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第89回(最終回):淫行処罰条例について
2013-07-24
先日,淫行処罰条例の制定に長野県弁護士会が反対の声明を出したというニュースがありました。子どもたちを性被害から守るために,こういう条例は必要だと思うのですが,なぜ反対するのか理解できません。説明して下さい。(40代,女性)
阿藤:今日は,最近長野県内でもニュースに出てくる「淫行処罰条例」についてです。特に最近,学校の教員などが児童生徒に対してわいせつ行為をして逮捕されるなどという報道が多いですが,板谷さん,まず淫行処罰条例とうもの自体がよく分からないのですが,一般的にはどういうものなんですか。
板谷:一般的には,青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為を広く処罰する規定を盛り込んだ条例を指して,淫行処罰条例と呼ばれていますね。
阿藤:たとえばどんなものがあるんでしょう。
板谷:最高裁の大法廷判決で有名になったのは,福岡県青少年保護育成条例で,この条例には,「何人も,青少年に対し,淫行またはわいせつの行為をしてはならない」という規定がありまして,これに反すると,2年以下の懲役または10万円以下の罰金を科するということになっています。長野県内の市区町村のレベルでいうと,東御市には平成19年に青少年健全育成条例ができまして,そこでは,「何人も青少年に対してみだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」とされています。
阿藤:「青少年保護育成」の条例ということは,要するに,子どもたちを性被害から守るというために作られた条例ということですよね。
板谷:はい。そうですね。こういう条例の中には,有害図書の規制なども含まれることが多いですね。
阿藤:長野県には,こういう条例がなかったということなんですか。
板谷:そうなんです。長野県は,47都道府県で唯一,こうした淫行処罰条例がなかったんです。
阿藤:子どもを持つ親の気持ちからすると,子どもたちが性被害の対象にされてしまうことを防ぎたいというのは当然で,是非長野県にも作って欲しいというのはよく分かるのですが,何か問題があるんでしょうか。
板谷:もちろん,そういう親御さんのお気持ちはよく分かります。ただ,弁護士の立場から申し上げると,このような条例を作ることには,大きく分けて,2つ問題があると考えているんですね。まず1つ目は,条例の文言,つまり言葉遣いが曖昧だということです。
阿藤:先ほどの条例ですと,「何人も,青少年に対し,淫行またはわいせつの行為をしてはならない」とか,「何人も青少年に対してみだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」という言葉遣いでしたが,まず,「青少年に対し」,これはどういう意味でしょう。
板谷:通常は,条例の中に,小学生から18歳未満までを青少年と呼ぶという定義規定が入っていますね。
阿藤:そうすると,これは年齢ではっきり分けられますから,明確ですよね。
板谷:そうですね。
阿藤:次に,「淫行またはわいせつの行為をしてはならない」とか,「みだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」これはどういう意味でしょう。
板谷:ここが問題なんです。「淫行」とか,「みだらな性行為」「わいせつな行為」というのが,どこからどこまでを規制するのかが曖昧なんです。
阿藤:まあ,こういうたぐいのものは,ある程度曖昧にならざるを得ないと思うんですけど…。曖昧だと,何が問題なんですか。
板谷:逮捕したり処罰したりする範囲について,捜査機関のフリーハンドになってしまうんです。たとえば,その青少年が真剣に恋愛したり交際したりしているというような場合でも,捜査機関は場合によっては逮捕できてしまうんです。
阿藤:なるほど。青少年が性交渉をすることが良いのかどうかは置いておくとして,女性であれば16歳になれば結婚もできるわけですもんね。
板谷:そうなんです。最高裁は,福岡の条例に関して,「『淫行』とは…」と言って非常に難しい定義づけをしているんですが,これではほとんど限定になっていないという強力な反対意見もあるんです。
阿藤:なるほど。さて,問題点の2番目というのは何でしょう。
板谷:青少年の性交渉などに関して,刑罰でこのように規制するというやり方自体がどうなのかということです。刑罰で何でも処罰するという方向は,決して問題の解決にはならないんです。
阿藤:といいますと,どういうことでしょう。
板谷:これだけ性に関する情報があふれた現代ですから,むしろ,子どもが自己決定権に基づいて意思決定をして,自分の判断で危険性から身を守ることができるように,性教育をしたり,インターネットの利用方法や危険性等に関する情報教育をしたりすることの方が重要だということなんです。日本の法律では,刑法の強制わいせつ罪,準強制わいせつ罪,強姦罪,準強姦罪,児童福祉法の児童淫行罪,いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法,出会い系サイト規制法,迷惑防止条例などがあって,青少年が被害を受けることを防ぐためにはこのような既存の刑罰で十分だと思うんですよね。
阿藤:なるほど。さて,今日で板谷さんの法律相談のコーナーは最終回ということですね。
板谷:はい。今日までで,約7年間,合計89回このコーナーを担当させていただきました。いろんなご相談を取り上げさせていただいて,とても勉強になりました。どうもありがとうございました。
阿藤:どうもありがとうございました。

第88回:復讐心だけで,証拠が無く訴えを起こすことは?
2013-06-26
数年前に私を傷つけた人のことが,どうしても許せません。証拠はないのですが,復讐をするために裁判を起こしたいと思います。でも,ちょっと心配なのが,訴えたこと自体で,逆に相手方から訴えられてしまうのではないかということです。そのようなことはありますか?(40代,女性)
柳田:今日は,復讐心から裁判を起こしたいけど,証拠が手元にない,というご相談ですね。う〜ん,まあ,「復讐心」っていうと聞こえが悪いですが,実際こういう理由で裁判を起こしたいという方は多いようにも思いますね。まず,裁判を起こすのに,証拠は必ず無いとだめなんでしょうか。
板谷:基本的には,証拠がないとだめですね。
柳田:やっぱり,そうなんですか…。
板谷:はい。裁判というのは,公平中立な第三者である裁判官に証拠を提出して判断してもらうという手続なんです。裁判官は神様ではありませんから,人の心を見抜いて,相手が嘘をついているかどうかなどを判断するわけにはいきません。判断をするためには,客観的な証拠や証言による裏付けが必要です。
柳田:そうなんですね。でも,さきほど,「基本的には」と言われたのが気になったんですが,証拠を提出しなくてもよい場合というのがあるんですか。
板谷:はい,民事裁判のルールでも「自白」という言葉を使うんですが,
柳田:自白ですか。
板谷:はい,自白です。相手が認めている事項については,裁判所はそのまま認定すればよいということになっています。ですから,相手が認めている事項については「争いのない事実」ということで,いちいち証拠を出さなくても大丈夫です。
柳田:なるほど。でも,通常,損害賠償などの裁判を起こして,相手がすべて認めるということはないですよね。
板谷:全くないわけではないですが,通常はないですね。もっとも,相手が裁判を起こされているのに,反論の答弁書も出さずに欠席すると,すべてを認めたものとして扱われてしまいます。
柳田:そうすると,裁判を起こされると,何もしないと全て認めたことになってしまうので,被告になった人は,どんなに事実無根の裁判を起こされても無視できず,間違っているところは間違っていると反論しなければならなくなるんですね。
板谷:そうですね。しかも,裁判ですから,弁護士を付けないとなかなか難しいので,訴えられた被告というのは,いろいろな負担がかかることになりますね。
柳田:そうなると,復讐心から,嫌がらせのために裁判を起こして,あわよくば相手が何も反論しないでそのまま裁判で勝ってしまおうと考えるような人も出てくると思いますが,証拠がないのに裁判を起こすことは違法にならないんですか。
板谷: 憲法には「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」とありますので,紛争解決のために訴えを提起することは,原則として正当な行為とみなされます。ただ,訴えを提起された側にとっては,弁護士を依頼して応訴したりするなどの経済的・精神的負担を余儀なくされますので,相手に不当な負担を強いるような訴えの提起は適切とはいえないですね。そこで,この点で最高裁の判例が出ていまして,最高裁は,「提訴者の主張した権利又は法律関係が根拠を欠くものであることを知りながら,あるいは容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるとき」には,訴えること自体が不法行為になるとしています。
柳田:ええと,ちょっと言葉遣いが難しいんですが,もうすこしかみ砕いていうとどうなるんでしょう。
板谷:要するに,証拠が無くて,事実無根だということを知りながら,単に嫌がらせのためだけに裁判を起こすということは,裁判制度の趣旨にそぐわないので,訴えたこと自体が違法な行為となることがあるということですね。
柳田:そうすると,訴えたこと自体で,相手から訴えられてしまうということもありうるということですね。
板谷:はい,そうですね。ご相談者の方も,数年前に何があったのか分かりませんが,証拠もないのに復讐をするためだけに裁判をするというのは,不法行為になって,逆に損害賠償を払わなくてはならなくなる可能性もありますし,何より精神衛生上よくありませんので,やめた方が良いと思いますね。
柳田:う〜ん,そうはいっても,なかなか許せないという方もおられると思いますが,どうすればいいんでしょうね。
板谷:いろいろな考え方はあると思いますが,一つの方法として,「こんな人を相手に争うのは自分がもったいない,相手には自分が怒るに値するだけの価値はない」と考えてみるのはどうでしょうかね。
柳田:相手と同じレベルで争うのでは無くて,もう少し上からの目線になって,自分の貴重な時間と体力を,こんな相手のために使うのはもったいない,だったらとっとと記憶から消し去った方がいい,と考えるということですかね。
板谷:はい,そうですね。若干悔しいかもしれませんが,そんな相手のことは忘れて,前を向いた方がいいと思うんですよね。
柳田:なるほど。わかりました。

第87回:盗まれた物がリサイクルショップにあった!
2013-05-29
半年前に,高級腕時計を盗まれてしまい,被害届を出しました。最近,近所のリサイクルショップで,その腕時計とそっくりな時計が売っており,よく見ると傷の付き方が全く同じで,シリアルナンバーを見せてもらったら,私が盗まれた時計でした。お店から,無償で返してもらえますか。(30代,男性)
柳田:今日は,盗まれた時計がリサイクルショップに売っていたら,無償で返してもらえるかというご相談です。結論からお聞きしますけど,この場合は返してもらえますかね?
板谷:はい。盗まれた時計だということが証明できるのであれば,盗まれてから1年の間は無償で返してもらえます。
柳田:よかったです。それでは,その理由を詳しく説明していただけますか。
板谷:まず,民法の原則からご説明しますね。民法には,物を占有している人は適法な占有と推定されるという規定があります。
柳田:適法な占有と推定されるって,難しい表現ですけど,どういう趣旨でしょうか。
板谷:たとえば,柳田さんが今着ている服について,誰かが近づいてきて,「それ,私の服です!返して下さい」といわれたら,困りますよね。
柳田:確かに困りますね。
板谷:もしそうなったら,自分の物です,ということはどうやって証明しますかね?
柳田:ええと…,たとえば買ったときのレシートを出すとか,名前を書いておくとか…う〜ん,どうやって証明するんでしょうかね。
板谷:そうなんです。自分の所有だということを証明するのは「悪魔の証明」などといわれるんですが,すごく難しいことなんです。レシートを全部とっておくとか,自分の所有物すべてに名前を書いておくなどということは非現実的ですよね。
柳田:確かに,そうですね。
板谷:そこで,民法では,その物を占有しているというだけで所有者として推定されるとしたんです。推定,というのは法律用語なんですが,とりあえずそういう物として扱っておいて,それに反論する人は推定をくつがえすために証拠を出さなければならないということなんです。
柳田:そうすると,私は今服を着て占有しているので,「それはあなたの服じゃありません,私のです」と主張する側が証拠を提出して推定をくつがえさないといけないということなんですね。
板谷:はい,そうですね。
柳田:さて,今日のご相談のように,お店が占有している商品について,製造番号などから,自分の盗まれた物だと証明できる場合はどうなんでしょう。
板谷:民法には「善意取得」とか「即時取得」と呼ばれる制度があり,盗品と知らずに取引で購入した人に過失つまり落ち度がなかった場合には,購入した人は即時にその物の所有権を取得できるとされているんです。これは,そのような制度がないと安心して取引ができなくなり,社会が混乱してしまうからです。
柳田:そうすると,盗品を取得したときに盗品と知らなかった場合で,しかも落ち度がないという場合には,善意取得するということになりますね。善意取得をする結果,どうなるんでしょうか。
板谷:これも民法に規定がありまして,盗難の被害者は,盗難から2年間は取得者に対して返還を求めることができますが,取得者が公の市場(お店など)で買ったという場合には,返還を求める際に取得者が支払った金額を払わなければならないことになっています。
柳田:そうすると,お店がその盗品を入手した際に善意取得したということになれば,お店には下取り代金を払わないと返してもらえないことになりそうですね。
板谷:民法の原則から言うとそうなりますね。でも,この民法の原則は「質屋営業法」や「古物営業法」という法律で修正されています。
柳田:質屋営業法や古物営業法ですか。
板谷:はい。質屋やリサイクルショップなどの古物営業を営む人は,都道府県公安委員会の許可が必要になります。そして,質屋営業法や古物営業法という法律に従って事業を営む必要があります。
柳田:そうすると,誰でもリサイクルショップを開けるというわけではなくて,許可が必要なんですね。それで,その法律ではどのように規定されているんですか。
板谷:それらの法律では,盗難又は遺失から1年以内であれば被害者に無償で返還しなければならないことになっています。盗品等の売買を防止し,速やかな発見等を図るために,そのような特別の義務を課しているんです。
柳田:なるほど,そうやって,お店の側でも取得する際にきちんと盗品かどうかを確かめなければならないようにしているんですね。そういえば,リサイクルショップに持って行くときは必ず免許証の提示などを求められますものね。
板谷:そうですね。
柳田:そうすると,中古店からは,被害から1年内は無償で返してもらえるということですから,ご相談者の場合,盗難から半年間しか経っていないので,シリアルナンバーなどで盗品と証明して,お店から返してもらえるわけですね。
板谷:はい,そうですね。
柳田:どうもありがとうございました。

第86回:憲法改正
2013-05-22
安倍さんが総理大臣になってから,憲法改正ということがよくニュースでとり上げられるようになりました。特に,憲法96条の改正ということがよく出てきますが,どういうことなのか,教えて下さい(60代,男性)
柳田:今日は,最近ニュースによく出てくる「憲法改正」についてです。憲法というと,社会科などで勉強して「前文を暗記した」などという人も多いと思いますが,最近改正が問題になっているのですよね。
板谷:はい。安倍政権が発足した当時から,安倍首相は憲法が誕生して60年経って現実にそぐわないものになっているから改正しようと主張していますね。そのため,この問題は最近新聞などでもよく取り上げられるようになりましたね。
柳田:そもそも憲法,というものは何なのか,説明してもらえますか。
板谷:わかりました。まず,国とか国家とはどういうものかというところからご説明しますかね。地図には国の境界線が引かれていますが,実際の地上にはそんな境界線がないですよね。つまり,国家というのは,ここからここまでがうちの国です,というふうに人為的に作られたもので,自然に存在しているものではないんです。
柳田:なるほど。
板谷:そして,国家の要素としては「領土」と「国民」と「統治権」の3つがあるといわれています。この3つが揃って初めて国家が成り立つというわけですね。
柳田:「領土」と「国民」と「統治権」ですね。領土は分かりますが,国民と統治権ということは,国家を治める権力者の側と,治められる側の国民が必要ということですね。
板谷:はい。そうですね。呼び方は国によって異なりますが,国家には必ず権力者と国民がいます。そして,まず法律というのは何かというと,権力者の側が作って,国民に守らせるものですね。たとえば交通法規を作って,日本では自動車は左側通行をしなければならないと定めますよね。そうすると,右側通行をした人は交通違反になりますね。交通違反になると,権力者は違反者を処罰することができるわけですね。
柳田:そうすると,権力者は法律で何でもできてしまうということですかね。
板谷:そういうことになってしまいますよね。一番分かりやすいのが税金で,権力者は法律で「今後の税金はこのくらい」と定めて,好き勝手に取り立てることができてしまいます。こういうことが17世紀から18世紀にかけて,イギリスやフランス,アメリカなどで問題になって市民革命が起きました。その市民革命の結果,権力者側に好き勝手にさせないように,権力者側を縛る目的で憲法を作ったんです。これを難しい言葉で「立憲主義」といいます。
柳田:立つという字に憲法の憲という字で立憲主義なんですね。憲法によって権力を縛るということなんですね。そうすると,憲法と法律というのは全く違うものなんですね。
板谷:そうなんです。憲法というのは,国民の権利を保障して国家権力を制限するため国の最高法規なんです。最高法規ですから,権力はこれに反する法律を作ることができません。仮に作っても,裁判所で違憲,無効とされてしまうわけです。
柳田:でも,法律も時代にそぐわなくなって改正する必要が出てくるのと同じで,憲法も改正する必要が出てくる場合もありますよね。憲法を改正するためにはどうすればよいのでしょうか。
板谷:憲法は最高規範ですから,法律と同じように簡単に変更できてしまうと意味がありません。そこで,どの国でも普通の法律よりも改正の要件を厳しくしています。日本国憲法の96条は,「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議する」して,「国民投票において、その過半数の賛成を必要とする」こととしています。これはかなり厳しい要件です。
柳田:いろいろな政党があるわけですから,国会で,総議員の3分の2以上の賛成を得るというのも大変ですし,国民投票で過半数の賛成を得るというのも大変ですよね。
板谷:はい。このように,ちょっとやそっとでは改正できない憲法のことを,硬い憲法という意味で硬性憲法といいます。
柳田:さて,憲法改正ということは以前から言われていたことですが,改正を唱える人たちは,どういう理由で改正を主張しているんでしょうか。
板谷:いろいろな主義主張がありますので一概には言えませんが,9条問題といって,今の憲法9条を前提にすると,国は陸海空軍を持つことはできないんですね。そこを改正したいという人がいます。あるいは,そもそも戦後に大日本帝国憲法から今の日本国憲法を作る際に,マッカーサー草案というものをもとに作ったので,日本国民が自主的に作ったものではない,押しつけ憲法だと言って,憲法を作り直そうという人もいますね。
柳田:そうなんですか。さて,最近問題になっている96条の改正というのはどういうことなんですか。
板谷:安倍さんは,憲法改正を早急に進めたいということで,さきほどの改正手続の中の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議する」という部分が厳しすぎるので,もっと緩和しようと主張しています。でも,これには反対も強くて,改正したいのであれば,今の憲法の改正手続に則ってやればいいのであって,まず改正のルールを変えてしまうというのは,本来権力を縛るはずの憲法を権力が自分で変更してしまうことになっておかしい,という意見が強いですね。長野県弁護士会も,そのような意見書を出しています。
柳田:ありがとうございました。

第85回:村八分にされてしまった
2013-04-24
私たちの家族は,些細なことをきっかけに,ご近所から村八分にされています。最近はゴミ収集所も使わせてもらえず,回覧板も回してもらえなくなりました。慰謝料を請求できますか?(60代,女性)
 
柳田:さて,今回は,いわゆる村八分という問題についてです。板谷さん,村八分なんていう問題は21世紀の現代社会でもあるんですか。
板谷:う〜ん,まあそれほど多い問題とはいえないですが,こういうご相談がないとはいえないですね。特に,農村や集落,団地などでは,共同体を構成している人数が少ないためか,時折このような問題が生じることがあります。
柳田:そうなんですか。裁判にまでなるケースもあるんでしょうか。
板谷:はい。裁判例で公表されている事例もいくつかありますね。代表的な事例は,共同絶交宣言をされ,度々いじめや仲間はずれ,嫌がらせにあい,連絡文書が届かなくなったなどの行為があったというものです。
柳田:共同絶交宣言ですか。ご近所からこんなことをされたら,たまったものではないですよね。今回のご相談も,ごみ収集所を使わせてもらえないとか,回覧板を回してもらえないなどというご相談ですが,こういう場合,慰謝料請求はできるのでしょうか。
板谷:できる場合もありますね。村八分行為については,「人格権を侵害する共同不法行為」があったとして慰謝料請求が認められることがあります。
柳田:人格権を侵害する共同不法行為ですか。つまり,村八分行為というものは,相手の人格権を傷つける行為ということですね。
板谷:はい。人格権というのは,個人の尊厳にかかわる極めて重要な権利です。プライバシー権とか,名誉なども含まれていますね。そういう人格権を,ご近所で共同して侵害しているということで,人格権を侵害する共同不法行為といわれているんですね。
柳田:そうなんですね。慰謝料は,大体どのくらい請求できるんでしょう。
板谷:場合によりますね。裁判所で認められたケースの多くは,20万円から30万円程度の事例です。おそらく一般に予想されるよりは低額だと思われますね。
柳田:20万円から30万円って,ちょっと予想より低いですね。数百万円くらいいくのかと思っていました。
板谷:もちろん場合によりますので,そのくらいいくケースもあるとは思います。裁判例でも,請求した額は300万円とか400万円といったケースが多いですが,裁判所が認めたのは数十万円ですね。
柳田:そうなんですか。さて,村八分行為について裁判で慰謝料を請求するために,気をつけるべきことなどはあるでしょうか。
板谷:裁判で慰謝料を請求したいのであれば,その前提として,村八分にされている証拠を集める必要があります。
柳田:証拠ですか。
板谷:はい。たとえば,「何となく仲間はずれにされている気がする」「最近周囲の態度がおかしい」という程度では,請求は無理でしょうね。また,このような事案では「あなたが地域社会の規範に反した行動を取ったために起きたものだ」などと反論されることもありますから,紛争に至る過程について詳細に記録をつけておくとよいと思います。
柳田:なるほど。そうすると,写真とか録音とか録画とかメモとか,そういうものを残しておくべきということですね。
板谷:はい。そうですね。ひどいケースになると,悪口を書いた立て看板を立てるなどというケースもありますから,こういう場合はきちんと証拠をとっておくと良いですね。
柳田:立て看板ですか。それはひどいですよね。名誉毀損ですね。
板谷:そうですね。そこまでいくと,単なる慰謝料だけでなく,刑事罰にもなり得る問題になりますね。
柳田:はい。さて,ご相談者のケースはそこまでいかないケースのようですが,板谷さん,村八分といっても,隣近所の問題について,慰謝料を裁判で請求するというのはちょっと抵抗がありますよね。
板谷:そうなんですよね。こうした隣近所とは今後もつきあいが続くわけですから,いきなり慰謝料を請求するかどうかは十分に検討すべきだと思いますね。
柳田:裁判よりも,もう少し穏便な解決をするためにはどうすればよいでしょうか。
板谷:まずは弁護士を通じて「村八分の行為はやめるように」という申し入れをするということが考えられますね。ご近所も何か誤解をしている場合もありますから,話し合えば誤解が解けるということもあるかもしれないですよね。
柳田:なるほど。
板谷:あとは,法務局に人権相談をすることも検討した方がいいですね。
柳田:人権相談ですか。
板谷:はい。法務局には「人権擁護委員」がおり,人権相談を受け付けています。とくに,こういう隣近所の問題などといった相談は,必ずしも法的な問題というより,感情的な問題がほとんどであるということがありますから,法律家が関与するより,もう一段階マイルドなやり方の方がいい場合があるんです。ですから,そうした相談窓口を利用してみるのも一つの方法かもしれませんね。
柳田:わかりました。ありがとうございました。

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