限金利は29.2%ということになるのでしたよね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。この利息制限法と出資法の金利の差がグレーゾーン金利といわれていたわけです。このグレーゾーン部分については,貸金業法<span>43条に「みなし弁済」という規定があって,その要件を満たせば,有効な利息の弁済とみなすということになっています。しかし,その要件を満たすことは殆どないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうでしたよね。ですから,たとえば今まで29.2%の金利を払っていても,有効な利息の弁済ではなかったんですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。それで,今までの取引の経過を,利息制限法の金利に引き直して計算すると,実は払いすぎだった,つまり元本も利息も返してしまって,過払いがあったということになるわけです。単純には言えませんが,<span>5年半くらいきちんと返している人であれば,過払いになるといわれています。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:では,その過払金を取り戻すにはどうすればいいのでしたっけ?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:取引の履歴を消費者金融から取り寄せて計算し直し,返還の請求をします。もしすぐに応じてくれない場合には,裁判を起こす必要があります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:自分でもできるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:最近は計算ソフトなどもホームページで入手できますので,ご自分でできなくはありませんが,裁判までとなると,相当大変です。最近でも裁判所に行くと,弁護士を付けずに本人訴訟をなさっている光景を目にしますが,やはり大変ですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。さて,そこで今回の本題に入るわけですが,金融庁の方針というのはどういうものなんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:はい,今までは,過払金返還請求をすると,いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまいました。つまり,信用情報機関の情報に「契約見直し」という記録が載ってしまい,その後に新たにクレジットカードを作ったり,ローンを組んだりすることができなくなるという弊害がありました。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,これから住宅ローンや自動車ローンを組んだりしたいという方や,クレジットカードを作って<span>ETC割引を受けたいという方々は,ブラックリストに載ることを恐れて過払金返還請求ができなくなりますよね。</span></div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうなんです。でも,過払金返還請求というのは,本来戻ってくるはずのお金を取り戻すというだけなのであって,滞納があったというわけではないのですから,ブラックリストに載るのはおかしいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:考えてみると,そうですね。預金を引き出すだけでブラックリストに載るようなものですもんね!</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:まあ,そうですね,過払金返還請求は預金を引き出すほど簡単ではないですが,法的には似たようなものですね。そこで,金融庁は,借り手を保護するために,過払金返還請求の記録を信用情報として取り扱うことを認めない方針を明らかにしたということなんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,ブラックリストに載ることを避けるために返還請求をしていなかった方々も,安心して請求ができるようになるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。最近の過払金返還請求によって,貸金業者の経営はかなり落ち込んでいます。そのうち,過払金があるのに貸金業者が倒産してしまって回収できないということも発生しますし,すでに発生しています。過払があると思われる方は,できるだけ早めに弁護士に相談なさることをお勧めしたいと思います。</div>
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2009-11-26T00:00:00+09:00
第33回:トイプードルとの海外旅行
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=144#block111-144
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私はトイプードルを飼っており,家族同然に可愛がっています。半年後に家族で海外旅行に行くことになったのですが,トイプードルを連れて行けるか心配です。一緒に海外旅行に連れて行くことはできますか?(35歳 主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:海外旅行,うらやましい限りですね!板谷さんも,ブログにトイプードルの写真がよく出てきますけど,飼っていらっしゃるんですよね?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:我が家というより,家内の実家でトイプードルを飼っていまして,よく写メールが届くんですよ。ペットはかわいいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうですね。私もネコをたくさん飼っていますので,ご相談者の気持ち,よく分かります。では,ペットを同伴して旅行に出ることは可能なのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:一緒に海外に出かけたいというお気持ちはよく分かりますが,海外旅行に同伴させるのは,結構大変なんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:それはなぜなんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:それは,狂犬病やレプトスピラ症といった病気の検査が必要となるからなんです。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:狂犬病と…レプ?なんでしたっけ?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:レプトスピラ症です。人にも感染する,感染症の種類ですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:具体的には,海外に連れて行くためにはどんな手続が必要なんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい,短期間の海外旅行に犬を連れて行くためには,1つめに日本を出るための条件,2つめに旅行先の国に入るための条件,3つめに日本に帰国するための条件の3つをクリアしなければなりません。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:なるほど。では,<span>1番目の日本を出るための条件はどんなものでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:詳しくは動物検疫所のホームページに載っていますので,そちらをご覧になった方が正確なのですが,(1)マイクロチップの装着(2)狂犬病の予防注射(3)狂犬病の予防注射の再接種(4)採血,狂犬病の抗体価検査測定(5)動物検疫所への事前連絡(<span>7日前まで)(6)動物検疫所での輸出検査,という手続が必要です。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:うわ〜!面倒ですね。狂犬病の予防接種だけではなく,いろいろな連絡をしたり,検査を受けたりしなければならないということですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。はっきり言って面倒です。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では,<span>2番目の旅行先の国に入るための条件についてはいかがですか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:旅行先の国に入る条件というのはその国によって取り扱いが様々ですので,一概に言えません。事前に旅行先の国の大使館や,その国の検疫当局に確認する必要があります。そのためにも,旅行先の国の外国語の案内文を読めるようにする必要があります。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうすると,ツアー会社ならともかく,家族だけで旅行を企画するような場合には,相手の国のことをよく調査していないとだめだということですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:もちろん,そうですね。向こうに行ってからトラブルになると最悪ですから,事前に調査することが必要ですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では,<span>3番目の日本に帰国するための条件についてはいかがですか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:日本に帰国するためには,(1)到着予定空港への届出(日本到着の<span>40日前まで)(2)出発直前の検査が必要となります。きちんとした書類が整っていれば,係留期間は12時間以内となりますが,書類に不備がある場合には最長180日間の係留検査が必要となりますから,愛犬がなかなか自宅に帰れないという事態も生じます。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:帰国するだけでも大変なんですね!</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうなんです。このように,ペットを連れて行くのは結構大変で,半年以上前からの準備が必要です。こういう事を考えると,家族同然のトイプードルも連れて行きたいという気持ちも分かりますが,できれば旅行の間は身近な人に預けたりすることも考えた方がいいかもしれませんね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうですね…。飼う側も,そういうところはわきまえておかなければなりませんね。どうもありがとうございました。</div>
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2009-10-28T00:00:00+09:00
第32回:キャンセルしたい不動産の申込
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=143#block111-143
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私は,不動産業者の広告を見てある物件に興味を持ち,1000万円で買い受けるということを書いた「買付証明書」という書面にサインして申込金50万円を支払いました。売主からは「売渡証明書」という書面をもらいました。その後,もっと条件のいい物件を見つけたため,キャンセルしたいと思ったのですが,不動産業者は,「既に売買契約が成立しているので,申込金は返さない」と言われています。申込金は返してもらえないのでしょうか?(40歳,会社員,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:今回は不動産の売買に関するご相談です。板谷さん,最近は不動産の売買についてのご相談は多いのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね。不動産業者にもいろいろいて,悪質な業者もありますので,トラブルに巻き込まれたなどという相談は絶えませんね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうですか。不動産を買うなどということは,一生に何度もあることではありませんし,金額も大きいですから,トラブルに巻き込まれたとなると,その傷は大きいですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:本当に,そうですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:では,板谷さん,今回の申込金は返してもらえないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:結論からいうと,返してもらえます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:そうなんですか,よかったです。では,そのご説明をお願いします。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:はい,まず,不動産の売買契約というのは,「諾成契約」といって,口頭での売る意思と買う意思があれば,契約は成立します。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:え,そうすると,ご相談のケースでは,<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">「買付証明書」と「売渡証明書」があるので,売買契約は成立している,ということですね?</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:理屈から言えばそうともいえますね。でも,判例は通常,この「買付証明書」と「売渡証明書」があるだけでは,売買契約が成立したとは認めないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なぜでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:不動産の売買契約というのは,相当高額ですので,通常は売買代金だけではなく,支払い方法とか,内金の話とかを書いて売買契約書というものを作成することが慣行として定着しています。ですから,売買契約書も作っていないような段階では,いまだ売買をする確定的な意思はなかったものとみなされるんです。</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。そのように「買付証明書」と「売渡証明書」があるだけでは契約の成立とはいえないとなると,申込金はどういうことになるんでしょう。</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:もともと,申込金あるいは申込証拠金というのは,契約を真剣に進めますということを示すためのもので,売主に預けるというような性質の金銭といわれています。そして,契約が成立したときには売買代金とか手付に充てられるものなんです。そうすると,契約が成立しなかったときには,購入希望者に返還されるべきものなんです。ですから,申込金は返せ,といえるわけです。</span></div>
<div style="text-indent: -37.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 37.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。では,たとえば,今回のご相談とは違って,もう売買契約書を作って手付金を支払ってしまったけれど,キャンセルしたい,という場合にはどうすればいいでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:宅建業者が売主となる分譲住宅のような場合かどうかによって異なるのですが,宅建業者が自ら売主となっている場合であれば,クーリングオフによって契約の解除ができる可能性があります。その場合には,申込金も返してもらえます。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:クーリングオフですか。クーリングオフの制度については以前にもこのコーナーで取り上げましたが,日数の制限などがあるんですよね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:そうですね,業者から法定の書面を受け取ってから<span>8日以内です。それ以外にも,業者の事務所で契約をしたような場合にはクーリングオフができません。ですから,たとえば,業者の事務所以外で,現地を見に行って,その場で契約書にサインしたような場合にはクーリングオフができます。また,宅地建物の引き渡しを受け,かつ代金の全額を支払ったような場合にはクーリングオフはできません。</span></div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">柳田:クーリングオフができないとなると,やはり手付金は戻ってこないわけですね。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt">板谷:一概にそうは言えません。業者の側に落ち度があるような場合もありますので,手付金を返せと交渉できる場合もあります。あきらめずに,是非弁護士に相談してください。</div>
<div style="text-indent: -36.75pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36.75pt"> </div>
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2009-09-30T00:00:00+09:00
第31回:不当解雇,未払賃金−労働審判
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=142#block111-142
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私は,会社でなにも悪いことをしていないのに懲戒解雇されました。また,解雇される前の半年間,かなりの残業していたのに,残業手当ももらっていません。どういう手続をすれば取り戻せますか?(40歳,元会社員 女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:今週は,労働関係のご相談ですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。最近,不景気のあおりで,労働者の職場環境もかなり厳しくなってきています。こういうご相談も増えていますね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:派遣契約の終了や雇い止めについては,以前にもこのご相談のコーナーで取り上げましたが,板谷さん,こういう不当な解雇の場合や,未払の賃金があるような場合にはどうすればいいでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:いくつか方法があります。まず,労働基準監督署に申告するという手段があります。都道府県労働局長による助言・指導が行われたり,紛争調整委員会によるあっせんや,監督署による指導・監督が行われたりします。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:その,労働局などのあっせんや指導というものに,雇用主が従わない場合にはどうなるんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:このあっせんなどには,強制力がありません。強制力を持たせるためには,労働審判(ろうどうしんぱん)や訴訟を起こすしかありません。賃金未払の場合にはまれに刑罰もありますが,それでも,労基署が未払賃金の取り立てをしてくれるわけではないんです。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:労働審判とは,どんな制度でしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:地方裁判所の本庁に対して,審判の申立をします。労働審判法によると,この手続は?「個別労働関係の紛争について」?裁判官と,労使双方の専門委員という人から構成される労働審判委員会が?事件の審理(争点整理や証拠調べ)を行うと共に,?調停,すなわち話し合いによる紛争解決を試み,?調停が成立しない場合には労働審判委員会が「労働審判」を出すという制度です。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そうすると,審理をするのは裁判官だけではないわけですね?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。裁判官以外に,<span>2人「専門委員」という,民間の人が加わります。1人は労働者側の委員,もう1人は使用者側の委員です。</span></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そして,調停の解決を試みる,ということですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。柔軟に,話し合いでの解決を目指します。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:最後の審判というのはどんなものなんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:これは,通常の訴訟における判決に相当するものです。この労働審判を受け入れる場合にはそれで確定して紛争が解決します。逆に受け入れないという場合には,<span>2週間以内に異議を申し立てると,通常の訴訟へ移行します。</span></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:どのくらいの期間で終わるものなんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:労働審判は,原則として<span>3回以内の期日で終結しなければならないとされています。申立から概ね3か月くらいで終わることが多いです。3回で終わるというのは,訴訟では稀ですので,極めて迅速に解決するということになります。</span></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:裁判というと,ダラダラと長いというイメージがあるのですが,労働審判は違うと言うことですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。司法改革の一環で作られた制度ですので,迅速性が重視されています。ですから,手続の最初の段階から効率的に審理が進められます。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:労働審判員という,民間の人が参加するということですが,どういう趣旨なんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:裁判官は民間の職業に就いたことがない人が多いですから,労使関係についての実情を知っているとは限りません。それで,労使関係や労働現場の実情について十分な知識・経験を有する人を参加させることで紛争の実情に適した解決を図る趣旨です。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:でも,労働者側と使用者側とで,なんとなく偏りがある判断を出されたりしないのでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:労働審判員は,中立かつ公正な立場で職務を遂行することになっています。ですから,使用者側から出ていても使用者の利益をするわけではありませんので,安心してください。</div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:話し合いでの調停がまとまらず,労働審判が出される場合はどうなるんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:審判が出されてから2週間以内に異議が出されなければ裁判での判決と同じ効果があります。異議が出されると通常の裁判に移行します。ただ,移行されても,同じ地方裁判所に係属しますので,労働審判と違う判断がなされる可能性というのは余り高くありません。そういう意味で,労働審判には効力があるといえますね。</span>労働審判はご自分でも起こせますし,弁護士に頼むこともできます。是非諦めないでください。</div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
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2009-09-23T00:00:00+09:00
第30回:17歳の自筆証書遺言
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=141#block111-141
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 僕は高校2年生になり,バイト代も貯まってきたので,そろそろ遺言を書こうかと思っています。僕でも遺言は書けますか?(17歳,男子高校生)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:今週は珍しく高校生の方からのご相談です。しかも遺言!私が高校生のころには遺言なんて考えもしなかったですが,板谷さん,<span>17歳の高校生に遺言は書けるんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:はい,書けますよ。民法では,満<span>15歳から遺言を書くことができます。弁護士の中には,高校生相手の講演会で必ず「高校生になったら遺言を書こう」と勧めている人もいるくらいです。ちなみに,法律家は「いごん」といいますが,一般的には「ゆいごん」ですので,私は「ゆいごん」と言いますね。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。<span>15歳になったら書けるんですね。でも,遺言を書くって難しい気がするのですが…。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:難しいわけではないのですが,ご本人の最終的な意思をはっきりさせることが必要なので,方式が決まっています。また,内容も,法定の事項以外のことを書いても意味がありません。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうすると,まず方式はどんなものなんですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:細かくいうと沢山あるんですが,よく用いられている方法には,自分で書く「自筆証書遺言」と,公正証書で書く「公正証書遺言」があります。公正証書遺言の方は,公証役場に行って要望を言えば公証人が作成してくれます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:では今回は「自筆証書遺言」についてお話を伺いたいと思いますが,自筆証書遺言というのはどんなものなんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:これは,遺言者が,文章(全文),日付,氏名を自分で書き,印を押して作成します。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:たとえば,病気で寝ていて字の書けない人が,ワープロなどで書くことはできないんですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:自筆証書遺言という方法では無理です。そういう方は,公正証書での遺言ができます。また,今日は詳しくお話ししませんが,病気で死に瀕しているという場合には,「死亡危急者遺言」という特別の方法で,口頭で遺言を残すことができます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:鉛筆で書くというのはどうなんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷;筆記具はなんでも大丈夫なのですが,鉛筆ですと,あとで書き換えられる,つまり変造される危険があります。できればボールペンや万年筆などのほうがいいでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:それ以外に,注意すべきなのはどんなことでしょう?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:内容を明確にしておくことですね。誰になにを相続させるのかということをはっきり書かないと,かえって遺族の間で混乱が生じることになります。また,不動産の表示や金額の数字は,できれば後から変造されないように,数字や漢数字ではなく,漢字の「壱,弐,参」という数字を使うといいと思います。日付も,年月日をはっきり書く必要があります。「吉日」という書き方だと,遺言が無効となってしまいます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:遺言書が<span>2枚以上になる場合にはどうすればいいでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:ホチキスか糊できちんと綴じて,契印を押しておく必要がありますね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:封筒に入れる必要はありますか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:必要はないですが,できれば封書にして封印をしておくほうがいいですね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:自筆証書の方法での遺言のメリットはどんなものでしょう?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:簡単だということです。字が書けて印を押すだけの余裕があれば,いつでもどこででも作成できます。立会人も証人もいりません。遺言の内容や,遺言したことそのものを秘密にしておくこともできます。自分で作るのであれば,お金もかかりません。弁護士に頼んでも<span>10万円程度で作成できます。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:デメリットはどんなものですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:遺族に見つからないままになってしまう可能性や,火事や地震などでなくなってしまう可能性,変造されてしまう可能性があるということですね。また,遺族が遺言を発見した場合,まず家庭裁判所で「検認手続」という手続をしないと,遺言の執行ができないという不便があります。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:なるほど。そういう不便を避けるためには,公正証書で作った方がいいということですね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:そうですね。メリットとデメリットをよく考えて,公正証書で作るのか,自筆証書にするのかを選んだ方がいいと思います。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:最後に,遺言を作るメリットというのは何がありますか。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:遺言は,「遺書」みたいなイメージがあって縁起が良くないと思われがちですが,実際は,万が一のことがあったときに家族が困らないようにするという意味では生命保険と同じ役割を果たします。きちんとした内容で,きちんと残すことで,あとあと遺族が紛争などで困らなくて済みますので,是非作っておいて欲しいですね。</div>
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2009-08-26T00:00:00+09:00
第29回:刑罰について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=140#block111-140
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">最近,裁判員制度が始まってから,今まで関係のない世界であった「刑罰」の制度について興味が沸いてきました。刑罰ってどんなものですか?執行猶予とはどういう意味ですか?(59歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:今週は刑罰に関するご相談ですね。板谷さん,裁判員制度が始まって,改めて刑罰などについて知識を深めようという人が多くなってきたんですかね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。裁判員制度についての広報はかなりやっていますので,手続などについての知識は大分広まっているんですが,刑罰については,まだ余りご存じでない方が多いですね。そういう意味では,タイムリーなご質問ですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そうですか。ではまず,刑罰にはどんなものが含まれるんですか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">刑罰の種類には,重いものからいうと,死刑,懲役(有期,無期) 禁固,罰金,拘留,科料があります。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なんだか聞いたことがあるものとそうでないものとがあるのですが,禁固というのはなんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:禁固とは,懲役と同じく刑務所に入るのですが,懲役とは違って刑務所の中で労役作業をしないものなんです。いわゆる非破廉恥罪といわれる,政治犯とか,交通事故関連の犯罪などに多いです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,拘留というのはなんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:30日未満の身体拘束をされる刑罰です。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:科料とはなんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:これは,1万円以下の支払を求められる刑罰です。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか,なんだか色々あるんですね。ところで,刑罰の目的というものにも考え方の違いがあると聞いたのですが…。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね,まず?応報・報復という考え方があります。これは,目には目を歯には歯を,というような古典的な考え方です。次に,?教育という考え方があります。再び罪を犯すことがないように,刑務所の中で教育するということです。今はこの両方の考え方を取り入れています。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:被害者からすると,刑罰で報復してほしい,という気がすると思うのですが,教育なんて必要なのでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:報復のつもりで長期間刑務所に入れると,社会から隔離され,結果として社会で自活できなくなり,社会に戻ったときに結果的に再び犯罪を犯したりすることもあるんです。教育のためには,社会内で生活させながら更生させた方が,再犯抑止の効果が高いという指摘もあるんですね。罪を犯した人もいずれ社会に復帰するのであれば,応報よりも,その人が二度と罪を犯さないように教育することを重視すべきだと思いますね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:正確なデータを取ったわけではないのですが,受刑者一人当たりの刑務所の維持費は1か月約20万円と言っている人もいます。それだけの税金を使って長期間収容する必要があるのか否か,考えるべきです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:刑務所での生活ぶりというのは,どんなものなのでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:1日8時間以内の作業と矯正指導が行われます。ただし,職業訓練を受けられるのはごくわずかな人で,全体の受刑者の3%程度に過ぎません。実際には作業が中心の生活です。作業には報奨金が支払われますが,とても低額で,平均的な支給額は1か月約4000円です。約4分の1の受刑者は,出所するときの所持金が1万円以下だそうです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:無期と言っても10年くらいで出てこられる,という話を聞いたことがあるのですが…。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:それは,実は誤解なんです。確かに刑法上は10年以上服役すると仮釈放が可能ですが,現実は終身刑となっていて,殆どの人が獄中死しています。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:最後に,執行猶予というものはどんな制度なんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:たとえば,懲役2年執行猶予4年という場合には,懲役刑ですが,4年間刑事裁判を受けるような罪を犯さないで無事に過ごした場合には,刑の言い渡しが効力を失う,というものです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:刑の言い渡しが効力を失う,というのは,懲役にならずに済むということですね?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。期間が満了したら刑の宣告自体が消滅して,前科も消滅するということです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,たとえば私の知っている国家資格で「禁固以上の刑に処せられ,刑の執行を終わり,又は執行を受けることが無くなった日から5年以内の者は資格をもらえない」とされているものがあるんですが,この場合にはどうなるんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:実刑になって刑務所に入った人の場合には,出てきてから5年間は,試験に合格しても資格をもらえないということです。執行猶予の場合は,執行猶予期間が満了してから5年経たないと,資格をもらえません。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。とにかく,こうした刑罰を受けないように,毎日正直に生きていきたいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね,裁かれる側に回らないようにしましょうね。</span></div>
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2009-07-29T00:00:00+09:00
第28回:婚約破棄と慰謝料
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=139#block111-139
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">私には婚約している女性がいて,結納も取り交わし,結婚式の日取りや式場まで決めていました。しかし,彼女はあるとき,仕事の都合が付かないから結婚式を延ばして欲しいと言いだし,その後連絡が取れなくなりました。友人のつてで調べたところ,彼女は別の男性と交際しており,同棲していました。約束通り結婚してくれと言っても,「気が変わった」と言われてしまいました。慰謝料を請求することはできますか?(30歳,会社員の男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:先週は結婚式場のトラブルでしたが,今週は,婚約を破棄されたというご相談ですね。やはり結婚にまつわるトラブルは多いんですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。婚約破棄は,法的には婚姻予約の不履行,という言い方をしますが,精神的にとてもダメージが大きいですよね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:では,ご相談者の場合,慰謝料を請求することはできるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:正当な理由がなくなされた婚約破棄については,破棄した側が損害賠償責任を負うこととなります。ご相談者の場合,結納も取り交わし,式の日取りや式場まで決めた上で,相手の側から一方的に連絡が取れなくなって,なおかつ他の男性がいたというのですから,慰謝料はもちろん請求できるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そうなんですか。具体的には,どの程度の額を請求できますか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:裁判例を見ていると,いろいろな要素によっても変わりますが,<span>100万円を認めたものから,高いものでは500万円を認めたものまでありますね。だいたい,2〜300万円を請求するケースが多いのではないかと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:では,たとえば,お金は請求しないけれど,約束したとおり結婚しろ,ということを裁判で強制することはできないんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:結婚というのは,その人の自由意思が関係していますので,国が強制して実現させるような性質のものではないんですね。ですから,残念ですが,損害賠償請求で解決するしかないですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:さっきから,損害賠償請求という言い方をしておられますけど,請求できるのは慰謝料だけではないんですか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:慰謝料というのは,精神的苦痛に対するものですが,それ以外に,挙式費用とか媒酌人への謝礼金,結婚のための支度費用,交通費など,婚約を信じたために受けた損害を全て請求できます。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そうなんですか。では,具体的には,どのような手続で請求できるんですか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:婚約不履行の場合は,家庭裁判所の調停を行うことができます。ですから,家庭裁判所に行って,調停申立書に記入して提出することになります。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:家庭裁判所というと,離婚のような,既に家族になっている人のための裁判所,というイメージがあったんですが,このように婚約破棄という,結婚前の話も取り扱ってくれるんですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。婚約不履行による慰謝料請求も家庭に関する事件ですから,家庭裁判所の調停で扱われます。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:調停というのは,どのような手続なのですか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:裁判所で「調停委員会」というものを作ります。これは,家庭裁判所の裁判官と民間から選ばれた調停委員という仕事をしている人<span>2人によって成り立っています。調停委員が,それぞれの言い分を聞いて,当事者が合意に至ることができるか検討します。合意すれば,調停調書というものが作られて,裁判と同じ効果があります。</span></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:相手がまったく出頭しないというような場合には,どうすればいいのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:合意が成立する見込がないですから,調停不成立ということになります。あとは裁判を起こすことができます。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:それ以外に,たとえば結婚詐欺などで訴えることはできないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:いわゆるアカサギというものですね。相手が,金銭をだまし取る目的で婚約したような場合には,結婚詐欺ということで警察に相談することもできるでしょうね。ただ,それを立証するのはなかなか難しいと思います。結婚するからと嘘を言って,相手に沢山の金品を要求したりしていたような場合に限られます。ご相談者の場合には,金銭の要求などをされてはいなかったようですから,結婚詐欺というのはちょっと無理だと思います。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:そうなんですか。いずれにしても,婚約破棄というのは,とても痛手を被るものですから,できれば避けたいですね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:そうですね。そのためにも,相手をよく見ることでしょうかね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:ありがとうございました。</div>
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2009-07-22T00:00:00+09:00
第27回:結婚式場のトラブル
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=138#block111-138
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私には婚約している男性がいて,先日,2人でホテルへ結婚式場の申込をしました。そのホテルは1年先まで予約で埋まっており,1年1か月ほど先の日付で予約をし,申込金として10万円を支払いました。ところが,残念なことに,直後に彼とは別れてしまい,結婚式の1年前に式場のキャンセルの電話を入れました。しかし,ホテル側は,契約書に「キャンセルの場合には申込金をお返ししません」と書いてあるから10万円を返しません,と言っています。10万円,返してもらえないのでしょうか?(25歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:今週は結婚式場のトラブルに関するご相談ですね。板谷さん,こういう相談は結構多いものなんですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:弁護士のところに相談に来られるケースはそれほど多くないのかも知れませんが,国民生活センターが今年の6月4日に発表した統計によると,過去5年間でこういうご相談が増え続けているということです。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:結婚式という,人生の中でも一番華やかな出来事について,こういうトラブルが生じるのは,なんだか可哀想ですね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:本当ですね〜。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:では,ずばり,今回のご相談のケースでは,申込金の10万円を返せと言えるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:はい,10万円の返還を求めることができます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。ちょっと,ホッとしました。でも,契約書に「<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">キャンセルの場合には申込金をお返ししません」と書いてあるのに,それでも申込金を返せといえるのですか?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:これは以前の中古車の売買トラブルでも出てきたものですが,消費者契約法第9 条第1 号では、消費者契約の解除に伴う違約金を定める条項に関し、事業者に生ずべき平均的な損害額を超えるものについては、当該超える部分について無効としているんです。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ええと,何度言われてもちょっと分かりにくいのですが,かいつまんで言うとどういうことなんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:つまり,業者は平均的なキャンセル料以上のキャンセル料を請求してはいけない,ということなんです。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,申込金を返さない,というのは,結局,キャンセル料を取るのと同じということですね?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。もともと申込金は,予約の日を押さえるための内金ですが,キャンセルしたときに申込金は返しません,ということは,つまり,キャンセルした場合の違約金として没収します,ということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,結婚式場をキャンセルしたことによる平均的なキャンセル料ってどの程度なんでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:個別のケースにもよりますが、少なくとも挙式の予定日より1 年も前に予約をキャンセルしたという場合,式場としては,あと1年の間に他のお客さんの予約をそこに入れればいいわけですから,損害は生じないはずです。ですから,この場合にはキャンセル料自体発生しないというべきだと思います。実際,裁判例でも,1年前のキャンセルについてキャンセル料を要求しているケースを消費者契約法9条1号違反だとしているものがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,今回の場合は,1年も前にキャンセルしている訳なので,キャンセル料は発生しない,だから10万円は返せ,と要求できるというわけですね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ところで,これ以外にも,結婚式場関係のトラブルってどんなものがあるのでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:式場側から,この日の予約はあと1件しか空いていないから急げ急げとせかされたりして,よく考えないうちに契約をしてしまった,というケースなどもありますね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:では,これから結婚を迎える人たちに,結婚式場選びをするときの注意事項などはありますか?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:契約・申込みをする際には十分納得がいくまで説明を受けること,規約や約款をよく読み、意味が分からないところなどはきちんと尋ねること,「言った,言わない」というトラブルにならないよう,きちんと資料などを受け取っておくこと,契約を急がないで,よく考えて選択することなどでしょうかね。</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:なるほど。このラジオをお聴きの皆さんも,ご自身が結婚を控えていたり,お子様やお孫さんが結婚を控えていたりする方は多いと思いますので,参考にしてほしいですね。どうもありがとうございました。</span></div>
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text/html
2009-06-24T00:00:00+09:00
第26回:中古車売買で20%の違約金?
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=137#block111-137
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私は,ある中古車屋さんで中古自動車を買う契約をして,契約書に印鑑も押したのですが,その後よくよく考えたら,エコカーの新車の方が減税のメリットがあると思い直し,契約の3日後に中古車屋さんにキャンセルしたいと言いました。ところが,中古車屋さんは,「契約書にあるとおり,キャンセルの場合には迷惑料として車両価格の20%をいただきます」と言ってきました。20%だと30万円になってしまいます。払わなければならないのでしょうか?(40歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:今週も前回に引き続き,中古車の売買に関するトラブルです。板谷さん,この場合は,払わなければいけないのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">板谷:この場合,払わなければならないか否かを検討するためには,まず契約が成立しているかどうかを確認する必要がありますね。</div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt">柳田:契約が成立しているかどうかということですけど,<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">契約書に印鑑をついているわけですから,当然契約は成立しているように思えるんですけど…。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:契約書や,それにくっついている約款というものを実際に見てみないと何とも言えないのですが,こうした中古車自動車販売業者の業界団体の標準約款では,「契約の成立日は,自動車の登録がなされた日,注文により販売会社が修理・改造・架装等に着手した日,若しくは自動車の引渡しがなされた日のいずれか早い日」とされています。ですから,そうした業界団体に加入している業者の使う契約書では,購入者が注文書に署名・押印した段階では,契約は成立していないとの考え方が採られているんです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。なぜ,契約書にサインしただけでは契約の成立にならないようにしているのでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:自動車の契約というのは,契約をしてから実際に引渡を受けるまでに,結構な時間がかかるものなんですよね。その間に気が変わったり,車が壊れてしまったりしたなど,物も受け取っていないのに契約成立を認めると消費者に不利になることがあるんです。そこで,業界のいわば自主規制として,そのような契約書のサインだけでは契約成立にはならないようにしようとなっているわけです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,その業者さんの使っている契約書の中に,自動車の登録とか修理とか引渡をしたときに契約が成立すると書いてあれば,ご相談者の件は,まだ契約が成立していないということになるんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。ですから,そういう業者の場合には,もちろんキャンセルはできることになりますから,迷惑料も支払う必要はありません。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。では,そういう業者でない場合ということもあるんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうなんです。そういう業界団体に入っていない業者もあって,そういう業者の作る契約書では,契約書に署名押印したときに契約が成立するなどと書かれているものもあります。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そういう場合には,契約成立後のキャンセルということになってしまい,契約書に記載してあるとおり20%の迷惑料を支払わなければならないのでしょうか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:いえ,必ずしもその必要はありません。消費者契約法第9条第1号では,「消費者の契約の解除に伴う損害賠償のうち,当該事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分の契約条項は無効」と定められています。つまり,平均的な損害以上の損害賠償をする必要はないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ちょっと難しいんですけど,どういうことなんでしょうか。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:つまりこういうことです。ご相談の件では,契約の3日後にキャンセル,つまり解除すると言っているわけですよね。一般的な中古車業界で,契約してからわずか3日でキャンセルして,30万円もの損害が出ることはないんです。登録のために準備をしていたり,修理に着手していたりすることはありますが,通常,3日後のキャンセルくらいでは業者に損害は発生しません。業者は他のお客さんに売るようにすればいいわけですから,他のお客さんに売る機会を逃したなどということもできません。ですから,車両価格の20%もの賠償をする必要はありません。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうすると,ご相談者のケースでは,いずれにしても30万円は支払う必要がないということになりますね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:はい,そうですね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:ところで,「クーリング・オフ」という名前をよく聞くのですが,この自動車の取引ではクーリング・オフはできないんですか?</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:特定商取引法や割賦販売法では,自動車の取引が除外されています。ですから,クーリング・オフはできないんです。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:そうなんですか。いずれにしても,30万円も支払う必要がないわけですから,業者と粘り強く交渉すればいいわけですね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:そうですね。できれば,話がこじれる前に,弁護士などに相談した方がいいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">柳田:どうもありがとうございました。</span></div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"> </div>
<div style="text-indent: -32pt; margin: 0mm 0mm 0pt 32pt"> </div>
<div style="text-indent: -31.5pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"> </div>
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text/html
2009-05-27T00:00:00+09:00
第25回:走行距離が全然違った落札車
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=136#block111-136
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<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私は,インターネットのオークションで,アメリカの中古車を150万円で購入しました。出品車は中古車販売業者で,「店頭では260万円の品!走行距離2万3000?!ノークレーム・ノーリターンでお願いします」という宣伝文句でした。確かにこの車で180万円は安いと思い,実際に見てみたところ,綺麗だったので,現金で買いました。ところが,買ってから故障があまりにも多く,知り合いの自動車業者を通じて調べてもらったところ,実際の走行距離は8倍も多い,約19万?でした。代金を返してもらうことはできますか?(35歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:今週は中古車のオークションについてのご相談ですね。中古車は,メーターの巻き戻しとか走行距離の改ざんという危険性があるというのは聞いたことがありますが,実際にあるんですね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:そうですね。残念ながら,走行距離の改ざんは珍しくないと言われています。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そのような走行距離の改ざんというのは,あとから発見することができるものなのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:日本車の場合には,車検証や整備手帳などから,実際の走行距離を知ることができますし,自動車公正取引協議会という機関で調べることができるようですね。輸入車の場合には,<span>Auto Checkという調査方法があるようです。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。では,そのように調査した結果,ご相談者のように走行距離が全然違っていたという場合,返品をしてお金を返してもらうことはできるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:はい。お金を返してもらうことができます。売主に「瑕疵担保責任」というものを主張して,返してもらうことができます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:カシタンポ責任ですか。なんだか普段聞かない言葉なんですけど。どういう意味ですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:瑕疵というのは,要するに「キズ」とか「欠陥」というような意味です。売った物にキズや欠陥があった場合,売主はたとえその欠陥を知らなくても返金しなければなりません。この責任は「無過失責任」とされていますので,売主に落ち度がなくても,補償しなければならないわけです。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:走行距離に食い違いがあるというものも,キズや欠陥といえるのですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:はい。走行距離が長くなればそれだけ車は傷みますから,走行距離の食い違いは,いわば欠陥といえます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:ただ,この方の場合,「ノークレーム・ノーリターン」ということで安く買ったわけですよね。よくオークションではノークレーム・ノーリターンと書いてあるのですが,このように書かれている場合には,どんな車でも文句は言えないのではないか,という気がするのですが…。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:いえ,この場合でも文句が言えるんです。ノークレーム・ノーリターンというのは,法律的には「免責特約」と言いますが,売主が事業者である場合,消費者契約法という法律の適用があって,消費者に一方的に不利な特約は無効とされます。ですから,ノークレーム・ノーリターンと書いてあっても,売主が事業者であれば,返品は可能なんです。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。事業者というのは,今回の販売業者のような,会社でなければ駄目なんでしょうか。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:いえ,会社でなくても,営利を目的として反復継続して出品しているような人は,消費者契約法の事業者といえます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。ところで,今回の場合,代金の返金だけではなくて,たとえば修理代金とか点検費用などは請求できませんか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:これは場合によります。先ほどの瑕疵担保責任というのは,いわゆる「信頼利益」といって,瑕疵がなければ被らなかったであろう損害の賠償しかできないんです。そして,修理代金といのは,原則としてその信頼利益には含まれないとされています。ですから,売主が走行距離の改ざんを知らなかったような場合には,修理代金や点検費用の請求は困難です。しかし,もし売主が知っていたり,ちょっと調べればわかったような場合には,「不法行為」といって,売主に対して修理代金を請求することができます。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。分かりました。それではまとめると,今回の走行距離の改ざんのケースでは,売主に代金の返還を請求することができる,ということですね。どうもありがとうございました。</div>
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text/html
2009-04-28T00:00:00+09:00
第24回:ペット禁止の賃貸借契約
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=135#block111-135
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt; vertical-align: baseline; punctuation-wrap: simple"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私は昨年,今の賃貸マンションに入居しました。契約書にペット禁止と書いてあるのを知りながら,ペットを飼っていることを大家さんに秘密で部屋を借りました。このまま住んでいると,いつか追い出されるかもしれないかと心配です。私はマンションを追い出されてしまうのでしょうか?(25歳,女性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:先週に引き続き,ペットに関するご相談です。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。最近はペットが家族のようになっていますからね。いろいろとそれに関する法律相談も多いですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:では,今回のご相談者のケースでは,そのうち追い出されてしまうのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:追い出されてしまうというのは,つまり賃貸借契約を解除されてしまうのかということですね。柳田さんはどう思われますか?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:契約書にペット禁止と書いてあって,それに違反しているわけですから,契約を解除されてしまうような気がするんですが…。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:なるほど。ただ,契約に違反した時に賃貸借契約を解除できるかについては判例がありまして,「契約違反が賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足らない時は,解除できない」としているんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:信頼関係ですか。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。たとえば,契約書には「賃料を2か月滞納したら解除する」というような条項があるのがほとんどですが,実は,賃料を実際に2か月滞納したとしても,判例によると,それが信頼関係を破壊しない場合には,解除できないということなんです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:そうすると,たとえ契約違反でペットを飼っていても,信頼関係を破壊しないという場合には解除されないということですね?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうです。たとえば,マンションでペットが禁止されているのは,悪臭とか,鳴き声,吠え声とかがご近所に迷惑になったり,その後に入居する借主に迷惑になったりするからですね。ですから,たとえばティーカッププードルくらい小さくて,しかも悪臭もなく,全然鳴かないというような場合には,別にご近所迷惑にもならないわけですから,ペットを飼っただというだけでは信頼関係を破壊したことにはならないと思われます。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:なるほど。そうすると,たとえば,悪臭がすごかったり,鳴き声がご近所迷惑になっていたりすると,信頼関係を破壊したということで追い出されてしまう可能性もあるということですね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そのとおりです。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:では,このご相談は賃貸マンションの話でしたが,ちょっとこのご相談とは違うんですが,分譲でマンションを購入して,最初はペット禁止のマンションではなかったのでペットを飼っていたけれど,マンションの管理規約が途中で変更されてペット禁止になったような場合には,どうすればいいんでしょう?</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:これも似たような判例がありまして,マンションの管理規約の変更自体は有効とされています。ですから,その場合には手放さなければならなくなります。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:手放すっていっても,そんな簡単ではないですよね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">板谷:そうですね。ですから,こういう規約の変更をするときには必ず管理組合で議論がされますから,そのときに,現状でペットを飼っている人の場合には,そのペットだけは免除するとか,小型のペットは禁止しないとか,そういう規約となるように働きかける必要があると思います。そういう努力をしないと,規約が変更されて,ペットを飼い続けることが出来なくなるおそれがあるんです。どうしてもペットを飼い続けたいのであれば,引っ越すしかなくなってしまいますね。</div>
<div style="text-indent: -36pt; margin: 0mm 0mm 0pt 36pt">柳田:わかりました。ありがとうございました。</div>
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text/html
2009-04-22T00:00:00+09:00
第23回:ペットの事故と損害賠償
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=134#block111-134
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<div style="margin: 0mm 0mm 0pt; vertical-align: baseline; punctuation-wrap: simple"> </div>
<div style="border-bottom: black 1pt solid; border-left: black 1pt solid; padding-bottom: 0mm; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; border-right: black 1pt solid; padding-top: 0mm">
<div style="border-bottom: medium none; border-left: medium none; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; padding-left: 0mm; padding-right: 0mm; vertical-align: baseline; border-top: medium none; border-right: medium none; padding-top: 0mm; punctuation-wrap: simple"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black"> 私はネコを2匹飼っています。名前は「モカ」と「チョコ」といいます。「モカ」は,この間,外に散歩に出たときに,お隣の奥さんの運転する自転車に轢かれてしまい,足を骨折してしまいました。「チョコ」の方は,我が家の庭であそんでいたときに,お向かいの家で放し飼いをしていた犬にかまれて,可哀想に,片方の目が見えなくなってしまいました。損害賠償を請求することはできますか?(40歳,女性,専業主婦)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:私もネコを飼っていますので,この奥様の気持ち,よく分かります。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:あれ?柳田さんは,動物アレルギーじゃなかったでしたっけ?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですけど,ネコが大好きなので,お医者さんから薬をもらってネコを飼ってるんですよ。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:そうだったんですか。それはそれで大変ですね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:はい…。さて,今日のご相談の件ですが,まず,隣の奥さんに轢かれて骨折してしまったモカちゃんの方は,損害賠償請求をすることができるんでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:人間の交通事故などと同じで,お隣の奥さんに過失があれば,請求することは可能です。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:過失ですか,たとえばどんな場合でしょう?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:そうですね,モカちゃんが寝ているのに気づかずに,自転車で轢いてしまったような場合のような,隣の奥さんの側に前方不注意がある場合などは過失有りといえるでしょうね。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:なるほど。ただ,ネコって,道路を横切ったりとか,飛び出したりしますよね。そういう場合も損害賠償請求が可能なんですか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:そういう場合は,ネコというよりネコの飼い主にも落ち度がある程度あるということになって,損害賠償請求はできても過失相殺をされてしまう可能性はあります。あるいは隣の奥さんがよけきれなかったということになって,過失がないので損害賠償請求ができない,ということになる可能性があります。</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうなんですか。じゃあ,たとえば,ネコが飛び出してしまって,隣の奥さんがよけきれないどころか逆に転んで自転車から落下してケガをしたような場合には,逆に隣の奥さんから損害賠償請求をされる可能性はあるのでしょうか?</div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">板谷:飼い主にどこまで過失があるかによりますね。民法の<span>718条には,動物の種類及び性質に従って相当の注意をもってその管理をした場合には,飼い主に責任はないとされています。犬だと,放し飼いにすること自体がよくないことなので,「相当の注意を持って管理をした」とはいえないと思うのですが,ネコだと微妙ですね。放し飼いにして,日中は外に出すということが普通ですからね。相当の注意をもって管理したと認められて,損害賠償をしなくてよい可能性もなくはありません。ただ,こういうトラブルに巻き込まれないように,十分注意して飼った方が良いと思います。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:なるほど。それでは,<span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">お向かいの家で放し飼いをしていた犬にかまれて,可哀想に,片方の目が見えなくなってしまったチョコちゃんの方はどうでしょう?</span></div>
<div style="text-indent: -31.35pt; margin: 0mm 0mm 0pt 31.35pt"><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">板谷:治療費はもちろん請求できますし,それ以外にも可愛がっていたチョコちゃんが失明してしまったということの慰謝料もある程度請求できるでしょうね。ただ,額はそれほど高くならないと思います。判</span><span style="letter-spacing: 0.1pt; color: black">例では,</span><span style="color: black">血統書付きのパピヨンやシーズーをセラピー犬として飼っていたケースで,交通事故でパピヨンが死んでシーズーがケガをした際の慰謝料として10万円を認めたものがあります。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt"><span style="color: black">柳田:そうなんですか。そうすると,今回ご相談のモカちゃん,チョコちゃんのケースでは,いずれも損害賠償請求が認められる可能性があるということですね。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt"><span style="color: black">板谷:そうですね。いずれにしても,このような悲しいことが起きないよう,ペットはきちんと管理したいですね。</span></div>
<div style="text-indent: -30.85pt; margin: 0mm 0mm 0pt 30.85pt">柳田:そうですね。本日はありがとうございました。</div>
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2009-03-30T00:00:00+09:00
第22回:派遣契約の終了と退寮
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=133#block111-133
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<div style="border-right: black 1pt solid; padding-right: 0mm; border-top: black 1pt solid; padding-left: 0mm; padding-bottom: 0mm; border-left: black 1pt solid; padding-top: 0mm; border-bottom: black 1pt solid">
<div style="border-right: medium none; padding-right: 0mm; border-top: medium none; padding-left: 0mm; padding-bottom: 0mm; margin: 0mm 0mm 0pt; vertical-align: baseline; border-left: medium none; padding-top: 0mm; border-bottom: medium none; punctuation-wrap: simple"><span style="color: black; letter-spacing: 0.1pt">私は派遣で仕事をしていたのですが,最近の経済危機の影響で,派遣契約を切られてしまいました。今までは派遣会社の寮に住んでいたのですが,寮からも出て行くようにと言われています。アパートを借りる資金もなく,身寄りもないため,寮から追い出されると,行く場所がなくなってしまいます。私は,出て行かなければならないのでしょうか?(45歳,男性)</span></div>
</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt"><strong> </strong></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 27pt; text-indent: -27pt">柳田:最近の経済危機を反映したご相談ですね。とても深刻な問題ですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:そうですね,特に,2009年問題といって,今年の3月末に派遣契約の期限が切れる人も沢山出てくるということが予想されています。今回のご相談者のような,寮を追い出されるという問題は,住む場所に関わる,切実な問題です。「住まいの貧困」という意味で「ハウジングプア」と言われることがあります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:では,結論から先に答えて頂きたいのですが,今回のご相談者のような場合には,出て行かなければならないのでしょうか?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:直ちに退去するのではなく,次の仕事と住まいが見つかるまで,そこに住み続けるように粘るべきだと思います。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:では,どのような理由でそういえるのでしょうか?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:はい,寮の問題は,大きく分けて2つのケースに分けられます。まず,一番目として,社員寮といっても相場に近い家賃を払っている場合,二番目として,社員寮の家賃額が無償だったり,相場から相当安い値段だったりする場合です。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:では,一番目の,相場に近い家賃を払っている場合はどうなのでしょうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:この場合,寮の賃貸借には「借地借家法」の適用があります。そうすると,寮の貸主が解約申入れをする場合には,「正当な事由」が必要となります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:「正当な事由」というのは以前にもこのご相談で取り上げたことがありましたね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:そうですね。つまり,家賃を長期間滞納したというような,信頼関係を破壊する事情がなければならないということでしたね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:そうすると,そういう事情がないなら,家主は,たとえ派遣契約が切れた社員であったとしても,寮を追い出すことはできないということなんですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:そうです。ですから,派遣契約が切れたから出て行け,といわれたとしても,「それは法律違反だ」といって住み続けることができるわけです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:では,二番目の,社員寮の家賃額が無償だったり,相場から相当安い値段だったりする場合はどうでしょう?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:この場合には借地借家法の適用がありませんから,従業員としての身分がなくなると,社員寮に住む権利もなくなってしまいます。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:では,出て行かなければならないのでしょうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:ただ,そもそも派遣契約の解除が違法になる場合があるんです。たとえば,?派遣期間満了前に契約を解除されたとか,?期間制限を超えて派遣先で働いてきたのに,直接雇用の申入れもなく,いきなり契約を解除されたとか,?もともと偽装請負のような違法な状態であったのに,これを是正することなく契約を打ち切ったなどという場合です。こういう場合には,社員としての権利があると主張して,住み続けるように交渉するべきです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:なるほど。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">板谷:いずれにせよ,派遣契約の解除というのは専ら派遣先の都合ですから,それを理由に社員寮から出て行くように求めるのは,社会的にも許されるものではありません。次の仕事が見つかるまでは,居住を保証するように求めていくべきです。同じ立場の入居者がいるはずですので,一緒に行動するとよいと思います。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 31.5pt; text-indent: -31.5pt">柳田:ありがとうございました。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 32.1pt; text-indent: -32.1pt"> </div>
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text/html
2009-01-30T00:00:00+09:00
第21回:グレーゾーン金利及びその廃止について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=132#block111-132
1
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt">相談内容:私は,長いこと消費者金融から借りては返す,ということを続けてきました。最近になって,「グレーゾーン金利」という言葉を知り,場合によっては払いすぎた額が戻ってくるということを耳にしました。どういう意味なのでしょうか。どうやったら戻ってくるのでしょうか。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 55.45pt; text-indent: -55.45pt"> </div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 55.45pt; text-indent: -55.45pt">柳田:多重債務の問題というのは,以前も取り上げましたが,深刻なんですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。数年前,経済苦による自殺が年間<span>7500人以上(1日に21人)となり,多重債務者が200万人を超えました。それだけ,消費者金融から借りている人が多いということです。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:一時期,消費者金融の社長が長者番付にずらずらと並んだという記憶があるのですが,ご相談者のおっしゃるように,最近は,消費者金融から払いすぎた額が戻ってくるということがあるんですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。それは,相談者のおっしゃる「グレーゾーン金利」というものが関係しています。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:グレーゾーン金利って,いったいどういうことなんですか?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:それは,いくつかの法律が関係していますので,ちょっとご説明しますね。現行のお金の貸し借りに関わる金利を制限する法律として,まず「出資法」という法律があります。この出資法の上限金利は,年率<span>29.2%(1日あたり0.08%)とされています。これを超える割合の利息契約や利息の受領をすると,刑事罰の対象となります。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:なるほど,それで,多くの消費者金融は,年利<span>29.2%だったというわけですね。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。そして,もう一つ,金利を制限する法律として「利息制限法」という法律があります。これは,民事上有効となる上限を規定する法律です。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:民事上有効ということは,どういうことなんでしょう?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:はい。単純に言うと,法律には刑事と民事というものがあるんですが,刑事というのは,国から逮捕されたり起訴されたりするということで,民事というのは一般市民同士で損害賠償請求をしたり貸したお金を返せと言ったりするということなんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:なるほど。そうすると,さっきの出資法は,刑事の方だったということですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうです。そして,利息制限法では民事の方を規定しているということなんです。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:それで,その利息制限法の金利はどうなっているんですか?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:利息制限法の上限金利は,元本額に応じて,年率<span>20%,18%,15%となっています</span>。<span style="color: black">元本が10万円未満の場合は年20%,元本が10万円以上100万円未満の場合は年18%,元本が100万円以上の場合は年15%です。</span>これを超えると,原則として,民事上無効となります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:そうすると,たとえば,<span>100万円を借りた場合には,年利18%ということになるんですね。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。ところで,柳田さん,先ほどの出資法の上限金利を覚えておられますか?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:<span>29.2%だったですよね。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。そうすると,<span>100万円を借りたときに,民事上は18%を超えると無効なのですが,29.2%までであれば,それを貸しても逮捕されることはないということになりますね。つまり,利息制限法違反の金利なのでシロではないのですが,出資法には違反しないので逮捕されたりしないということで,クロでもない,グレーな部分だったわけです。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:それで,「グレーゾーン金利」という訳ですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:はい。そして,そのグレーゾーン金利,すなわち出資法上の上限金利と利息制限法の上限金利の差の部分については,貸金業法<span>43条に「みなし弁済」という規定があって,その要件を満たせば,有効な利息の弁済とみなすということになっています。しかし,その要件を満たすことは殆どないんです。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:そうすると,たとえば今まで29.2%の金利を払っていても,有効な利息の弁済ではなかったんですね。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。それで,今までの取引の経過を,利息制限法の金利に引き直して計算すると,実は払いすぎだった,つまり元本も利息も返してしまって,過払いがあったということになるわけです。単純には言えませんが,<span>5年半くらいきちんと返している人であれば,過払いになるといわれています。</span></div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:では,その過払金を取り戻すにはどうすればいいのでしょう?</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:自分で取引の履歴を消費者金融から取り寄せて計算し直すということもできなくはありませんが,相当大変です。弁護士に依頼すれば,そういう計算もしてもらえますので,是非弁護士に相談してください。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:なるほど。わかりました。ところで板谷さん,なんだかこういうグレーゾーン金利って,とても変な制度だと思うのですが…。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">板谷:そうですね。そこで,法律が改正されて,今年中にはグレーゾーン金利が廃止されて,利息制限法の上限金利を超える金利はとれないこととなります。</div>
<div style="margin: 0mm 0mm 0pt 34.7pt; text-indent: -34.7pt">柳田:今年中には,制度が大きく変わると言うことですね。わかりました。</div>
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text/html
2008-12-31T00:00:00+09:00
第20回:裁判員制度その2
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=131#block111-131
1
<div>柳田:今日は大晦日ですね。いや〜,一年もあっという間ですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。今年もいろいろありましたね。</div>
<div><br />
柳田:今年一年,どんなことが印象的でしたか?</div>
<div><br />
板谷:金融危機とか,食品の問題とか,歴史に残るようなことが本当にいろいろあって,どれも印象的でしたね。個人的には,事務所を独立したことが大きな変化でした。</div>
<div><br />
柳田:そうでしたよね。さて,今年と来年にまたがる大きな出来事としては,先週から引き続きの,こんなご相談もあるでしょうね。</div>
<div> </div>
<div>相談内容:私は11月末に,最高裁判所から「来年の裁判員裁判の候補者となった」という通知を受け取りました。裁判員制度というものがあることすら知りませんでしたので,とてもびっくりしました。裁判員裁判というのがどういうものなのか,教えてほしいのですが…。40代,主婦</div>
<div> </div>
<div>柳田:先週と今週に分けてこの問題をお聞きしていますが,先月の終わりに通知が来てびっくり,というかたもおられると思います。先週は,裁判員制度の意味とか,辞退が認められる場合などをお答えいただきましたが,今日はそれ以外のことをお尋ねしたいと思います。</div>
<div><br />
板谷:はい,よろしくお願いいたします。</div>
<div><br />
柳田:裁判員候補になったということまでは通知で分かるのですが,その後の手続の流れはどうなるのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:具体的な裁判を行う際に,裁判員候補者名簿の中からくじで何十人か選び,その人たちに裁判所に来てもらいます。裁判所で,候補者の中から裁判員を選ぶ「選任手続」というものを行って,裁判員になる方を6人決定します。補充裁判員という,ベンチでの補欠みたいな方も何人か選びます。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。では,裁判員の候補になったといっても,裁判員になるとは限らないということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。具体的な事件に選ばれるかどうかも分かりませんし,選ばれたとしても,最終的に決定される6人の中に入るとは限りません。</div>
<div><br />
柳田:そうすると,たとえば,事件の裁判員候補者に選ばれましたといわれて,せっかく裁判所に来ても,6人に選ばれなかった人たちが何十人もいるわけですよね?3日間空ける予定で来たのに,それはそれで結構大変ですよね。そういう,空振りになってしまった方々には,交通費とか出るのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:もちろん,出ます。裁判員候補者の方は,旅費はもちろん,日当として8000円以内の額がでます。裁判員とか補充裁判員に選ばれた方には,旅費以外に日当1万円以内の額が出ます。宿泊料も出ます。</div>
<div><br />
柳田:よかったです。次に,アメリカの法廷映画などを見ていると,陪審員の全員一致の評決ができるまで,夜も帰れないということだそうですが,裁判員もそうなのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:裁判員制度では,最終的には多数決で結論を出しますので,そのようなことはありません。</div>
<div><br />
柳田:そうですか。ところで,有名な事件の裁判員になったということで,人にしゃべりたくなる人もいると思うのですが,それはしゃべっていいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:身近な人に話す程度であれば問題ありませんが,公にすることは法律上禁止されています。ですから,インターネットで公表したりしてはいけません。柳田さんの場合,ラジオでしゃべってもいけないわけです。</div>
<div><br />
柳田:そうなんですか。気をつけます。確かに,この事件の裁判員になったなんて公表したら,狙われそうですものね。</div>
<div><br />
板谷:そうなんです。もちろん,裁判員は法律で保護されていますが,四六時中ガードマンをつけるなどということをしてくれるわけではないですからね。</div>
<div><br />
柳田:でも,ちょっと自分や親族が危害を加えられそうだというときもあると思うんですけど,そういうときはどうすればいいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:そういうときは,裁判員が加わらず裁判官だけで裁判をすることができます。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。では最後に,私たちのような法律の知識がない人たちでも,裁判員がつとまるのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:裁判所の説明によれば,日常生活で行っている判断をすれば大丈夫だとのことです。弁護士の立場からいうと,それだけで裁かれてしまうのは心許ないきがするのですが,法律的なことは裁判官からも説明があると思いますので,心配する必要はないと思います。</div>
<div><br />
柳田:わかりました。それでは,リスナーの皆さんも,今後はいつ裁判員に選ばれるかわかりませんので,是非頑張ってください。</div>
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2008-12-24T00:00:00+09:00
第19回:裁判員制度その1
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=130#block111-130
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<div>相談内容:私は11月末に,最高裁判所から「来年の裁判員裁判の候補者となった」という通知を受け取りました。裁判員制度というものがあることすら知りませんでしたので,とてもびっくりしました。裁判員裁判というのがどういうものなのか,教えてほしいのですが…。40代,主婦</div>
<div>柳田:板谷さん,いよいよ裁判員制度が始まるんですね。報道によると,<span>県内は長野地裁と松本支部でそれぞれ1800人が名簿に載ったということですから,通知が自分の所にきた,という方も多くおられるでしょうね。</span></div>
<div><span><br />
板谷:そうですね。裁判員制度に対する見方は色々ですが,ともかく始まってしまいますので,それに対する準備が必要ですね。</span></div>
<div><span><br />
柳田:そこで,この問題を今週と来週の</span><span>2</span><span>回に分けてお答えいただきます。では,まず裁判員制度というものはどんなものなのでしょうか。</span></div>
<div><span><br />
板谷:裁判員制度というのは,個別の事件について,国民から選ばれた</span><span>6</span><span>人の裁判員に裁判手続に参加してもらい,</span><span>3</span><span>人の裁判官と一緒に,被告人が有罪か無罪か,有罪ならどのような刑にするのかを決めてもらう制度です。</span></div>
<div><span><br />
柳田:私などは裁判に関わりたくないというのが本音なのですが,なんでこのような制度ができたのでしょう?</span></div>
<div><span><br />
板谷:裁判の進め方やその内容に,国民の視点や感覚を反映させることが大事だと言われているからなんです。裁判所は「司法への信頼を高めるため」と説明していますが,私のような弁護士の立場から言えば,今までの裁判官による裁判が国民の常識からずれているということが多々あったので,国民の意見をもっと反映させるべきだという理由だと思います。</span></div>
<div><span><br />
柳田:なるほど。でも,裁判員が裁く裁判というのは,簡単な事件ではないんですよね?</span></div>
<div><span><br />
板谷:そうですね。殺人とか,強盗致死傷とか,傷害致死,危険運転致死など,裁判官でさえ判断に悩むような,重大な事件ばかりです。</span></div>
<div><span><br />
柳田:裁判員になるのはどういう人ですか?</span></div>
<div><span><br />
板谷:選挙権がある人はなれます。ただ,国家公務員になる資格のない人や,義務教育を終了していない人,禁固以上の刑に処せられた人,法律職などの一定の職業に就いている人など,裁判員になることができない人もいます。</span></div>
<div><span><br />
柳田:う〜ん,私は辞退したいんですけどねえ…。裁判員を辞退することはできないのですか?</span></div>
<div><span><br />
板谷:基本的にはできません。納税の義務などと同じ,国民の義務になります。ただ,</span><span>70</span><span>歳以上の人とか,学生,妊娠中や出産直後の人とか,重い病気の人などは辞退できます。</span></div>
<div><span><br />
柳田:なるほど。選挙権があるので,一応名簿には載りますけど,そういう人は辞退ができるというわけなんですね。</span></div>
<div><span><br />
板谷:そうですね。そういう事情にあると裁判所が認めた場合に辞退できます。</span></div>
<div><span><br />
柳田:では,たとえばとても重要な仕事があるという場合,辞退はできるのでしょうか。</span></div>
<div><span><br />
板谷:とても重要な仕事で,ご本人が処理しなければ事業に大きな損害が生じてしまうと裁判所が認めた場合には,辞退が認められます。</span></div>
<div><span><br />
柳田:では,小さな子どもがいるというような場合はどうでしょう。</span></div>
<div><span><br />
板谷:まあ,場合によるのですが,辞退を申し出ることは可能です。裁判所としても,無理矢理参加させるということはしないと言っていますので,辞退を申し出て,事情をきちんと説明すれば大丈夫のようです。裁判所としては,市町村などの保育サービスを利用して,育児中の方でも安心して参加できるようにするらしいですね。</span></div>
<div><span><br />
柳田:でも,</span><span>3</span><span>日間も会社を空けると,クビになってしまうと心配するかたもおられると思うのですが…。</span></div>
<div><span><br />
板谷:大丈夫です。裁判員の仕事に必要な休みを取ることは法律で認められています。また,裁判員として仕事を休んだことを理由に,解雇などの不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。経営者の皆さんは,裁判員休暇制度など,法律の趣旨に添った就業規則の改訂を行うようにおすすめしたいと思います。</span></div>
<div><span><br />
柳田:わかりました。この問題は,来週に続きます。どうもありがとうございました。</span></div>
<div><span><br />
板谷:ありがとうございました。</span></div>
-
text/html
2008-10-29T00:00:00+09:00
第18回:大家さんとのトラブル
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=129#block111-129
1
<div>
<div>私は夫婦で築<span>10年のアパートに住んでいるのですが,最近子どもができて,赤ちゃんの泣き声がうるさいので,大家さんから「近所から苦情が来て大変だから,出て行ってくれ」と言われました。そんなことを言われても困るので,無視をしていたら,契約更新の時期になりました。すると大家さんは,「お宅は赤ちゃんの泣き声もうるさいし,近々このアパートは壊して息子の家を建てようと思うから,契約は更新しない」と言われてしまいました。このアパートは賃料が安く,間取りもいいので,ここを追い出されたら,私たち家族は行く場所がなくなります。どうすればいいのでしょう?(25歳男性)<br />
</span></div>
</div>
<div>柳田:とても困った問題ですねえ。こういう場合,法律はどうなっているんですか?</div>
<div><br />
板谷:大家さんが出て行けと言ったら出て行かなくてはいけないというようなことでは,建物の借り主は絶えず不安を抱えながら生活することになりますね。そこで「借地借家法」という法律では,大家さんに比べて立場の弱い借り主を保護しているんです。</div>
<div><br />
柳田:え〜と,ではちょっと整理してお聞きしたいのですけど,まず,契約の最中に,赤ちゃんの泣き声がうるさいということで,貸し主は契約を解除できるのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:できません。</div>
<div><br />
柳田:なんだかちょっとほっとしましたが,その理由はどんなことでしょう?</div>
<div><br />
板谷:最高裁の判例では,賃貸借契約の継続中に,当事者の一方が信頼関係を裏切るような行為をした場合には,賃貸借契約を解除できるとしたものがあるんです。「信頼関係破壊の理論」なんて言う言い方をするんですけど,要するに,賃貸借契約というのはしばらく続くという性質の契約なので,信頼関係が崩れるような事情がない限りは,なるべく継続させようということなんです。</div>
<div><br />
柳田:信頼関係の破壊,ですか。そうすると,「赤ちゃんの鳴き声がうるさい」というのは,信頼関係の破壊にはならないということでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:一般的には,ならないと考えられます。赤ちゃんが生まれるということは,人間が生活していれば普通のことですし,赤ちゃんにとっては泣くことは仕事ですから,当然貸し主としてはその程度のことは予期していなければならないからです。ですから,赤ちゃんの鳴き声がうるさいという程度では,信頼関係が破壊されたとはいえないと思いますね。</div>
<div><br />
柳田:そうすると,たとえば子どもが嫌いな家主さんが,賃貸借契約書の中に「第何条 子どもを出産したときは契約を解除する」などという条項を設けていたという場合はどうなのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:そのような条項は,「ここに居続けたいなら子どもは作るな」と言っているのと同じですから,社会通念上公序良俗に反して無効な条項となることが多いと考えられます。そもそも,借り主が子供を作って困るようなら,人に貸さなければいいのです。ですから,そのような条項は無視していいと思いますよ。</div>
<div><br />
柳田:では次に,契約更新の時期になって,「近々このアパートは壊して息子の家を建てようと思うから,契約は更新しない」というのはどうなのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:築<span>10年のアパートですから,本当に壊すつもりがあるのかどうかは怪しいですね。ただ,本当に壊すつもりがあったとしても,この場合は貸し主は契約更新を拒絶することはできません。</span></div>
<div><br />
柳田:ということは,契約は更新できる,つまり住み続けられるということですね?</div>
<div><br />
板谷:そうです。</div>
<div><br />
柳田:その理由はどんなことでしょう?</div>
<div><br />
板谷:借地借家法の28条というところに,更新の際に貸し主が更新を拒絶するためには,「正当な事由」がなければならないとされています。その正当な事由の判断材料になるのは,貸し主の事情の他,建物の現況とか立ち退き料等々です。本件では,息子の家を建てるためという理由だけしかありませんから,まず正当な事由はありません。</div>
<div><br />
柳田:では,たとえば「正当な事由」があるときとはどういう場合なのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:判例には,賃貸している家屋が古くてぼろぼろになってきて,大修繕しなければ危険だというようなときに,正当な事由を認めたものがあります。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。そうすると,本件では,アパートを追い出される心配はないということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。</div>
<br />
柳田:ありがとうございました。
-
text/html
2008-10-22T00:00:00+09:00
第17回:悪質クレーマー
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=128#block111-128
1
<div> </div>
<div>
<div> わたしは,小さな洋食のレストランを経営しています。うちで雇っている新人のウェイトレスがいるのですが,その子がとあるお客さんに対して使った言葉遣いが,そのお客さんにとっては気に入らなかったらしく,「店長を出せ」と言ってきて,「てめえのレストランはどういう社員教育をしてるんだ。そもそも,このまずいパスタはなんだ。こんなまずいパスタのために金は払えねえ。俺の食事時間を無駄にした慰謝料をよこせ」とすごんできました。私は,とりあえずウェイトレスの言葉遣いがお客様の気分を損ねたことについては謝ったのですが,食べた物についてお金を払えないといわれても困りますし,慰謝料などといわれても困るので,お食事代はご請求したのですが,お客様は怒ってそのまま帰ってしまいました。翌日,何人かの柄の悪い人と一緒にお店に来て,「お宅の娘さんは,すぐそこの小学校に通ってるんだよな」などと気味の悪いことを言って帰って行きました。そのお客様は名刺を差し出したので,住所はわかっています。子どもに何かされるのではないか心配です。どうすればよいのでしょうか?(<span>50代,男性)</span></div>
</div>
<div><br />
柳田:こういうお客さんがおられると,お店の経営者にとっては大変困りますよね,板谷さん。</div>
<div><br />
板谷:悪質なクレーマーですね。お店としては,大切なお客様として丁重に対応しているのに,それを逆手にとっ<br />
て,飲食代金を払わないだとか,「お宅の娘さんは,すぐそこの小学校に通ってるんだよな」などと言って相手を不安にさせるという手口です。もちろん,お客がいいサービスをお店に要求するというのは当然ですが,それを超えて,異常なまでの要求をしてくるのは,もはやお客ではなくクレーマーです。</div>
<div><br />
柳田:明らかに不当な要求ですよね。どうすればいいのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:こういう理不尽な要求,不当要求には,絶対に応じてはいけません。毅然と対応する,というのが答えです。</div>
<div><br />
柳田:でも,ちょっと相手が怖そうなんですけど…。たとえば,とりあえず今後は来てほしくないので,いくらか支払って終わりにするというのでは駄目なのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:駄目です。こういう人たちは,一度相手が不当要求に屈するとわかると,どんどん要求をエスカレートさせてくるものなのです。気がついたら店がつぶれていた,ということにもなりかねません。</div>
<div><br />
柳田:では,どうすればいいんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:そういうときは,警察や弁護士に相談することが一番ですね。顧問弁護士がいれば一番早いとは思いますが,そうでなくても,弁護士会のホームページなどから,弁護士を探して頼んでみることができます。</div>
<div><br />
柳田:弁護士さんに頼むと,どんなことをしてくれるのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:今回は相手の住所や氏名がわかっていますから,まずは,配達証明付内容証明郵便を出します。</div>
<div><br />
柳田:内容証明郵便ですか。あの,郵便局で局長さんの印鑑をおしてもらって作るものですよね?</div>
<div><br />
板谷:そうですね。今はインターネットを通じても作成できますが,同じものです。相手に送った内容を公的に証明できるものです。</div>
<div><br />
柳田:その中身には,どんなことを書いてくれるのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:このような不当要求は直ちにやめるようにとか,やめなければ法的手段に訴えるとか,今後の連絡は弁護士宛にするように,などということを書きます。</div>
<div><br />
柳田:それは結構効果があるものなんでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:そうですね。<span>90%以上は,これで解決できます。弁護士が入った,ということで,それ以上やっても意味がない,かえって損をするとわかると,それ以上何もしないことがほとんどです。</span></div>
<div><br />
柳田:そうなんですか。では,仮にそれで解決しなかったような場合には,どうすればいいのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:そういう場合には,たとえば訪問禁止の仮処分などといったものを裁判所に申し立てることができます。これは詳しく説明している時間がありませんが,簡単に言えば,裁判所が相手方に対して「店に訪問するな」と命令してくれるのです。それでも訪問した場合には損害賠償請求をしたり,警察に告訴したりできます。</div>
<div><br />
柳田:なるほど,わかりました。そうすると,こういう場合には,毅然とした対応をとって,弁護士さんなどにきちんと相談すれば解決できるということですね。</div>
<div><br />
板谷:そういうことです。日本は法治国家なのですから,きちんと法にのっとって行えば,恐れる必要はありません。是非遠慮せずに相談してください。</div>
<div><br />
柳田:ありがとうございました。</div>
-
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2008-08-27T00:00:00+09:00
第16回:「支払督促」と振り込め詐欺
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=127#block111-127
1
<div>柳田:今日は,似たようなご相談が<span>2件来ています。<br />
</span></div>
<div>
<div> 私は普通の主婦として生活しているのですが,最近,「最高裁民事局」というところから葉書が来ました。そこには,「最終支払督促通知」と書いてあり,私に対する債権額の<span>50万円がまだ支払われていないので,この口座まで至急振り込むように,10日以内に振り込まないと強制執行をするとか,不明な点はここに電話をするようにとありました。私はどこからもお金を借りた覚えはないのですが,どうすればよいですか?(35歳,女性 専業主婦)</span></div>
</div>
<div> <br />
<br />
柳田:私たちからすると,このような葉書を受け取るとびっくりしてしまうんですけど,これは…振り込め詐欺ですよね?板谷さん。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。振り込め詐欺です。最高裁判所には確かに,事務総局というところに民事局という名前の部局がありますが,このように支払いを督促するような機関ではありません。また,きちんとした催促が,このような葉書の形でなされることはありません。ですから,振り込め詐欺ですね。今でもこういう葉書が届くことは結構あるようです。</div>
<div><br />
柳田:では,こういう葉書はどうすればいいんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:無視するのが一番ですね。捨ててしまってもかまいませんし,不安であれば警察に被害届を出したり,消費生活センターに持って行ってみたりしてもいいですね。</div>
<div><br />
柳田:「不明な点はここに電話をするように」とあるんですが,電話をしてもいけないんですよね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。絶対に電話をしてはいけません。電話をすると,着信履歴が残ってしまい,相手から頻繁に電話が来たりするおそれがあります。</div>
<div><br />
<br />
柳田:では,<span>2件目です。</span></div>
<div>
<div><br />
<br />
最近,自宅に郵便屋さんが来て,「特別送達です」といって,封書を手渡してきました。そこには,「長野簡易裁判所」と書かれており,中には「支払督促申立書」とか「請求の趣旨および原因」と書いた紙が入っていて,<span>100万円を支払え」とありました。でも,その中に書かれていることは,全然私の身に覚えのない内容でした。なお,長野簡易裁判所の住所や電話番号は,電話帳で調べると,記載の内容のとおりでした。どうすればよいのでしょう?(40歳,男性 タクシー運転手)</span></div>
</div>
<div><br />
<br />
柳田:これも,振り込め詐欺ですよね?板谷さん。放置すればいいんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:いえ,これは支払督促という,裁判所の手続きです。これを放置しておくと,大変なことになります。</div>
<div><br />
柳田:ええっ!?そうなんですか?1件目の葉書にも「支払督促通知」と書いてありましたけど,どこが違うんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:確かに催促をすることを支払督促といいますが,裁判所の手続きに「支払督促」というのがあるんです。これは,金銭を支払えなどという請求について,債権者から申立てをすると,裁判所から支払督促を発する手続で,債務者が異議の申立てをしなければ,最終的には強制執行までできてしまうんです。</div>
<div><br />
柳田:強制執行ですか!具体的にはどんなことですか?</div>
<div><br />
板谷:たとえば給料を差し押さえられたり,不動産を持っていれば,差し押さえられて競売にかけられたりしてしまうんです。</div>
<div><br />
柳田:それは大変ですね。それでは,こういうときにはどうすればいいんですか?</div>
<div><br />
板谷:まず,2週間以内に裁判所に異議申立をすることが必要です。そうすれば通常の訴訟に移行します。身に覚えのない内容であれば,その裁判の中で争うことができます。</div>
<div><br />
柳田:2週間ですか!では,2週間以内に異議申立しない場合にはどうなってしまうんですか?</div>
<div><br />
板谷:債権者から「仮執行宣言申立書」を提出され,裁判所から<strong>仮執行宣言付支払督促</strong>が発付されます。それに対して2週間以内に異議を申し立てれば通常の訴訟に移行します。</div>
<div><br />
柳田:その異議も申し立てなかったらどうなるんですか?</div>
<div><br />
板谷:確定判決と同じ効力が生じ,強制執行をすることができてしまいます。</div>
<div><br />
柳田:そうすると,まとめると,異議を出すチャンスは2度あるということですね?</div>
<div><br />
板谷:そうです。ですから,裁判所から「特別送達」という方法で届いた支払督促の通知は,異議を出すチャンスを逃さないようにする必要があるんです。</div>
<div><br />
柳田:振り込め詐欺だと思って放置すると,大変なことになるということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。ただ,振り込め詐欺かどうかは一般の方にはわかりにくいですから,消費生活センターや,弁護士に尋ねるとよいでしょう。</div>
<div><br />
柳田:ありがとうございました。</div>
-
text/html
2008-08-06T00:00:00+09:00
第15回:旧五菱会ヤミ金事件被害者29億円支給手続
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=126#block111-126
1
<div>
<div>7月26日の新聞に,「旧五菱会ヤミ金事件被害者に29億円支給手続き開始」とありました。私も,以前にヤミ金の取り立てでひどい目に遭ったことがあったのですが,私にも何か金銭が支給されるのでしょうか?(40歳,男性)</div>
</div>
<div><br />
<br />
柳田:最近のニュースですけど,板谷さん,そもそもこれはどういう手続きなのですか?</div>
<div>板谷:はい,<span>2006年に「被害回復給付金支給法」という法律ができて,ヤミ金とか振り込め詐欺などで被害にあった方が,犯人の持っていた口座からお金を取り戻すことが可能になったんです。</span></div>
<div><br />
柳田:犯人の持っていた口座から取り戻すというのは,そんなに難しい手続きなんですか?</div>
<div><br />
板谷:そうなんです。ヤミ金業者とか,振り込め詐欺の犯人などは,他人名義の口座を買い取ったりして使っています。そういう業者に使われているということがわかると,金融機関は口座を凍結して,引き出すことができないようにします。でも,名義は第三者の口座ですから,第三者のお金である可能性もあるわけで,それを被害者に分配するというのは,通常は難しいんですね。</div>
<div><br />
柳田:でも,被害者がいるわけですよね。その被害者に返してあげないと,そのお金は銀行が凍結したまま,宙に浮いちゃうような気がするんですけど。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。そこで,その犯人に対する刑事裁判で確定した後に,検察官が被害者へ支給できると判断したものについては,一定の手続きをして,その第三者の口座に振り込まれたお金を分配することができるようになったわけなんです。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。それで,<span>7月25日に発表された,今回の29億円の分配というのはどういうものなんでしょう?</span></div>
<div><br />
板谷:今回の分配は,被害回復給付金支給法が適用されて分配される初めてのケースなんです。特に2001年から2003年にかけてのことなのですが,山口組系旧五菱会の傘下にあるヤミ金業者が猛烈な取り立てなどを行いました。その犯罪収益が,当初スイスの銀行に送金されていたのですが,最近,スイスの政府が没収した金額のうちから29億円が日本に返還されて,その当時のヤミ金の被害者に支給することができるようになったんです。</div>
<div><br />
柳田:え〜と,ということは,今回の<span>29億の支給手続きというのは,ヤミ金業者からお金を借りてしまって,厳しい催促をされたような人がすべて当てはまるというわけではないということですか?</span></div>
<div><br />
板谷:そうですね。その2001年から2003年を中心に,五菱会の傘下にあったヤミ金業者から借りた人が対象になります。</div>
<div><br />
柳田:長野ではどのくらいの方々が対象になるんでしょうね?</div>
<div><br />
板谷:もちろん正確な数字はわかりませんが,被害者は4万人前後といわれていますから,人口比率で言えば,長野県でも1000人くらいはおられると思います。</div>
<div><br />
柳田:でも,自分が借りた業者がその五菱会の傘下にあったかどうかというのは,どうやったらわかるのでしょう?</div>
<div><br />
板谷:検察官で把握している五菱会関係業者が400近くあります。また,対象となる口座は600近くあります。それらは検察庁のホームページでみることができます。</div>
<div><br />
柳田:ということは,自分でホームページを見て,請求しないと戻ってこないということなんですか?</div>
<div><br />
板谷:東京地検は,連絡先がわかっている被害者には申請手続きの通知をするそうです。でも,把握できていない被害者もいるので,そういう人たちは申請手続をできるかどうか,自分で確かめなければなりません。申請期間は来年の平成21年1月26日までですので,それまでに手続きをしなければなりません。</div>
<div><br />
柳田:手続きがややこしそうですけど,どこに相談すればいいんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:弁護士会で電話相談を受けたり,県内4か所で被害者説明会を実施することになっています。</div>
<div><br />
柳田:そうですか。詳しいことは長野県弁護士会<span>026-232-2104までおたずねください。自分ももしかしたら,と思われる方は,お電話なさるとよいと思います。</span></div>
<div><br />
板谷:この手続きを利用した詐欺なども行われる危険がありますので,十分注意してください。</div>
<div><br />
柳田:どうもありがとうございました。</div>
-
text/html
2008-06-25T00:00:00+09:00
第14回:生活保護の申請
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=125#block111-125
1
<div> 私はずっと独身で両親の介護をしていましたが,数年前に両親を亡くして以来,1人で生活しています。ずっとスーパーのレジのアルバイトをしていたのですが,1年前にリウマチを患ってからは,仕事もできず,貯金も底をつきそうになっています。生活保護を申請しようと何回も福祉事務所に行ったのですが,その都度,「65歳までは稼働年齢なので頑張って仕事を見つけなさい」とか,「親戚がいるのだからその人たちに援助してもらいなさい」「リウマチの診断書を取ってきなさい」「自動車を処分してから来なさい」と言われ,結局申請書ももらえませんでした。私はこの先どうやって生きていけばよいのでしょう。生活保護を申請することはできないのでしょうか?(59歳,女性 無職)</div>
<div>
<div> </div>
</div>
<div><strong> </strong></div>
<div>柳田:今回は,生活保護のご相談ということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。少し前,「おにぎりが食べたい」と言い残して餓死した北九州の男性の例が報道されたのですが,生活保護の打ち切りや,窓口で申請すらさせてもらえないうことが問題視されています。我々弁護士も,こうした問題に積極的に取り組むよう動き出しています。</div>
<div><br />
柳田:そうなんですか。窓口で申請すらさせてもらえないということがあるんですか。</div>
<div><br />
板谷:はい。福祉事務所は,申請を受けた後は14日以内に生活保護の開始をするか否かの回答をしなければなりません。そして,生活保護法に定める要件を充たしていれば,生活保護を開始しなければなりません。でも,多くの場合福祉事務所は,窓口でいろいろ言って追い返して,申請すらさせないという,いわば「水際作戦」を取っているといわれています。</div>
<div><br />
柳田:それは深刻な問題ですよね。では,今回のご相談者が言われたことが,法律的に正しいのかどうか,ちょっと見て頂きたいのですが,まず,「65歳までは稼働年齢なので頑張って仕事を見つけなさい」というのはどうなのでしょう。</div>
<div><br />
板谷:確かに,法律上は「能力を活用すること」という要件があり,働ける人にはまず働いてもらい,それでも生活に困窮する場合にのみ保護をする,ということになっています。でも,交通費がなくて仕事を探せないとか,体調が悪いとかいう,仕事ができないやむを得ない事情がある場合には,保護をしなければなりません。ですから,困っていれば申請はできます。</div>
<div><br />
柳田:そうすると,窓口の対応は違法ということになりますか?</div>
<div><br />
板谷:そうですね。違法です。</div>
<div><br />
柳田:では,「親戚がいるのだからその人たちに援助してもらいなさい」というのはどうでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:親族からの援助というものは,援助してもらえるかどうか,いくら援助してもらえるかということが分かりませんから,これまで援助を受けていたということでもない限り,親族がいるというだけで保護の要件に欠けるということはないんです。</div>
<div><br />
柳田:そうすると,親族がいるのだからということで窓口で申請すらさせないというのは,違法ということですね?</div>
<div><br />
板谷:そうです。違法です。もっとも,福祉事務所から親族へ問い合わせが行くことになりますが,それは仕方ありませんね。</div>
<div><br />
柳田:では,「リウマチの診断書を取ってきなさい」というのはどうでしょう。</div>
<div><br />
板谷:お金がないのに,1通何千円もする診断書を取れるはずがありませんよね。法律上は,そういう資料は申請後に提出すればよく,診断書は必要であれば福祉事務所が取ることができます。保護の申請に当たっては何の資料もいりません。</div>
<div><br />
柳田:え?そうなんですか,保護の申請の時には申請書以外に資料はいらないんですか?</div>
<div><br />
板谷:いりません。ですから,福祉事務所の対応は違法ということになります。</div>
<div><br />
柳田:では最後に,「自動車を処分してから来なさい」というのはどうなのでしょう。</div>
<div><br />
板谷:ここが長野ではよく問題になるところですね。法律上,確かに自動車を持っていても,保護の申請をすることはできます。そして,保護の決定をもらうことができますが,その後,自動車は処分するようにと指導されます。もし処分しないと,保護を打ち切られるという扱いになっています。</div>
<div><br />
柳田:え〜,でも,特に長野の山間部などで生活する場合には,自動車って手放せないですよね。</div>
<div><br />
板谷:そこが問題なんですね。原則として,車は資産とみなされて,車を持っている人は資産があるから生活保護をするほど困窮していないとみなされてしまうんですが,例外的に資産とみなされない場合もありますので,とにかく申請をした方がいいと思いますね。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。つまり,困っていれば,とにかく申請することができるということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうです。窓口で申請すらさせない福祉事務所の扱いが違法なんです。</div>
<div><br />
柳田:今日はどうもありがとうございました。</div>
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2008-04-30T00:00:00+09:00
第13回:多重債務
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=124#block111-124
1
<div> </div>
<div>私は,15年ほど前から複数の消費者金融から借り入れを行っています。1つの消費者金融から借り,その返済をするためにまた他の消費者金融から借り,という繰り返しを続けました。結局,利息ばかりふくらみ,元本はちっとも減らないため,現在,8社に対して300万円の借り入れがあります。最近は給料も少なくなってきて,返すのが大変になってきました。どうすればよいでしょうか?(40歳,女性,<span>OL)</span></div>
<div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田:あらら〜,借金の返済だけで大変な生活ですが,板谷さん,こういうときにはどうすればいいんでしょう?</div>
<div><br />
板谷:いろいろな消費者金融から借りて,雪だるま式に借金が増えてきた,いわゆる「多重債務」の状態ですね。こういうときの解決方法には4つあります。?破産?個人再生?任意整理?特定調停です。</div>
<div><br />
柳田:ええと,?破産?個人再生?任意整理?特定調停ですね。まず,これらの4つの手続に共通するようなものはあるんですか?</div>
<div><br />
板谷:どの手続を採っても,いわゆる「ブラックリスト」には載ってしまいます。消費者金融や銀行の用いている信用情報を扱う会社がいくつかあるのですが,これらの手続を取った,ということが信用情報に登録されてしまいます。そうすると,たとえばクレジットカードを作ったり,ローンを組んで大きな買い物をするということがしばらくできなくなります。また,?破産?個人再生は官報にも掲載されてしまいます。もっとも,普通の人で官報を見る人なんていませんけどね。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。それでは,今回のケースでは,どうすればいいんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:たとえば債務が少し減っても,もう全く返せない,返せるような収入がない,というときは,?の破産しかありません。</div>
<div><br />
柳田:破産ですか…。以前にこのご相談でも1回取り上げたことがありますが,どんな手続でしょうか?</div>
<div><br />
板谷:一般に「自己破産」というのは,債務者の申立によって開始される破産のことをいいます。弁護士に依頼すると,「受任通知」とか「介入通知」と呼ばれる通知を債権者の各社に送ります。すると,それらの債権者からの催促は止まります。そして,弁護士に破産手続開始申立書を書いてもらい,申立をします。財産があれば,破産管財人がそれを債権者に公平に分配します。その後,法律に決められた「免責不許可事由」というものがなければ,今までの債務は免責されて,いわばチャラになります。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。でも,全く財産がないような場合にはどうなるのですか?</div>
<div><br />
板谷:そういう場合,「同時廃止手続」といって,債権者に対する配当の手続はなく,手続はすぐに終わります。その後,2か月くらいして,先ほどの「免責」という手続になります。</div>
<div><br />
柳田:破産手続のメリット・デメリットはどういうものでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:比較的簡便な手続で,短期間で済むことが多くあります。費用が若干かかるのと,住宅を手放さなければならないというデメリットがありますが,返せないのであれば,無理をせず破産することをお勧めします。</div>
<div><br />
柳田:では,少しずつなら返す見込みがあるというときは,どうすればよいでしょうか?</div>
<div><br />
板谷:この場合,?個人再生?任意整理?特定調停の手続を使うことが可能です。</div>
<div><br />
柳田:では,それぞれ簡単に教えてもらいましょう。まず,?の個人再生はどういうものですか?</div>
<div><br />
板谷:個人再生では,返済総額を減額して支払っていくことが可能です。また,住宅ローンについてのみ引き続き支払って,住宅を手放さずに手続を進めることも可能です。ただし,手続が若干面倒であり,弁護士の費用も破産よりは高くなります。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。では,?の任意整理はどういうものでしょう?</div>
<div><br />
板谷:任意整理・債務整理というものは,業者と弁護士が交渉して,支払金額及び支払期間等につき協議した上で,新たに返済の約定を締結するものです。業者から取引履歴の提出を受け,業者の定める利率(例:年<span>29.2%)から利息制限法の利率である年15%〜20%の金利に引き直して計算し,債務残額を減らし,さらに過払いになっているものはできる限り取り返します。ケースによっては,債務の残額が全くなくなるという方もおられます。</span></div>
<div><br />
柳田:?の特定調停とはどういうものですか?</div>
<div><br />
板谷:債務者が経済的再生を図るために債務の調整を求めて申し立てるもので,裁判所の調停委員が債権者・債務者の合意の形成を図るものです。柔軟な手続で,債務の減額も可能ですが,裁判所を介す点で,裁判所を使わない任意整理よりは面倒です。</div>
<div><br />
柳田:なるほど,そうすると,こういういろいろな制度があるので,ともかく弁護士さんに相談した方がいいということですね。</div>
<div><br />
板谷:そうですね。そこで,ご相談者やリスナーの皆さんに,とてもよい情報です。このたび,長野県弁護士会では,『アフター5クレサラ無料相談ウィーク』というものを開催することにいたしました。これは,夜間に,弁護士が無料で本件のような多重債務のご相談をお受けするというものです。日時は,5月12日<span>(月)〜16日(金)の5日間,時間は午後6時〜8時です。長野県弁護士会館、松本在住会館の2箇所で行います。予約制となっており,人数には限りがあります。先着順ですので,お早めにご予約ください。予約先は,長野県弁護士会026-232-2104 です。</span></div>
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2008-04-23T00:00:00+09:00
第12回:境界を超えて作った垣根
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=123#block111-123
1
<div> </div>
<div>
<div> 私は土地を所有しており,先月,その土地の上にある,古くなった家を建て替えました。その際,新しく垣根を作ったのですが,隣の家の住民が「うちとの境界を超えて垣根を作ってもらっては困る」と怒鳴り込んできたため,トラブルになっています。どうすればよいでしょうか…。(58歳,男性 農業)</div>
<div> </div>
</div>
<div><strong> </strong></div>
<div>柳田:隣人から,境界を越えて垣根を作っていると苦情をうけたというご相談ですが,こういうご相談は結構多いのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:多いですね。長野では,公図が不正確であったり,昔からの権利関係や機能しなくなった赤線(里道)・青線(水路)が曖昧になったりしているといったという事情もあって,境界や通行権のご相談がとても多くありますね。</div>
<div><br />
柳田:そうなんですか。では,こういうトラブルの場合,どうすればよいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:「境界を越えて垣根を作った」というのがもし本当であれば,早期に解決しなければなりません。</div>
<div>というのは,まず,?民法上,境界を越えた場合には,相手の土地の所有権を侵害した,として「不法行為」になりますから,相手方から,その垣根を移動させられたり,損害賠償を請求されたりすることになります。また,境界があるのを知っていてわざと境界を越えた場合には,?刑法上,不動産侵奪罪(10年以下の懲役),境界損壊罪(5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の可能性もあります。それに国や地方公共団体の測量標を勝手に移転したりすると,測量法違反となります(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。また,?隣人との感情のもつれから,殺人や傷害事件に至るケースもあります。</div>
<div><br />
柳田:そうですか…。重大な問題なんですね。では,どのようにすればよいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:話し合いで解決できれば一番です。境界がはっきりしていて,垣根がそれを越えているのであれば,謝罪して多少の迷惑料を支払って垣根をずらすとか,相手からその部分の土地を買い取るなどの解決が可能です。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。でも,先祖代々の土地の話となると,なかなか話し合いがうまく進みそうにないですね。</div>
<div><br />
板谷:そうなんですよ。感情的なもつれにつながっているケースがよくあります。そういう場合には,裁判を起こすことが可能です。</div>
<div><br />
柳田:裁判ですか…。</div>
<div><br />
板谷:ええ。境界が,杭や柱などの境界標ではっきりしている場合,裁判によって争うこともできます。公図は明治時代に作られたものですのでかなり不正確ですが,いわゆる「14条地図(地積測量図等)」が登記所に備え付けられている地区であれば,大きな証拠となります。</div>
<div><br />
柳田: でも,裁判となると,お金も時間もかかりそうですよね。もうちょっと楽な方法があるといいんですが…。</div>
<div><br />
板谷:調停という方法もあります。境界の証拠がないような場合にでも,改めて話し合いに応じるということであれば,調停を起こすことで解決することもあります。非公開の手続で,調停委員が間に入ってくれますので,比較的まとまるケースが多いです。</div>
<div><br />
柳田:なるほど。他には何かあるんですか?</div>
<div><br />
板谷:<span><ruby><span><strong><span>筆界</span><rp>(</rp></strong><rt><strong>ひっかい</strong></rt><rp><strong>)</strong></rp><span><strong><span>特定</span><rp>(</rp></strong><rt><strong>とくてい</strong></rt><rp><strong>)</strong></rp><span><span><strong>制度</strong></span><rp>(</rp><rt>せいど</rt><rp>)</rp></span></span></span>という,平成18年から施行された制度があります。</ruby></span></div>
<div><br />
柳田:<span><ruby><span><span>筆界</span><rp>(</rp><rt>ひっかい</rt><rp>)</rp><span><span>特定</span><rp>(</rp><rt>とくてい</rt><rp>)</rp><span><span>制度</span><rp>(</rp><rt>せいど</rt><rp>)</rp></span></span></span>…聞き慣れないですが,どんなものですか?</ruby></span></div>
<div><br />
板谷:土地の所有権の登記名義人等の申請に基づいて,地方法務局の筆界特定登記官という人が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,土地の筆界,つまり登記簿上の隣の土地との境の位置を特定する制度です。この手続の中で測量を行うこともあります。</div>
<div><br />
柳田:でも,これだと結局その「なんとか登記官」という人が境界を特定してしまうんですか?「本当はここじゃないんだ!」という場合にはどうすればいいんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷:この筆界特定登記官の行う位置の特定は,当事者に対する法的拘束力はありません不服がある場合には,改めて筆界確定訴訟を提起することも可能です。弁護士に依頼せずとも進めることができ,費用は安くて済むことが多いです。</div>
<div><br />
柳田:そうなんですか。そうすると,まずはこの筆界特定制度というのを使うこともできるんですね。今日はどうもありがとうございました。</div>
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2008-02-27T00:00:00+09:00
第11回:相続放棄
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=122#block111-122
1
<div>2月27日分</div>
<div>
<div> </div>
<div>私は4人家族の長男で,両親と一緒に借家で暮らしていました。妹が1人いるのですが,今は東京で働いています。1か月前,父親が交通事故で亡くなり,途方に暮れていると,父親の債権者を名乗る人から,「お宅のお父さんに4000万円の債権があるから,相続人のあなた達に払ってもらう」と言われました。こんな債務があることも知りませんでしたので,あわてています。どうすればよいのでしょうか?(23歳,男性)</div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田: お父様を亡くしてお気の毒なところへ,4000万円も請求されるなんて大変なことですね。板谷さん,こういう場合はどうすればいいのでしょう?</div>
<div><br />
板谷: 今回は相続についてのご相談ですので,まず,相続についての一般的なところからお答えします。</div>
<div>ご相談者のお父様が遺言を残していたかどうかが分かりませんが,とりあえず,遺言がないことを前提にお話を進めると,相続分としては,亡くなった方の配偶者である,お母さんが2分の1,ご相談者と妹さんでそれぞれ4分の1ずつ相続することになります。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,えーっと,4000万円の債務なので,お母様が2000万円,ご相談者と妹さんが1000万円ずつ債務を負担する,ということですね?</div>
<div><br />
板谷: ええ,まあそういうことになりますね。単純承認という言い方をしますけれども,相続することを承認すれば,お父さんの権利義務を無限に相続することになりますから,債務も負担することになります。</div>
<div><br />
柳田: でも,そうすると,お父さんの作った借金なのに,息子さんたちがいきなり負担することになって,可哀想な気がしますね。今のところ,まだ相続した債務を支払ってはいないようですが,何とかならないのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: こういうときのために,「相続放棄」という手続があります。相続する財産よりも債務の方が多いような場合には,マイナスになってしまいますから,相続しない方がいいわけです。そこで,相続人となる人は,自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に,相続する権利そのものを放棄するという手続をすることができます。その手続をとれば,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなされます。</div>
<div><br />
柳田: その相続放棄の手続は,どのようにすればよいのですか?</div>
<div><br />
板谷: 家庭裁判所へ申立をする必要があります。家庭裁判所の窓口に行けば教えてくれますし,弁護士を代理人に立てて,相続放棄の手続をしてもらうこともできます。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,それでは,今回はまだお父さんが亡くなってから1か月程度ですから,家庭裁判所へ相続放棄の申立をすればいいわけですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。お父様の財産がどの程度あったのかわかりませんが,借家に住んでおられたようですから,特別に資産がないということであれば,相続放棄をする方がいいですね。</div>
<div><br />
柳田: でも,板谷さん,3か月って,結構短いですよね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。お父さんが亡くなってから,なんだかんだといろいろ手続をしていれば,ホッと息をついたころには3か月経っているなんていうことはよくありそうですね。</div>
<div><br />
柳田: では,今回のようなケースではなく,たとえば,お父さんが亡くなってから半年くらいして,初めて,お父さんに実は借金があったと分かったような場合にはどうすればいいんでしょう?3か月経ってしまったからアウトなのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: この場合,最高裁の判例があります。判例では,「相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常認識できるとき」から3か月の期間を計算すべきとしています。</div>
<div><br />
柳田: なんだか難しい言い方ですけど,どういう意味ですか?</div>
<div><br />
板谷: たとえば,3か月以内に相続放棄をしなかったのが,お父さんに財産が全くないと信じていたせいで,しかも,そのように信じることについてもっともな理由があれば,債務を認識してから3か月以内に放棄すればよいということです。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,お父さんが亡くなってから3か月経っていたとしても,アウトになるとは限らないということですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。ただ,まあ,相続人がこういうことで困らないように,借金があるなら,生きているうちに家族にきちんと話しておいた方がいいですし,財産があるなら,遺言を書いておいた方がいいと思いますね。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。本日はどうもありがとうございました。</div>
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2008-01-23T00:00:00+09:00
第10回:離婚の際に決めておくべきこと
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=121#block111-121
1
<div> </div>
<div>
<div>私は,7年前に結婚して5歳と3歳になる子供がいます。でも最近,主人の浮気が発覚し,それ以来,夫婦関係がぎくしゃくしています。離婚しようと思っているのですが,離婚の手続や養育費の請求など,何をどのようにすればよいか全く分かりませんので,教えて下さい。(35歳女性,専業主婦)</div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田: 前回に引き続き,離婚の相談です。前回は,離婚という問題について,離婚には,協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚という4つの種類があるということ,それぞれの手続などについて教えて頂きました。今回はどんな内容ですか。</div>
<div><br />
板谷: どんな手続をとるにしても,離婚の際には,決めなければならないことがあります。大きく分けて7つのことを決める必要がありますので,そのことを一つずつご説明します。</div>
<div><br />
柳田: 離婚というのは,重大な決定ですから,やはり決めておくことが沢山あるんですね。では,まず1番目に決めることは何ですか。</div>
<div><br />
板谷: まず,氏,つまり名字の継続をするかどうかについて決める必要があります。婚姻(結婚)によって氏(名字)を変更した配偶者は,原則として婚姻前の氏に戻ります。しかし,婚氏続称といって,婚姻後の氏を継続して使用することもできます。婚氏続称する場合には,離婚の日から<u>3か月以内</u>に届け出なければなりません。従って,名字を戻すか否かで迷っている場合には,3か月間は届出を見合わせることができます。</div>
<div><br />
柳田: では,ちょっと複雑になりますが,もともと「A」という氏だったのですが,結婚して「B」となり,配偶者が死亡して再婚し,「C」という氏になりました。その後離婚する場合,どうなりますか?</div>
<div><br />
板谷: 婚氏続称しない場合,原則は「A」ではなく,「B」の氏に復することになります。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。では,2番目に決めることは何ですか。</div>
<div><br />
板谷: 未成年の子供がいるときは,親権者をどちらにするかを決めなければなりません。</div>
<div><br />
柳田: 親権ですか〜。親権って,なんだか分かったような分からないような感じなのですが…。</div>
<div><br />
板谷: 親権というのは,なかなか一言で説明しにくいのですが,?立派な大人になるために,子を監督・保護し,教育すること?子が財産を有するときには財産管理をし,売買などの法律行為について子を代理したり同意を与えたりすること?子の生活費や養育費の負担をすること,などが含まれます。離婚の際に一方の親を親権者として決めますが,離婚後,子の福祉のため必要があるときは,審判により変更の手続ができます。</div>
<div>なお,法律上は親権者以外に監護権を有する「監護者」を定めることができ,親権者と監護者を分離させることもできます。この場合,親権者は監護権を有しないことになります。</div>
<div><br />
柳田: 親権を一方に決めるのは難しそうですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。裁判離婚で親権が争われる場合,子供が小さい場合には母親が親権者になるケースが多いのですが,必ず母親になるというわけでもなく,色々な状況を総合的に考慮して裁判官が決めることになります。いずれと生活するのが子供の福祉の観点から最善か,調査官が調査することもあります。</div>
<div><br />
柳田: さて,3番目に決めることは何ですか。</div>
<div><br />
板谷: これも未成年の子供がいる場合ですが,養育費の支払いについて決める必要があります。離婚しても親の子に対する扶養義務はありますから,親はたとえ親権が無くても,子が親と同程度の生活ができるように費用を負担する義務を負います。例えば,今回のご相談者の場合,ご相談者が無職で,相手,つまり子供たちの父親が会社員であるとしますと,ご相談者が親権者となったとしても,父親は子供たちが成人するまでは養育費を支払う義務があることになります。</div>
<div><br />
柳田: では,たとえば,大学の学費については,どの程度まで負担する義務があるのでしょう。</div>
<div><br />
板谷: 親の教育的・経済的水準により,それが養育費に含まれるかについて個別的な判断がなされます。最近は大学全入時代ということも言われますが,世間一般で大学に入る人が多いというだけで自動的に養育費に含まれるわけではありません。</div>
<div><br />
柳田: 養育費というのは,一括でもらうものなのですか。</div>
<div><br />
板谷: 養育費の支払いは,原則として定期金支給,つまり,1か月にいくら,という形によるべきとされており,一括支給の方法は,原則的には認められません。なお,ご相談者のように複数の子がいる場合には,各人にいくら割り当てられるのかを明確にしなければなりません。</div>
<div><br />
柳田: 養育費は,どのくらいの額がもらえるものなんですか?</div>
<div><br />
板谷: 養育費の額については,子ども一人につき2万円から4万円というのが一般的ですが,今は,算定方式について裁判所の算定表があり,両親の収入・子どもの人数,年齢等から簡単に養育費を算定できるようになっています。弁護士はその表を持っていますので,お尋ね下さい。</div>
<div><br />
柳田: 養育費を決めたとしても,一度別れてしまうと,必ず払ってくれるとは限らないような気がするのですが…。</div>
<div><br />
板谷: そうですね,せっかく決めたのに,払ってくれないと,結局親権者は苦労することになります。そこで,養育費の支払いについて当事者の協議で決める場合には,公証役場というところで離婚協議書を作り,その中に養育費の額を記載し,「強制執行受諾文言」を入れてもらうことができます。この記載を加えるなら,相手が履行しない場合には強制執行ができますので,効果的です。また,調停離婚や裁判離婚の場合には,調書に基づき,履行勧告や,離婚命令,強制執行ができます。</div>
<div><br />
柳田: では,2人の合意,つまり協議離婚をしたときには,養育費を決めておかなかった場合はどうなるのでしょう。決めておかなかった以上,もらえないのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 協議離婚後でも,家庭裁判所へ養育費請求の調停申立を行い,別途養育費の支払いを求めることが可能です。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。それなら安心ですね。それでは,4番目に決めておく必要があるのは何ですか。</div>
<div><br />
板谷: それは,面接交渉についてです。つまり,親権者ではない方の親も,子供たちにとっては親であることには変わりありませんので,子供たちのためにも,子供たちと会う必要があります。</div>
<div><br />
柳田: これも,結構もめそうな気がしますね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね,1か月に何回会わせるとか,週1回何曜日に会わせるなどという仕方で決めることになりますが,なかなか難しいですね。面接交渉について協議が整わない場合,家庭裁判所で審判が行われます。裁判所は,面接交渉権という形で親の権利として認めているわけではなく,あくまでも子供のために面接交渉をするという形をとっていることに注意が必要です。</div>
<div><br />
柳田: では,たとえば2週間に1回会わせるということに決まったのに,相手がこの協議や調停に従わない場合にはどうなるのですか。</div>
<div><br />
板谷: この場合,どうするかについては,難しい問題があります。家庭裁判所の履行勧告や違約金という方法で強制することが考えられます。無理矢理子供を連れ去って会うということはできません。親権者ではない親が,子供たちを連れ去るような場合,犯罪となることもありますので,気をつけて下さい。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。では,5番目に決めておく必要があるものは何でしょう。</div>
<div><br />
板谷: 財産分与についてです。財産分与請求権には,?夫婦の財産の清算?損害賠償?扶養という3つの性質があり,その中心は?です。財産分与が請求できるのは,離婚のときから2年以内です。</div>
<div><br />
柳田: 財産は,どのくらいもらえるものなんですか?</div>
<div><br />
板谷: 分与割合については,最近は専業主婦の場合でも,2分の1とする裁判例が多くなっています。2分の1ルールと呼ばれます。分与の方法は,一切の事情を考慮して,もっとも適切と思われる方法によることになります。原則的な方法は金銭による分与となります。</div>
<div><br />
柳田: では,6番目に決めておく必要があるものは何ですか?</div>
<div><br />
板谷: 慰謝料についてです。相手方の責められるべき行為によってやむを得ず離婚に至った場合,これにより被る精神的苦痛について慰謝料の請求が認められます。慰謝料の額については,?どちらに離婚の責任があるか,?婚姻期間?双方の資力?精神的苦痛・肉体的苦痛の程度?未成熟子の有無等の要素を加味して決められますが,平均して200万円前後,最高500万円程度といわれています。</div>
<div><br />
柳田: では最後に,7番目に決めておく必要があるものはなんですか。</div>
<div><br />
板谷: 年金分割についてです。平成19年4月1日以降の離婚に関しては,公的年金である厚生年金保険等の被用者年金の分割を可能とする制度が導入されました。厚生年金などがある場合,どの程度で分割するのかを決めておく必要があります。</div>
<br />
柳田: なるほど。まとめると,離婚の際には,?名字をどうするか,?親権者をどちらにするか,?養育費?面接交渉?財産分与?慰謝料?年金分割について決めておく必要があるということでした。これらの点についてもっとお尋ねになりたい方は,武田法律事務所026−233−0345 にお尋ねください。本日はどうも有り難うございました。
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2007-12-26T00:00:00+09:00
第9回:離婚の手続
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=120#block111-120
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<div>私は,7年前に結婚して5歳と3歳になる子供がいます。でも最近,主人の浮気が発覚し,それ以来,夫婦関係がぎくしゃくしています。離婚しようと思っているのですが,離婚の手続や養育費の請求など,何をどのようにすればよいか全く分かりませんので,教えて下さい。(35歳女性,専業主婦)</div>
<div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田: 今回と次回は,離婚についてのご相談です。今回は「何をどのようにすればよいか」という,かなり広い内容のご質問ですが,板谷さん,どうでしょう。</div>
<div><br />
板谷: はい。残念ながら,好き合って結婚した2人でも,その後に関係が悪化して,離婚に至るというケースは少なくありません。できればそのような事態は避けるに越したことはありませんが,もし,離婚もやむなしという状態に至った場合にどうすればよいか,今回と次回の2回にわたって,お教えしましょう。</div>
<div><br />
柳田: お願いします。</div>
<div><br />
板谷: まず,離婚には,4つの種類があります。協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚です。</div>
<div><br />
柳田: では,1番目の「協議離婚」とはどういうものですか。</div>
<div><br />
板谷: これは,もっとも一般的な形で,市町村役場に備え付けてある離婚届用紙1通に当事者双方及び成人2人の証人の署名・捺印をして,夫婦の本籍地又はいずれかの所在地の市町村役場への届出をするだけで成立します。</div>
<div><br />
柳田: この署名捺印は,自分でしなければならないんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。自署が必要です。つまり,直筆でなければなりません。</div>
<div><br />
柳田: 印鑑は実印でなければなりませんか。</div>
<div><br />
板谷: いいえ,実印でなくても,三文判で大丈夫です。</div>
<div><br />
柳田: 役所への届出は,持参しなければならないのですか。</div>
<div><br />
板谷: いいえ,持参でも郵送でもよいとされています。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,2人が離婚に合意しているのであれば,協議離婚という,このような簡単な手続で離婚が出来てしまうのですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。署名捺印して届けるだけですから,婚姻届と同じですね。</div>
<div><br />
柳田: では,2番目の調停離婚とはどんなものですか。</div>
<div><br />
板谷: 相手方の住所地又は合意で定める地を管轄とする家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」の申立をします。このとき,離婚を求めるという意思を示すことができます。注意しなければならないのは,相手方の住所地の家庭裁判所でなければならないということです。たとえば,別居していて,自分が長野,相手が宮崎に住んでいる時などは,相手が長野家裁で合意しない限り,わざわざこちらから宮崎の家庭裁判所に出かける必要があるということになります。</div>
<div><br />
柳田: なんだか裁判所の「調停」っていうと,すごく大がかりな手続という気がするのですが,どのような手続なんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: それほど大がかりな手続ではありませんよ。調停というのは,裁判所での話し合いというイメージでよいと思います。申し立てると,まず家庭裁判所で調停委員会というものが組織され,審判官や調停委員が選任されます。調停委員には,通常男性委員と女性委員が一人ずつ選任されます。親権者の指定に関する事項には調査官による調査が行われることがあります。また,調停申立がなされると,期日の呼出状が当事者に送られます。通常,封筒の表面からは離婚調停だとは分からないようになっています。</div>
<div><br />
柳田: 話し合いということは,裁判所で夫婦が顔を合わせるということもあるのでしょうか。夫婦によっては,もう顔を合わせたくないというような場合もあると思うのですが…。</div>
<div><br />
板谷: 原則として第1回期日と調停成立のとき以外は当事者が顔を合わせることはなく,2人の調停委員が当事者を一人ずつ交互で面接する方法で進められます。当事者の待合室も,「申立人待合室」と「相手方待合室」に分かれていますし,呼出しの時間もずらしていますので,顔を合わせることがないように一応の配慮がされています。ただ,調停が終わった時などは,どうしても裁判所の廊下でばったり会ってしまうなどということがなくはありませんので,絶対に会いたくないというときは,時間をずらして帰るようにするか,弁護士の代理人を付けるなどの必要があります。</div>
<div><br />
柳田: 調停の場に,相手が出頭しなかったり,相手が全く離婚に応じなかったりする場合にはどうなるのですか?</div>
<div><br />
板谷: 相手がまったく出頭しないとき,あるいは離婚に応じない場合には,調停は不成立となります。調停は話し合いの場ですから,その場で合意が成立しなければ,不成立になってしまうわけです。その場合には,後でご説明する裁判離婚しかありません。</div>
<div><br />
柳田: 相手が離婚に応じる場合にはどうなるのですか。</div>
<div><br />
板谷: その場合には,調停期日に離婚が成立します。この場合,確定判決と同じ効力が生じます。申立人は,調停成立の日から10日以内に,調停調書の謄本を添付して,市町村役場に届け出なければなりません。相手方からも届け出ることができます。</div>
<div><br />
柳田: この調停という手続は,弁護士さんに依頼しなければできないのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: そんなことはありません。もちろん弁護士を代理人につけることはできますが,手続は簡単ですので,ご自身で提起することもできます。簡単な申立書に印紙を貼って裁判所に提出するだけです。申立書は家庭裁判所の窓口でもらえますし,簡単に手続も説明してもらえます。内容が複雑になってくると,弁護士を代理人に付けた方がいい場合もありますが,離婚だけの場合には,通常はその必要はありません。</div>
<div><br />
柳田: では,3番目の審判離婚とはどんなものですか。</div>
<div><br />
板谷: 実は,これは余り使われていません。調停において,合意は成立しなくても離婚を認めるのが適当だと思われる場合,たとえば,離婚について双方で異存がなく,ただ親権の争いがあるだけの場合や,単なる嫌がらせで出頭しないときなどに,調停不調とせず,裁判所が職権で離婚を認める審判をすることができます。しかし,2週間以内に異議が申し立てられると審判の効力が失われてしまいます。そのため,あまり利用されていません。</div>
<div><br />
柳田: では,4番目の裁判離婚とはどのようなものですか。</div>
<div><br />
板谷: 夫婦のいずれかの住所地を管轄とする家庭裁判所の判決により,離婚をします。調停と違って,これは夫婦のいずれかの住所地の家庭裁判所でよいということになっていますので,先ほど挙げたように,別居していて,自分が長野,相手が宮崎に住んでいる時でも,わざわざ宮崎に出かける必要はなく,長野の家庭裁判所に訴えを提起することができます。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,相手が遠いところに住んでいる場合には,調停をせずに,いきなり裁判にした方がいいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: いいえ,調停前置主義といって,我が国では,原則としていきなり訴えの提起はできず,まず家庭裁判所の調停を経る必要があるんです。ですから,相手の所在が不明などの特別な場合以外には,相手が応じないことが分かっていても,まずは調停を申し立てることが必要です。</div>
<div><br />
柳田: 裁判となると,やはり,結構大変なんでしょうね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。この場合には,きちんと訴状を作成したり,証拠調べをしたりすることが必要になりますから,代理人として弁護士をつけないと,ご自身では難しいですね。また,裁判離婚では,民法770条に定める離婚原因のいずれかが必要です。すなわち,</div>
<div> 1 配偶者の不貞行為, </div>
<div> 2 配偶者から悪意で遺棄された, </div>
<div> 3 配偶者の生死が3年以上明らかでない, </div>
<div> 4 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがない, <br />
5 その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき です。</div>
<div><br />
柳田: 今の5番目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」というのは,どんなものですか</div>
<div><br />
板谷: 実は,ほとんどの裁判離婚が,この5番目の要件に該当するということで提起されます。この「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」という5番目の要件は,夫婦の関係が破綻したときには離婚を認める趣旨だと考えられています。裁判例には,暴行,虐待,勤労意欲の欠如,浪費,愛情の喪失,犯罪,肉体的欠陥,性的異常,性交拒否,両親との不和,わがままな性格,性格の不一致,精神的障害,また,これは判断が微妙ですが,宗教活動などで5番目の要件に該当すると認めたものがあります。なお,この訴訟で主張することができた事由については,その後別の訴訟で主張することはできませんので,的確に主張できるかどうかを十分見計らって訴訟を提起すべきです。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。今日は,離婚という問題について,離婚には,協議離婚,調停離婚,審判離婚,裁判離婚という4つの種類があるということ,それぞれの手続などについて教えて頂きました。双方の話し合いで合意できるのであれば,離婚届を提出するだけで離婚になるということでした。次回は,離婚の際に決めておく必要がある内容などについてお聞きします。離婚についてもっとお尋ねになりたい方は,武田法律事務所026−233−0345 にお尋ねください。本日はどうも有り難うございました。</div>
<br />
板谷: ありがとうございました。
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2007-10-31T00:00:00+09:00
第8回:インターネット上の中傷被害
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=119#block111-119
1
<div> </div>
<div>
<div>私は仕事でも家庭でも,インターネットをよく利用しています。最近,インターネット上の掲示板で,私の実名を挙げて,私のことを中傷する書き込みがなされています。多くは根も葉もない噂ですが,その書き込みのせいで,会社でも肩身の狭い思いをしています。なにか対策をとることはできませんか?(48歳,女性,会社員)</div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田: インターネットが普及してきたことの反面,こういう問題も多いですよね。こういう場合,どうすれば良いのでしょう?</div>
<div><br />
板谷: インターネットは,便利な反面,中傷する内容が書き込まれると,瞬時に世界中に公開されて,消すことが難しいという,諸刃の剣を持っていますよね。こういう書き込みがあった場合,刑事,民事の両面で名誉毀損の問題が出てきます。</div>
<div><br />
柳田: それでは,まず刑事の問題とはどんなことでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 人を中傷する書き込みは,刑法の名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。名誉毀損罪とは,公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合をいいます。この場合,3年以下の懲役若しくは禁錮,または50万円以下の罰金に処せられます。侮辱罪とは,事実を摘示しなくても,公然と侮辱した場合に成立します。拘留又は科料という刑罰に処せられます。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。ご相談者の場合には根も葉もない噂でしたが,例えば,書かれていたこと自体は本当のことであったような場合は先ほどの刑法上の罪にあたるのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: 成立します。ただ,例外的に,内容が公共の利害に関する事実で,その目的が専ら公益を図ることにあった場合には,真実であれば名誉毀損罪が成立しません。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。それでは,中傷された方が,名誉毀損罪で犯人を捕まえて欲しい,と思う場合にはどうすればいいのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: 名誉毀損罪や侮辱罪は,「親告罪」といって,告訴がなければ,検察官は起訴できないことになっています。ですから,警察に被害届を出すだけでなく,起訴します,という告訴の手続をする必要があります。その際には,ある程度の証拠が必要となりますから,例えば,書き込みがされているページをプリントアウトしたものなどを用意しておく必要があるでしょうね。</div>
<div><br />
柳田: 起訴した後は,どんな流れになるのでしょう?</div>
<div><br />
板谷: 警察官が,例えばホームページのアドレスや掲示板のIPアドレスという,書き込んだ人のいわば住所のような情報を頼りに,プロバイダ等を調査して,書き込んだ人を特定していきます。その人が特定された場合には,捜索差押えをしたり,逮捕したりして,検察官が裁判所に起訴して,判決を求めることになります。</div>
<div><br />
柳田: それでは,民事の問題とはどんなことでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 今お話ししましたのは,刑事の問題,つまり国家に名誉毀損の犯人を捕まえてもらう,という問題でしたが,民事の問題とは,その名誉毀損をしている人との直接の関係です。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,刑事の問題は,いわば国との縦の関係で,民事の問題は,人と人との横の関係ということでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: そうです。人の名誉を毀損する内容の書き込みは,民事上の不法行為にあたりますから,裁判所に掲示板の掲載の差し止めや損害賠償請求,謝罪広告等の名誉回復措置を求めることができます。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。でも,裁判所に訴えたりするのは,結構大変なことだと思うのですが,それ以外の方法で,掲示板の書き込みを消してもらうということはできないのでしょうか…。</div>
<div><br />
板谷: まずは,この掲示板の管理者に削除要請をすることができます。ただ,必ずしも管理者が速やかに削除することは期待できませんから,プロバイダに削除を求めることができます。この点はプロバイダ責任制限法という法律ができて,削除の要求をしやすくなりました。</div>
<div><br />
柳田: でも,その書き込んだ人がどのプロバイダを使っているかということを知ることはできるのですか?</div>
<div><br />
板谷: できます。先ほど刑事の問題のところでもお話ししましたように,通常は掲示板には書き込んだ人のIPアドレスが書かれています。これによって,どのプロバイダを使っている人かということが分かり,プロバイダは,このIPアドレスを元に,書き込んだ人を特定することができます。そこで,プロバイダに対して,書き込んだ人の情報を開示するように請求することができます。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。掲示板は匿名だと思っていましたが,実はIPアドレスがあるので,書き込んだ人を特定することができるのですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。ですから,例えば,いわゆる掲示板の「荒らし」行為なども同じ問題で,書き込む人は匿名だと安心してやるようですが,実はIPアドレスで個人を特定することができますから,名誉毀損で損害賠償請求をされる可能性があるんですね。もっとも,プロバイダがすぐにその情報の開示に応じるとは限りませんから,もし,プロバイダがすぐに応じてくれなければ,プロバイダ責任制限法に基づいて,まずはプロバイダに書き込んだ人の情報を開示するように裁判で請求することが必要となりますね。</div>
<div><br />
柳田: ネットカフェを使って書き込む人もいると思いますが,そういう場合には書き込んだ人の特定は難しくないですか?</div>
<div><br />
板谷: そうですね。犯罪の温床ともいわれていることから,最近はネットカフェや漫画喫茶などでは,身分証明書の提示を求めるなどして,誰がそのパソコンを使ったかの記録を残すようにしているようですね。</div>
<div><br />
柳田: では,例えば,人を中傷するような内容の文章が,掲示板への書き込みではなく,メールの形で配信されたような場合にはどうなのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: それが,特定の誰かとのメールのやりとりではなく,メーリングリストやメールマガジンで不特定の人に配信されるようなメールの場合には,民事でも刑事でも名誉毀損の問題が生じます。その場合には,先ほどと同じように,メールの送信者に対して,民事刑事の両面から責任を問うことができます。</div>
<div><br />
柳田: 個人的には,ご相談者の場合には,民事や刑事といったややこしい手続をするのではなく,掲示板の中で反論すればいいのではないかとも思うのですが,どうなのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 確かに,「対抗言論」と言って,反論できる手段を持つ人は,まず反論せよという学説もあります。でも,実際の例を見ていると,反論すると却って問題が大きくなったり,周りが面白がって煽ったりして,逆に傷が深くなるように思えます。もし先ほどの民事刑事の手段をとることをしないのであれば,無視してそのまま放置するのはどうでしょうか。「人の噂も七五日」といいますし。無視していると,そのうち書き込みしている人も飽きてきて,関心が別の所に移ることもありますね。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,確かにそうですね。放置するのも立派な手段ということですね。インターネット上の法律問題についてもっとお尋ねになりたい方は,武田法律事務所026−233−0345 にお尋ねください。本日はどうも有り難うございました。</div>
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2007-09-26T00:00:00+09:00
第7回:ブログを作るときの注意事項
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=118#block111-118
1
<div>私は最近,孫に教わってインターネットを利用するようになりました。使い始めると,メールもできて,とても便利です。さて最近,ブログというものが無料で手軽に始められることを知り,私もやってみようと思います。でも,ブログを作ると,いろいろと著作権の問題など,ややこしいことが出てくると聞きました。法律に違反しないように楽しくインターネットをしたいのですが,自分でブログを作るときの注意事項はありますか?(70歳,男性)</div>
<div>
<div> </div>
</div>
<div> </div>
<div>柳田: 最近はお年寄りも積極的にインターネットを利用するようになり,こういうご相談も来るようになりました。私もインターネットをよく利用していますけど,板谷さんはどうですか?</div>
<div><br />
板谷: 私も仕事でインターネットを使うことが多いですね。それから,自分の実名でブログも作って楽しんでいます。ブログの中身は大した内容ではありませんが。</div>
<div><br />
柳田: そうですか。では,今日のご相談は私たちにとっても身近な内容ですが,インターネット上でブログを作るときの注意事項は,なにかありますか?</div>
<div><br />
板谷: やはり,まずは著作権の問題でしょうね。著作権侵害をして著作権法違反となると,民事での損害賠償や刑事での3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という刑罰を受ける可能性があります。それから,内容によっては,名誉毀損やわいせつ物陳列罪などの問題にもなります。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,では,今回は著作権の問題を中心にお尋ねします。そもそも「著作権」という言葉自体はよく聞くのですが,あまり内容はよく分からないのですが…。</div>
<div><br />
板谷: 私たちの社会では,目に見える物以外に,アイディアとか技術とか,目に見えない財産,つまり知的財産というものがあります。せっかく自分が時間をかけて編み出したアイディアが,勝手に他人に使われてしまうと,それまでに費やした時間やお金が無駄になってしまいます。そう言うことが起こらないように,自分の創作した物については自分が独占的に支配する権利が与えられています。これが「著作権」です。これには,音楽とか,写真とか,映画とか,文章など,様々な創作物が対象となります。何の手続きを踏まず,ただ著作物であるというだけで,この著作権の保護を受けることができます。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,そうすると,例えば他の人の写真やイラストを勝手に自分のブログに掲載したりすると,著作権侵害になるということになるんですね?</div>
<div><br />
板谷: そうですね。著作物を作った人には,その著作物を複製する権利や,大勢の人に送信する「公衆送信権」があります。ですから,勝手に人の写真やイラストを自分のブログに掲載すると,それらの権利を侵害するということになります。</div>
<div><br />
柳田: でも,色々なホームページを見ていると,他の人の写真やイラストを自分のホームページで使っている場合がありますよね?どういう場合に使えるのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: 著作権者の承諾がある場合には使えます。また,著作権者が「著作権フリー」などと書いていて,承諾を不要としている場合になどには,承諾なく使うことができます。但し,その場合にも,「承諾は要りませんが写真の右下に撮影者が私であることを示す文字を入れること」とか「勝手に第三者に配布しないこと」などの要件が書かれていることがありますから,そうした要件に従うことが必要ですね。</div>
<div><br />
柳田: 著作権者が死亡した場合などには使えるというようなことを聞いたことがあるのですが…。</div>
<div><br />
板谷: 著作権者が死亡した後,50年経過すると,その著作権は消滅することになっています。ですから,それ以後はその著作物を自由に使えます。ただし,著作者の人格権を侵害するであろう行為はできません。例えば,著作物の同一性を変えるなどの行為は,50年経過してもできません。また,映画については公表後70年経過しないと,著作権は消滅しません。</div>
<div><br />
柳田: たとえば,イラストや美術品を写真にとって,それをホームページに載せるならかまわないのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: 絵画については,その絵を模写することや写真を撮ること自体が著作権侵害になります。ですから,当然,ホームページに載せることは著作権侵害になりますね。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,例えば,旅行に行った先の建物を撮った写真なども載せてはいけないのでしょうか?芸術的な建物などもありますよね。</div>
<div><br />
板谷: 建築物の場合には,原則として写真にとってホームページに載せても著作権侵害にはなりません。その建築物を真似して,似たような建物を建てることは著作権侵害になります。</div>
<div><br />
柳田: では,学校の体育祭などの行事の様子とか,修学旅行の写真などといった,自分以外の人が写っている写真をホームページに載せることはどうですか?</div>
<div><br />
板谷: その写真を撮ったのがご自身であれば,著作権侵害の問題にはなりませんが,肖像権侵害となる可能性があります。その写真に載っている人の承諾を得ずにホームページで公開すると,肖像権侵害となって損害賠償請求をされる可能性があります。</div>
<div><br />
柳田: でも,他の人の書いた著作物についてコメントをしたい場合などには,その著作物について引用することもありますよね。それらも一切許されないんですか?</div>
<div><br />
板谷: その場合,「引用」にとどまる場合であれば,ホームページに載せることができます。その場合,?引用の目的からして正当な範囲内に限ること,?引用する部分をカギ括弧などで明瞭に区別すること?主従,つまり,自分の著作物が主で,引用する部分が従となっていること?出典,つまり,著作者の名前やその本のタイトルなどを明記することが必要です。</div>
<div><br />
柳田: うわあ,結構厳しいんですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。ですから,他人の書いたものなどは,?その人の承諾がある場合か,?きちんと引用の要件を充たしている以外には使えない,と考えた方がいいですね。</div>
<div><br />
柳田: ブログは,他人のものを使うのではなく,自分のオリジナルなものを使った方がいいということですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。毎回法律家に尋ねるわけにはいきませんからね。</div>
<div><br />
柳田: では,自分のブログに他の人のホームページのリンクを張ることは許されるのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: それは著作権侵害の問題にはなりません。リンクを張るだけでは,その人の著作物をコピーするわけではないからです。でも,インターネット上のエチケット,つまりネチケットとして,相手に許可を得てからリンクを張った方がよいですね。特に,リンク禁止と書いてあるものについては,リンクしない方がいいでしょうね。もちろん,最近流行りのアフィリエイトという,インターネット上の商品を紹介してポイントをもらう制度があるような場合には,その商品の売り主はむしろリンクしてどんどん自分の商品を紹介して欲しいと思っているわけですから,そういうアフィリエイトを使う場合には,リンクを張っても構わないでしょうね。</div>
<div><br />
柳田: なんだか難しそうに思えますが,結局は常識で判断する,ということになるんでしょうね。インターネット上の法律問題についてもっとお尋ねになりたい方は,武田法律事務所026−233−0345 にお尋ねください。本日はどうも有り難うございました。</div>
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2007-08-29T00:00:00+09:00
第6回:高齢者の訪問販売被害
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=117#block111-117
1
<div>柳田: 今回は,高齢者に関係したご相談です。58歳の主婦からのご相談です。</div>
<div>
<div>「私は,75歳になる母と二人暮らしです。母は20年前に夫(つまり私の父)を亡くしたため,不動産や預金を相続し,ある程度の財産を持っています。しかし,最近は認知症が進んできたようで,この間も私の知らないうちに,訪問販売で高額の布団を買わされてしまいました。幸い,その売買は業者と交渉をして取り消すことができましたが,またおばあちゃんが同じような被害にあってしまわないか心配です。こういう場合,どうしたらよいでしょうか。」<br />
</div>
</div>
<div>高齢化した長野では,こういうご心配を抱えておられる方も多いと思いますが,板谷さん,いかがでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。深刻な問題で,こういう相談は弁護士のみならず,消費生活センターなどにも沢山寄せられるようですね。</div>
<div> こういう被害に遭ったときにどうするかということと,遭わないようにどうすればよいかということをちょっと考えてみましょうか。</div>
<div><br />
柳田: よろしくお願いします。それではまず,訪問販売や電話でのセールスで高額の商品を買うという契約をしてしまった場合,どうすればよいでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: この場合,クーリングオフという手続ができる可能性があります。こういう商法で契約した場合には,「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)という法律の適用があり,契約から8日以内なら売買契約を解除できます。</div>
<div><br />
柳田: クーリングオフという言葉はよく聞きますけど,どういうものなのかはよく分かりません。解除したら,布団も返さなければならないんですよね?</div>
<div><br />
板谷: そうですね。契約によって受け取った布団は,返さなければなりません。でも,その送料などは業者が負担しなければなりませんから,販売業者に対して引き取りを請求して待っていることもできますし,着払いで返送することもできます。それ以外の違約金とか損害賠償を支払う必要もありません。</div>
<div><br />
柳田: ずいぶん消費者の味方になる法律なんですね。なぜこのような制度があるんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 訪問販売などのセールスは,買い物に行く場合と違って,よく考えて買い物をすることができないことが多いんですね。突然勧誘とか訪問をうけて,よく考える暇もないまま,相手の説得に負けて契約してしまうと言うことが多いんです。そこで,頭を冷やして考え直す期間としてクーリングオフというものが認められたんです。</div>
<div><br />
柳田: クーリングオフをするためにはどうすればいいんですか。</div>
<div><br />
板谷: クーリングオフを使って契約を解除する,ということを通知する必要があります。これは,できれば内容証明郵便,少なくとも書面の控えを作って,簡易書留あるいは配達記録郵便で送付した方がいいです。内容証明郵便は郵便局で作れます。内容は,契約の日時,購入した商品などを書き,「契約を解除します」という通知をするだけで大丈夫です。商品を速やかに引き取って欲しいと書いておくと更によいと思います。</div>
<div><br />
柳田: お年寄りだと,自分で作るのは難しいと思うのですが,どうしたらよいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 消費生活センターに行けば,解除の仕方は教えてくれます。また,弁護士や司法書士,行政書士などの専門家に尋ねることもできます。</div>
<div><br />
柳田: クーリングオフに関して,なにか気をつけることはありますか。</div>
<div><br />
板谷: そうですねえ。化粧品や洗剤など,一部の消耗品については,使用するとクーリングオフができなくなること,通信販売にはクーリングオフという手続がないことでしょうかね。</div>
<div><br />
柳田: 先ほど,8日以内に解除しなければならない,ということでしたが…。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。これは,もう少し厳密に言うと,法律に定める契約書面を受け取った日を1日目と数えて,8日目までに「発送」するということなんです。業者の所に通知が届くのは,8日目を過ぎていてもかまいません。発送すればいいんです。</div>
<div><br />
柳田: 8日目を過ぎてしまったらどうすればいいんですか?</div>
<div><br />
板谷: 業者が法律に定める書面を交付していない場合や,内容が不十分である場合があります。そういう場合は,8日を過ぎてもクーリングオフができます。クーリングオフの期間がスタートしていない,ということになるからです。もしそういうことがあれば,受け取った書面をもって,消費生活センターや弁護士の所に相談してみて下さい。また,訪問販売の方法が悪質な場合や,認知症が進んでいて契約の内容すら本人に分かっていないような場合には,クーリングオフという手続をとらなくても,契約の無効や解除を主張できます。今,こうした取引について消費者を保護する方向で法律の改正も進められています。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。それでは,ここまでで,もしお年寄りが訪問販売などで契約をしてしまった場合にはどうすればいいのかをお尋ねしました。クーリングオフという手続があること,その方法や期限,クーリングオフ以外にも契約の無効や解除を主張できることがあることが分かりました。それでは,本件で,そもそもこういう被害に遭わないようにするためにはどうしたらよいのかという質問についてはいかがでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 悪質な業者というのは,情報を共有して次々に手を変え品を変えて勧誘してきますから,認知症が進んでいるお年寄りが財産を管理し続けるのは大変危険です。そこで,成年後見制度や,今日は細かくお話ししませんが,財産の信託の制度を利用するとよいと思います。</div>
<div><br />
柳田: 成年後見制度ですか。もう少し詳しく教えて頂けますか。</div>
<div><br />
板谷: 以前には禁治産・準禁治産制度という呼び名がついていたのですが,少し前に成年後見制度という名前に改められました。高齢社会が進んで,認知症などの判断能力が不十分であるお年寄りが財産を騙し取られたりすることが多く見られるので,このような判断能力が不十分な人々のために財産管理・身の上の監護を行う制度です。これには成年後見の他に,保佐や補助という制度もあります。</div>
<div><br />
柳田: それでは,成年後見とはどのような制度ですか。</div>
<div><br />
板谷: これは,自分の行為の法的な結果を認識・判断できる能力がない方々のために,その人の代理人として取引をするということです。日用品の購入などの行為以外には,成年被後見人は単独で取引ができなくなり,もし単独で契約などをした場合には取り消すことができますから,安心です。これにはクーリングオフと違って,8日間という期間の制限などもありません。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。では,保佐制度とはどのような制度ですか。</div>
<div><br />
板谷: 判断能力が著しく不十分である方のために,ある一定の行為については保佐人の同意を得なければ単独ではできなくなるということです。その行為とは,重要な財産の売買など,幾つか法律に挙げられています。成年後見とは異なり,同意があれば自分で取引ができますから,半人前という扱いになります。同意なくして行った取引は取り消すことができます。</div>
<div><br />
柳田: それでは,補助という制度はどんなものですか。</div>
<div><br />
板谷: 先ほどの保佐に定めるものの一部についてのみ補助人の同意権・取消権や代理権を与えることができる,というものです。保佐よりも,もっと判断能力がある方に対して用いられます。</div>
<div><br />
柳田: そういう制度を利用するには,どうしたらよいのでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 家庭裁判所に審判の申出をすることが必要です。家庭裁判所とか審判とかいうと,なんだか難しい手続のように思えますが,実際はそれほど難しくありません。家庭裁判所の窓口で詳しく教えてくれますが,一定の申立書に記入して,診断書などを添えて申し立てるだけです。ご相談のケースの場合には,娘さんが成年後見人の候補者となって申し立てることができますね。もし難しくて分からなければ,弁護士も手続を代理できますからお尋ねください。また,財産の信託という方法がありますが,詳しいことは弁護士にお尋ねください。</div>
<div><br />
柳田: ありがとうございました。</div>
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2007-07-25T00:00:00+09:00
第5回:交通事故
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=116#block111-116
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<div>柳田: 今回は交通事故のご相談です。45歳の会社員男性の方からのご相談です。</div>
<div>
<div> 「私は,先週の日曜日,家族とドライブに出かけていたところ,赤信号を無視して交差点に突入してきた自動車と衝突し,1か月入院する大けがをしました。ところが,警察の話では,その自動車の運転者は18歳の専門学校生で,自動車の名義はその少年の父親名義になっていました。私は,誰にどんな請求ができるでしょうか。」</div>
</div>
<div><br />
板谷: う〜ん,ご相談のケースでは双方の任意保険や共済の状況が分かりませんので,ちょっと場合を分けて検討しなければなりませんね。</div>
<div><br />
柳田: そうですか。そうすると,まずは,保険の話を抜きにして,誰にどんな請求ができるかを教えて下さい。</div>
<div><br />
板谷: まず,誰に対して,ということですが,その運転者は18歳の少年ですから,当然その少年に対して損害賠償請求をすることができます。</div>
<div><br />
柳田: でも,18歳の専門学校生だとすると,せいぜいアルバイトの収入くらいしかなさそうですから,あまり損害賠償は期待できませんよね?</div>
<div><br />
板谷: そうですね。そこで,自動車の名義人となっている父親に対して請求ができるかどうかを検討しなければなりませんね。理屈としては幾つかの法律構成がありうるのですが,まず,自賠法(自動車損害賠償保障法)3条というところに「運行供用者責任」というものが定められていて,その責任を負う者は損害賠償責任があります。ちょっと難しい呼び方ですが,要するに,自動車は危険な物だから,自分のために自動車を使っている人は,その自動車によって起こしてしまった事故の責任も負いなさい,ということです。</div>
<div>そして,本件で名義人となっている父親が運行供用者といえるか否かについてですが,判例によると,「父親が自動車の運行を事実上支配・管理することができ,その自動車の運行によって損害をもたらさないように監視・監督すべき立場である場合」には,たとえその自動車の所有者が子どもであっても,登録名義人の父親に責任が認められます。ですから,たとえば,その少年が父親と一緒に住んでいて,父親の家の駐車場に自動車を止めていたとか,父親と生計も一緒で,車の購入も父親の援助があったとか,ガソリン代は通常父親が出していたとか,親がその自動車を使うこともあったとか,いろいろな事情を考慮して,父親の責任を問うことができます。</div>
<div><br />
柳田: そうなんですか。では,たとえば,ご相談のケースとは違って,親の名義ではない場合はどうなんでしょうか。</div>
<div><br />
板谷: その場合でも,やはり先ほど挙げたような事情があれば,父親が支配・管理すべき責任があるといえますから,運行供用者責任を問うことができますね。また,民法709条という条文があって,これは不法行為責任についての条文なのですが,判例によれば,?監督義務者が監督をすれば事故が防止され得たこと?その監督を現実になしえたこと?監督をせずに放任しておけば,事故が生じる蓋然性が強かったことという要件を充たせば,父親も709条の責任を負うことがあります。難しい言い方ですが,要するに,父親が監督すべきであって,監督できたのであれば責任を負う,そうでなければ負わない,ということです。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。それでは,どんな内容の損害賠償請求をすることができるのですか?</div>
<div><br />
板谷: 損害の種類は,一般的に怪我をした,命を失ったなどの人身損害(人損)と,車が壊れた,積んでいた物が割れた,などの物的損害(物損)に分けられます。そして,人身損害は,財産上の損害と,それ以外の損害すなわち精神的苦痛に基づく慰謝料に分けられます。</div>
<div><br />
柳田: なるほど,人損と物損があって,人損は財産上の損害と慰謝料があるのですね。それでは,まず人損の財産上の損害について教えて頂けますか。</div>
<div><br />
板谷: 財産上の損害には,積極損害つまり事故によって出費した損害と,消極損害つまり事故に遭わなければ得られたはずの利益という2種類があります。積極損害はいろいろありますが,たとえば治療費や,入院代,付添看護費,入院雑費,入通院交通費などなど,入院やその後の治療に必要なものが含まれます。また,消極損害には,入院して仕事を休んだ場合の休業損害や,その後に後遺障害が残ってしまった場合の労働能力喪失による逸失利益があります。言葉で言うと分かりにくいと思いますが,要するに,治療のために支出した金額と,仕事に響いた額が全部損害になるわけです。</div>
<div><br />
柳田: それでは,慰謝料はどの程度でしょうか。</div>
<div><br />
板谷: 慰謝料の額については,現在は定額化していて,入通院の日数やその人の家族構成や年齢によって額も上下します。ちなみに,入院1か月で,その後2か月通院したような場合,基準は98万円となっています。</div>
<div><br />
柳田: そうすると,ここまでで,事故を起こした本人と,場合によっては自動車の名義人である父親にも請求できるということ,内容的には物損と人損,人損の中身は,慰謝料と,財産上の損害を請求できるということまで分かりました。さて,先ほど,保険をかけているかによって変わるということでしたが,どういうことでしょう。</div>
<div><br />
板谷: 相手方が任意保険あるいは共済に入っていて,その内容に対人賠償や対物賠償というものが入っているのであれば,被害者であるご相談者から直接保険会社へ請求することができます。この場合,原則として請求から30日以内に支払がなされることになっています。</div>
<div><br />
柳田: つまり,相手方に保険会社が付いていれば,相手方と直接交渉しなくても,保険金という形で支払われるということですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。ただ,最近「保険会社の不払い問題」というものが言われますので,ご存じかもしれませんが,自分で保険会社と交渉すると,先ほどの損害賠償の全部が支払われないことがあります。慰謝料の額なども,非常に低く算定されることがあります。残念なことですが,そういうときは,弁護士に依頼して交渉してもらった方が良いと思います。</div>
<div><br />
柳田: それでは,逆に,こちら側には自動車の任意保険がついているものの,相手方には任意保険が付いていなかった,ということもありますよね。そういうときはどうすればいいのでしょう。</div>
<div><br />
板谷: 最近,自動車保険には「人身障害補償保険」というものが付いています。これは,相手と交渉しなくても,自分の契約している保険会社に支払いを請求でき,その代わり保険会社が相手方に請求をしていく(「求償」といいます)というものです。こういう保険が付いていれば,自分の加入している保険会社が肩代わりをしてくれますので安心です。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。つまり,任意保険がどちらかに付いていれば,とりあえず何らかの損害賠償はなされるということですね。それでは,たとえば,ちょっとご相談の事案とは違うのですが,こちら側はドライブ中ではなく,歩道を通行中などで,後ろから来た自動車にはねられてしまい,加害者も分からない,というような場合もありますよね。そういう場合,相手方も逃走してしまって分からないのですから,保険会社も当然分かりませんけど,泣き寝入りになってしまうのでしょうか?</div>
<div><br />
板谷: そのように轢き逃げのような,加害者不明の場合や,相手方の車が無保険であったり,盗難車の運転であったりする場合,保険会社からは支払われません。そこで,そのような場合のために「政府保障事業」というものがあります。額は高くないですが,最寄りの保険会社の窓口で請求することができますから,聞いてみて下さい。分からないことは弁護士にもご相談ください。</div>
<div><br />
柳田: ありがとうございました。</div>
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2007-01-31T00:00:00+09:00
第4回:学校でのいじめ(その2)
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=115#block111-115
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<div>柳田: 前回と今回はいじめに関して法律的な面から取り上げています。前回はいじめられている側のご相談でしたが,今回はいじめている側の親御さんからのご相談です。</div>
<div> <br />
今回のご相談は次のようなものです。</div>
<div> <br />
「私は40歳の主婦です。10年前に主人と離婚してから,私が女手一つで息子と娘を育ててきました。今日は上の息子C(中学3年,15歳)についての相談です。Cは,中学生になってから荒れ始め,体が大きいこともあって喧嘩が強く,学校の不良集団の番長みたいな存在になっているようです。先日,警察の人が我が家に来て,「Cが同学年のDくんにいじめをして怪我をさせたということで裁判所から逮捕状が出たのでCを逮捕する」といわれ,Cが警察署に連れて行かれました。逮捕状の内容は,細かく覚えていませんが,CがDくんにたばこの火を押しつけてやけどをさせ,殴ったり蹴ったりして腕や肋骨に全治1か月の傷害を負わせたというものです。私はこれからどうすればいいのでしょうか。手続や損害賠償はどうなりますか。」</div>
<div> <br />
この方の場合は,自分の子どもがいじめをしている側で,逮捕されたというご相談ですが,ではまず,リスナーの皆さんのために,逮捕とは関係なく,いじめている側に法律的にどんな責任が生じるか,教えてもらえますか。</div>
<div><br />
板谷: はい。これは,前回の裏返しになりますけれども,柳田さん,前回,法的な手段としてあげたものを覚えておられますか。</div>
<div><br />
柳田: ええと,?刑事上の手続,?民事上の手続,それに,?弁護士会への人権救済の申し立てだったと思います。</div>
<div><br />
板谷: ありがとうございます。今回も,いじめている側には?刑事上の責任?民事上の責任が生じます。それ以外に,弁護士会から警告や勧告,要望が出されることがありますね。</div>
<div><br />
柳田: ではまず,?刑事上の責任から教えて下さい。</div>
<div><br />
板谷: これは,いじめている少年が14歳になっているかどうかで異なります。刑法上,「14歳に満たない者の行為は,罰しない。」とされており,犯罪の責任を負う「責任能力」がある年齢は14歳からとされています。 </div>
<div>そこで,少年が14歳未満の場合には犯罪が成立せず,刑罰も科せられません。しかし,刑罰法令に触れる行為をした場合は,警察から児童相談所や都道府県知事へ通告があり,児童相談所が主として扱うことになっています。もっとも,事件によっては,その後家庭裁判所に送致され,家庭裁判所での審判の結果,児童自立支援施設入所になることもあります。</div>
<div> 次に,少年が14歳以上の場合,その行為は「犯罪」となります。しかし「少年法」により,特別な扱いがなされます。つまり,警察から検察官に送致され,その後家庭裁判所へ送致されます。その後,多くの場合は少年鑑別所というところで調査官による調査が行われ,その調査の結果をもとに審判が行われます。その結果,少年院に送られることもありますし,保護観察といって,身柄を自由にして,一定の期間保護司との面接をさせる場合もあります。試験観察といって,とりあえず今後の様子を見るという方法もあります。</div>
<div>ただし,「逆送」といって,重大な事件の場合は,その後検察官に送致され,成人と同様の手続になることもあります。16歳以上で故意に人を死亡させた事件は,原則として逆送されます。</div>
<div>Cくんの場合,15歳で逮捕されていますから,この後は家庭裁判所の手続になるでしょうね。</div>
<div><br />
柳田: うわあ,複雑なんですねえ。でも,いじめの場合,いつもいつもこんなに複雑な手続になるんですか?</div>
<div><br />
板谷: いえ,本件のCくんは逮捕されていましたが,逮捕するまでに至らない,問題の程度の軽い少年の場合は,警察の補導や,児童相談所の指導の対象となることもあります。「在宅手続」といって,逮捕されないまま家庭裁判所に送致されることもあります。</div>
<div><br />
柳田: テレビで見ると,弁護士の人が「付添人」としてインタビューを受けていることがありますが,刑事裁判の弁護人みたいなことをするんですか?</div>
<div><br />
板谷: 似ている面もありますが,ちょっと違いますね。もともと家庭裁判所の手続が少年の保護,つまり教育とか福祉という目的で行われる手続ですので,弁護士が付添人として活動する場合は,単に弁護するのではなくて,少年自身に考えさせ,立ち直らせるための援助をすることになります。少年の親御さんたちとも話し合って,少年が非行に走ってしまった原因などを考え,今後の解決策を一緒に考えます。とても重要な活動なんですよ。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。先ほどの説明も,1回聞いただけでは分かりませんから,弁護士に相談した方がいいということですね。</div>
<div><br />
板谷: まあ,その方が安心ですね。本当は,全部の事件に付添人が付いた方がいいのですが,まだ付添人が付く事件の割合は少ないです。弁護士費用が払えない方の場合には弁護士会で特別な制度もありますから,それらを利用して,是非少年のために付添人を付けて欲しいですね。</div>
<div><br />
柳田: 次に,?民事上の手続について教えて下さい。</div>
<div><br />
板谷: 前回もお話したとおり,少年が13歳前後までは,少年の代わりに監督責任者の親が治療費や慰謝料などの損害賠償責任を負うことがあります。でも,Cくんのように,15歳の場合には,Cくん自身に責任能力があるとされますから,相手に怪我を負わせてしまった場合は,治療費や慰謝料などの損害賠償責任がCくんに発生します。親御さんは,当然には支払う義務は発生しません。もっともCくんは中学生ですから,支払いの能力がないでしょうから,親として,損害賠償や被害弁償をする方がいいですね。お金の問題よりもまず,被害が生じているわけですから,真っ先に親から謝罪しに行く方がいいと思います。</div>
<div><br />
柳田: 交通事故のように,「示談」をするということですか?</div>
<div><br />
板谷: そうですね,示談,つまりこれでお互い何も言わないという契約ができれば一番いいですね。示談書があれば,Cくんの審判でも,Cくんの有利に使えます。でも,この場合気をつけなくてはいけないのは,示談書の中で親御さんの責任を安易に認めないことです。先ほど申し上げたように,あくまでも法律的には親御さんの責任はない可能性が大きいですから,示談書の中で「親の責任があることを認める」などという言葉を書かないようにしたほうがいいと思います。</div>
<div><br />
柳田: 前回のご相談のように,いじめの問題は,いじめられた側にとって重大な問題ですが,いじめた側にも重大な問題ですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。いずれにしても,親御さんの役割は大きなものがありますから,是非,一人で悩まず,私たちに相談して頂きたいと思います。</div>
<br />
柳田: ありがとうございました。
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2007-01-24T00:00:00+09:00
第3回:学校でのいじめ(その1)
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=114#block111-114
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<div>柳田: いじめに関する相談がいくつか寄せられていますので,今回と次回はいじめに関して法律的な面から取り上げたいと思います。今回はいじめられている側,次回はいじめている側の親御さんからのご相談です。</div>
<div> 今回のご相談は次のようなものです。</div>
<div> <br />
「私は30代後半の主婦です。私には中学2年になる男の子Aがいるのですが,どうやら学校でいじめに遭っているようです。我が家ではお小遣いというものがなく,必要なときに必要な分だけあげるのですが,今月に入って,部活で1万円を使うからといって,3回も無心されました。普段はこんなことがないのでおかしいなと思っていたのですが,先日,学校から帰ってきたときに制服があちこちよごれており,顔や目が腫れていました。心配になって,どうしたのと聞いてみても,「ちょっとそこで転んだ」と言って部屋に入るだけで,それ以上のことは教えてくれません。でも,この前,息子の幼なじみで違うクラスの男の子とスーパーでばったり会ったとき,その子が『おばさん,言いにくいんですけど,Aくんはどうもいじめられているみたいです。僕もクラスが違うので詳しくは分からないんですけど,噂では,Aくんと同じクラスのBくんが中心になって,お金を要求したり,みんなの前でズボンを脱がせたり,暴力をふるったりしているみたいです』と教えてくれました。私はどうしたらよいのでしょう。」</div>
<div> 最近よく問題にされているいじめについての切実な問題ですが,板谷さん法律的な面からはどうでしょう。</div>
<div><br />
板谷: この幼なじみの男の子のように,いじめがあるということを教えてくれる子供はなかなかいないですが,何らかのきっかけでいじめが疑われる場合もありますね。</div>
<div> いじめに気づいたら,まずは事実関係を確かめることが必要です。息子さんは追いつめられていることも考えられますから,そのことを息子さんに聞いて確かめるときも,慎重に,上手にやらなければなりません。そのことで息子さんのことを叱ったり,感情的になって大騒ぎしたりするのではなく,あくまでも冷静に,子供のことを助けたい,子供の力になりたい,という姿勢で対処することが必要です。</div>
<div> そして,いじめられていることがはっきりした場合,まず学校と連携して実態を調査して解決にあたることが重要です。教師自身がいじめに気付いていない場合もありますから,連携はたやすいことではありませんが,現場にいる教師にいじめの事実を知らせ,親と連携して解決に導く努力が必要です。もちろん,必ずしもそれですぐにいじめが止むわけではありませんが,解決のためには必要なことです。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。それ以外に,法律上はどんな手段が取れるのでしょう?</div>
<div><br />
板谷: そうですね,法的な手段としては,?刑事上の手続,?民事上の手続,があり,それ以外にも,?弁護士会への人権救済の申し立てなどという手段もあります。</div>
<div><br />
柳田: ではまず,?刑事上の手続とはどんなことですか?</div>
<div><br />
板谷: ご相談のAくんが,Bくんからお金を要求されたり,みんなの前でズボンを脱がせられたり,暴力をふるわれて怪我をさせられたりしているのが事実ならば,刑法上恐喝罪や暴行罪,傷害罪などが成立する可能性があります。もっとも,Bくんは中学2年生ですから,13歳の可能性もあります。刑法上の責任能力は14歳ですから,13歳の場合は責任能力がなく,犯罪とはなりません。その代わり,警察から児童相談所へ通告がなされ,家庭裁判所で審判がされることになります。Bくんが14歳になっていれば,犯罪が成立しますが,やはり未成年なので,家庭裁判所に送致され,鑑別所での調査を経て家庭裁判所で少年審判がなされる可能性があります。</div>
<div> いずれにしても,警察へ通報したり,被害届を出したりすることが可能です。また,Bくんが14歳になっていれば,刑事告訴をすることも可能です。Aくんに身の危険があるような場合には,こうした刑事上の手続をとるとよいかもしれません。そのためにも,事実関係をよく調査して,時間の流れで整理したメモを作成しておくとよいと思います。</div>
<div><br />
柳田: では次に,?民事上の手続とはどんなものですか?</div>
<div><br />
板谷: たとえばAくんがお金を取られていたり,怪我をしたりしていた場合,Bくんに対して損害賠償請求ができる可能性があります。</div>
<div> ここでBくんが責任を負うときというのは,民法上の「責任能力」がある場合とされており,12歳から13歳くらいで認められることが多いです。Bくんは13歳になっているでしょうから,かなり微妙なラインですが,Bくんが責任能力ありといえる場合には,実費として,実際にとられたお金や治療費を請求できるほか,慰謝料も請求できます。</div>
<div><br />
柳田: でも,中学2年くらいですと,アルバイトもしていませんし,Bくんは支払う能力がないことが多いですよね。Bくんに代わって親に支払ってもらうことはできますか?</div>
<div><br />
板谷: こういう場合にいじめている側の親と連絡を取ることは重要ですが,親がBくんに代わって支払う義務があるかどうかは,場合によります。法律上,親が子供の代わりに監督責任を負う場合というのは,子供が未成年で責任能力がない場合とされています。さきほど申し上げたように責任能力は12歳から13歳くらいで認められることが多く,Bくんに責任能力がある可能性がありますから,そうなると,Bくんの代わりに親に支払ってもらうことは難しくなります。もっとも,これはBくんの代わりに支払ってもらう場合のことで,たとえば親に監督上の不注意があって,それが原因で子供が犯罪をしたような場合には,親の責任として請求できます。</div>
<div><br />
柳田: なんだか複雑ですけれども,場合によるということなんですね。とりあえずは弁護士さんに相談してみた方がよさそうですね。</div>
<div><br />
板谷: そうですね。「責任能力」という言葉の使い方が,民法と刑法で若干違うので,ちょっと難しいですね。でも実際には,法律上は親に請求できなくても,親と話し合って,結果的に親が被害弁償をしてくれることが多いですよ。あとは,学校がいじめを放置していたような場合には,公立学校と私立学校で理屈が異なりますが,学校に対して請求できることもあります。</div>
<div><br />
柳田: なるほど。学校に対しての責任追及もあるんですね。では最後に,?弁護士会への人権救済の申し立てというのも簡単に教えて下さい。</div>
<div><br />
板谷: 弁護士会には,「子どもの権利委員会」というものがあって,こういう問題の相談を受け付けていまして,場合によっては弁護士会に人権救済の申し立てというものをすることがあります。事案によっては,弁護士会の会長名で,学校などに,「警告」や「勧告」や「要望」というものを出すことがあります。これはマスコミに報道されたりすると,かなりの効果が出ることもあります。ですから,とりあえず弁護士会(026-232-2104)に相談してみてください。</div>
<div><br />
柳田: 今日はありがとうございました。次回は,いじめている側の親御さんからの相談を取り上げます。</div>
<div> </div>
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2006-12-27T00:00:00+09:00
第2回:賃貸借と保証人
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=113#block111-113
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Q 私は,友人が住んでいる賃貸アパートの保証人になっています。保証人になるときに,友人から,「自分は会社勤めで収入があり,きちんと家賃を支払うから,君には迷惑をかけない。保証人になるのは形式的なものだ」といわれて判を押したのですが,その友人はその後会社をリストラされ,賃料も支払えなくなって賃貸借契約を解約されてしまいました。その結果,大家さんから私に,未払い賃料とハウスクリーニングの費用の請求が来ました。これは支払わなければならないのでしょうか?<br />
<br />
A 結論としては,未払い賃料は支払う必要がありますが,ハウスクリーニングの費用については支払わなくてよい可能性がある,というものです。<br />
このご質問に関しては,2つの点に分解してご説明する必要があります。まず,(1)賃貸借の保証人になっている場合,借主の資産状況が悪くなった場合でも保証人が責任を負うのかということと,(2)賃貸借が修了した場合,ハウスクリーニングの費用まで賃借人や保証人が負担するのかという問題です。<br />
<br />
(1)もともと保証人というのは,主たる債務者が支払えなかったときのためにつけるものですから,主たる債務者の資産状況が悪くなった場合でも,保証人が責任を負うのが原則です。言い換えると,まさにそのようなときのために保証人がいるのです。<br />
<br />
しかし,賃貸借の場合,期間が定められていないため,保証人としては予期しない事態が生じることもあります。そのため,保証人が支払うべきかどうか問題になることがあります。<br />
この点,同じ保証でも「根保証」といわれる保証,たとえばAがBに対して負う借金の全てを保証するとか,就職の際に身元保証をして,Aが会社にもたらした損害をすべて保証するなどの契約については,民法や身元保証法という法律があって,保証人の負う債務の額や期間については制限があります。<br />
しかし,不動産の賃貸借に際してなされる本件のような保証は,根保証のような保証と異なって,保証人の債務が予期しないほど多額になることはまずありません。そこで,特別な事情がある場合以外は保証人が全て負担することになっています。特別な事情とは,たとえば,保証契約をしてから相当の長い期間が経過し,かつ賃借人が不誠実で賃料の支払いを怠っているにもかかわらず,賃貸人が解除しないなどの事情が挙げられます。普通はこういうことはありませんから,保証人は負担することになります。<br />
<br />
(2)次に,ハウスクリーニングの費用についてですが,まず,そもそもこういう「原状回復義務」,つまり,元通りにする義務まで保証人が負うか否かについて疑問も出るかもしれませんが,保証人は,主たる債務者が負う原状回復債務についても原則として負担するとされています。<br />
しかし,主たる債務者が負担しないならば保証人も負担しなくてよいのは当然ですから,賃貸借において,ハウスクリーニングの費用まで主たる債務者が負うのか否かを考える必要があります。<br />
この点については,最近の最高裁の判例で,「通常,(壁紙の傷みのような)自然損耗については,賃料の中に含まれているので,原則として賃借人は自然損耗の部分についてまで原状回復義務は負わない,しかし,賃貸借契約の特約条項で,自然損耗まで原状回復義務を負うことが明確かつ具体的に記載されている場合や,きちんと口頭で説明して合意している場合には負う」とされました。<br />
従って,賃借人は原則としてハウスクリーニングの費用まで出す必要はありませんから,保証人であるあなたも出さなくてよいことになります。しかし,賃貸借契約書で,ハウスクリーニングの費用まで賃借人が負担することが明確に記載されているような場合には,賃借人は負担することになり,保証人であるあなたはそれを負担しなければなりません。<br />
ですから,賃貸借契約書の内容などによって変わることになり,内容によっては,あなたが負う必要はないことになります。
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text/html
2006-11-29T00:00:00+09:00
第1回:破産について
https://wings-lawfirm.jp/publics/index/13/detail=1/b_id=111/r_id=112#block111-112
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Q1 私はアパートに妻と7歳の子供と共に暮らしています。3年前に会社をリストラされて以来,不定期なアルバイトの生活となって収入が減り,生活のために銀行や消費者金融からの借入が800万円以上にもなってしまいました。これまでは何とか返していたのですが,利息が膨らむばかりで,もう返せそうにありません。でも,破産をすると,子供に影響が及びそうですし,消費者金融から矢のような催促が来たりするのではないかと心配です。また,破産の事実は戸籍や住民票に載って,みんなに分かってしまうのではないかと心配で,相談に行けません。どうすればよいでしょうか。<br />
<br />
A こういう多重債務を抱えた方の場合,いくつかの手段がありますが,お聞きした範囲では,破産の手続をとるのが最善だと思います。<br />
まず,破産をすると子供に影響が及ぶということはあまり心配する必要はありません。破産したという情報は,信用情報機関に最低5年は登録されます。子供が同居している場合に多いのですが,親の破産の情報により,子供がクレジットカードの申込をしても拒否されることがあります。しかし,それ以上のデメリットはありません。7歳の子供であれば,カードの申込もありませんから,心配ありません。子供の進学,就職に悪影響が出ることはありません。<br />
次に,破産申立後は消費者金融からの催促をすることは禁じられますので,矢のような催促が来ることもありません。安心して下さい。<br />
破産の事実は戸籍や住民票には載りません。したがって,普通の人には破産の事実は知られません。<br />
それ以外によく聞かれることとして,年金がもらえなくなるか,という心配があります。そういうことはありません。しかし,独立行政法人福祉医療機構などから年金を担保にお金を借りている場合,その返済が完了するまで受給できなくなります。<br />
また,選挙権もなくなりません。<br />
<br />
Q破産の事実は,自分の家族や会社に知られてしまいますか?<br />
A 事務所からお電話等を差し上げる場合には,事務所名を隠して個人名でも可能ですが,裁判所から郵便物が送達されることもありますので,同居の家族には知られてしまいます。むしろ,破産やその後の経済的復帰のためには,ご家族の理解と協力は必要となりますので,同居のご家族には知らせておいた方が良いと思われます。<br />
会社については,給与の差押えが来て,会社に知られてしまうことはあります。<br />
<br />
Q持ち家や車は,維持できませんか?<br />
A 20万円未満の価値しかないような車であれば,そのまま維持できる可能性もありますが,それ以上の価値のある車や家などの財産は,原則として全てお金に換えて債権者に配当されてしまいます。その場合は家や車を維持することはできません。<br />
もし,家のローンが残っていて,債権者である銀行等の抵当権が着いている場合は,破産ではなく小規模個人再生という手段を用いると,家は失わないで済む可能性があります。細かくは弁護士にご相談ください。<br />